すき焼きと牛鍋のあいだの観てきた!クチコミ一覧

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煙が目にしみる(脚本・演出|堤泰之)

煙が目にしみる(脚本・演出|堤泰之)

ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2025/05/21 (水) ~ 2025/05/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

(笑えた度)5(今感)3(完成度)5

ひょんなことから昔の知人が出演しているのを発見して赤阪見附へ赴く。ミュージカル俳優だったはずだが、さて、こんなに演技の上手い人だっけ?舞台での堂々たる仕事ぶりに感心する。

堤さんといえば80年代半ばに駒小でサーフボーイを観たのが最初だと思うので、もうかれこれ40年。
「夕日が沈む十秒前に水平線に花を投げよう。」
いい歌詞だ。
当時、キッドもスリムもまだあった。音楽系小劇団も昔は層が厚かった。東さんにはペルーの野球という名作があったが、堤さんのサーフボーイもこの作品も野球モチーフ。青春と野球は永遠と一瞬の対比を表現するのに強力な舞台背景だ。

当時の駒場は野田さんが大きな小屋に移ってしまったあとで、関中などがいたものの、ネヴァランが一番のスターだった。
今回の作品はミュージカルでこそないし、テイストも大きく違うが、観劇後の余韻が、あまり変わっていないように思える。音楽の力に違いない。ミュージカルの作り手は皆、基本的にロマンチストなんだと思う。
静かに胸を打つあの感じが、時を経て、蘇る。

ネタバレBOX

笑って泣けるエンターテイメントのお手本。引く手数多の人気脚本で完成度は折り紙付き。演出的にも余計なことを一切していないから、安心して物語に没頭できる。ピアノが奏でるジャズ、散り始めた桜。
「煙が目にしみる」はもともとラブコメミュージカルのMナンバーで、ジャズスタンダードとしても親しまれた。 

Now laughing friends deride tears I cannot hide

So I smile and say when a lovely flame dies

Smoke gets in your eyes.

煙が目にしみると言うのは涙の言い訳、パリ一流のエスプリだ。
芸術は永遠だが、人生は短く儚い。
タバコの煙と火葬場の煙が重なり、言い訳を言う暇もなく、ただただ涙が流れて止まらない。

人生の大先輩に、改めて永遠と一瞬について教わる。久しぶりに本物のプロの仕事を堪能させて頂いた。ありがとうございました。敬意と感謝を込めて。
チョコレイト

チョコレイト

キルハトッテ

小劇場 楽園(東京都)

2025/05/21 (水) ~ 2025/05/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

(笑えた度)4(今感)5(完成度)5

POPにしてドパンク。ダサおしゃれカッコいい。メチャ古臭くて最先端。
愛についての抽象演劇。作品そのものが安易に尻尾を掴ませないファムファタル。

ネタバレBOX

何がいいと言って、すべてが少しずつ足りないところが
たまらなくいい。

愛を扱うなら、もちろん寸止めが一番効くのを狙って演っていて、
すっかり術中にハマっている。

基調はシュルレアリスム。マグリットの絵画のように、具象に見えるシーンの組み合わせで抽象を表現する。
ヒッチコックを想起するようなシーンもあり、かなり古典的な骨格なのだが、表層の部分は
微妙な時代感でイケてるレトロPOP、
セーラー服と詰襟学生服、チョコレイトディスコ、いきものがかり、カラオケで歌うマッキー、
ラウンドワンのスポッチャ、メンタルバランスチョコレートGABA、などなど。

そのキラキラ(?)表層の裏側で、現代商業資本主義が呪文のようにナラティブナラティブ言うせいですっかり胡散臭くなってしまった「ナラティブ」依存の表現を強烈にディスっているように見えるパンクさがどうにもこうにもツボすぎる。

歌も、笑いも、セットも、衣装も、音響も、照明も、演技も、突然のキャラ変も、
「王道中の王道」をカッコで括って100乗したようなマンガ設定も、役者のイケメン度カワイイ度も、歯の浮くようなセリフも、
観覧車も、キスシーン(?)も、歯のオブジェも、天使の輪も、あらゆる要素が寸止めだから、
否が応でももっと観たくてたまらなくなる。
楽園で演っているのもいいね。配置が特殊だから物理的に見えなかったりして、
抽象感が30%くらいアップする。
ラストが輪をかけて最高にミニマムでこれまた、たまらない。
ああ何ということ。次回も絶対行きます。
あるアルル

あるアルル

やみ・あがりシアター

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2025/04/30 (水) ~ 2025/05/06 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

(笑えた度)3(今感)5(完成度)5

この時代にコメディーは文学、もとい芸術たりうるのか。

芸術の死に仮託して、現代コメディーの苦悩と限界について考察した部分が大部分を占める
自己省察系ファンタスティック・ラブロマンス。

こういう無理矢理ジャンルを決めつけてくる系の批評を嘲笑うが如く、色々ゴリゴリと
読みを外してくる演出は、見ていて爽快。オリジナリティーが高い。

芸術を愛し、芸術と死別した男の悲しい愛の物語だが、華美な装飾がコッテリと覆い被さり、
物語に到達するのはわりかし困難である。

ネタバレBOX

前説の段階で、かなり疑わしかった(いい意味で)。
「上演中に携帯を鳴らしちゃった人、知らんぷりしがち。(意訳)』
果たして、これを超えるあるあるが本編に出現するのか。
案の定である。
あるあるそのものよりも、エチュード(風)が面白い。あるあるが
出なくて苦悩するリアルが面白い。現代の袋小路を見事に可視化している。

ひまわりは言わずと知れたゴッホの代表作。それは芸術の象徴(アレゴリー)で、
その死をきっかけにあるあるが袋小路に入っていく。
コメディーはジャンルとして確立、商業ベースにさえ乗っていく代償として、
ありふれて既視感のあるものが増えていく。そこであえて、
人と違った面白さを追求した結果、・・・なものになっていく。
モンティパイソンの時代よりずっと前からの永遠の課題なのかもしれない。
まんなかをちょっと外す。そのちょっとが難しい。
大幅に外すと、アートですね、と言われてしまう。でも、本当はそっちなんでしょ。
アートと死別した男は、そのアートの面影を探して、アートの断片に出会っていく。
仙人の独特の風貌、表情と佇まい、その余韻は深い。

小難しい先人によると、芸術が終焉した後には、多元主義的なアートワールドが花開く。
要は何でもありの時代が続いているのだから、俯瞰すればそれはいいことのばかりようで、
いやいや当事者にとってみれば切実な問題である。そんなアーティストの叫びが聞こえてきて
胸が痛い。

さて、もちろん、いろいろ冒険しているのはコメディ部分だけだから、
演劇の骨格は骨太でしっかりしている。暗転板付からのオープニングの銃声、
アコースティックに奏でるテーマソングのリフレイン、決めるべきところは
見事に決まっている。
仙人をはじめ、スナックのおっさんも、脳外の先生もセフレの彼女も、いやいや全員
キャラが立っていて面白い。うーん、一回りして、やはりキャラに戻るのね。

最後、渾身のMナンバー、転調してからユニゾンにしか聞こえず。
せっかく男女パート分けからの、なのでハモらないの何だかなあって個人的には思ったけど、
エンドロール(後日譚小芝居)後のもう一声で多分ハモってたよね、これこれ。
うーん、最後まで外してくる、よく出来たツンデレだ。満足。
遠巻きに見てる

遠巻きに見てる

劇団アンパサンド

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2025/04/18 (金) ~ 2025/04/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

(笑えた度)3(今感)3(完成度)5

劇団初見。
気負ったところが全然ない。自然体の不条理劇。
笑おうと身構えている人たちから見たら退屈そのものであるかもしれない。
しかしどうだろう、細部は圧倒的に豊かだ。しかも、狙いは別にある(たぶん)。
スノッブに寄らず、普通世界の日常をベースに構築。レトロな舞台美術が最高。
ミニマムで、箱庭の庭園のような世界。

色々、力が入りすぎていた部分を削ぎおとしたのだろう。
ガツンと美味い関東風醤油味は食べ飽きたので、今回は繊細な出汁で楽しむ京料理。
ドラマとははっきり決別した上でのこの路線、作り方を間違うと下手したら何も残らなくなる。
そんなエッジを攻めた佳作。エッジの向こう側に落ちずに、しっかりと出汁の味が効いている。

ネタバレBOX

異世界の扉がロールスクリーンで、その上昇、下降のスピードが
絶妙にゆるく、小気味よい。最初に下降した瞬間がプチ劇的で、多分これだけ
を狙っていたとすれば、相当の手練れ。効いている。
劇的をミニマムにして、それを演劇のように見える一連のものの中に隠蔽しておく。
テクストで賞を獲った人が考えたアンチテクスト。
不条理そのもので「劇」ですらないところを目指している。コンテンポラリーアート。
うーん。やられた。
なんかの味

なんかの味

ムシラセ

OFF OFFシアター(東京都)

2025/04/02 (水) ~ 2025/04/09 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

(笑えた度)3(今感)5(完成度)5

細部の細部に魂が宿る。
役者の力を信じ、不要な演出も説明台詞も削ぎ落としたシンプル・イズ・ベスト。
コンテから作る映像と違ってこれができるのが演劇の味。良くできたドラマの醍醐味。
観客一人一人が別々のポイントにフォーカスできるのは、まさに「何かの」味。
その、細部ひとつひとつには、しっかり別々のうま味がある。

ネタバレBOX

いつの時代だろう。客入れの時からずっと気になっていた。
棚にずらりとトリス瓶。小津の「秋刀魚の味」で笠智衆が通ったバーが「トリスバー」
昭和かなと思いきや、マッチングアプリが存在する世界線の、最近のお話であった。
小津にとってのリアルが、工場の煙突や、軍艦マーチや、サッポロラガーであったように、
この時代のリアルはpinoやユーミンやおいしい牛乳。
小津の時代の、娘を嫁に出す男の心象風景は普遍的でシンプルなリアル。
今の時代はもう少し家族も複雑で、心象風景も一筋縄ではいかないが、
あえて盛っていかずにミニマムに表現することで立ち上がってくる圧倒的なリアル。
pinoは6個入りで4人で分けづらい。
バールとスコップで「殴りに行こうか」ではなく翳りゆく部屋を歌いに行く方が復讐になる。
おいしくない「おいしい牛乳」を使ったシチューが、やっぱりそうは言っても牛乳が入っているのでおいしい。
そして何より、圧倒的な振り幅で表現される松永さんの「母の」演技。源氏名の名刺を渡す、が効いている。大阪のおばちゃんのあるあるエピソードの数々も良かったなあ。

美味しいものを食べるとやっぱり幸せ。普遍的なリアル。色々な味を堪能した観劇の余韻と重なり、
ラストシーンが長時間のストップモーションであったかのように美しい。
 wowの熱

wowの熱

南極

新宿シアタートップス(東京都)

2025/03/26 (水) ~ 2025/03/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

(笑えた度)3(今感)4(完成度)3

シアタートップスで行われる南極の公演に関する演劇。メタシアター。
しっかりした作りで、好感度は高く、人気も頷けます。
今後の一層の活躍に期待です。

ネタバレBOX

メタシアター。
シェークスピアの時代からある古典的な形式。
作り手の意図にはないかもだが、演劇の興行と劇団の深化について深く考えさせられた。
かつて前衛と思われた形式に後続者が現れていつしかジャンルを形成し、
正統といわれる存在も現出する。そういう意味では、この作品は正統
の系譜だと思うし、作りはしっかりしていて飽きさせない。
ゆるい世界線も岡崎体育のMVか、というくらい作り込んであって
しっかりPOPである。
話の構造も複雑に層を重ね、美味しい具材を全部盛り状態。
評価される理由はわかるし、異論はない。が、何かが足りない。
良く言えば伝統的だろうし、悪く言えばありふれている、という感じか。
誰がやっても、どんなストーリーを持ってきても似たようなものに
見えてしまうのがこの形式の宿命だと思うので、これは致し方ない。
個々の、オマージュを多用した映画的とも言えるショット、モチーフはセンスがあるから
形式自体はありふれたもので仕上げれば、もっと細部の個性が際立ったと思うと勿体無い。
小さな小屋で自由にのびのびとやっていた時代から
あれこれ考えて一段階成長した時に、何を得て、何を失うのか。
劇団への問いでもあるし、我々観客一人一人に対する問いでもある。
きっと、客層を入れ替えつつ、劇団は大きくなるものなのだろう。

この作品を支持する人はたぶん、たくさんいる。
客席は笑い声が絶えず、伸び盛りの劇団の熱気を感じた。
(解釈するとは対象を貧困化させること,世界を萎縮させること)
ソンタグはそんなことを言ったが、このレビューもまた然り。
作品は常にあらゆる解釈から自由である。
が同時に、
個々の観客に委ねられているとも言える。
春のお花見桃祭り

春のお花見桃祭り

桃尻犬

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2025/03/19 (水) ~ 2025/03/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

(笑えた度)3(今感)4(完成度)5

「友達たち」 
「友達に戻れたことなんてない」 
「披露宴」 
 
リアルが立ち上がり、細波がたつが、それでも人生は続いていく。
作り込んでいないかのように、さらりと、流れるように作り込んである。
わずかな重さはあり、しっかり手応えを感じるが、重すぎない。
ドラマでは、この加減がとても難しいが、
笑いを交えながら軽やかに越えていく作風は花見の公演に相応しく、とても心地よい。
演技力も見事の一言。人間っていいな、と思わせる力は本物で文学そのもの。
昼なのでソフトドリンクにしたが、
とってもビールが飲みたくなった。これも、計算されたリアル。
久々にモーパッサンの短編が読みたくなって、新潮文庫を買って帰った。

ご町内デュエル

ご町内デュエル

sitcomLab

ザ・ポケット(東京都)

2025/03/05 (水) ~ 2025/03/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/03/16 (日) 12:00

(笑えた度)5(今感)3(完成度)5

ワンシチュエーション、集会所の1室、本物のシットコム。
再演を重ねているだけあり、そもそものホンの力が強い。すれ違いの連続が生む笑い。
劇中劇になっていく大きなウネリが流れるように華麗で圧倒されます。客席は大拍手。
ヤクザ役の石倉さんがウケと攻めの両方でいい味を出していてシビレました。
いいモノを観させていただきました。

電磁装甲兵ルルルルルルル’25

電磁装甲兵ルルルルルルル’25

あひるなんちゃら

駅前劇場(東京都)

2025/03/13 (木) ~ 2025/03/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

(笑えた度)4(今感)4(完成度)4

失礼ながら、初書き込みさせていただきます。
この劇団は老舗ですね。
その昔、猫ニャーが解散しちゃってナンセンス界隈の若者が皆、途方に暮れていた頃、
彗星のように(?)出てきた ゆるナンセンス劇団。
いつかまた、弁当屋になっちゃうのではないかと内心ヒヤヒヤして
いましたが、今のところ大丈夫なようです。
突然ですが、この劇団が続いているのは、「なんちゃら」の力ではないかと
個人的に勘繰っています。
(「あひる」も可愛いですけどね。)
このジャンルの劇団はえてして長続きしない傾向にあリますが、
その一因には、劇団名もナンセンスに寄せてしまって、年月が経つとだんだんと
その劇団名に自分たちが飽きてくるというのがあると思うのですよ。
その点、「なんちゃら」というコトバは一見単なる軽い流行語のようなフリをしていながら、
仏教由来のエバーグリーンなゆるい単語として、時代を超えて強かった。
「あひるほにゃらら」「あひるっていうか」「あひるかもねかーもね」
だったりしたら、とっくに解散していて、今日のこの貴重な公演を
見ることができなかったと考えると、喜びも一入です。
閑話休題。

ネタバレBOX

さて、この公演ですが、文句なしの出来です。
過去にゆるさを褒め称える先人のレビューがたくさんあるので参照してください。
100%シルクのような肌触りのピュアナンセンスに力技の笑いをまぶして、
カカオ75%くらいの大人の甘さに仕上げた一流パティシエの極上スイーツ。
ホンの段階ではたぶん面白くないネタでもきっちり笑いに仕上げる匠の演出力。
客席は私含め数人のオッサンが交互に引き攣った笑い声をあげ、結果笑いが途切れない感じ。
そしてクライマックスの「歌う」が劇的。最後にこう来るか。これこそ小劇場空間、カタルシスそのものです。
ラスト余韻のボリュームも完璧。

配信でも観られるようです。便利な世の中になったものです。
金曜日から

金曜日から

排気口

千本桜ホール(東京都)

2025/03/05 (水) ~ 2025/03/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

(笑えた度)5(今感)4(完成度)4

クール。
ウェス・アンダーソンの映画のようなシックで乾燥した世界観と
演劇ならではの湿度感が奇跡的に両立した舞台。

(続きはネタバレに。)

ネタバレBOX

研究所の1室というワンシチュエーションで
装置も固定の長机と椅子4脚のみ。
照明も音響も最小限。シンプルの極み。
恋愛のすれ違いとか職場のトラブルとか定番の
シチュエーションギャグを完璧に作り込みながら、なお
孤高のクールさを保っているのは、
随所にこれでもかと仕込まれたナンセンスの純度が高く強度が
強いからに違いない。じわじわ来るタイプの笑い。
永遠に笑っていられる。
抽象演劇は観客の数だけ解釈の幅があるので楽しみ方は
人それぞれ。ドラマの断片が刺さる人もいるだろうが
私は笑っているだけでいい。それで十分幸せ。
蘭獄姉妹の異様な妄想

蘭獄姉妹の異様な妄想

悦楽歌謡シアター

遊空間がざびぃ(東京都)

2025/02/12 (水) ~ 2025/02/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

(笑えた度)3(今感)3(完成度)3

横尾忠則の流れを汲むオーセンティックなアングラ風宣伝美術に誘われてお邪魔しました。
中身もしっかり正統派アングラでしたね。看板に偽り無しです。

(ネタバレ追記します)

ネタバレBOX

このジャンルはうっかり変なことをいうと怒られそうなので、あまり言葉は重ねませんが、フットライトで下から煽る系の全体的に濃ゆい演出はツボでした。私的には、悦楽歌謡シアターというネーミングから立ち上がってくるエログロナンセンス歌劇的なものをイメージしていたのですが、エロなし(?)、グロ少々、ナンセンス多め、歌劇少なめで、若干不完全燃焼でした。世界観は大好きなので次作に期待です。
香水でハモリが上手く成立していて、生ピアノとマッチして聴き心地がとてもよかったです。

(ナンセンスの魂の叫びは、このジャンルにいる人みんなが通る道。大丈夫です、意味はいりません。客席にいた人が、そうそうと、みんなうなずいていた、そんな気がしました。)
家庭教師マミヤ

家庭教師マミヤ

ライオン・パーマ

駅前劇場(東京都)

2025/02/05 (水) ~ 2025/02/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/02/08 (土) 14:00

(笑えた度)5(今感)4(完成度)5

いやあ、ベタですが、ウェルメイドという言葉が自然と思い浮かびます。
役者の皆様が本当に全員魅力的で粒が揃っていて、全てのバランスが心地よく、
あっという間の160分でした。
(ネタバレに追記します。)

ネタバレBOX

作り手の小劇場愛が随所に感じられます。みんな大好き「劇的なるもの」を巧みに配置、
ギターのカッティングによるシーンの展開、高低差を極力抑えたテンションの緩急、
キメのピンスポット、年号を被せていく迫真の二人芝居など、これ、これだよと拳を
握る大好きなシーンが多々ありました。

コメディのセンスは言わずもがなだと思いますが、ワードのチョイスは勿論のこと、
フックを最初に仕込んでからの、引っかけにいく感じがとても上手いと思います。
いろいろありましたが、一例として、小上がりの黄金の間空間にて、
ロードの歌詞をたたみこんできた時には、腹が捩れて死ぬかと思いました。
フックが単なるダジャレというのもくだらなすぎて秀逸です。

大笑いしながら、最後全部ぶち壊れて終末観漂うのかと思いきや、まさかのハッピーエンド。
最後の最後でバートバカラックの名曲。泣きそうになりました。
ありがとうございました。
不正に集めたベルマークで

不正に集めたベルマークで

ドアとドアノブとドアノブカヴァー

OFF OFFシアター(東京都)

2025/01/31 (金) ~ 2025/02/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/02/01 (土) 14:00

(笑えた度)4(今感)4(完成度)4

今回初めて伺いました。下北沢にて第93回天狗まつりが執り行われるめでたきこの日にこのような機会を頂けて光栄です。
思い返せばかき氷がついに○○になるシーンを見ていた時あまりに時間の転がし方が天才的だったので、
その昔男子校で垢抜けない毎日を過ごしていた頃に何を思ったか廃部寸前の弱小演劇部に入ってしまい、先輩のダサい芝居に唖然としてこのままではマジで潰れると思い必死に女子高の文化祭を駆けずり回って女だらけの芝居を見まくっていた時のことを思い出しました。
それはさておき、
役者の皆様の緩急自在な顔面パワーと演技力、ベタだけどナイスな西洋音楽、カラフルメリイでPOPなライティング、ナンセンスのアウトバーンを時速65キロで駆け抜ける安定感のあるストーリーテリングなどなどを堪能させていただきました。最後になりましたが、個人的にジワジワきたポイントを3点だけネタバレに書かせていただきまして、私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

ネタバレBOX


日光に徳川埋蔵金がないことを、鬼怒川で気付く。
猿3匹分の性欲。
窓閉めマイムをリフレインする。
19→

19→

劇団サンカヨウ

スタジオ空洞(東京都)

2024/12/28 (土) ~ 2024/12/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

(笑えた度)1(今感)4(完成度)4

良かったです。機会があれば、また。

ネタバレBOX

内側と思っている何かと、外側にある自分との
関係性をめぐるオムニバス3編。
友達関係と自分。
夢の中の登場人物と自分。
見えている世界と見ている自分。
最後の自分が、観客自身である点で、構成が秀逸。
(もう客席にはあなたしかいない。)

舞台上のテレビは砂嵐。つまり内側はない。
舞台と客席がフラットな空間を生かし
テレビの直接外側は観客席なので、
内側と外側の話なのね、と観ていると
ああ、外側はやはりワタシなのね、ていう作り。
森林伐採に気を取られはしますが。

客入れあたりの空気感は「旗揚げ公演」を感じましたが
内容は正統派の佇まい。演技も劇作もなかなか。
先人の足跡をいろいろ吸収されているんだろうなあと想像。
これからが楽しみです。
お経でダンスするシーンが印象に残りました。
衣装もいいですね。
君がくれたラブストーリー2024

君がくれたラブストーリー2024

シベリア少女鉄道

赤坂RED/THEATER(東京都)

2024/10/30 (水) ~ 2024/11/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

(笑えた度)5(今感)4(完成度)5

見ていなかったので再演お邪魔しました。
安定の完成度。鬼の構成力。
一連のこれとかあれを構築してこれだけの完成度で仕上げる
変態的な熱意と努力に涙が止まりません。
今年のM−1の決勝で、審査員のノンスタイル石田氏が
トム・ブラウンを評して、
普通の漫才では笑えなくなってしまった人を
救済するための避難所的な言い方をしていたけれど、
シベ少はまさにそんな感じ。お笑いでも
ナンセンス喜劇でもなく、
あえていうと「シベ少」というジャンルであり、
間違いなく現代演劇界の極北に位置し、唯一無二なのだが、
知らない人は全く知らない。それでいいのです。
それがいいのです。アートの極北って、そんな感じですよ。きっと。
これ以上人が殺到して、チケット取れなくなっても困るし。
最初に見たのは、王子小劇場、笑ってもいいと思うの再演なので、
随分昔ですが、私的には
初めて見たシベ少で受けた衝撃を超える観劇体験は未だに
ありません。もう20年も経ったのか、という感慨とともに。

デウス・エクス・マキナ 〜完璧な首相〜

デウス・エクス・マキナ 〜完璧な首相〜

げんこつ団

小劇場 楽園(東京都)

2024/11/13 (水) ~ 2024/11/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

(笑えた度)4(今感)3(完成度)4

本当に楽しませてもらった。幸せな時間だった。
ベテランの味がある。
演劇についての話である点も胸熱だ。
ナンセンス。
いい響きである。
ナンセンスについて、
愛を持って語りたいが、今はナンセンス愛を
口にする人々もめっきり減ってきた気がしている。
80年代後半にナンセンスをやっていた少しだけ
顔見知りだった人々(先輩方ね)は
就職したり蒸発したりで次々と消えていった。
静かな演劇ブームが来て、居心地の悪さを感じていた。
そんなバブルが弾け飛んだ直後の90年代初頭から
この劇団が30年続いているというのはまさに偉業であり
心から敬意を表したい。

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