土反の観てきた!クチコミ一覧

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I/me

I/me

ConRary、

シアターブラッツ(東京都)

2011/04/09 (土) ~ 2011/04/10 (日)公演終了

満足度★★★

それぞれの「私」
ある女性の生誕から死までの普通の一生を描きながら、様々な手法によって個人の物語が多くの人々の物語へと普遍化された作品でした。
出生から幼児、小学生~、と人生の様々な段階が誰でも経験するような何気ないエピソードで描かれ、普段意識しない人生のかけがえのなさを感じさせる内容でした。

物語は単純ですが、演出が凝っていました。観客は受付で「出生証明証」と記されたチケットを渡され、水の中にいるような音が聞こえる真っ暗な通路を通って舞台奥から舞台を横切って客席に着くことによって、生まれることを再体験させる導入から始まり、主人公の話すときに同じシチュエーションにおいての異なる内容の台詞が他の複数の役者によって被せられたり、終盤には舞台奥に大きな鏡が現れて客席を写し出したりと、ある特定の「私」ではなく、それぞれの「私」を意識させる意図が感じられました。

ビジュアルが洗練されていて美しかったです。黒い空間に白の円形の床と電気スタンドと多くの椅子と、真っ白な衣装の役者たちが、静謐な雰囲気を出していました。チラシやチケットなどもデザインのセンスが良かったです。

とても手際良くまとまっていると思いましたが、手法に溺れていている感じがあり、感心することはあっても感動はしませんでした。手法が手法にとどまっていて、新鮮なイメージを喚起する力に欠けていたと思います。また、人と宇宙の物語の重ね合わせや、黒子として舞台の隅にずっといる演出家(おそらく)、客席を写す鏡など、既視感があってしかもその前例を超えられていない手法が多かったのも残念でした。演出家のナルシシズムが鼻につく感じが少々ありました。
夕日の赤から初潮に繋がるシーンや、テープレコーダーに記録された人生を巻き戻すシーンはイメージの連鎖が素敵でした。
白い床を地球に見立てるなら電気スタンドを月に見立てたシークエンスがあっても良いと思いました。せっかくプロジェクターで映像を流していたので、鏡ではなくビデオカメラで客席のライブ映像(あるいは客入れ時の録画映像)を流した方が効果的だと思いました。

まだ若い劇団なので、もっとがむしゃらにやっても良いかと思います。センスはあると思うので、オリジナリティーを追求して欲しいです。

8人の女

8人の女

トレモロ

参宮橋TRANCE MISSION(東京都)

2011/04/07 (木) ~ 2011/04/10 (日)公演終了

満足度★★★

女の怖さ
家の主が殺され、同じ家に暮らす8人の女の内の誰が犯人なのかを巡るミステリー作品でした。緊迫した雰囲気の中にもユーモアのある台詞があったり、犯人が分かったところで終わらずにもう一捻り皮肉の効いた展開があったりと、洒落ていました。

したたかさや嫉妬深さなど女の怖さを焙り出した脚本は良かったのですが、演出がいまいち脚本とフィットしていないと思いました。
ずっと会話が続く内容で視覚的に単調になりがちなのを身体表現を用いて変化を与えていたのは良いのですが、作品の雰囲気に合ってないように思いました。いかにもダンス的な音楽に合わせた動きよりも、何回か使われていたスローモーションのようなマイム的な動きの方が適していると思いました。
前半はほとんどずっとBGMが流れていたのは、後半との対比を出すためだったと思うのですが、音量が大きすぎて台詞が少々聞き取りにくいときがありました。

演技も台詞まわしが板についていなくて、噛む場面が何度もあったのが残念です。少女から老人まで幅広い世代の登場人物が出る作品を同年代の役者たちだけで演じるのにも少々無理があったと思います。

初本公演ということで、まだまだな所が多く感じられましたが、原作自体の面白さもあって、楽しんで観ることが出来ました。

森と夜と世界の果てへの旅

森と夜と世界の果てへの旅

デフ・パペットシアター・ひとみ

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2011/04/08 (金) ~ 2011/04/10 (日)公演終了

満足度★★

不思議な世界観
ナイジェリアの作家、エイモス・チュツオーラの小説『やし酒飲み』を舞台化した作品で、呪術的なところもありながら、おおらかさも感じられる世界観をエキゾチックなビジュアルと音楽で描いてました。
この劇団を観るのは今回が初めてだったので毎回そうなのかはわかりませんが、パペットシアターといってもいわゆる人形劇ではなく、人間と人形が舞台上で対等に扱われ、ダンス的表現や演奏もある、複合的なパフォーマンスでした。

物語はやし酒飲みの主人公が、亡くなったやし酒作りの名人の霊に会いに行く冒険譚で、幽霊や異形の生物が登場するアニミズム的雰囲気の中に人間の欲望が描かれていました。

白い床と布の壁に囲まれた空間に、スリットから物の出し入れが出来るようになっているキャスター付きの柱状のオブジェが数本配置されているだけの舞台を、アフリカ原始美術のような色彩豊かな人形や仮面、原色の照明が鮮やかに彩取り、賑やかな印象でした。
音楽もジャンベのリズムが中心となっていて、アフリカ的な感じでしたが、影絵人形劇やガムランの楽器も使われ、インドネシア的な感じもありました。

無理のない動きの中にもオリジナリティが感じられる斉藤美音子さんの振付が楽しかったです。映像で文字が流れる箇所がいくつもあったのですが、タイポグラフィーとしてかなり稚拙な感じだったのが残念でした。ひとつひとつのシーンに無駄に時間を掛けていて、スピード感がなく弛緩しているように感じました。もっとテキパキと展開すると面白くなると思います。

毒見<全日程終了致しました。ありがとうございました!!〉

毒見<全日程終了致しました。ありがとうございました!!〉

味わい堂々

OFF OFFシアター(東京都)

2011/04/05 (火) ~ 2011/04/10 (日)公演終了

満足度★★★

面倒くさい友達
幼馴染みたちの人間関係をちょっとダークで官能的なテイストで描いた作品でした。
お互い「友達」だと思い込むことによって成立している関係が恋愛感情によって捻れて行く様子が数組のカップルのやりとりを通じて立体的に描かれていました。

正直、物語としてはあまり惹かれるところはありませんでしたが、異なる場所でのシーンが同時進行して台詞がシンクロするという流れが何回も現れたり、同じようなシーンが繰り返されたりする、趣向を凝らした構成が面白かったです。

シュールでシニカルな映像が素晴らしかったです。美術(クレジットがないのですが、誰が担当したのでしょうか?)もシンプルながら歪な感じが良く出ていて、同時進行の場面も分かりやすかったです。
ダンスの振付はセンスが感じられず動きも揃っていなかったので、ダンスシーンをやらずに芝居だけにした方が良いと思いました。

作業灯、ラジカセ、あるいは無音

作業灯、ラジカセ、あるいは無音

PLATEAU

北品川フリースペース楽間(東京都)

2011/04/02 (土) ~ 2011/04/02 (土)公演終了

満足度★★★★

有意義なチャリティー公演
震災の義援金を集るために若手からベテランまで色々なダンサー12組が出演する盛り沢山の内容で、和やかな雰囲気の中、5時間があっと言う間でした。
照明は会場備え付けの最小限の器具のみ、音楽はラジカセで流す、という出来るだけ義援金にお金が回るようにするため姿勢が明確で気持ちの良いイベントでした。

おのでらん&ももこん(小野寺修二さんと藤田桃子さん)がいつもながらの不条理でコミカルな雰囲気の作品で楽しかったです。
トリを飾った伊藤キムさんは旧作のソロパートの抜粋でゆっくりとした動きがとても美しく心打たれました。

商店街を行き交う人たちがちょっと立ち止まってガラス越しに中の様子を見たり、隣のカフェが運営を手伝っていたりと、地域との繋がりが感じられたのも良かったです。

廃墟

廃墟

時間堂

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2011/03/30 (水) ~ 2011/04/10 (日)公演終了

満足度★★★★

濃厚な会話劇
50年以上前に書かれた戯曲で、所々に出てくる単語に時代を感じさせましたが、みずみずしい演出・演技を通じて現代にもそのまま通用する内容となっていたと思います。休憩なしで2時間半という役者も観客も負担のかかる結構なボリュームに必然性が感じられ、だれることがなく、特に後半は求心力があり時間を感じさせませんでした。

第二次大戦直後の東京が舞台で、1つの部屋に身を寄せる家族とその周辺の人たちを描いた作品で、様々な立場での戦争の反省と未来の展望についての議論が平行線を辿ってばかりな様子が描かれていて、考えさせられる話でした。

音楽は全く使われず、いくつかの家具と照明だけのシンプルなしつらえが演技を引き立てていました。
会話のトーンのバランスが絶妙で、大声で叫ぶ台詞もはっきり聞き取れたのが良かったです。白熱した議論の最中に議論の輪に入っていない人がする日常的な行動が度々挟まれていて(戯曲に書いてあるのでしょうか?)、単純に熱く盛り上がるのを避けていたのが面白い効果をあげていたと思います。

無い光/変な穴(御来場ありがとうございました・御感想お待ちしています)

無い光/変な穴(御来場ありがとうございました・御感想お待ちしています)

MU

OFF OFFシアター(東京都)

2011/03/24 (木) ~ 2011/04/03 (日)公演終了

満足度★★★

『無い光』鑑賞
中学の同級生たちが事故による臨死体験をきっかけに集まり、口論しながらも生きることに希望を持つ物語。

昨年ル・デコで短編として上演された回を観ていたのでストーリーは分かっていましたが、演技の掛け合いのテンポが良くて引き込まれました。倍近い尺になっても、付け足した感がなく、説得力のある自然な展開になっていました。

ル・デコ版とは役の男女が入れ替わっていたのですが、今回のバージョンの方がはまっていたと思います。切迫した場面にも笑いの盛り込まれていて、単純な泣きや笑いではない複雑な感情が出ていたのが良かったです。
ライターのアシスタント役を演じた成川知也さんの真面目過ぎてコミカルになっている雰囲気が楽しかったです。

BGMなし・照明の変化なしで物語と演技だけで65分間を引っ張って行く求心力はありましたが、欲を言えばもっとインパクトのある要素が欲しかったです。

とても個人的な物語【公演終了いたしました!ご感想お待ちしております!】

とても個人的な物語【公演終了いたしました!ご感想お待ちしております!】

Minami Produce

新宿眼科画廊(東京都)

2011/03/26 (土) ~ 2011/04/03 (日)公演終了

満足度★★★

男性Ver.鑑賞
本を書けなくなった作家のトラウマを、作家が書いた作品を劇中劇として交えた構成で描く、適度に重みのある作品でした。タイトルの通り、「とても個人的な物語」で、ギャラリーの狭い空間での上演に適した内容だったと思います。

劇中的として描かれる物語が選択や決断をモチーフにしていて、考えさせられました。捩じれた同性愛を描いたエピソードは単体としては興味深い内容でしたが、全体の流れとの関連が分かりませんでした。

前半は淡々としていて、後半エモーショナルな感じに高揚して行く流れにいまいち乗れませんでした。物語自体は良かったので、演出でもう少し感情を揺さぶる要素が欲しかったです。
開演前から役者が出て来て、歩いたり本を読んだりする手法はこの狭い空間だと圧迫感がありました。

乱雑でかつ美しい美術が印象に残りました。控えめでありながら効果的な音や照明の使い方も良かったです。

うたのエリア-3

うたのエリア-3

時々自動

イワト劇場(東京都)

2011/03/24 (木) ~ 2011/03/31 (木)公演終了

満足度★★★★

死について
芝居、ダンス、演奏、映像、オブジェなどの断片的なシーンの積み重ねによって「死」というテーマを描いた作品で、一度観ただけでは分からなかったところも多かったのですが、単純に悲しみといった感情に持って行かない不思議な雰囲気がありました。

前半は白を基調にした空間に赤と青と白の衣装と原色の照明が映える、モダンな色彩構成の中でのパフォーマンスでした。同じシチュエーションのシーンをバレエとコンテンポラリーダンスの2人のダンサーが交互に踊る対比が美しかったです。録音された台詞が劇場中の様々な場所に設置されたスピーカーから聞こえてくるのも面白かったです。紙コップを用いた血の表現が素晴らしかったです。

10秒に満たない小パフォーマンスがいくつも続く中間部を経て、後半はベケットの作品をベースにした、芝居の比重の高いパートでした。朝比奈さんと今井さんの白髪のおじさま2人の演技なのか素なのか分からないグダグダなやりとりの裏に潜む寂涼感が印象的でした。
台詞の多くが録音や字幕で、生演奏もいつの間にか録音したものに入れ替わったりと、生のものが記録に置き換わっていく様が人の死の受容のプロセスを感じさせて良かったです。

今回は音楽の生演奏が少な目だったのが残念でした。また80分ちょっとの間に暗転がおそらく20回以上あるので、暗い時間が多すぎるように思いました。

パブの中

パブの中

松之木天辺

原宿キネアティック(東京都)

2011/03/15 (火) ~ 2011/03/24 (木)公演終了

満足度★★★

奇妙な味わい
イデビアン・クルーのダンサーである松之木さんの初の映画監督作品で、ダンサーを中心にしたキャストによって愛のもつれが描かれていました。
パブの中で1人の男が死んでいるのが発見され、その周囲の人たちが証言をするが、内容に食い違いがあって…、と芥川龍之介の『薮の中』のパロディー的な物語ですが、ゲイや女装などのビザールな要素を散りばめ、独特な雰囲気が漂っていました。

同じ空間にいる6人の出演者はお互いに会話することはなく、カメラの手前にいると想定されているインタビュアーに話す形式になっていて、海外のポストドラマ系の演劇によくあるモノローグが続く構成ですが、映像だとクローズアップや引きでビジュアル上の変化があってメリハリがありました。大半はカットなしの長回しで撮られていて、生の舞台のような臨場感がありました。各役が喋り終えた後に歌やダンスのパフォーマンスが入るのが不思議な感じで面白かったです。
ルイ・マル監督の『死刑台のエレベーター』を彷彿とさせる、ミュートトランペットの旋律をバックに屋外の映像から始まり、そのままカットなしに風間るり子(a.k.a.黒沢美香)さん演じるショーガールのダンスシーンに繋がっていく流れが格好良かったです。

出演者のほとんどが本職が役者ではない人でしたが、台詞のたどたどしさが逆にこの作品のドキュメンタリー的な質感に合っていたと思います。
音響上の統一性が感じられない箇所があったのがちょっと残念でした。

ACTION, SOUND,CONFLICT

ACTION, SOUND,CONFLICT

大橋可也&ダンサーズ

SuperDeluxe(東京都)

2011/03/21 (月) ~ 2011/03/21 (月)公演終了

満足度★★★★

ロロと飴屋さんが素晴らしい
ダンス・音楽・演劇の先鋭的な表現者たちによる密度の高いパフォーマンスで、4時間弱があっと言う間でした。

ロロは夏をモチーフにした作品でした。ある夏の日に男女が出会って恋に落ちるという数分間のシークエンスを反復し、そこに彦星と織姫の七夕伝説が重ねられる構成が見事でした。少年マンガのパロディー的な「ピルクルマン」のエピソードがカットアップ的に挿入されて不思議なスピード感がありました。 
アゴラ劇場での前作は迷いが感じられたのですが、今回はベタだけど新鮮で感動的という、ロロ特有の作風が良く出ていて面白かったです。

空間現代+ECD+飴屋法水は空間現代のギクシャクしたビートの上にECDさんのラップが乗り、飴屋さんが電子音を重ねる形の演奏でした。公演2日前に出演が決まった飴屋さんは今回は音だけかと思っていたのですが演奏の終盤にパフォーマンスがありました。2段重ねにしたトイピアノを前に持ってきて、でんぐり返りをしてトイピアノの鍵盤の1つを押すことを繰り返すだけ(飴屋さんに促されてECDさんも途中から参加)なのですが、何とも言えない優しさに溢れていて、見た目は不格好だけどとても美しかったです。

Core of Bellsはスタジオでの練習風景という設定で、演奏と会話を合わせて1つのパフォーマンスになっていました。テーブルを囲んでビールを飲みながらダラダラとした会話が続く中、メンバーの誰かが偽物と入れ替わっているのではという疑惑が持ち上がり、疑心暗鬼になっていく様子がおかしかったです。グダグダな雰囲気の芝居と複雑で激しいプログレハードコア的な演奏(けど、椅子に着席したまま)のギャップが楽しかったです。

大橋可也&ダンサーズは最初にノイズバンドのOFFSEASONと、最後に空間現代との共演でした。静かなムーブメントの奥底に暴力性や鬱屈した感情が垣間見える緊張感のあるダンスでした。客が溢れ返っていてアクティングエリアが狭かったた為か、いつもより小じんまりとした感じを受けました。

とても良いイベントだったので、ぜひ次回も近いうちに開催して欲しいです。

風の子ピュー

風の子ピュー

KUUM17

ART THEATER かもめ座(東京都)

2011/03/17 (木) ~ 2011/03/21 (月)公演終了

満足度★★★★

苦悩する宮沢賢治
宮沢賢治の人生と彼の小説『風の又三郎』を平行して進め、彼の苦悩を描いた作品でした。タイトルやチラシ(上下反転すると別の絵になるイラストが面白いです)はポップな感じですが、実際の舞台はオーソドックスな演出と真摯な演技で、見応えのあるものになっていました。

人の為を思ってしたことが仇になってしまって辛い思いをする賢治を丁寧に描いていて、善とは何かを考えさせられました。『風の又三郎』のパートは賢治の人生に合わせて少し改編されていましたが、ちょっとドラマチックにし過ぎな気もしました。

賢治役の小林肇さんが見た目も賢治っぽく、違和感のない東北訛りでの熱演が素晴らしかったです。賢治以外は1人で2役以上を演じていたのですが、演じ分けが巧みでした。特に久保明美さんが印象に残りました。

2つの物語を交互に進め、また1人2役なので、暗転が多かったのが気になりました。舞台上で着替えるとか、少し抽象的な衣装にして1つの衣装で通すなど、演劇の虚構性を強調した演出にしても良かったような気がします。
あと、音響の音の出入りや定位が雑に感じられたのがもったいなかったです。

あらかじめ

あらかじめ

こどもの城劇場事業本部

青山円形劇場(東京都)

2011/03/16 (水) ~ 2011/03/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

朗らかなスタイリッシュさ
人物の入れ替わりやシーンの反復、小道具の受け渡しなど、様々な手法を通して、夢の中のような脈絡のない不思議で楽しい世界を描いた80分でした。

中心になるのは男が女を殺すという単純な物語ですが、様々なイメージに繋がっていき、時間や空間のスケールを軽々と飛び越えて展開していく様子が愉快でした。舞台の周り全部が客席という環境を上手く使っていて、劇場の外の通路まで効果的に用いていたのが面白かったです。

パフォーマー達が素晴らしいのもちろんのこと、3次元の立体からから2次元の板に変化する家具や、大きな飛び出す絵本など、小道具もパフォーマー並に存在感を発揮していて素晴らしかったです。

暴力的・性的な表現がないスマートでユーモラスな作品なので、老若男女が楽しめると思います。実際、客席にはお年寄りから小さな子供までいて、子供が笑っていたのが、劇場を和やかな雰囲気にしていました。

オペレッタ 黄金の雨

オペレッタ 黄金の雨

ピーチャム・カンパニー

タイニイアリス(東京都)

2011/03/18 (金) ~ 2011/03/28 (月)公演終了

満足度★★★

新宿とお金の物語
4人編成のバンドの生演奏をバックに、「新宿」という地名が生まれた時代を劇中劇を交えた重層的な構成で土臭く熱く描いた作品でした。

中沢新一さんの書いた原作を読んでいないので、どこまで原作に負っているのかは分かりませんが、中野長者の伝説と、新たな宿場町を作って儲けようとする人たちの話をお金を媒介にして重ね合わされた脚本が巧みで面白かったです。
時代劇なのに敢えて現代的な言葉や英語を使っていることには違和感を持ちませんでしたが、所々に現れる様式的な台詞回しが中途半端に感じました。

音楽は、ジャズ、ロック、サンバ、歌謡曲とバラエティ豊かで楽しかったのですが、大半の役者の歌唱力が1曲まるまる聴き続けたいとは思わないレベルだったのが残念でした。実際に水を張った池を中心にしたセットが印象的でした。
眠くなることもなく集中して観ていたのですがタイニイアリスの座布団で2時間40分は辛かったです。

開演前に代表の川口さんが「この震災で日常的な生活の大事さを実感し、劇団にとっては演劇をすることが日常です」というようなことを述べていて、印象に残りました。
開演直前にも地震があったのですが、前説で避難の仕方の説明があり、安心して観ることが出来ました。

解ける/恍ける

解ける/恍ける

セカイアジ

OFF OFFシアター(東京都)

2011/03/17 (木) ~ 2011/03/21 (月)公演終了

満足度★★

レトロな怪奇ミステリー
チラシのイメージからシュールで笑える感じの作品を予想していたのですが、地方の町を舞台にしたミステリーで、古めかしい言葉遣いや怪奇的雰囲気が横溝正史作品を思わせる作品でした。
2人の作・演出によって別々に作られていますが、話が繋がっているので、知らずに観たら1人で書いた脚本に感じるような作りでした。

女3+男1の4人きょうだいを中心に、町に古くから伝わるおぞましい伝説を絡めた物語が繰り広げられ、『恍ける』のタイトル通り、お互いがとぼけてそれぞれの秘密を隠している様子がミステリアスな雰囲気で魅力的でした。

公演1週間前に地震があったので仕方がないとは思いますが、演技がちょっと固くて流れが悪いように感じました。しかし、日に日に良くなりそうな印象を持ちました。
コミカルな状況や台詞のやりとりもあるのですが、笑わせたいならもう少し「笑ってもいいところですよ」とわかる演出の方が良いと思いました。

アレルギー

アレルギー

イデビアン・クルー

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2011/03/09 (水) ~ 2011/03/13 (日)公演終了

満足度★★★

復活
約1年半ぶりの公演は今までと変わらない、人間関係をコミカルに描いた動きとダイナミックな群舞が楽しい作品でした。

中央の畳敷きのスペースを竹の柱が囲う形のステージで、色々な状況におけるコミュニケーションの様子がダンスとして洗練された動きの中で表現されていて、特に気まずい感じの描写が面白かったです。今回はベタに笑いを取ろうとしているで滑っている箇所が多く感じました。
全員でのダンスシーンでは、シャープな動きの中に脱力した感じのポーズが入る、井手さん特有の振付がピタッと決まっていて見応えがありました。

インダストリアルなミニマルテクノから歌謡曲まで幅広い選曲のセンスが良く、曲調と振付がとてもマッチしていました。

もう次回の公演も決まっていて、メンバーそれぞれもソロ公演や監督した映画の公開など、活動が活発化しているので今後が楽しみです。

振付家たちの競演

振付家たちの競演

スターダンサーズ・バレエ団

ゆうぽうとホール(東京都)

2011/03/12 (土) ~ 2011/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

個性豊かな3 本立て
スターダンサーズ・バレエ団のメンバーによる振付作品の3本立てで、鍛えられたダンサー達の身体を通じて、それぞれの振付家の作風の違いを堪能しました。

遠藤康行『Love Love ROBOT 幸せのジャンキー』
今回の3作の中では一番コンテンポラリー寄りな作風で、ゴム紐を用いたパフォーマンスや、パラパラやヒップホップを取り入れた動きなど、意欲的な表現がたくさん盛り込んまれていました。面白い部分が色々あったのですが、バラバラに感じられたので、もう少し統一感が欲しいと思いました。
チェロ、アコーディオン&ヴォーカル、ギター、コンピューター2台によるバンドのエレクトロニカ系の音楽の生演奏が格好良かったです。

佐藤万里絵『HEAVEN SEVEN』
具体的なストーリーはなく、ミニマル/ポストミニマル系の音楽に乗せて男女3人ずつのダンサーがキレの良い動きを繰り広げる作品でした。クラシカルバレエのテクニックを中心に構成されていましたが、照明が床面に描くシンプルな四角形と円形に合わせた空間の使い方がモダンでスタイリッシュな雰囲気を作っていました。
最後のシーンはとても印象的で美しかったので、もっと時間の長いシーンにして、じっくり観たかったです。

鈴木稔『幸福の王子』
王子とツバメの切ない関係をショパンのピアノ曲に乗せてユーモラスな振付で描いた童話的物語で、万人向けな作品でした。パロディー的にいかにもバレエ的な表現をしたり、『ウエストサイドストーリー』やベジャールの『ボレロ』を思わせる要素もあって、楽しかったです。パウル・クレーの絵のような舞台セットも可愛らしくて、童話的雰囲気を盛り立てていました。
街の権力者夫婦の位置付けが分かりにくかったのがもったいなく思いました。

ちなみに今回の公演の収益金は全て東北の地震に対して寄付するとのことです。バレエ団としては大変でしょうけど、観客もこういうときに劇場に来ている後ろめたさを解消できて、素晴らしい決断だと思います。

未来永劫(再演)

未来永劫(再演)

年年有魚

相鉄本多劇場(神奈川県)

2011/03/09 (水) ~ 2011/03/13 (日)公演終了

満足度★★★

しっとりとしたホームドラマ
2007Verを観ました。地方で暮らす、ちょっと癖のある家族の1日がゆったりとしたペースで描かれていました。

3姉妹の内の1人が東京に出ていて実家に戻って来るとか、30歳を過ぎても売れない役者を続ける人など、ありがちな設定の話でしたが、駄目だけど憎めない人たちの何気ない会話のやりとりが面白く、引き込まれました。
殊更に笑わせたり泣かせたりしようとしない淡々とした雰囲気の中、次第に登場人物たちの心情が見えてくる感じが爽やかでした。

大半の役は自然な発声、演技でリアリティがあったのですが、何人かはキャラクターをデフォルメし過ぎていて浮いて見えたのが残念に思いました。

冒頭のシーンでは2011Verの出演者も全員出ていて、2007Verとは大分タイプの異なる感じの役者たちだったので、2007Verとどう違うのか興味を持ちました。

Lust -ラスト [色欲]- 【再演】

Lust -ラスト [色欲]- 【再演】

演劇レーベルBo″-tanz

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2011/03/04 (金) ~ 2011/03/08 (火)公演終了

満足度★★★

手に汗握る展開
少女売春やドラッグなどの犯罪の黒幕を探る物語を中心に描きならがら、3人の少女の切ない関係も描かれた物語でした。
前半は説明的な長台詞が多くて(しかも科学的な専門用語が続出)、入り込みにくかったのですが、緊迫感のある展開に次第に引き込まれていきました。

物語の展開やBGMの使い方がテレビドラマや映画のような感じで分かりやすく、内容としては重いながらもエンターテインメント作品として楽しめました。椅子やテーブルすら使わない、転換のない舞台美術なのに、人の配置や照明で様々な場所がちゃんと感じられました。
「7つの大罪」をモチーフにしたシリーズもので、他の作品とどう繋がっているのかが気になります。

正直、作品としてはあまり洗練されていなくて、演技も野暮ったさを感じるところがありましたが、演劇に対する熱意を感じる舞台でした。
豪華なパンフレットの無料配布や、前説や終演後の挨拶も観客に楽しんでもらいたいという思いが強く感じられて、好感を持ちました。

蝶々さん

蝶々さん

Aux-Sables

THEATRE1010(東京都)

2011/03/04 (金) ~ 2011/03/06 (日)公演終了

満足度★★★

異なる視点からの蝶々さん
プッチーニのオペラ『蝶々婦人』で知られる蝶々さんをエキゾティシズムというフィルターを通さずに、コレル婦人の回想録という形式で淡々と蝶々さんの半生を描いた作品で、ステレオタイプや誇張がなくなった分、地味な仕上がりになっていました。

島田歌穂さんが演じた蝶々さんの可愛らしさ、健気さの中にある芯の強さと、剣幸さんが演じた婦人の凛とした品の良さ、包容力が素晴らしく、印象に残りました。
メインキャストの4人とアンサンブルの6人は安定した歌唱力で良かったです。特にアンサンブルはわらべ歌から讃美歌、モダンな難しいハーモニーの曲も歌いこなしていて耳に心地良かったです。
せっかく歌のレベルが高いのに、似通った雰囲気の曲が多かったのがもったいなく感じました。

また、最初から最後までどの役も同じ衣装で、舞台美術も素舞台に近い舞台上に大きな障子があるかないかだけの違いで、さらに役者もあまり動きがないので、視覚的に単調に感じられました。

丁寧に作ってあり質の高い作品でしたが、プッチーニのオペラと比べると、音楽としてもドラマとしても魅力が感じられないのが残念でした。

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