ヘンリー四世 第一部 ‐混沌‐・第二部 ‐戴冠‐
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2016/11/26 (土) ~ 2016/12/22 (木)公演終了
満足度★★★★
第二部は、脇役陣が出色
一部より、二部の方が、舞台進行がスムーズで、中だるみがありませんでした。
浦井さんが、いつになく、役を掴み切れていない気がする反面、二部は、特に、脇役陣の健闘が、舞台を弾ませました。
亀田さんと佐川さんは、昔から、よく見間違える程、似ていらしゃるのですが、このお二人が、兄弟役なのが、個人的に、受けました。
一部とは、雰囲気の異なる役を楽しげに演じている役者さんが多くて、観ているこちらまで、その楽しさが、伝播する感覚を味わいました。
冒頭の「噂」の台詞には、現代の闇を感じ、ちょっと戦慄が走りました。
エノケソ一代記
シス・カンパニー
世田谷パブリックシアター(東京都)
2016/11/27 (日) ~ 2016/12/26 (月)公演終了
満足度★★★★
俳優三谷さん、なかなかでした
エノケンは、大好きで、子供の頃、何度も、オペレッタのLPレコードを擦り切れる程、聴いては、「ベアトリ姉ちゃん」などを歌い踊っていた私。
だから、懐かしいメロディに胸がワクワクしました。
猿之助さんは、普通の芝居に出られた最初の頃は、まだ役者として硬い演技をしていらしたのに、この舞台では、歌舞伎役者だと忘れてしまうくらい、エノケンに憧れ続ける、市井の旅芸人を、軽妙洒脱に演じていました。
だから、時々、遠目で観ると、いとこの香川さんと錯覚するような瞬間もありました。
久しぶりに、役者としての三谷さんを拝見しましたが、こちらも、生真面目に演じていらっしゃるのが、逆に、笑いを誘い、あっぱれな役者振りでした。
どこか、長谷川伸の股旅ものや、新派の舞台を想起するような、人情劇の趣き。
笑いと、悲哀のバランスも、ちょうど良い塩梅で、万人受けする作品だと思いました。
SOETSU―韓くにの白き太陽―
劇団民藝
三越劇場(東京都)
2016/12/03 (土) ~ 2016/12/18 (日)公演終了
満足度★★★
もう少し起伏に富んでいれば
日本民藝館は、気に入っていて、何度か訪れている場所。
いつも、柳宗悦という人はどういう人かと気になっていたところ、あの長田さんが、その宗悦を描かれるというので、これは観ないとと、苦手な劇場ですが、行きました。
手堅い演技の篠田さんと、相変わらずご活躍の日色さんの共演は、嬉しかったのですが、やはり、評伝劇の難しさ…。
どうしても、流れが、年表的になり、少し冗長になったのではと、思いました。
もう少し、登場人物も整理して、起伏に富んだ構成なら良かったのではと、感じました。
それに、いつも思うのですが、民芸の舞台って、どうにも、緊迫感が欠けている気がしてなりません。
ヘンリー四世 第一部 ‐混沌‐・第二部 ‐戴冠‐
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2016/11/26 (土) ~ 2016/12/22 (木)公演終了
満足度★★★
第一部観劇
開幕前に、父と同期の劇評家の方が、相変わらず、お元気で、立ち話に花が咲きました。
もう80代の方なのに、昼夜通しで、ご観劇とのこと。
私は、とても体がもたないと、取り合えず、今回は、一部のみの観劇。
期待が大きかったのですが、以前拝見した、蜷川演出の、松坂桃李さんがハル王子を演じた舞台の印象が、あまりにも鮮烈だったせいか、少し、期待外れの感もありました。
何だか、音楽が流れる度に、これ新感線だっけ?の思いが…。
佐藤さんのフォールスタッフ、愛嬌がありました。ダグラス伯役の鍛治さん、圧巻でした。
以前、息子が共演させて頂いたことがある、小長谷さんのご活躍も嬉しく思いました。
誰も喋ってはならぬ!
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2016/11/23 (水) ~ 2016/12/07 (水)公演終了
満足度★★★★
歌穂さん、絶品!!
島田歌穂さんが、コメディ女優として達者な方なのは、「ダウンタウンフォーリーズ」などで、百も承知なのですが、改めて、その超絶演技に、呻りました。
ストーリー的には、かなりデフォルメされた内容なので、生真面目に受け取ると、どうなのかと思う部分もありますが、コメディなんだから、キャラクターに異を唱える気分には、なりません。
芸達者な方が揃ったコメディは、とにかく、世の中の憂さ晴らしには最適!
楽しい2時間弱の観劇タイムを満喫しました。
吉例顔見世大歌舞伎
松竹
歌舞伎座(東京都)
2016/11/01 (火) ~ 2016/11/25 (金)公演終了
満足度★★★★★
ニ左衛門さんの至芸に酔う
成駒屋さんの襲名公演以上に、もう一度、ニ左衛門さんの綱豊卿を拝みたくて、夜の部を観劇しました。
何度も、観た御浜御殿ですが、拝見する度に、綱豊のキャラクターが確立される様に圧倒されます。
それに、本当に、真山青菓の台詞劇の巧みさには、その都度、舌を巻くばかりです。
一時期、歌舞伎役者としての演技がふら付いた感のあった染五郎さんの助右ヱ門も、見事に復活されて、安堵しました。
肝心の、芝翫さんの「盛綱陣屋」の方は、幸四郎さんの台詞が籠り、3階席にまでは明瞭に聞こえなかったのが残念でした。
そのため、周囲の席の方々も、左近君の登場までは、眠くなったと、異口同音に話していました。
成駒屋への掛け声以上に、「高麗屋!」の掛け声が、連発されるのも、ちょっと考え物だと思えてなりません。
ミュージカル★マーダー・バラッド
ホリプロ
天王洲 銀河劇場(東京都)
2016/11/11 (金) ~ 2016/11/27 (日)公演終了
満足度★★★★
キャスト陣はベリグッドなれど
何となく、サラの行動に嫌悪感を感じて、舞台の世界に、のめり込めない自分がいました。
でも、4人の実力者揃いの歌いっぱなしのミュージカルには、ワクワクするもう一人の自分もいました。
舞台上の客席の方々、ハラハラしないのかと、気になってしまいました。(笑い)
サラの人格には、疑問を感じますが、サラ役の平野さんの熱演には圧倒されました。
橋本さんのトム、以前よりスリムになられて、益々魅力的。
妻の裏切りを知って歌う歌に説得力があり、涙が出そうになりました。
最後が、どういうことになったのか、ちょっとわからなかったのですが、アフタートークがあったお蔭で、腑に落ちて幸いでした。
歌だけで、台詞のないミュージカルなので、もう少し、歌詞が明瞭に聞こえると、理解しやすいのにと、残念に思いました。
はまる人は、何度でも、リピートしたくなる作品だと思いました。
るつぼ
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2016/10/07 (金) ~ 2016/10/30 (日)公演終了
満足度★★
消化不良なるつぼ
以前、確か劇団昴の公演を観た記憶があるのですが、その時程の衝撃は全くありませんでした。
出自の異なる役者さんが混然としていて、演技の姿勢もマチマチだし、中には、役の意味を理解して演じていらしゃるか不明な方も何人かお見受けしました。
シアターコクーンという、劇場性からしても、この上演は、不似合いな作品だったように思います。
大変、時代性を超えた、深刻なテーマであるにも関わらず、1幕はあまりに退屈で、何度も、船を漕いでしまいました。
この作品は、もっと役を掘り下げた演技をされる集団で、上演されるべきではと感じました。
魔女狩りの怖さは、いつの世にもありますが、その本当の怖さを、伝えられる作品であってほしかったと残念でなりません。
フリック
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2016/10/13 (木) ~ 2016/10/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
大好きなんです、こういう芝居
市井の若者の人間模様が秀逸。
ほぼ3人芝居で、同じ職場で働く若者達が、日々の会話の中で、御互いを深く知るようになり、関係性を深めて行く様が、実にリアルに投影されます。
アメリカやイギリスでの上演では、もっと人間描写が、ギスギスした感じなのではと想像しますが、マキノさんの演出は、どこか、日本の人情喜劇風な色彩でした。
木村さん、ソニンさん、菅原さんの、等身大の人物造形が秀逸で、3人とも大好きになってしまいました。
マキノさんは、群像時代劇などより、こういう登場人物の少ない、現代劇の演出手腕は抜群だなあと、嬉しくもなりました。
観客の入りが少ないのが、何とももったいない公演でした。
ミュージカル バイオハザード〜ヴォイス・オブ・ガイア〜
梅田芸術劇場
赤坂ACTシアター(東京都)
2016/09/30 (金) ~ 2016/10/12 (水)公演終了
満足度★★★★★
怖くなくて良かった!(笑い)
柚希さんの退団後の初主演ミュージカルだし、吉野さんと海宝君も気になるし、観たいとは思うものの、何だか、とても怖いイメージがあったので、恐る恐る劇場に向かいましたが、全然怖くなくて、まずはほっと胸を撫で下ろしました。
柚希さんは、女性役とは言え、ボーイッシュな役だから、これなら宝塚ファンの方も大満足でしょう。
何となく、TSミュージカルを彷彿とさせる、人間ドラマ活劇で、観ていて、スカッとさせられました。
海宝君の、更なる進化に、子役時代からのファンとして、惚れ惚れとしました。
横田さんも、あのCM同様、とても素敵でした。
ヴィンセント・ ヴァン・ゴッホ
キューブ
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2016/09/07 (水) ~ 2016/09/24 (土)公演終了
満足度★★★★★
芸術の融合に感涙しました
橋本さんのゴッホと、岸さんのテオの組み合わせを拝見。
これまで、ゴッホを題材にした芝居は、何度か観ましたが、これほど、胸に迫る作品は、初めてでした。
映像芸術と、物語で描かれる画家ゴッホとテオの兄弟愛の悲哀。
ストーリー内部の芸術と、舞台芸術が融合した素晴らしい名作舞台でした。
是非是非、再演を!!
朝食まで居たら?
劇団青年座
俳優座劇場(東京都)
2016/09/08 (木) ~ 2016/09/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
名舞台の王道
津嘉山さんが、役の設定の58歳に、充分見えることが、とにかくひたすら嬉しく思いました。
しっかりとした舞台セット。3人だけの登場人物なのに、いろいろな人物模様を感じさせる、秀逸な脚本。
伊藤大さんの的確な演出。
全てにおいて、一級の出来映えの舞台作品に、辛い数週間の出来事を忘れさせて頂けて、つくづく演劇に親しむ環境に生まれたことに感謝しました。
SHAKESPEARE IN HOLLYWOOD~ハリウッドでシェイクスピアを~
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2016/08/31 (水) ~ 2016/09/14 (水)公演終了
満足度★★★★
楽しめたけれど
鵜山さんの演出に期待大でしたが、もしかしたら、こういう喜劇の演出は、ちょっと苦手でいらっしゃるのかなと感じました。
加藤健一さんのフゥワァとした演技が、とても心地よく、加藤忍さんのパックが、愛嬌があり、大変魅力的。
瀬戸早妃さんは、終始、魅惑的で、素敵な女優さんだなと感嘆しました。
演技力のある役者さんが結集して、楽しい舞台でしたが、やや騒がし過ぎる印象も否めませんでした。
マハゴニー市の興亡
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2016/09/06 (火) ~ 2016/09/22 (木)公演終了
満足度★★★
キャストは良かったけれど
何となく内容的にイマイチ。
「三文オペラ」の出来損ない風なストーリー展開ですが、どうも、あの作品程に、中身が凝縮していなくて、散漫な印象。
でも、山本耕史さんの長きに亘るファンとしては、思いの外、彼の歌がたくさん聴けたのは、ひたすら嬉しく思いました。
中尾ミエさんも、「可愛いベイビー」の時からのファンなので、相変わらずお元気な舞台姿を拝見できて、幸せでした。
遊侠 沓掛時次郎
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2016/08/27 (土) ~ 2016/10/02 (日)公演終了
満足度★★★
浅野さんの休演が残念
子供の頃から、長谷川伸の大フアンの私。
どんな切り口の芝居になるのか、興味津々でした。
でも、何となく肩透かし。
これだけのキャストが揃っているのに、味付け間違えな気がしなくもありません。
それに、この舞台の中で語られたり、演じられたりしている、長谷川伸の作品ストーリーを知らないと、わかりえない部分もたくさんあったように思います。
この日は、浅野さんが体調不良で、休演となり、演出の寺さんが代役を務められましたが、やはり、ここは、段田さんと、浅野さんの一騎打ちが観たかったと、ひたすら残念でした。
いま、ここにある武器
風姿花伝プロデュース
シアター風姿花伝(東京都)
2016/08/13 (土) ~ 2016/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
演出でこうも変わるか!とビックリ
昔観た芝居なのに、しばらくそれに気づかないくらい、趣の異なる芝居になっていました。中嶋しゅうさんは、同じ役だったというのに…。
以前観た芝居は、ひたすら深刻なストーリー進行だったように、記憶していますが、今回の千葉さんの演出舞台は、一見喜劇仕立てでした。
でも、以前観た時は、よその国のお話という他人事気分で観ていたのが、今回は、いろいろ卑近なストーリーだと感じました。
面白くて、共感できて、現実味のある怖さが、ない交ぜになった凄い芝居だと、改めて思います。
それにしても、いつも感心するのは、千葉さんて、重要なキャストでありながら、あんなに的確な演出もできるなんて、超人過ぎます。
BENT ベント
パルコ・プロデュース
世田谷パブリックシアター(東京都)
2016/07/09 (土) ~ 2016/07/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
人間ドラマの深淵
素晴らしい舞台でした。
言葉では言い尽くせない、まさに、芝居を生で観ないと、体感できない、凄まじい舞台作品でした。
出演者の体現力が素晴らしい!
こんなにも、観ていて辛くなる内容なのに、感動がひたひたと押し寄せてきて、演劇の神髄を観た思いがしました。
最後は、予想できました。何となく、「100万回生きた猫」を思い出します。
人によって、捉え方は様々でしょうが、私には、究極のハッピーエンドに感じられました。
グレイト・ギャツビー
松竹
サンシャイン劇場(東京都)
2016/07/02 (土) ~ 2016/07/10 (日)公演終了
満足度★★★
雰囲気は醸し出していました
昔映画で観た「華麗なるギャッツビー」、ずいぶん昔なので、ストーリーの細部は忘れていましたが、観ている内に、映画のシーンが蘇り、それなりに雰囲気に浸れて、概ね満足でした。
大好きな馬木也さんの歌まで聴けて、満足です。
キャスト陣は、主役陣より、コングさんと、木村花代さんの夫婦コンビに、より存在感がありました。
ちょっとだけ登場される岸田敏志さんの哀愁を帯びた独唱も、素敵でした。
ジャージー・ボーイズ
東宝
シアタークリエ(東京都)
2016/07/01 (金) ~ 2016/07/31 (日)公演終了
満足度★★★★★
圧巻のチームホワイト
昔、トニー賞授賞式のパフォーマンスを観て以来、いつか日本でも観られる日が来ることを切念していました。
映画で、観て、来日公演も観て、日本で上演するなら、フランキーバリを演じるのは、中川さん以外考えられないと思っていました。
その夢想していたキャストの他に、海宝さんがボブ役を演じると知って、早くからホワイトチームのチケットを買って、首を長くして、この日を待ちました。
素晴らしい!!期待を遥かに上回る、日本独自の「ジャージーボーイズ」誕生に拍手喝采です。
日本語の歌詞のお蔭で、メンバーの日常と歌がリンクしていたことを実感し、昔以上に、フォーシーズンズの歌が好きになりました。
エリザベート
東宝
帝国劇場(東京都)
2016/06/28 (火) ~ 2016/07/26 (火)公演終了
満足度★★★★★
熟成した花總エリザベートに陶酔
小劇場時代から注目しているソンハさんのルキーニ初日を拝見しました。
成河さん、初日とは思えぬ落ち着きぶりで、狂言回しの役を難なく熟されていて、感嘆しました。
そして、驚くべきは、花總さんのエリザベートが、更に熟成され、円熟味を帯びていたこと!
城田さんのトートは、その存在感が貴重で、お二人のデュエットには、何度も陶酔しました。
佐藤さんの皇帝も、役に深みが増して、素敵でした。
この日の配役は、たくさんの観客に評判が良かったようで、あちこちから「最高の組み合わせ!」の声が聞こえていました。
いつから変わったのか定かではありませんが、枝葉末節が剝ぎ落され、舞台進行がスピーディになって、リピーターには嬉しい濃密な舞台ですが、初見の観客には、逆に、予備知識が必要かもしれないと思いました。