
黒塚~一ツ家の闇
流山児★事務所
ザ・スズナリ(東京都)
2022/05/13 (金) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/05/21 (土) 14:00
古典をベースにした伝奇時代活劇という枠組に人の情と平和への希求を折り込んだ物語は、もろに自分のストライクゾーンど真ん中だったし、衣装も所作も殺陣もよくて、観ていて気持ちよかった。
扇を使った総踊りで始まり、鬼の出るという伝説のある峠を目指す侍二人の会話により物語の背景が語られる。
そのうちに領主である堀家と都の名家との紅花の取引話が持ち上がり、都へ効率よく荷を運ぶため、 バカ息子もとい惣領息子 月之介が鬼退治へと出向くことになる。桃太郎を気取ってお供を連れ、物見遊山気分で出かける月之介だったが……。
古典を下敷きとしていることもあり、ストーリーとしてはある種の定型とも言えそうだけれど、それがバシッとハマってものすごく気持ちいい。なかなかこうはできるもんじゃない。
何より登場人物の造形が見事で、それぞれに愛着が湧いてくる。
過去の因縁により20年後にもたらされた悲劇は、ときに笑いを交えて始まりつつ、しだいに緊張感を増して、見応えのある殺陣を連ねてドラマティックな展開を迎える。
活劇というだけでない、親子の情や復讐による悲劇の連鎖、争いのもたらす哀しみが胸を打つ。最後の陰陽師の述懐と当日パンフレットに書かれた文章。劇中で描かれた、争いが生む庶民の不幸。そしていまも戦争が続く現実を思う。

グリーン・マーダー・ケース×ビショップ・マーダー・ケース
Mo’xtra Produce
吉祥寺シアター(東京都)
2022/05/13 (金) ~ 2022/05/19 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
『グリーン・マーダー・ケース』のみ拝見。
5年前の初演を観たとき、もっと大きい劇場も似合うだろうと友人と話した。今回、天井の高い吉祥寺シアターの空間が虚構性の高い芝居によくハマっていた。それぞれ歪みや過去を抱える登場人物たちの描き出す濃密な物語がじんわりと切なく胸に響いた。

ベランダ
サスペンデッズ
雑遊(東京都)
2022/05/11 (水) ~ 2022/05/16 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
どうしようもない男たち(と女たち)によるシチュエーションコメディに、マスクの下で終始ニヤッとしてしまう。よく練られた戯曲とテンポのいい演出、手練れ揃いの役者陣が個性の強い登場人物たちを生き生きと演じて、あっという間の約100分だった。

花柄八景
Mrs.fictions
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/05/11 (水) ~ 2022/05/23 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
近未来の日本で、ネット上の電脳落語に押され、人が語る落語が衰退していく中、諦念にも似た希望を語る師匠と奇妙な弟子たちとのおかしくも切ないやり取り。劇中に登場する近未来の古典落語(?)や弟子たちの強烈なキャラクターなど遊び心も満載。
観終わってじんわりと温かい物が胸に残る。自分にとって大切な作品がまたひとつ増えた気がした。

君に会いたい
しゅうくりー夢
ザ・ポケット(東京都)
2022/03/02 (水) ~ 2022/03/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/03/05 (土) 18:00
元公安の訳あり刑事を主人公にしたハードボイルドシリーズのスピンオフ。入り組んだ人間関係もわかりやすく描く手腕はさすが。お馴染みのメンバーも初参加の方々もそれぞれに魅力的で人が人をを恋う想いの切なさを堪能した。できればリピートしたかったな。

光垂れーる
ぽこぽこクラブ
紀伊國屋ホール(東京都)
2022/03/03 (木) ~ 2022/03/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/03/06 (日) 14:00
とても面白かった。
23年前の台風被害により廃村同然となった山奥の村で、なぜか死者が蘇り始める。家族との再会や生者と死者の恋模様なども含め、生きること死ぬことの意味を問う作品。
……とはいえ堅苦しい話ではなくたくさんの笑いを散りばめて祭り=祈りの高揚を堪能した。

三月大歌舞伎
松竹
歌舞伎座(東京都)
2022/03/03 (木) ~ 2022/03/28 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/03/19 (土)
第一部『新・三国志』(横内謙介さん脚本、演出は猿之助さんと横内さん)を観てきた。
「人が飢えない、売られない、殺されない国」を夢見る劉備とそれを支える関羽、張飛。骨太な正論が物語を牽引し、さまざまな仕掛けと共に観る者を魅了する。舞い散る花びらを見上げて泣いた。

ジャバウォック【3月2日~3月3日公演中止】
劇団肋骨蜜柑同好会
小劇場 楽園(東京都)
2022/03/02 (水) ~ 2022/03/06 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
面白かった。象徴性とエンターテイメント性、キャラクターの魅力それぞれに見事。これ楽園でやったんだよなぁ。現地で観たかった。キャストが皆さんホント素敵だった。

エレファント・ソング
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2022/05/04 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/05/07 (土) 17:00
見応えのある約100分だった。失踪した医者の行方を求めて、最後に診ていた患者に話を聞こうとする病院長。患者の奇妙な言動に翻病されるうちに……。院長と患者と看護師の3人のみの舞台は、緊張感とある種の切実さを湛えて観る者を惹きつけた。

コーラないんですけど
渡辺源四郎商店
ザ・スズナリ(東京都)
2022/05/08 (日) ~ 2022/05/10 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/05/08 (日) 14:00
面白かった。母と息子を入れ替わりつつ演じたり、時系列通りでなく過去や非現実(?)の場面が組み込まれて進む物語なのに混乱せずに観られたのは、脚本・演出の手腕はもとより3人のキャストの経験と実力によるところも大きいだろう。昨年の配信版のDVDも観たくなった。

ジョン マイ ラブ ージョン万次郎と鉄の7年ー
坊っちゃん劇場
坊っちゃん劇場(愛媛県)
2021/09/02 (木) ~ 2021/10/02 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
この舞台では、万次郎が漂流やアメリカでの生活を経て帰国した後の日本での様子を妻となった鉄と出会いや周囲の人々との交流を軸に描いていく。ヒロインの鉄をAKB48のメンバーが交代で演じ、歌やダンスで賑やかに綴りながら、新しい価値観を日本に根付かせようとした男の意思が胸に響く物語となっていた。
おてんばで縁談など見向きもしない鉄が、因習や偏見にとらわれない万次郎の明るい強さに心を動かされていく様子が瑞々しい。早くに母を亡くした鉄を慈しみ守ろうとする女中おクニの愛情とエネルギー、誠実さと温かさを滲ませる鉄の父、万次郎を引き立てようとした江川様の未来を見据える眼差し。そして地元の期待を背負って万次郎の私塾で学ぶ若者たちや下男となる竹蔵、英語の指導を懇願する福沢ら、万次郎のもとに集った若者たち。鉄の幼馴染 菊野の前半と後半での変化。攘夷論に染まって万次郎を敵視する鷹之丞まで含め、激動の時代に国の未来を思う真摯な若さを感じさせた。変わりゆく時代を象徴するのが、いくつもの言葉であった。民主主義・自由・平等、そして愛。万次郎がアメリカで学んできたのは英語や航海術ばかりではなかった。まだ日本には言葉すらなかったそれらの概念を若者たちに熱く語って聞かせる彼の姿には、鉄でなくても惹かれてしまうだろう。テンポの良い物語を軽快な楽曲やチャーミングなダンスで彩り、エンディングではペンライトが振られる舞台。けれどその核にあるのは激増の時代の片隅で生きた人々の息遣いと骨太なメッセージだった。

セーラー服を溶かさないで
CACHU!NUTS
イズモギャラリー(東京都)
2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
中嶋康太さん作・演出のチャーミングな会話劇。俳優陣も魅力的で、とても楽しかった。登場人物がみなエッチで、不倫劇だけれどドロドロというより(コイツらもうホントしょうもない)と笑ってしまう。そしてしょうもないけどじんわり愛しくなる。そういう物語だった気がする。

ミュージカル「北斎マンガ」
わらび座
菊川文化会館アエル(静岡県)
2021/06/27 (日) ~ 2021/06/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ただひたすらに絵を描き続けた葛飾北斎の半生を、2度目の妻おことや娘お栄、滝沢馬琴らとの関係を軸に描くミュージカル。ポップな歌とダンスに加えてラップやお笑いなどさまざまな仕掛けと工夫の凝らされたステージから、時代を飛び越えて躍動する人々の情熱が観る者の胸に響く。
マキノノゾミさんによる戯曲と演出は、多くの笑いと切実な想いを丁重に描いて幅広い世代が楽しめる作品を生み出していた。時代モノらしからぬカラフルで個性的な衣装やヘアメイク、北斎の絵を大胆に取り入れた美術や工夫の凝らされた小道具等が物語と登場人物の魅力を増した。

利他的な遺伝子たち -unselfish gene-
ポーラは嘘をついた―Paralyzed Paula―
下北沢 スターダスト(東京都)
2021/12/25 (土) ~ 2021/12/29 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
何も起こらない、ただ何かを待つ男たちが会話するだけの舞台なのだけれど、粒ぞろいのキャストにより登場人物たちの個性が際立って面白かった。

ガムガムファイター
佐藤佐吉演劇祭実行委員会
インディペンデントシアターOji(東京都)
2021/08/11 (水) ~ 2021/08/15 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★★
観終わって、深夜の自宅でひとり小さく拍手をした。脚本・演出・キャストそれぞれがバランスよくキレイにかみ合って、描き出された人々の営みが気まぐれな雨音によく似合う。ありふれた人々のありふれた人生がやるせなくてそして愛しい。

Le Fils 息子
東京芸術劇場
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2021/08/30 (月) ~ 2021/09/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
それぞれが葛藤し悩む中、愛情を抱きながらもすれ違っていく。ヒリヒリするような展開を息を呑むように見守った。戯曲も演出もキャストもハイレベルで完成度の高い舞台だった。

ホテルカリフォルニア
劇団扉座
紀伊國屋ホール(東京都)
2021/12/07 (火) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
(なるほど、私戯曲かぁ)と観終わって思った。ある劇作家の追憶は、笑いとほろ苦い痛みを伴いつつ、ひとつの時代を鮮やかに描いていく。背伸びをしながらもオトナになりきれない彼らを大人が演じることで見えてくるモノもある。彼がそこで出会った人や出来事は個性的だけれど、同時に普遍性を併せ持っていて観る者に懐かしさを感じさせる。楽しかったこともささやかな後悔もそれぞれに。
開演前や終演後のロビーも含め、総力戦という言葉がふさわしい、劇団らしい面白さがあった。

ワレリー・ベリャコーヴィッチのマクベス
劇団東演
あうるすぽっと(東京都)
2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/12/18 (土) 13:30
故V・ベリャコーヴィッチ氏のダイナミックな演出をO・レウシン氏が引き継いで今回も圧巻の舞台。シアタートラムで観た初演よりいっそう鮮烈で、お馴染みのストーリーに多くの気づきを与えてくれた。キャストも粒揃いで息つくヒマもない充実の2時間45分だった。
べリャさんの舞台はいつも美術も印象的で、『ハムレット』の林立するように吊り下げられた円柱や、『どん底』のベットフレームの連なりも忘れ難いが、『マクベス』では4枚の巨大な扉が登場人物並みの存在感だった。
音楽や様式美を感じさせる独特の動き、衣装、照明、音楽なども演出や演技と相まって劇場内を濃密に満たしていた。

いとしの儚
劇団扉座
ザ・スズナリ(東京都)
2021/03/06 (土) ~ 2021/03/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
横内謙介氏の戯曲を東京夜光の川名さんが演出。
クズと呼ばれた男と鬼がつくった女の100日の物語。2人を取り巻く人(や鬼)たちが皆愚かしくも愛おしい。「人の夢、儚し」という序盤の台詞だけで込み上げてくる想いがあるのは、すでに結末を知っていたからだろう。戯曲の良さとキャストの魅力を生かした納得の舞台。

Transcendent Express
Cuebicle
上野ストアハウス(東京都)
2021/12/10 (金) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
婚活列車の中で起こる出来事、と聞いてコメディかと思っていたらそうじゃなかった←この程度の予備知識で観に行ったのは演出家と俳優陣が好みだったから。ダークファンタジーめいた陰影と奇妙な登場人物たちに惹き込まれて、上野からの長い旅を楽しんだ。