ほしのひと
演劇企画アクタージュ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2025/09/18 (木) ~ 2025/09/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/09/18 (木) 19:30
価格4,000円
2年ぶりにアクタージュの舞台を観劇しました。
当時から比べるとキャストの数も増えていて、前説では新メンバーの紹介もありました!
近年は長く続けられる劇団が減っている印象なので頑張って欲しいです♪
本作は「池袋演劇祭2025」参加作品となっております。
前作「ホシノヒト」は観てませんので、比較はできませんが本公演を忌憚なく書かせて頂きます。
ネタバレBOX
ブレスレットを付けた状態で、主人公の星野那咲が部屋のクローゼットに入ると
「過去や未来へタイムスリップする」というのがメインになっているSF系作品。
彼女の持っているブレスレットや日記帳から、過去に起きた父を巻き込んだ事件について物語は進みます。
伊東さんが舞台上で歌う宮沢賢治の「星めぐりの歌」ですが…とてもチャーミングで素敵でした。
2年前の公演ではカオス感が強くて、全体的に似たような印象の役者が多かったのですが
今回は主役が太陽のように舞台をNASAワールドに引き込み、客演の松井さんやベテラン勢が良い味を出して
まとまった感じの舞台に仕上がっていたように思います。
芝居に関しては、テンポ感は良いものの何回も過去・未来へ行くので、人物相関図が分かりにくい;
観る方にとっては、頭の中で整理しきれない様に感じます。配役が台詞として説明するシーンも見受けられましたが
物語も中盤からスピード感が出てくると、まわりくどいな~と感じてしまいました。
今回は伏線回収が大変でしたが、ウイルスとかDNA、宇宙人などのワードが好きな方はハマる台本だと思います。
紫雲英の記憶
ねむりねこプロジェクト
アルネ543(東京都)
2025/06/04 (水) ~ 2025/06/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2025/06/05 (木) 19:00
価格4,500円
ねむりねこプロジェクトの「紫雲英の記憶」
劇場も富士見台のアルネ543…どちらとも初見の舞台で楽しみにしておりました。
アルネさんは下北沢の「楽園」みたいに座席が分かれていて、どちらで観ようか悩むタイプ。同じ作品でも何回か観たい方にはお勧めかもしれません。
「げんげのきおく」は霊視能力がある主人公侑真が、錆びた刀の鑑定をする所から物語が始まります。
刀から現れた幽霊の正体、神社内で繰り広げられる呪いの意味や過去の記憶など、少しづつ明かされていくサスペンスとアクション要素が込められた作品。
ネタバレBOX
この芝居を観てまず考えたのは、
「劇場の規模」と「脚本の規模」が合ってない?ように感じたこと。
2.5次元っぽい作風…霊能力から現れる式神の存在や陰陽師…1000年の恋物語
漫画から飛び出したような壮大なキャラクター達が、全体的に小さくまとまってしまう感じがします。侍が現れ、子役がいて、殺陣があって、舞台も雰囲気があって良いだけに、売り込み要素はあるのですが…狭い空間にキャストがギュッと詰め込まれ、お芝居の内容とスケールにギャップがあるから、観疲れしてしまう。
場面ごとに一度に配役を出し過ぎる傾向があり、アンバランスでした。
もう少し場転を増やして、配役の数やアナザーストーリーのような展開を入れるなどして調節した方が、観る側も印象に残りやすいかなと感じました。
(芝居の内容は分かりやすかったです)
チョコレイト
キルハトッテ
小劇場 楽園(東京都)
2025/05/21 (水) ~ 2025/05/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2025/05/22 (木) 19:00
価格3,500円
楽園に来ると毎回思う…どっち側に行こうか。今回は上手側にて無事に観劇。
本作は結婚と差し歯、チョコ、少女漫画と分かりやすいキーワードを組み合わせて
主人公を取り巻く恋愛と回想、現実と漫画の登場人物が描く人間模様をコラージュしています。
キルハトッテは初めて観る劇団。見た目も脚本も独創的な世界観。
歯切れの良いボキャブラリーと恋愛漫画にあるような小ネタに掴まれ、クスッと笑みが溢れていました。
(表紙のレトロ感が何とも良い味出してます)
ネタバレBOX
客演含め、どのキャストも個性派なのですが
物語のコラージュが映える時と、何を見せられてるのか分からない部分が多々あります。
中でも「セリフのようなセリフでない会話」を感じる点があり、内容の薄さと共に緊張感がなくなって
まるで身内にしか伝わらない芝居を観ている…初見のお客さまにとっては置いてけぼりになるかもしれません。
物語の落とし方もサラッとしていて、内容が濃いとは思えなかったかな(上演時間のせいではなく)。
好みが分かれるコアな作品です。
「蜘蛛の糸」
Music Play Live
高津市民館ホール(神奈川県)
2025/05/06 (火) ~ 2025/05/06 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/05/06 (火) 14:00
価格3,000円
生憎の雨天でしたが、ノクティーホールの懐かしさも相まって素敵なひと時を過ごしました。
今回は「演劇」というより「コンサート」寄りの公演内容。
木下牧子作曲のオペラではない「語り・歌唱」「クラリネット」「ピアノ」の室内楽小編成作品。
前半は音楽物語にちなんだ、組曲形式の作品を演奏。こちらはクラシックコンサートです。
ネタバレBOX
ソプラノ独唱は、軽めの声質に日本語のディクションが明瞭で聴きやすいです。
クラリネット演奏は温かみのある音色で、木管ならではの柔らかく包む音色が作品全体に重厚感を与えているようにも感じました。カヴァティーナが劇的で良かったです。
ピアノ独奏は、音の数が多く難しい選曲ですが、もう少し主旋律が聴こえてくるとより良かった感じがしました。
休憩時間15分で、後半の音楽物語は40分程度。
ソプラノは語りと歌唱の両方を兼ねるので、胸声に落としたり頭声で歌ったりと案外体力を使うであろう楽曲。天候の悪さも影響したのか、会場は約半分入ったか程度の観客数で少々残念でした。
花いちもんめ
劇団川口圭子
OFF OFFシアター(東京都)
2025/05/08 (木) ~ 2025/05/12 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/05/08 (木) 19:00
価格4,000円
旧満州に渡った一人の女性が、戦後の巡礼旅をしながら当時の記憶を再現した物語。
満蒙開拓の歴史を切り取った川口圭子の一人芝居は、歯切れの良い台詞回しと目力の鋭い表情、台本の役どころにも相まって見応えのある1時間でした。一人芝居は孤独な戦い。それを今回の題材と上手にマッチさせた「花いちもんめ」作品そのものも、文学的で良かったと思います。
ネタバレBOX
最近はダラダラ尺を伸ばしただけで観疲れてしまう作品も多いのですが、
こうした密度の濃い1時間を観て帰る方が、余程充実した気持ちになれますね。
観客の目には舞台の中心にいる劇団「川口圭子」に皆意識が行くわけですから、舞台の魔物に…怖さもあると思う。その中で本公演を観られた甲斐があったと思いました。科白には語り手としての巧みさ、母(鈴)の台詞としての巧みさ、時に滑稽な語り(歌)で強弱をつける巧みさ、作品全体を通して雪の演出や場転の照明・背景など、非常にクオリティが高かったです。
一人芝居としての題材も、戦争を通じて人身売買や息子の死、兵士による残虐な行為など、目に浮かんできそうな表現を用いる事で、他人の感情に訴えかける要素となり、心に刻まれるようにも思う。
いつかの日の
こわっぱちゃん家
アトリエファンファーレ東新宿(東京都)
2025/05/01 (木) ~ 2025/05/05 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/05/04 (日) 18:30
価格4,800円
控えめに言って良い舞台だと思います。
配役に則った個性的な役者陣が、ストレートプレイでしっかり物語を作っています。
本当に公務員として働いてそうな人たち。多様な性の在り方や恋愛観に迷っている人たち。
リアリティがあってドラマを届けている様な…そんなエネルギーを感じました。
だからこそ、何気ない幸せに気付かされた時や大切な人を想う気持ちに共感し涙を誘うのだと思います。今の10代・20代の学生にも観て欲しい…心動かされる上演作でした。
ネタバレBOX
婚姻やら市長選の話をしているのかと思いきや、後半は戦争がはじまり急展開!
この落とし込み方が、物語のテイストとしてどうなんだろう?モヤッとしました。
まるでハッピーエンドからバッドエンドまでを一気に演ってしまった感があります。
嬉し泣き・悲し泣き、、それはこの作品の意図するところでもありますが、端的なので上演中は感情が揺さぶられるけど、帰り道はあまり記憶に残らず…薄っぺらくなってしまうのが勿体ないなと思いました。また小劇場ならではですが、椅子に座布団くらいは欲しいですね。お尻が痛い。
アルカの板
9-States
駅前劇場(東京都)
2025/04/25 (金) ~ 2025/04/29 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/04/26 (土) 14:00
価格4,300円
9-Statesの舞台は3回目。
今回は漁師町と組合によるヒューマンドラマ2時間もの…分かりやすく舞台作りも丁寧。
駅前劇場の両サイドに吊るしたモニターを場転で行う手法はおなじみかな。
まるで実家に帰ってきたかの様なほんわかした物語に、作為的で本質的な問いを投げかけるギャップが最初はドキリとするのですが、3度も観ると徐々に慣れてきました。慣れって怖い笑
本作も個性的な役者陣を迎え、時折クスリと笑みが魅えるBGMと小ボケは健在。
ネタバレBOX
当日パンフレットがQRコードになってました。
経費削減にもなるしエコだけど、A4用紙1枚でも記念に欲しい…というのは私だけでしょうか。
挟まれた他公演のチラシがメインになっている気がして少し残念。
今回の漁協組合の話、以前ドキュメンタリーとして放送された事もある元ネタがありそうです。
東京でコンサル系の仕事をしていたIT系の女性社長が漁業を通じて地方創生を行っていく…経済情報誌やTV放送から知見を得たのかな。ファーストペンギン!も女性が活躍する漁業経営の話だったと思います。最後のシーンの荒木さんと柚の関係が少しもやもや…続きが気になりますね!
メモリーがいっぱい
ラゾーナ川崎プラザソル
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2025/01/24 (金) ~ 2025/02/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/01/26 (日) 15:00
価格4,000円
川崎市市制100周年記念事業「若手演劇人によるプラザソル演劇公演」
記念すべき公演にチケットが当選したので、久しぶりにやってきました。
お父さんがロボット…「どうしてロボットなの?」そんな素朴な疑問を深堀すると出てくる感情の嵐。この単純明快な物語が子どもも大人も楽しめるんです。
スーッと心に沁みてくる懐かしさも感じつつ、個性的な役どころも嵌っていたように思いました。ひねりのない良作です。
ネタバレBOX
「音楽のまち」として知られる川崎ですが、演劇事業も行っているとは初耳でした。
プラザソル…ラゾーナの中にあってアクセスも良し。私が住んでいた頃はここまで演劇が盛んじゃなかったので嬉しいですね。川崎は舞台芸術に最適の環境だと思いました。
「メモリーがいっぱい」は、舞台の奥行に平台で色んな段差を出すことで、物語の進行を円滑にする役目や18人もの役者たちを視覚的に被らせない効果も期待できます。本作は父と娘の出生から結婚後までを描いた作品なので、エピソード設定が多く場転の切り替えを上手に出来るようシンプルな舞台にしているように感じました。
大地はマジックペンで書いたロボ顔と何やら詰め込んだ身体に違和感ありまくりでしたが、不思議と見慣れていく内に受け入れられるように…徹底したロボットの動きでしょうか。愛おしかったです。娘のりつを演じた大山さんは幼年期から成人まで違和感なく観ることが出来キャスティングも良かったです。
何より終幕は緑さんが美味しい所を持って行ったのがずるいですね笑
TWINS!~ひーとライトの冒険~
ミュージカル座
中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2024/12/25 (水) ~ 2024/12/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/12/28 (土) 17:30
価格7,500円
ミュージカル座公演、初観劇でした♪
オリジナル脚本という事ですが、漫才とミュージカルがどんな風に仕上がって行くのか気にしつつ…ラストはしっかりオチもあって、物語の落とし方が綺麗な作品だったと思います。
歌唱とダンスは流石ミュージカル専門という感じ。殆ど素舞台ですが、アンサンブルがきっちりサポートしていて商業演劇らしさを魅せてくれました。
ネタバレBOX
パンフレットが有料だったので、役者の詳細は分かりませんが
一貫して胸声がよく飛んできました。女声もベルトの強さを保ったまま高音まで繋げている所は自分好みだったかなと思います。時折、閉口母音になると声がすっぽ抜けてしまう箇所が何点か気になりました。漫才ネタはそこまで笑かせる程の感性が自分には湧かなかったですが、音楽作りや舞台の魅せ方は流石だなと。今度は名作を観劇してみたいです。
サラマンドラの星空
Jungle Bell Theater
萬劇場(東京都)
2024/10/17 (木) ~ 2024/10/23 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/17 (木) 19:00
価格5,500円
初日・初見の観劇でした。
浅野氏のやりたい民俗学・考古学やミステリーが凝縮されたギャグエッセンスもある2時間もの。
総勢20人以上出る大作なので役名が分かりにくいかな…と心配でしたが、各々配役の個性が際立っていたので問題ナシ。特に遺跡の舞台装置がしっかり組まれているので、上段下段と役者の動きと場転の切り替えもスムーズで考えられているなと感心。
開場から客入りのスピードが早く、劇団人気に圧倒されました。
ネタバレBOX
昔ゲーセンの景品でウーパールーパー入りの瓶をGETして、
水槽を買ってきて育てた記憶があります。黒色だったかな…懐かしい。
本作は、各配役がそれぞれの持ち味で魅せ場を作っているので非常に観やすかったです。
インディージョーンズっぽさ(考古学だから?)や古畑任三郎っぽさ(謎解きだから?)が、やや元ネタ感のある役でツッコミを入れたくなりましたが、それ以上に演じ手から役がちゃんと生きている。
前説も含め、ほっこりした気分で帰宅しました。
ヤマモトさんはまだいる
東京演劇アンサンブル
あうるすぽっと(東京都)
2024/09/12 (木) ~ 2024/09/16 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/09/12 (木) 19:00
価格4,300円
創立70周年記念にベルリン芸大出身の劇作家、デーア・ローアーさんが本劇団の為に書き下ろした世界初演に出会えた事は非常に光栄。音楽監修には国内でクラシック音楽を学んだ事がある人なら誰もが知っているであろう池辺晋一郎氏。台詞の中に、間に絶妙な楽器の効果音。単に大きく盛り上げる訳でもない「品のある」丁寧な音響効果。回転する4つの舞台装置。まさに「アンサンブル」として、優れた芸術の世界を垣間見ることが出来ました。
ネタバレBOX
前衛的劇作家デーア・ローアーさんの作品を観るのは初めて。
まず感じたのは、ドイツらしい哲学的な台詞のやりとり。どのような感情表現で観客側に訴えかけるか…と言う意図よりも、デーアさんの持つ世界観そのままを私たちが見つめている。詩の中で役者が動きを付けるようなアカデミックな系統に向かった作品に感じた。
思わずソーントン・ワイルダーの「わが町」を思い出し、この2時間15分を集中して観るものもいれば、何だかよく分からず寝てしまうものもいるだろうな…と評価が二分する印象。
芝居に関して、役者は非常に注意深く台本と向き合っているように感じました。
台詞で魅せる…という事が性質上難しいので、目線や間の使い方、距離感など色々練りながら創っていった作品だと思います。お客様目線というより、役者自身すごく学びになる舞台だったんじゃないかなと。特に学校で演劇を専攻している人には観てもらいたいですね。
パンフレットは買いました♪
『大洗にも星はふるなり』
ゴツプロ!
「劇」小劇場(東京都)
2024/08/28 (水) ~ 2024/09/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2024/08/29 (木) 19:00
価格4,500円
ゴツプロ青春の会!台風に負けず観劇して参りました。
「江の島」だけど、舞台は茨城県の大洗の「海の家」です。ひと夏の思い出には「恋」がつきもの。
海の家に共に働く「江里子」に惚れこむ7人の男たちが繰り広げる妄想バトルは必見です。
物語の随所に笑いのエッセンスが散りばめられていて、思春期男子が考えそうな想像力を見事に体現してくれていますよ。
ネタバレBOX
舞台となる海の家「江の島」がしっかりと作り込まれていて好印象。
思わずアイスが食べたくなるような、シーズンぴったりのお芝居だったと思います。
キャストも個性豊かな雄雄しいメンツ。癖が強くて、皆ボケるわ騒ぐわで大混戦‼くだらない事で大笑い出来る温かさが魅力的。手紙で江里子に呼び出されたメンズは「誰が江里子と結ばれるか」で彼女への愛をユーモアいっぱいに語りだします。ストッパー役だった弁護士もまさかのキャラ変。配役が持つ理想と現実への対比が上手です。
初見の劇団でしたが、内容はとても分かりやすく雰囲気の良い空間を作り出していたと思います。
脚本に関しては、笑いで盛り上がって熱量が上がっていく半面、妄想・勘違いにピントが当たり過ぎて、微妙な間が生まれてしまったり、独りよがりな演技が長いと観客側も飽きてしまうかな…と懸念点がありました。
ゴシック
風雷紡
小劇場 楽園(東京都)
2024/08/14 (水) ~ 2024/08/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/08/15 (木) 19:00
価格4,000円
真夏の夜に涼しさ際立つ悍ましき物語でした。
キャスト全体のクオリティ。舞台製作・演出も見応えする作品だったと思います。
怪奇的な「ゴシックホラー」をイメージした本作では、会場が「楽園」ということもあり
客席が分断されて舞台が中央にも出捌けできる仕様になっているため、
暗闇のシーンが多い中、空間全体を上手く魅せているな…と言った印象。
ネタバレBOX
良い舞台でしたが、話の内容が分かりやすくクライマックスも想像しやすい。
その分、パンフレットで御厨家家系図を見なくても役者の台詞で容易に想像することが出来た。
ご共感下さる方いらっしゃるかもしれませんが、まるでTVやPCのサスペンス系ゲームを舞台化したような…そんなイメージの物語。全体的なクオリティが高い分、もう少し尖ったストーリー性・場面があっても良いのかなとは思います。
かわいいチャージ’24
人間嫌い
シアター711(東京都)
2024/07/24 (水) ~ 2024/07/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/07/25 (木) 19:30
価格4,200円
10周年記念という事で再々演の「劇団人間嫌い」の鉄板舞台を観劇しました。
配役が等身大で、現代を生きる女の子たちのリアルを生々しくも、上手に舞台作品に落とし込んでいると言った印象。内容がとってもシンプルであまり芝居を観たことがない方にもお勧めです。
日替わり彼氏の存在も、キャストが変わるとどういった変化が起こるのか気になりますね。
ネタバレBOX
Xにも書かせて頂きましたが
メイク術やパーソナルカラー、骨格のタイプやインフルエンサーとしての写実的な感性に触れ、これはお芝居ではなくドキュメンタリー?目から鱗の体験でした。女の子として誰しも意識した事があるであろう「かわいい」は、お芝居であっても共感ポイントが沢山あったはず。和気あいあいとした稽古だったんじゃないかと想像しております。
脚本や演出に関しても捻りだした…と言うより、伝えたい事をストレートに表出した舞台だったので、嫌みがなくスッと心に入ってきます。この世界観が好きな方には嵌ると思います。
カミノコノミカ
劇団さいおうば
シアター711(東京都)
2024/06/13 (木) ~ 2024/06/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/06/13 (木) 18:00
価格3,000円
オイティオ‼ 今年2回目のシアター711。
神の子のミカ…とあるアクシデントをキッカケに、タヤット神教の御言葉が聴こえるようになった修道女のミカ。この「神のお告げ」を聞きつけた信仰者や多信教徒たちの噂はあっという間に広がり、煩悩を引き金に次々と堕落した生活が浮き彫りに。そんな中、戒律を破った修道学院へ異端審問が行われ…。
本作は若い俳優陣のチームワークがよく表れていたと思います。130分の芝居に、笑いのエッセンスを含んだコメディ要素と後半に連れ、宗教問題のシリアスな要素を上手く嚙み合わせて構成された舞台だったと思います。
ネタバレBOX
前半の修道院内のドタバタ劇に関しては、
個人的には物語の進行が、後半と比べてかなり遅く間延びした感じがしました。
異端審問会が現れて物語が加速して行くまでは、もう少しテンポ感を揺らして場転や舞台効果をオーバーに使っても良いんじゃないかな…と感じました。
タヤット教のシスター&ブラザーは同調しやすい役作りなのか…キャラクタは異なる性質ですが本質は似ているように思います。ブラザーオーエンの両極端な演技とブレインの冷徹そうで温かい気質を持った二人が加わる事で、いよいよ作品が尖り始めてきたな…といった印象でワクワクさせて頂きました。
最後のダイバ教からの迫害。ドクタードミーの「死んで欲しかった」が、グサリと突き刺さるパワーワードで、この上げて落としての落差は創り手の上手さを肌で感じられる瞬間でしたね。
本作のキーとなっているシスターミカは、高いトーンでの台詞回しが他の役者と被らないので、とても聞きやすく配役として分かりやすかったです。これからも劇団のご活躍を祈り申し上げます。
マクベス
演劇ユニットキングスメン
座・高円寺2(東京都)
2024/05/14 (火) ~ 2024/05/16 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2024/05/16 (木) 15:00
価格3,500円
W.シェイクスピアの四大悲劇の一つとなるマクベス。
将軍マクベスが妻と共謀して主君を暗殺。王位となるものの、その重圧に耐えきれず次々と錯乱し暴君と化し、最後は貴族や王子らの復讐によって滅ぼされてしまう。
そんな名演目の旗揚げ公演をじっくりと観劇させて頂きました。
往年の舞台・古典作品の概念にとらわれず、演劇の自由そのものを捉えなおす…この意図は、パンフレットの厚さを見ても一目瞭然。主催側の熱い想いが伝わってきました。
また共生社会の形成にも積極的な劇団であり、障がいの有無(近年では特性と言われてきました)に関わらず、意欲ある人のチャンスの場として演劇を通じた社会参加を行う意義は素敵だなと。
以下、感じた事を忌憚なく書きます。
ネタバレBOX
「新しい栄誉は新しい衣服のようなものだ…」
こんなセリフが劇中にあったかと思いますが、文学的な台詞回しの多い古典劇を上演するという事は、その本質や様式を入れた上でどう壊していくか・自由であるかを考えなくてはいけない。
素舞台の劇場で、色んな特性を持った役者陣。それをまとめる演出兼役者。そこにプロフェッショナルさを見出すのは、未だ新しい服が馴染んでいないのと同じこと。
まず、台詞が長いので滑舌や末端の発語の処理が単に場のテンションで終わってしまい、素人感のぬぐえないバラつきが違和感を生み出します。特に長ゼリを自分の言葉として舞台で活かす…というのは、役者自身の能力が大きく左右されますから大変な事だと思います。
個人的にはシェイクスピア劇に拘らず、別の戯曲を扱っても良かったんじゃないかと(内容が難しい)。
またプロジェクタを用いた背景ですが…どう考えても劇作風景にかみ合わない写真が気になりました。背景は朝・夜などを考慮して、あとは照明の変化だけで十分じゃないかと。BGMは突然大きく表れたかと思えば、ミュージカル風の歌唱とダンス…取って付けた感が否めません。
全体的にプリモとプリマのお二人で主な動きの中心を担っていますが、箱が大きいのか視界的には小さくまとまっている印象。かと言って、派手なパフォーマンスは全体を俯瞰すると浮いてしまうので、ここも役者全体の足並みを揃えると言う意味では難しいです。
手話を使ったシーンも良い意味で「間」が生まれて良かったですが、折角プロジェクタがあるので何を言っているのか「台詞の投影」をしても良かったんじゃないかと感じました。
制約があるからこそ、自由が生まれる。
何をしても良い・何を着ても良い…これは私の感じる自由とは少し異なるように観させて頂きました。この団体で多様な特性を持つ役者がどんどん育っていく事を深くお祈り申し上げます。
風と共に去りめ
かーんず企画
シアター711(東京都)
2024/05/02 (木) ~ 2024/05/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2024/05/02 (木) 19:00
価格3,500円
初日公演:シアター711で観劇させて頂きました。
独特なセンスの笑いがツボに刺さる人は結構いるようで、全体的に暖かい雰囲気で見守っていらっしゃる客層だったのかなと。初見の団体でしたが、今回はスカーレット・オハラの出てくる某作品とは全く異なるもので、どちらかと言うと新海監督の「君の名は」から、インスピレーションを受けているのかな?位に感じました。以下、忌憚のない意見を書きます。
ネタバレBOX
ひとつの舞台上に各々4つの世界が作り出されていて、
そこにキーマンとなる主人公が物語の共通点となり、彼の通ってきた人生がパラレルワールドのように交差する…ここで鍵となるのは、どの世界に於いても「2025年に隕石が降り注ぐ」という事実。作り手の考えはワードからまとめても伝わるのですが…いかんせん内容が面白くない。
所々にシュールな小ボケが入るのは良いとして、この4つの物語の中身が薄い感じがします。1時間20分ほどの舞台だったので何とか集中しましたが、2時間このふわっとした内容が続くようだと、お客さまは飽きると思います。もっと色んな要素を詰めて、尖った演出があると良いのに…と言うのが正直なところ。クライマックスに舞台から出て、叫びながら一周回って帰ってくる…あの自暴自棄で病んだ感じを出すなら、他にも色々遊べたんじゃないかなって感じます。
絶望という名のカナリア
甲斐ファクトリー
小劇場 楽園(東京都)
2024/04/23 (火) ~ 2024/04/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
小劇場「楽園」と本作品の「絶望という名のカナリア」
劇中には天国の下りと、巧みな関連付けが上手いです。
上手いと言えば、劇場内の狭い空間を上手く利用した対角線上の舞台と客席。
オムニバス形式にすることで場転の多さをカバーしていて、嫌みのない暗転が良いです。
本公演が10回目という記念に観劇出来ましたが、物語自体は新興宗教や風俗営業など、どろどろしたブラックコメディな内容。
決してすっきりする物語では無いものの(好みもあるので)、お芝居のクオリティとしては惹きつけられるものがありました。
ネタバレBOX
配役の個性が光る舞台。
自殺から宗教、修行と称して殺されかけたり、数学の専門領域を駆使して答を導き出したりと、鈴木カズオの数奇な物語は、観る者に強いインパクトを残します。
それと、カナリヤって黄色いんですね。
勝手に想像の中では白色をイメージしていました(文鳥か)。
世迷子とカンタータ
9-States
駅前劇場(東京都)
2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/04/13 (土) 19:00
価格4,300円
前作「みんなのえほん」から2度目の観劇と巡り合う事が出来ました。
9-Statesらしい陰の部分と日常の暖かさや笑いのエッセンスを取り込んだヒューマンドラマです。
今回はけやき峠温泉にある旅館「湯鳥」で働く従業員、西野海斗の心の葛藤を視覚的に舞台転換や照明などで効果的に表現した当劇団の十八番とも呼べる作品。
今回も出版に関する内容で大きく展開されていく人間模様…序章~終盤に至るまで、少しづつ散らばった言葉のピースが頭の中で嵌っていくのは楽しいです。
20周年おめでとうございました!!
ネタバレBOX
今回の表紙デザインも好みの出来栄え!グッと期待感が高まります♪
役者陣は個性派揃い。各々が色んな色を持ってて分かりやすい。
前回もそうでしたが、チケットがステッカーになっているのもお気に入りだったりします。
個々で観ると舞台セットもテロップも、突然始まる歌謡演出や照明効果も一つ一つ丁寧で
良作なのですが、いまいち2時間10分の公演に没入していく集中力が、私にはなかったです。
これは舞台ドラマとしての日常が、やけに遅く感じて平和ボケしてしまうから?と考えます。
肉付けしている感…と言えばいいかな。過去が深堀りされていき、文芸部との決裂に至るまでの経過が長い。旅館での出来事(小川家のくだりとか)は削って、代わりに小説の内容や魅せ場(旅館らしい歌唱や踊りなどのパフォーマンス)を増やして、観客側の視点を逸らす演出も有りかなと思いました。
ギラギラの月
プレオム劇
ザ・スズナリ(東京都)
2024/04/03 (水) ~ 2024/04/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/04/04 (木) 19:00
価格5,000円
19年前に書かれた故中島淳彦氏の脚本。
劇団も脚本も初見での観劇となりましたが、昭和観あふれる舞台の上で本当に生活しているかのような女優たちの自然な演技。スッと大泉サロンの世界に入り込んでしまいました。
その役の個性や人物描写が色濃く描かれるだけで、他人の心は温かくなったり、興味関心がどんどん湧いてくる。それを見事なクオリティで上手く魅せている作品です。
ネタバレBOX
指定席が舞台の目の前の席…幸運でした。
暗転時は三日月に照明を照らし、畳に陰影をつける演出が良いですね。
大泉サロンの各部屋にも小さな三日月模様がついていて、本作品のタイトルにマッチングさせている様子が見て取れます。この二階の部屋から階段・廊下のスペースで出はけを円滑にしていて、視覚的にも見やすかったように思います。
そして、ハートランドからプレオム劇時代を築いた役者たちの歴史の様な、重みを感じます。
良い環境で芝居が出来るってこういう事なんだろうな…と帰路につく間考えました。