満足度★★★
奇妙な味わい
イデビアン・クルーのダンサーである松之木さんの初の映画監督作品で、ダンサーを中心にしたキャストによって愛のもつれが描かれていました。
パブの中で1人の男が死んでいるのが発見され、その周囲の人たちが証言をするが、内容に食い違いがあって…、と芥川龍之介の『薮の中』のパロディー的な物語ですが、ゲイや女装などのビザールな要素を散りばめ、独特な雰囲気が漂っていました。
同じ空間にいる6人の出演者はお互いに会話することはなく、カメラの手前にいると想定されているインタビュアーに話す形式になっていて、海外のポストドラマ系の演劇によくあるモノローグが続く構成ですが、映像だとクローズアップや引きでビジュアル上の変化があってメリハリがありました。大半はカットなしの長回しで撮られていて、生の舞台のような臨場感がありました。各役が喋り終えた後に歌やダンスのパフォーマンスが入るのが不思議な感じで面白かったです。
ルイ・マル監督の『死刑台のエレベーター』を彷彿とさせる、ミュートトランペットの旋律をバックに屋外の映像から始まり、そのままカットなしに風間るり子(a.k.a.黒沢美香)さん演じるショーガールのダンスシーンに繋がっていく流れが格好良かったです。
出演者のほとんどが本職が役者ではない人でしたが、台詞のたどたどしさが逆にこの作品のドキュメンタリー的な質感に合っていたと思います。
音響上の統一性が感じられない箇所があったのがちょっと残念でした。