あるアルル 公演情報 やみ・あがりシアター「あるアルル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    (笑えた度)3(今感)5(完成度)5

    この時代にコメディーは文学、もとい芸術たりうるのか。

    芸術の死に仮託して、現代コメディーの苦悩と限界について考察した部分が大部分を占める
    自己省察系ファンタスティック・ラブロマンス。

    こういう無理矢理ジャンルを決めつけてくる系の批評を嘲笑うが如く、色々ゴリゴリと
    読みを外してくる演出は、見ていて爽快。オリジナリティーが高い。

    芸術を愛し、芸術と死別した男の悲しい愛の物語だが、華美な装飾がコッテリと覆い被さり、
    物語に到達するのはわりかし困難である。

    ネタバレBOX

    前説の段階で、かなり疑わしかった(いい意味で)。
    「上演中に携帯を鳴らしちゃった人、知らんぷりしがち。(意訳)』
    果たして、これを超えるあるあるが本編に出現するのか。
    案の定である。
    あるあるそのものよりも、エチュード(風)が面白い。あるあるが
    出なくて苦悩するリアルが面白い。現代の袋小路を見事に可視化している。

    ひまわりは言わずと知れたゴッホの代表作。それは芸術の象徴(アレゴリー)で、
    その死をきっかけにあるあるが袋小路に入っていく。
    コメディーはジャンルとして確立、商業ベースにさえ乗っていく代償として、
    ありふれて既視感のあるものが増えていく。そこであえて、
    人と違った面白さを追求した結果、・・・なものになっていく。
    モンティパイソンの時代よりずっと前からの永遠の課題なのかもしれない。
    まんなかをちょっと外す。そのちょっとが難しい。
    大幅に外すと、アートですね、と言われてしまう。でも、本当はそっちなんでしょ。
    アートと死別した男は、そのアートの面影を探して、アートの断片に出会っていく。
    仙人の独特の風貌、表情と佇まい、その余韻は深い。

    小難しい先人によると、芸術が終焉した後には、多元主義的なアートワールドが花開く。
    要は何でもありの時代が続いているのだから、俯瞰すればそれはいいことのばかりようで、
    いやいや当事者にとってみれば切実な問題である。そんなアーティストの叫びが聞こえてきて
    胸が痛い。

    さて、もちろん、いろいろ冒険しているのはコメディ部分だけだから、
    演劇の骨格は骨太でしっかりしている。暗転板付からのオープニングの銃声、
    アコースティックに奏でるテーマソングのリフレイン、決めるべきところは
    見事に決まっている。
    仙人をはじめ、スナックのおっさんも、脳外の先生もセフレの彼女も、いやいや全員
    キャラが立っていて面白い。うーん、一回りして、やはりキャラに戻るのね。

    最後、渾身のMナンバー、転調してからユニゾンにしか聞こえず。
    せっかく男女パート分けからの、なのでハモらないの何だかなあって個人的には思ったけど、
    エンドロール(後日譚小芝居)後のもう一声で多分ハモってたよね、これこれ。
    うーん、最後まで外してくる、よく出来たツンデレだ。満足。

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    2025/05/06 22:11

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