実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)3.3(今感)4.4(完成度)5.5(平均)4
北のほうにある高校。
とある日の30分、同じ時間のA面B面、
高校生活の1ページを瑞々しく描く、
令和のジャームッシュ、ミステリートレイン。
あの銃声は、ここでは懐かしのジュディマリ。
「夏のにおい 追いかけて」
北国だからこそ一瞬に感じる、あまりにも短い夏の1日。
ネタバレBOX
ジャームッシュを筆頭とする80年代インディー映画に多大な影響を受けた、アメリカミニマリズム演劇の系譜。
噛み終えたガムのような乾いたコメディと、登場人物たちの抱える、ほんの少しの孤独や哀愁が絶妙なバランスで、
心地よい後味はメランコリック。
北のほうの夏、という絶妙な舞台設定に負うところも大きいでしょう。
ジュディマリのOver Drive(1995)
は男子チームのクライマックス。
流行歌を歌う、は大惨事になる可能性も秘めつつ、
ここではしっかり曲の魅力を全て包み込む演技のパワーで、コクのある余韻を紡ぎだします。
女子チームにおいては、彼女らの平穏な日常の外側で起きたイベントの残響として機能。
一瞬立ち止まるものの、イベントの全貌を知ることはなく、
あくまで自分たちの物語を淡々と続けて「プール」へと旅立ちます。
意味は、ない。
夏だから。
その一瞬の邂逅と決別が、短い夏のアウトロを永遠に脳内再生させるのです。
ああ、いいお話だったな。
実演鑑賞
満足度★★★★★
(笑えた度)5.15(今感)4.12(完成度)5.15(平均)5
短編5編@武蔵野芸能劇場。
小屋が広すぎ感があったけど、集中して観ることができました。
ネタバレBOX
『私があなたを好きなのは、生きてることが理由じゃないし』
堂島孝平「俺は、ゆく」。涙なしでは聞けないマスターピース。
この曲は2014年だから、2017年のこの作品はインスパイア、あるいはトリビュートに近いのかな。
「この体が燃え尽きるなら 魂に君を焼きつけよう」
指パッチンで時を進めても、彼女が新しい人生を始めてくれないのが、切なすぎる。
余談ですが、YOUTUBEにテイチクの公式として「俺は、ゆく」のMVが上がってますが、
かの名脚本家バカリ先生が名演技をされていて圧巻です。
『Yankee Go Home(ヤンキー母星に帰る)』
現代詩。
無から無限大を生む。
小劇場の基本に忠実な、ブルックの何もない空間や寿限無を想起させる傑作。
ノアールでコントでSF。
『ミセスフィクションズの祭りの準備』
大宮さんの熱演。昆虫図鑑はあいうえお順だったのか。
些細なことで立ち止まり、何もなせないまま、何者にもなれないまま時は過ぎていく。
最近で言うと、燃え殻さんのあなたに聴かせたい歌があるんだ、みたいな。
ピュアで普遍的な、人生のありよう。
『ミセスフィクションズのメリークリスマス(仮)』
バックステージもののブルジョワジーシットコム。観劇料は10万円。
大正時代の香り。衣装が豪華。
王道の、華やかに見せて裏が悲惨という味付けがGOOD。
『ハネムーン(仮)』
ラストの一人で見栄を切ってからのカーテンコールの流れがすごくいい。
実演鑑賞
満足度★★★★★
(笑えた度)5.15(今感)4.12(完成度)5.15(平均)5
久々の殿様。え、下北だっけ?新宿に行きかけて気づく。新宿のイメージしかない。
本日は名作はりこみの再演。調べたら初演も駅前でしたね。勘違いしてました。
高度のテクニックによってウェルメイドの警察ものエンタメストレートプレイをほとんど完璧に装った脱力系ナンセンスコメディ。
え、そうなの?
ネタバレBOX
そうなんです。
深い人間ドラマ、テーマ、情緒、思想、、、一切なし。事件の解決も、あるようでなし。
アンバーで部屋の中照らしちゃったりして、なんか、あるかなーと一瞬思わせなくもないけど、、、、、、一切なし。
根底を流れているのは、中毒性のあるグルーヴで観客を包み込む、いい意味でとてつもなくだらない虚無。
リアルで完成度の高い脚本、過不足なく基本に忠実な演出、立ちまくったキャラ、人間の心のヒダまで表現してみせる卓越した演技、エンタメとして素直に観ても、みんな掛け値なしの一級品なところが震える。
ドラマ成立偽装の反作用としてエッジの効いた笑いがごく少量に抑えられているせいで、次いつ来るかいつ来るかと飢餓状態になってしまう。
ところどころ炸裂する純度の高いナンセンスはしっかり素材に溶け込んで、味変のアクセントに昇華しているあたりがプロのシェフ。
燻し銀の貫禄。いやあ、良かったです。
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)4.12(今感)3.09(完成度)5.15(平均)4
かなり意外なことに、ド直球、ピュアなラブコメジュブナイル。
高校生の、あの時期の、「あれ。」
「あだち充の漫画じゃないんだから」セリフにもあったけど、
高校生カップルが告白して、同棲するまで。
ネタバレBOX
ひねりの効いた告白シーンがまた、なんともよかったのですが、
ここで大展開するのもアレなので、後ほどゆっくり別場所で書かせていただきます。
あっという間に秋も深まってきて、ラブストーリーもじんわりと沁みますが、
まったりとしたおかしみもまた、ヒタヒタと心のヒダに侵食して参ります。
「自分の目に見える範囲の人が傷つかないように」フォーと叫ぶ。
なるほど。
笑えるし、味がある。
「ピーチパイって先生のことじゃないんですか」
たとえピーチパイと呼ばれても、金のないヤク中の世界の北島のことが狂おしく好き。
そうですね、好きに理由はありません。
ラストシーン、ヘッドフォンの中はサンボマスター。
ド直球で青臭いのに、 何度聞いても泣けてくる。
これまたド直球のラブコメのラストにこれほどまでにふさわしい選曲は他にあるでしょうか。
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)4.12(今感)4.12(完成度)5.15(平均)4
Amazonでポチッた手持ちライトに照らされて、味のある高円寺の地下空間に映し出される全77話の絵巻物、目眩く寓話の世界。
本当に大切なものは目には見えない。
サンテなんとか、「目薬のような名前の作家」(©︎尾崎さん)が書き記した言葉を敷衍した珠玉の名言の数々。
息つく暇もなく繰り出される言葉のシャワーに圧倒される100分
ネタバレBOX
手持ちライトに照らされた呪術的、幻想的な劇空間
役者各人が手持ちしたライトと、スマホからのBluetooth接続での音響操作による圧倒的な空間支配。
劇場内だけでなく、会場の特性により換気のため定期的に入口の扉を開けることによって、外部との連続を取り入れ、日常と非日常が入り交じる呪術的な劇空間を創出。
言葉使いの魔術
ホワイトボードに役者が手書きする文字、時にはヘタウマな絵により生じる詩情。詩人・歌人の土台を思わせる、アフォリズム(警句)、レトリック、言葉の音や連想を用いた複雑な言葉遊びや比喩表現の多用。日本語接続詞などのわずかな独特な表現によって、日常の言葉に詩情が溢れ出る。ナンセンスの原点はほんの少しの違和感にあったのだと気付かされる。
機関銃のように繰り出される過剰なセリフと限界まで体力を使う身体表現
言葉を洪水のように浴びせかけることで、観客は現実から引き剥がされ、演劇空間に放り出される。時には単独で、時にはささやき、時には複数唱和ユニゾンでつむぎ出される言葉たち。アントナン・アルトーを想起させる激しい身体性と非常にエネルギッシュな表現が、引き摺り込まれた観客を捉えて離さない。
抒情的で詩的な世界観と宇宙規模で人間愛を語る文学的態度
ノスタルジー、夢、記憶、そして純粋な愛や孤独を、非常に美しく、時に残酷に、詩的な言葉で描き出す。
個人の孤独や、人々の愛憎を扱いながらも、その根底には人類全体や存在そのものへの問いかけがあり、スケールの大きな文学的態度を示している。
我々はどこにいても、その相互の距離は1光年未満。日本のアングラの原点、寺山からの距離50年は誤差に過ぎない。偉大な作家の精神は、人類の記憶となって、何度でも繰り返して現れるのだろう。
本作「光、一歩手前」では、POPな音楽に彩られて、人類の記憶が現代劇として見事に美しく昇華されている、そう感じた。
実演鑑賞
満足度★★★★★
(笑えた度)5.15(今感)4.12(完成度)5.15(平均)5
ナンセンス吟遊詩人、関村さんによるあひるのロードムービー。
いや、良いっすわ。
あひるが埼玉を逃げ出して、東京で冒険し、埼玉に戻るまでのまったりとした時の流れ。
あひるの一人語りが真っ直ぐに胸に刺さって来て、脈拍があがりました。
危険だな。
ネタバレBOX
劇団の??なのか?テーマ曲。
同メロのリフレインで「東京が見える〜」からの「板橋が見える〜」からの「赤羽が見える〜」で、どんどん埼玉に近づいていく感じ。
マリオが2%だったり、県民の浦和レッズファン率が100%だったりと、キッパリと清々しい感じ。
あひるに当たったスポットがあまりにもツボ。
最後、あひるが食われてしまうのではと、物凄くドキドキしたよ。杞憂でよかった。
アンバーの照明がつくたびに抒情が溢れ出て、ゲスの極みにドカンと射抜かれた中学生のように、心がくにゃくにゃしてどうにかなってしまうのではと思いました。
詩人だよなぁ。
素敵。
実演鑑賞
満足度★★★★
Ahwooo 「すぐやるか すぐにやるなよ かんがえろ(上の句)」
わたしとともに現前×mooncuproof 「キャッチャー・イン・ザ・フトン」
排気口 「海につながる湯船のほうへ」
約30分の短編 3本立て。
ネタバレBOX
Ahwooo 「すぐやるか すぐにやるなよ かんがえろ(上の句)」
(笑えた度)2.06(今感)5.15(完成度)4.12(平均)4
関西の芝居は見慣れていないので新鮮です。
神戸のクラス感を感じました。
コーチ、エルメス、シャネル、ヌテラ、神戸屋、テスラ、などなど。
淡路は外縁なのね。
忙しい会社社長なのにiPhone通知のサウンドオンなのは、少し違和感。
他がリアルなだけに。
わたしとともに現前×mooncuproof 「キャッチャー・イン・ザ・フトン」
(笑えた度)1.03(今感)3.09(完成度)5.15(平均)3
一人語り。お話は刺さらなかったけど、語りの方法論や技術はさすが。
あの、照明に限界のある会場でも小さなディスコライトを用いて空間を押し広げる。
キラキラした瞳も印象的でした。
排気口 「海につながる湯船のほうへ」
(笑えた度)5.15(今感)3.09(完成度)5.15(平均)4
今回はお話がエンタメに寄っていたので、素直に楽しめました。売れる線を狙って来ましたね。
だれ一人笑っていないところで、声出してしまった、、、
親子で苗字が一致するとか、そんなことはどうでもいい、といった爽やかなヌケ感が圧倒的に好みです。
ほんの少しのラブコメ要素がまた、いいですね。
ボケも綺麗に決まるし、大久保さんの存在感!
実演鑑賞
満足度★★★★★
(笑えた度)5.1(今感)4.08(完成度)5.1(平均)5
たしかに、、、、
デンジャラス。
ネタバレBOX
開始から60分ほど、ずっと無音、
ごくわずかしか変化しないオフィス系明るめの地明かりだけ。
ほぼ会話のみであれだけの劇的テンションを持続させるのは並じゃない。
静かな会話劇としての自然でごく普通の流れを、
少しずつ、確実に脱臼させていくバランスが絶妙。
アフタートークの、作家・安藤さんご本人の天然ぶりを見ていたら、
ごく自然にサラサラとあれだけのホンを書いているのでは、と思えました。
なんたる才能!
後半。
カラフルな色が仕込まれたスポットや、ダンス仕様っぽいLEDなどの、
どう見てもハデハデ演出用灯体が見えていたので、
いつ来るか、いつ来るかとワクワクしていたが、
想像の右斜め上を行く、へたうまゆるダンスシーンで大満足。
極めて現代的な不条理劇とスプラッタドタバタゆるゆるB級エンタメの奇跡の邂逅、
とか、
いろいろいえるかもしれないけど、
何を言っても違う気がする。
奇跡の邂逅なのですから
「ありふれていない演劇で世界最強」とでも、
とりあえずは、言っておきましょう。
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)5.1(今感)3.06(完成度)5.1(平均)4
永遠の愛を作品に閉じ込めて。
ホラー風味あるラブコメファンタジー。
再演重ねている作品だけあり、文字通り、笑えて、ちょっと怖くて、ほっこりして、リトルビットキュンキュンして、しんみりして、全てのバランスが心地良い至福の時間。
ネタバレBOX
調布から先は誰も知らない京王線の悲哀、、、
、、、、わかります。
次々繰り出される漫画の世界の、何て豊かなこと!
役者の皆様の総合力というか、歳を重ねたからこその滲み出る人間力を強く感じますね。
メインのお話は文句のつけようのない極上の出来です。
あと、客入れのジャズから始まって、相変わらずの選曲の良さ。
音も光も効果的にしっかり使い切る、舞台作りの巧み。
個人的にはラブコメ定番コマ割りがバンバン炸裂していて大満足でした。
実演鑑賞
満足度★★★★★
(笑えた度)5.1(今感)4.08(完成度)5.1(平均)5
異能で孤高の文学者、モヘーさんによる3人芝居。
ミニマムなマジックリアリズム風味演劇。
ダウナーな日常から出発して、想像もしていないどこか彼方へ連れて行ってくれる、極上の75分。
ネタバレBOX
モヘーさんの抑制の効いた変か普通かキワキワな動き、
わかさんの振り切れた瞬間に輝く異常感、
柿原さんのひたすらリアルな人間の怖さ。
これは、ホラーです。
かたや、笑いも極上。
米津Lemonがかかった瞬間に爆笑。
音入れで笑いをとる凄み。
サカナ新宝島もドンピシャ。
いやー、絶妙なとこ、ついてくるなー。
細部がじわじわくる。オフビートな笑い。
ナポレオンダイナマイト、インスタント沼、
最近だと超絶異才竹林亮のMondays、みたいな。
諦めていた夢を再びみるのは、地獄の1丁目なのか?
いっとき芸道に片足を踏み入れし者、大多数に訪れる、圧倒的なリアル。
Mondaysでは、夢の再チャレンジの結末はよくあるハッピーエンドではなく、ビターエンド寄りのフラット。
現実はそんなもの。
考えようによっては、そんな宙ぶらりんなリアルは、逆に極めてビターな夢のあとさき。
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)3.06(今感)4.08(完成度)4.08(平均)4
The story of style。フィクションのスタイルに関するメタフィクション。
海のものとも、山のものとも。
意味不明? ま、あんまりネタバレできないし、、、、
ネタバレBOX
どこまでがネタでどこまでがバレか、判然としませんが、、、
書いちゃいけなそうな核心は外して、、、と。
念の為、観劇予定の方は以下ネタバレらしきものを含みますので閲覧ご注意ください、と書いておきます。
かの天才、バカリ先生は、某ドラマにてミステリーサスペンスのジャンルを換骨奪胎して、
日常会話劇を経由し、大人の青春群像劇で着地する、という離れ業をやっておられましたが、
こちらはミステリーのジャンルはそのままに、
スタイルを思弁しつつミスリードさせていくというこれまた高度なことを試みておられるように思えます。
主人公は山という作品のスタイル(作風)。
もちろん、スタイルなので作品である山に同化しています。
でもさ、開演前に思うわけですよ、これは、谷だよね、と。
そして当パンを見て、考えを改めるわけです。磯か!!と。
主人公の周りの人物も、磯で登山を演じながら、同時に架空の人物を演じる役を演じるという3重の虚構性。
すっかり海岸ミステリー(?)なのに山岳ミステリーと思わせられているのだ、と思っていたら、
やがて海底が膨大な時間をかけて隆起してきた壮大な時間がふと頭をよぎる。え、本当に山?
ラストシーン。
本当の真実は作品の外側にあって、誰もそれを知らないし、隠し通していた主人公さえ虚構の中の虚構を真実と勘違いしている。
そして、観客に提示されたその真実は、、、観せられていたフィクションは一体何なのか。
ネタバレの元ネタのさらに元ネタはギリシャ神話あたりにあるのではと勘繰っております。
生命循環、あるいはプラトンの輪廻転生。
考えすぎですかね、、、○から生まれて○で▲ぬ。(意味不明)
見えているストーリーは2段落ちなのですが、2段目は鮮やかでいいとして、
1段めはもう少しわかりやすくネタ振りしておいて欲しかったので、完成度マイナス1。
バチェラーコンプリートしてた(かな?)ので、今感プラス1。
役者の皆様の運動量半端ない文字通りの熱演で、低気圧でダウン気味の体にパワーをいただきました。
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)3.06(今感)4.08(完成度)4.08(平均)4
往年の名曲に彩られたウェルメイドのハートフルコメディ。
平均年齢少し高めだけど、ベテランの、燻し銀の味。
演劇を愛してやまない人たちが創り上げる芝居は爽快で、とても居心地が良かった。
ネタバレBOX
ネタとしての買春捜査官。
つかといえば。昔はちょっとやれば大ウケのネタだったけど、今はあまり舞台で見なくなりました。
光陰矢の如し。
ゴースト。ろくろが回る。
これも定番だったなあ。調べたら1990年でした。
こちらはさほど、古くなかったね。一周回ってまったり面白い、というか、なんというか。
この時代のコメディはパンチが効いてるわ。帰ったら裸の銃をまた、観よう。
主人公がかます、渾身のびわ湖くんモノマネ。逆に誰も知らないだろw w
と思ったら、約2名ぐらいが大爆笑してました。
「誰もが知っているネタ」がYOUTUBEになる時代。恐るべし。
いや、でもさ、かなりニッチだよね。正直。
お話の方は、少ししんみりする場面もあったけど、
演劇愛と家族愛に満ちて、ほっこりハートフル。
楽しい時間が過ごせました。
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)4.08(今感)4.08(完成度)5.10(平均)4
コミカルシニカルテクニカル
あなたの人生に関する抽象演劇。
よくできた文学というものは、道化師のような姿でやってきて、しばし笑いがまきおこり、
その後一瞬で豹変して、鮮烈な読後感を残して去っていく、
そんなことを考えました。
ネタバレBOX
(抽象演劇にかこつけて、どんなにピントハズレなことを発言しても、まあまあ許されるかな、と甘えて、ホンも読まず一度見ただけのうろ覚えで勝手な妄想を書かせていただきます)
まず、短編ではない。
それに気づいた時に、1段目の衝撃が来る。
少人数の公演。同一人物が何役もやるのはよくあること。
短編集だし。とわかった上で、その慣性を逆手にとって素直に同一人物が演じているから同一人物だよね、と考えると転換が訪れる。
「ながいみじかーい」と天の声。人生?
第1幕 面接で職務経歴書をミュージカルに仕立て上げる主人公。
チェーン店がマルチの人々でいっぱいの様相は、ジャストな今を照射しているわけではないが、今に続く現代の普遍的な光景。
やり手に見えるダメンズに恋して勝手に失恋。よくある「一人芝居」の比喩を「一人芝居」でやるウィット。
壁を押すバイト。筒井康隆?安部公房?星新一?あるいはベケット?
アイドルも経験し、いい日旅立ちを歌う。「私を待ってる人」「がいる」と歌うが、(実際には)「いない。」
私がいなくても、ミラーボールは回っている。
星の数ほど幾多の職業を経験するが、一つもうまくいかない自分の一生。
第2幕 誰ともコミュニケーションがうまくいかない姉の一生。
本人がサンタの砂糖菓子なら、元カレがケーキだったので、姉も何かの菓子だろう。
共食いは流石に出来ず、吐き気がするから。
元カレとケーキが別人なら砂糖菓子と妹が別人であってもいい。
まあ、姉が人間であってもなくても私は妹だし、元カレは父。
でもそういうのは、もはや意味を持たない。合わせ鏡の騙し絵だ。
姉は私の分身で、彼も私の分身だ。だから食べられないのは当たり前なのだ。
思い出の品々を残して、姉は死んだ。
それは自分だ。誰ともコミュニケーションがうまくいかないまま。
第3幕 こちらに向かって念仏を唱え、木魚もどきを叩いている。
これはデジャヴ。遺影の目線?
死ぬと腐って臭くなると言っている。匂い?
この会場は皆靴を脱いで、ひな壇の上の客席から見下ろしている。
靴を脱いで、匂いは気になっている。
人間を犬になぞらえるのは、○フトバンクのCMで慣れっこになっているし、、、
死んだのは観客である自分たちだと感じる瞬間が訪れて、2段目の衝撃が来る。
葬儀の方法論を舞台縦横に仕込まれた呼び出しチンベルを鳴らしながら考察。
チーンていうのはさ、これって、まんま仏具だよね。
自分の葬儀を四女が親友と共に仕切る最高の人生のシュミレーションは妄想だ。
姉である自分の遺物を弔う。第2幕とは地続き。
誰の思い出?
仕事も全くうまくいかず、他人との関係も築けないまま一生を終えたのは誰だ?
ラストシーン、朝になり、地明かりがつき、キャストが入り口から公道へ出ていく。
あの入り口の向こうには何があるのだろう。
地明かりの白色を背景にして来世への案内カウンターにバカリズムがポツンと座っている姿が脳裏に浮かぶ。
そして、数分後に私たち観客は間違いなくあそこから外へ出ていく運命なのだ!
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)4.08(今感)4.08(完成度)4.08(平均)4
一人のアニメ声優がデビューしてから、国民的アニメの人気声優になるまでの物語。
朝ドラ風?
当パンに「物語」と書いてあるから、きっと物語なのでしょう。
ネタバレBOX
いやあ、かなりオーセンティックでレトロでPOP寄りな初期のナイロンみあるナンセンスコメディとして見ていて、
うん、待てよ、SSで横から煽ったりしてるし、
ひょっとしてガチで語ってる? となり、
タイタニックを見て安心して、なんだ、いいじゃん、と思い直したものの
アフタートークにてやはりガチで語っていたことを知り、完成度マイナス1。
あそこでタイタニック出したら、せっかくの語りが・・・
全てを笑い飛ばしているつもりなら、最高なんだけどな。
(いや、タイタニックそれ自体は最高でした!)
一方、オアシス再結成で世界中が沸きに沸いている今、
ギャラガー愛を炸裂させているので、今感プラス1。
きっと70年代あたりの全盛期少年チャンピオンとか好きだったんだろうな、
と思わせる漫画のカット割そのままの画作りとか、笑いのセンスは好きなんだけど、
物語が侵食してきて、ぶつ切りになるからマイナス1。
実演鑑賞
満足度★★★★★
(笑えた度)4(今感)5(完成度)5
初見だったのですが、うまく言葉が見つかりません。
世の中には恋愛リアリティーショーなるものがありますが、
それのコメディ版、
コメディーリアリティーショーとでもいうのかな。
コメディ部分は殆どがアドリブか、と見紛うばかりのリアル感。演技してる感がゼロ。
いやー、笑いましたし、感心してました。
ネタバレBOX
その昔、深夜番組で、素人のお爺さんを連れてきて、
燃えないゴミと燃えるゴミを分別させる、というのがあって、
真剣に燃えるか燃えないか考えているお爺さんが○ぬほど可笑しくて腹を抱えて笑った記憶がありますが、
その時の感覚に近いですね。
もちろんこれは芝居なので本があるのですが、
限りなくリアルに作り込んであって、
どこかのオフィスを覗きこんでいるよう。
コピー機の使い方というシンプルなワンイシュー、
あれやこれやの試行錯誤で100分のうちの大半の時間を費やすのも感心しました。
本来、私はコメディがここまで完成していれば枝葉のストーリーは不要と思う派なのですが、
シンギュラリティ後の世界は今年後半、
まさに急速に意識下に現れた外せないテーマだと思うので、
それをさりげなく持ってきているところには慧眼を感じます。
実演鑑賞
満足度★★★★★
(笑えた度)5(今感)4(完成度)5
あの時、聞くことができなかった別れの理由を探して。
傍からみればなんということもない、平凡な人生のほんの些細な物語にこそ、
時空を超え、宇宙に届く無限の力がある。
演劇愛に溢れたメタ手法でポップに描き切った、
物語への愛に満ち満ちた、
どこにでもありそうなくらいありふれた、
だけど唯一無二のラブストーリー。
軽妙と重厚、かなり軽妙寄り。
すごくいい。
ネタバレBOX
普段は演劇ではストーリーは追わず、
映画は細かい演技やセリフの一つ一つを追って、
180度違う見方をしてしまうが、
この作品では作者の映画愛に呼応して、
映画の如く鑑賞した。
でも相反して、
目の前の作品は脈々と受け継がれ、みんなに愛されてきた小劇場演劇のあれやこれやのフォーマットの結晶のようで、
懐かしさとか舞台への郷愁とか、いろいろなものが込み上げてきて感無量になる。
物語を溺愛している人と憎悪している人は、
つまるところ同じ表現に行き着くんだなあ、
とかいらないことを考える。
、、、いやいや、言葉が過ぎました。
物語が嫌いな演劇人なんていませんよ、きっと。
パロディ、オマージュ、リスペクト、天才、上等、、、おっと危ない、、、
ラブストーリーのリアリティーは役者に左右されるところが大きいけれど、
ラッパ屋の弘中さん、みしゃむーそさん、角度によって松ジュンと見間違いそうになるタカハシシンノスケさん、
皆さん表情がとてもいい感じ。
猫ホテのガンツさんもとてもいい味。
浅見さんの「前島」役も最高。
某大富豪と一字違いが、w。剛力、w。忘れてた。
そして、猪股さん。一番伝えたかったであろうセリフを自分で言うのは、作家冥利に尽きるんだろうなあ。滑舌が悪くて誰も聴いてない、という設定はきっとご本人の照れ隠し。フィクションへの溢れる愛がワタクシごときにも真っ直ぐに刺さりました。
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)4(今感)4(完成度)5
ステンドグラスが印象的なモダンゴシックな舞台装置を背景に、
市井の人、普通の中学新人教師の平凡な一生と、
同じ時を生きた不良中学生達の青春の輝きと突然の別れ、
そして再会を描いた王道エンターテイメント。
青春アカペラ音楽群像劇。
どんなに平凡な人間でも輝いていた瞬間が確かにあって、
その後の人生がたとえ満足のいくものでなくても、
その記憶を胸にきっと生きていける。
ネタバレBOX
本作品、なんといっても、アカペラによるバトルシーンが見どころなのだが、
トップスの音響設備がグレードアップしていて、音のいいこと!
そのかわり、2NDや3RDあたりが少し音外しても、
クリアに聞こえてしまうのが玉に瑕というか、
素人バトルなので逆にリアルというべきか。
アカペラはリードのロングトーンとベース&ボイパのリズムがなんとかなっていれば、
そこそこ聞けてしまう、ということを再発見。
いやいや皆さん交代しながらのリードVoはさすがに上手くて、圧巻でした。
曲数も多くて大満足。
一方、バッドテイスト・オフビート感満載な疾走感あふれるオープニングから、
ハモネプに夢中になるくだりになると、
なぜか選曲がPOPど真ん中で素直なのが、少し拍子抜け。
もう少し、不良ならではの悪そうな歌も聴いてみたかったです。
とはいえ、高校生にやられるシーンとか、随所に光る演出の巧み。
笑えるシーンも満載で楽しめました。
実演鑑賞
満足度★★★★★
(笑えた度)5(今感)5(完成度)5
別役、ラジカル、健康あたりに端を発する東京の小劇場ナンセンス界隈の、最も正統な後継者であり最強の第一人者、ブルーさんによる渾身のナンセンスコメディ。
円熟の極致。
笑いすぎて痰と唾と変な液体が絡まって呼吸ができなくなり、顔中涙がびしょびしょに溢れ、全身汗まみれになり、記憶がアルプススタンドのはしのはしのはしまで遠のき、晩夏と言うには暑すぎるスズナリの奥の方で脳○寸前まで逝ってしまう。
いやあ、客席は手だれの人ばっかだし、始終引き攣り笑いに大笑い、噛み殺した笑いに満ち満ちていて異様なグルーヴ感。笑いどころがわかっている人たちが揃うと、ここまで心地よいのか、という多幸感とともにトリップ。楽日までに、きっと誰か○ぬ。スカイダイビングではないが、笑いすぎてもしものことがあったらいけないので、全員から誓約書をとらなければ、といらない心配をしてしまうくらいの完成度。
ネタバレBOX
ガチ勢という言葉、聞いたことがありますか、から入ってきた時は度肝を抜かれ、狩人のアメリカ橋を初めて聴いた時以来の衝撃を受けた気がしたものの、知ってるよ、と心の中でツッコむ余裕もあったが、外科医ガチ勢でないから手術を失敗、に展開してからはもうダメ。笑いがとまらない。
ストーリーらしきものがあるがペラっペラで、ほとんどが鋼の強度のナンセンスの放置。ここが最上質のナンセンスたる所以。ツッコむ、とか、重ねるとか、笑いを上書きする手法も用いはするものの、もともとのナンセンスの強度が強いので、テクニック的なものが全て霞んでいくところが、心底震える。
古典的な言葉のずらし、論理のすり替え、変な比喩、おかしな動き、歌う、叫ぶ、話を聞いてない、漢語や単位の違和感といったものからすかいらーくグループにロイホを混ぜる違和感、富士そばを畳み込む力技、備蓄した(正直なところ)の放出といった時事ネタ、唐突な下ネタ、罵倒、形態模写あるある、突飛すぎる不条理キャラ、アルミホイルの近未来感、空から焼きそばパンなどなど、その攻撃力は半端ない。
今回は神がかった役者陣が出演されているので僭越ながら少々コメントをば。
池谷のぶえ…
言わずと知れたブルー作品に不可欠な猫ニャー旗揚げメンバー。この人の狂気のベース重低音が、えもいわれぬグルーヴ感を醸成し、作品を下支えする。名バイプレーヤーとして、映画、テレビドラマ、CM、舞台など出演多数。
大堀こういち…
伝説の人。あのケラさんの健康の旗揚げメンバーでフォークシンガー小象として音楽活動も。まさか生ギターで歌が聴けるとは思ってなかったので大感激。やはりというかなんというか、抜群で味のある歌唱力。
映画、テレビドラマ、CM、舞台など出演多数。
佐藤真弓…
狂乱の90年代後半、コンプラという単語の存在が薄かった最後の黄金期、原恵一が今ではアウトな表現をこれでもかと盛り込んだ傑作アニメを世に放った頃、一方で勢力を増していた静かな人々をガン無視しつつ猫ニャーとともに混沌の小劇場界を牽引した猫ホテの人。日常と狂気を縦横無尽に行き来する元祖ナンセンスコメディエンヌ。本作品における股ぐらぬめり太郎はその本領が余すことなく発揮された世紀の絶品。
映画、テレビドラマ、舞台など出演多数。
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)5(今感)3(完成度)5
4幕4年間の暑くてやるせない夏の記憶。
好転することなく坂を下る一方のざらついた日常をクールに描く。
高度にピュアなナンセンスでオブラートされたかなりビター少しスイートでミニマムなファンタジー。
ネタバレBOX
主人公お椀は母と二人暮らしで、引きこもり。
ぬいぐるみ2人を交え、楽しく暮らす。
パートの母の具合が悪くなり、渋々コンビニバイトを決意するまでの4年間。
芥川賞作家、今村夏子の「あみ子」ほど変わった子ではないが、なんとなく読後感が近い。
お椀の人生はきっとどこかにあるのかもしれない、ということ、
お椀自身はまったく悲しみや不幸とは無縁に生きていること
星を探すラストシーン、夕暮れのアンバーの叙情に導かれ、一筋の希望を感じる。
と、まあ、いつもながら、ここまで書いておいてあれですけど、、、、、、
もはやストーリーはどうでもいいレベルで特筆すべきは、やはりナンセンスの強度。
ところどころ会話の流れで拾われてはいるものの、
ほとんどが単独で繰り出されて強烈なパンチを生む衝撃の強さ。
それをこれほどまでに沢山仕込んでくるとは。
この、笑いの完成度が文句なしの星5です。
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)4(今感)3(完成度)4
ワンアイディアナンセンス演劇。
ネタバレBOX
カリフラワーがブロッコリーに見える、という破壊的ワンアイディアを1分間程度観せるために、残り89分程度かもう少しの時間、演劇をやっている風で取り繕うという確信犯的所業(笑)。
褒めてます。
演劇風部分は、ナンセンスの系譜で、ゲラゲラ笑えるものではなくニヤッとする読後感。笑いの素を置くだけで拾いに行かないのがコメディ作劇と異なる点。
アウトバーンを進む速度が時速30キロ程度まで落ちているので、
暑すぎる夏ですっかり溶けてしまった脳に優しく、まったりと楽しめる。
通好み。
常連さんばかりだと思うが、みんなニヤニヤしていたので、
そういうことなんだろうなあと。
それにしても、こういうの慣れていない人が見たら、どうなのか、
下ネタもやってるし、と不安になるくらいだが、
置いてきぼり余裕な感じが、20度にガンガン冷やした客席温度と相まって盛夏に涼風を感じて清々しい。
ところで、タイトルには堂々と書いてあるし、でも、どう攻めてくるかが楽しみではあったのだが、蓋を開けてみればかなりベタ。
しかしそのベタさをグダグダ芝居の中に置いてきたので、逆にかなり強烈なインパクトになっていたように思うが、個人的には半分以上読めていたので、別のタイトルだったらどういう印象になっていたかとか考えるのが楽しい。