kikiの観てきた!クチコミ一覧

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毒づくも徒然

毒づくも徒然

MCR

OFF OFFシアター(東京都)

2018/11/20 (火) ~ 2018/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/11/23 (金) 19:30

『櫻井さん』を拝見。

油断してた。変な奴ばかり出てくるのに、どうしてこんなに刺さるんだろう。

声を立てて笑ってるのに、いたたまれないくらい遣る瀬ない。ヒリヒリするほど酷い話なのに、登場人物たちへ向ける眼差しはどこかやさしい。

この奇妙に愛しい物語を観ることができてよかった。

No.9-不滅の旋律-

No.9-不滅の旋律-

TBS

赤坂ACTシアター(東京都)

2018/11/11 (日) ~ 2018/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/11/24 (土) 18:00

天才作曲家の苦悩と葛藤、そして彼を取り巻く人々の苦労(!)を描く3時間10分。

耳の不具合・激動する時代・家族や興行主との確執等の末に作曲家が見い出した音楽とは……。

わがままで気分屋で傍迷惑な天才を魅力的に演じた主演の稲垣さんをはじめとするキャスト陣の熱演に拍手。

よろこびのうた

よろこびのうた

坊っちゃん劇場

ティアラこうとう 大ホール(東京都)

2018/11/28 (水) ~ 2018/11/29 (木)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/11/28 (水) 19:00

第一次世界大戦中の徳島。

若いドイツ兵俘虜と日本女性の恋愛や収容所所長とドイツ人将校の情誼を軸に、日本人とドイツ人の交流を描く笑いと涙のミュージカル。

朝ドラを思わせる題材や雰囲気の物語。ドラマティックな展開と明るい歌声を幅広い層の観客が堪能した。

逢いにいくの、雨だけど

逢いにいくの、雨だけど

iaku

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2018/11/29 (木) ~ 2018/12/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/12/01 (土) 14:00

今年3本目のiakuも期待に違わぬ面白さ。

不幸な事故がもたらした澱のような傷のような何かを、抱えて生きてきた登場人物たち。そのそれぞれの痛みやこだわりや屈折を丁重にすくい上げ編み上げた物語。

キャストもそれぞれハマり役で、ダブルコールも納得の舞台だった。

エダニク

エダニク

ハイリンド

シアター711(東京都)

2018/12/07 (金) ~ 2018/12/16 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/12/08 (土) 14:00

ハイリンド『エダニク』、めっちゃ面白かった。

脚本は先週観た『逢いにいくの、雨だけど』と同じiakuの横山拓也さん。演出はサスペンデッズの早船聡さん。

カップ焼きそばで始まった物語は、屠畜という仕事とそれぞれの立場による思惑やこだわりにおされるように加速していく。

ユーモアと緊張感に満ちた約90分の濃密な会話劇に、キャストもそれぞれハマり役で素敵だった。

何事にも理由があって欲しい

何事にも理由があって欲しい

小岩崎小企画

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2018/11/22 (木) ~ 2018/11/25 (日)公演終了

満足度★★★★

4人のキャストによる5つの短編。それぞれにおかしいような切ないような、胸の奥の柔らかいところに届くような、そういう物語。個人的には『物騒な話』が特に面白かった。あと『殴る蹴る』の2人が、抱きしめたいくらい愛しかった。

徒然アルツハイマー

徒然アルツハイマー

演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2018/10/31 (水) ~ 2018/11/05 (月)公演終了

満足度★★★★

初めて拝見するユニットで、チラシの印象からもっとウェルメイドな物語を想像していたが、ダメな大人たちの現実と心象が交錯し、観る者の閉塞感と絶望を優しく搦めとる舞台であった。

キャストはそれぞれ魅力的だが、特に父役の中原さんの声と佇まいに惹かれた。

ネタバレBOX

救いのない結末とも思えたけれど不思議に後味がよかったのは、どれだけ罵り合ってもやはり家族は家族なのだと思えたからかもしれない。
ミセスフィクションズ夏の振替上演・上映会

ミセスフィクションズ夏の振替上演・上映会

Mrs.fictions

駅前劇場(東京都)

2018/08/17 (金) ~ 2018/08/20 (月)公演終了

満足度★★★★

4つの短編上演とひとつの長編の上映を拝見。

それぞれ笑いを多めに重ねながら、終わっていくモノや喪ってしまった何かに想いを馳せていくような、繊細で切実な物語たち。

出会えたはずの誰かと別れてしまっても、遙かな遠い未来にまた出会うこともあるかもしれない。

夏の終わりのかすかなさみしさともの憂さがよく似合う公演となった。

延期となった『月がとっても睨むから』についても、きっとかなうはずの約束として、気長に待ちたいと思う。

郷愁の丘ロマントピア

郷愁の丘ロマントピア

ホエイ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/01/11 (木) ~ 2018/01/21 (日)公演終了

満足度★★★★

老人たちのやり取りと回想を通して描く夕張の近代史は、ユーモアとペーソスを含んで切なく愛おしい。

炭鉱での過酷な仕事や家族との思い出。過ぎ去った日々は湖の底だけれど、記念碑や町の名前が墓標のように残る。

丁寧な取材を感じさせる細やかなエピソードの数々と、それに血を通わせる作劇の確かさが、沈んでしまった町の風景を観客の胸に残した。

1万円の使いみち

1万円の使いみち

monophonic orchestra

Geki地下Liberty(東京都)

2018/01/13 (土) ~ 2018/01/21 (日)公演終了

満足度★★★★

1万円を届ける旅と1万円を使い切る旅。2組の旅路はそれぞれの後悔や迷いと結びつき、そしてそれをほどいていく。

笑いを交えて描かれる物語の中で、聞き慣れたいくつもの地名や路線名がどこか懐しく優しく響いた。

BALLO~ロミオとジュリエット~

BALLO~ロミオとジュリエット~

CHAiroiPLIN

東京グローブ座(東京都)

2017/12/02 (土) ~ 2017/12/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

いやぁもうホント面白かった!!

自分では選ばなかったであろう演目だけに、誘ってくれた友だちに感謝。

よく知ってるはずのロミオとジュリエットの物語が、多彩な身体表現と大胆な演出で瑞々しく刺激的な舞台となっていた。

風紋 ~青のはて2017~

風紋 ~青のはて2017~

てがみ座

赤坂RED/THEATER(東京都)

2017/11/09 (木) ~ 2017/11/19 (日)公演終了

満足度★★★★

病に倒れ東京から故郷に帰る宮澤賢治が、千人峠の駅舎兼旅籠で過ごした時間。そして過去の友人とのやり取りや死んだ妹への想い。

悪天候に閉じ込められた人々のそれぞれの抱えるものも含め、喪われたのもを想う心情を細やかに描き出していた。

心中天の網島-2017リクリエーション版-

心中天の網島-2017リクリエーション版-

ロームシアター京都

横浜にぎわい座・のげシャーレ(神奈川県)

2017/11/06 (月) ~ 2017/11/18 (土)公演終了

満足度★★★★

心中物をベースに現代的な風景の中で描かれる男女の情としがらみが、糸井さんらしい演出でたっぷりの音楽に乗せた愛と死の物語となっていた。

キャストも粒ぞろいで見ごたえのある舞台だった。

「地獄谷温泉 無明ノ宿」横浜公演

「地獄谷温泉 無明ノ宿」横浜公演

庭劇団ペニノ

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2017/11/04 (土) ~ 2017/11/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

美術の仕掛けや入浴場面など人目を驚かす要素もたくさんあったけれど、そこに言及する以前に言いたいことがあるような気がする。

面白かった……というより、懐かしい遠い記憶のような、あるいは迷い込んだ夢の中の景色のような不思議な体験だった。

ネタバレBOX

物語の舞台は、北陸のどこかにある人里離れた温泉宿。そこに東京からやってきた人形遣いの親子は、誰かに手紙で呼び出されたのだという。

宿には主人はおらず、近隣の者たちが適宜利用しているということで、呼び出したのか誰なのかわからない。帰ろうとしても、唯一の交通手段であるバスのこの日の便は終わってしまった。親子は仕方なく宿に泊まることになるが……。

さびれた宿の玄関、二階建ての客室、温泉の脱衣所、湯殿、という4つのセットが、それぞれ背中合わせのようになっていて、回転するにつれて場面が変わる。

それぞれ細部までこだわった精密さとリアルさ。古びた質感、細かい調度のたぐい。客間の窓の向こうに温泉の入り口が見えたり、木の葉や雪が舞い散る様子が見えたりもする。脱衣所の先にある湯殿からは湯気が上るのが見える。

そう、実際に湯をはった温泉の湯殿など初めて観た。

これまでにも舞台の上で湯浴みや行水の場面を観たことはあったが、何人もの登場人物の入浴の場面をこれほどじっくり描いた舞台を観るのは初めてだ。

そういう美術や演出の緻密さと大胆さはもちろん圧倒的だったが、それ以上に、奇妙なくらいリアルなのに現実感を欠くような、どこへ向かうのか息を詰めて見つめずにいられない物語と、それを成立させるキャスト陣の演技が凄まじかった。

小人症の父親に献身的に、恭しく仕える息子。歳が離れ過ぎているようにも思えて、本当の親子なのか、あるいはいっそ本当に2人とも人間なのか、などと思いつつ観てしまう。

老婆、目の不自由な男、2人の芸妓、三助。それぞれの台詞も仕草も、美術と同様に奇妙なくらい緻密なリアルさで演じられていく。そんな彼らの(劇中で描かれる)欲望は、「生きる」ということと密接に結びついているように感じられた。

淡々と描かれる欲望の切実さに比して、舞台上の裸体はエロティックというよりごく当たり前の人間の営みとして感じられた。

山田マメさんの演じる百福と彼の人形の睦み合いにも似た人形芝居。そこから目をそらす年嵩の芸妓。三助の元へ忍んで行く若い芸妓。

朝の湯殿は、夜更けの欲望の名残とある種の後悔をまといつかせながら、それでも明るい陽射しを感じさせるのだった。

新幹線が通り、変わっていくであろうその土地で、それでも新しい命が生まれ、温泉宿は残り続ける。

そして人形遣いの親子は、今頃どこを旅しているのだろう。
はみだしっ子

はみだしっ子

Studio Life(スタジオライフ)

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2017/10/20 (金) ~ 2017/11/05 (日)公演終了

満足度★★★★

始まってすぐに、思い入れのある原作の懐かしい台詞や場面にまずじんわりした。

わかってるはずの展開なのに、少年たちの心の動きに寄り添うように涙ぐんでしまう。

あの台詞、あの場面、そうだ、あのとき彼はああ言った、そういう記憶が堰を切ったように流れ込んでくる。

それぞれの場面で、歯をくいしばるように何度も読み返した彼らの心のひだが、生身の人間の演じる姿となって現れる。

母に捨てられ、父に疎まれ、大切な人を亡くしながら、それでも生き続けようと思えるのは、大切な仲間を見つけたから。

些細な手違いで離れてしまった仲間との再会に旗を振るアンジーの姿。

原作前半のいくつかのエピソードを約2時間の舞台にまとめ上げた脚本の手腕とキャスト陣の繊細な演技が物語のエッセンスを丁重に紡いで、美しい舞台が立ち上がっていた。

4人の少年たちも、周囲の人々もそれぞれ原作を大切に演じられているように感じられた。特に、グレアムを演じた岩崎さんの声が自分のイメージに合っていて、何度も(ああ!)と思った。

懐かしいような切ないような余韻に浸りながら帰路についた。

舞台版 声優に死す~other side~

舞台版 声優に死す~other side~

劇団ヘロヘロQカムパニー

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2017/10/20 (金) ~ 2017/10/29 (日)公演終了

満足度★★★

孤独な少女が通うことになった学校は、孤島にあった。たどり着くことさえ困難なその場所で、若者たちは「声優」を目指す。

AIによるアフレコが主流となった近未来に、生身の人間が演じることの意味を模索するヒロインの過去。そして孤島に暗躍する怪しい影が……。

などという物語が進む中、(あ、そうか!)と思った。

開演前に場内に流れていた曲が懐かしいドラマの主題歌だった理由に気がついたのだ。

舞台の設定は近未来だけれど、実は懐かしの大映ドラマ、それも主として1980年代の学園ドラマのテイストなのだ。

ありそうで実は荒唐無稽な設定、むやみにドラマティックな展開、個性的というより変わり者ぞろいの登場人物、仲間同士のややベタな反発や友情、ミステリー要素と家族への情、仲間の死という重い出来事さえ、どこか見覚えがある。

リスペクトもあるだろうけれど、それ以上にパロディの色が濃くて、全編笑いが絶えない。

それらの笑いは確信に満ちて、過去のドラマを知らなくても充分面白いはずだ。

一方で、キャストのほとんどが人気の声優さんたちということで、その背景を活かした笑いもたくそん散りばめられていたようだ。残念ながら最近のアニメに疎いのでなんとなく察するしかなかったが、会場内は大いに盛り上がっていた。

そういうさまざまなネタや笑いを散りばめつつ、物語の骨格はしっかりとしたミステリーであり、そしてその底にあるのは、人を想う気持ちなのだ。

個性の強いキャラクターを演じるキャスト陣のエネルギーが、そういう物語を支えた。

脚本の島田さんは、劇団しゅうくりー夢に長く在籍されていた方で、そのためしゅうくりー夢ファンの自分に取って(ああ!)と思う雰囲気が随所に感じられ、いっそう楽しかった。

いくつもの伏線がピタピタ回収されていく終盤の展開にカタルシスを感じ、夢を追う人々の熱い想いが心地よく胸に残った。

リチャード三世

リチャード三世

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2017/10/17 (火) ~ 2017/10/30 (月)公演終了

満足度★★★★

冒頭。パーティだ……と思ったのは、人々がシャンングラスを手にしていたからだろう。白塗りで談笑する男たちは、皆同じように白いシャツに黒いズボンで、シャツの前をはだけている。サックスを吹く者もいる。

そう書くと陽気な場面のようだが、実際に観ているときはまた違う印象があった。何かが始まりそうな不穏な空気。いや、何が始まるかは知っている。有名な物語だ。なんなら台詞のひとつもそらんじてみせることだってできるだろう。

その有名な物語の最初の台詞を男が口にする。なるほど、彼がリチャードなのだ。

訪れたつかの間の平和に飽き足らず、野心を語る男。ときに片足だけハイヒールを履いて、不具を演じる道化めいた動きも、すらりと立ち上がって女を口説く様子も、自然に目を引かれる熱量がある。

キャストはほとんど男性で、彼らの演じる王妃や元王妃たちが禍々しくてとてもよかった。

手塚さんのアンの独特の存在感と色気とか、植本さん演じるスキンヘッドのエリザベスの肩の辺りのたおやかさとか、今井さんのマーガレットがもうスゴい素敵(←語彙力w)だったこととか。

今井さんは、萬斎版リチャード三世『国盗人』で理智門(リッチモン)を凛々しく演じてらっしゃったので、なおさらインパクトが強かった。

この舞台のマーガレットは「絶望して死ね」という強い呪詛の言葉の代わりに、歌うように呪っていた。いや、ホントに歌っていたのだ。「この世に想いを絶って死ね」と。

高い天井。いくつかの場面で水の降る音。三方に張り巡らされた幕が水しぶきで濡れていく。

王位に就くことを承諾する場面は雨。広場に集まった人々が傘を差している。それを建物の内側から観ている。そこで演じられる、望まれて王位に就くという茶番劇。

ビニール袋に包まれた王座への愛撫がなんかもう生々しくて、エロいなどというより、観ちゃ行けないモノを観ている感じだった。

彼の王座への執着は、野心というより、なんだろう、もう少し切実な何かだったように見えた。

物語の後半を覆いつくすようなリチャードの狂気。手に入れた王位への歪んだ執着。破滅へ向かって物語が加速する……。

陰惨な物語を解体する演出と、物語を牽引する佐々木さんの熱量。悪魔というよりは、かすかに道化めいた哀しみを感じさせるリチャードであった。

ワンピース

ワンピース

松竹

新橋演舞場(東京都)

2017/10/06 (金) ~ 2017/11/25 (土)公演終了

満足度★★★★★

もう本当に楽しかった!

原作の魅力と、歌舞伎の気持ちいいところと、横内さんらしい作劇の面白さとがあいまって、初演以上にがっつりテンション上がった。

ストーリーのまとめ方は端正でわかりやすいが、演出はド派手だ。

たとえば水を使う場面。本水を使うのは歌舞伎でもときどき拝見するが、この舞台ではなんていうか、ちょっと驚くほどの膨大な量である。

立ち回りをしつつ滝のように勢いよく降り続く水をはね飛ばし、客席に向かって跳ね上げ、キャスト同士が水を掛け合ったりもする。(前方数列の客席には、水よけのビニールシートが配られている)走ってきた兵士たちが水浸しのステージに滑り込んだりもする。実際にはたいへんなことも多いだろうけれど、客席からは本当に楽しそうに見える。

あるいは、2幕の終わりにルフィーが宙乗りをする場面がある。何度も傷つき倒れながら、兄と慕う大切な人を助けるためにまた旅立つ、というシチュエーションだ。

ステージだけでなく場内全体に明るい光が満ち、テーマソングが響き渡る中、我々の頭上を飛びまわるルフィーの表情は明るい。苦難はまだまだ続くだろう、それでも仲間とともに船出する彼の眼には希望しか映っていないのだ。

同時に、たくさんのキャストが客席通路を踊りながら通っていく。観客とハイタッチし、手にしたタンバリンを観客と交換したりしながら。

ほとんどの観客が立ち上がり、頭上のルフィーや通路で踊る人々に手を振る。歌舞伎で、という注釈さえ必要ない、こんなに大勢の人々と一緒にこれほど盛り上がる、祝祭めいた芝居をこれまで観たことがあっただろうか、と考えたりする。

観ていて、歌舞伎というジャンルの懐の深さを感じた。脈々と続く伝統に裏打ちされた技術と人材と様式、そして新しいモノを受け入れる柔軟さで、またひとつ大きな軌跡を産みだした。

横内さんの作品として個人的に好きな作品は他にいくつもあるけれど、多くの人の心を動かしたという点において、しばらくは横内さんについて語るとき「ワンピース歌舞伎の」という形容が外せないだろう。

検察官

検察官

劇団東演

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2017/10/13 (金) ~ 2017/10/17 (火)公演終了

満足度★★★★

冒頭。4人の楽師と指揮者が登場する。ロシア人の俳優が演じる指揮者は、ロシア語でまくしたてたかと思うと、日本語を交えた戯けたトークで観客の笑いを誘う。

そして、着飾った男女が踊りだす華やかなオープニング。

色とりどりのドレスで踊る女たち。街の権力者たちのいかにも俗物めいた描写が笑いを誘う。

かと思うと、「ロシア語がひとことも話せない」と言われる医者をロシア人の役者さんが演じる皮肉とか。

検察官と間違われた若い役人と市長をはじめとする人々の滑稽なやり取りがある種の様式美によって描かれていく。

その様子は、なんていうか、不思議な国のサーカスみたいだった。カラフルで滑稽な馬鹿騒ぎ。印象的な音楽とダンス。躍動感とリズム。独特の陰影。皮肉と哀愁。

初演の記憶よりいっそうパワフルで、3時間近い長尺を飽きる間もなく魅了された。

ブッダ

ブッダ

わらび座

京都府立府民ホールアルティ(京都府)

2017/08/26 (土) ~ 2017/08/26 (土)公演終了

満足度★★★★★

再演初日となる京都公演を観てきた。

開演の少し前からほの暗い舞台に人がぽつりぽつりと現れて気怠そうに床を磨き始める。

客席はまだ明るいが、舞台の様子に気づいたのだろう、観客がしだいに静かになっていく。

突然鳴り響く音楽!氾濫する大河!

人々は流され、渦を巻き、そして1人の赤ん坊が生まれる。

そこからの展開を観ながら、そうだった、わかりやすいとはいえない作品だった、と初演を観たときの印象が蘇り、初めてご覧になる方はどんなふうに感じられただろうと気になったりした。

説明めいた台詞もないまま物語は動き出し、登場人物それぞれの過去や想いは鮮烈だけれど断片的で、時間の経過にも飛躍がある。けれど気がつけばそれらはひとつの流れのように、シッダールダの人生を映し出していく。

後半になるともう怒涛の展開だ。目に見えない渦が会場を満たし、理屈を超えて観客を巻き込み押し流していく。

客席の人々は、息を呑むように静まり返って舞台を見つめている。

人々の嘆きや苦しみが渦を巻く終盤の場面はやはり圧巻であった。

説明しきれない衝動や圧倒されるような感覚。そういう変わらない何かを抱えたまま、新しいキャストを迎えて鮮やかに蘇った。

まだ初日らしい硬さもあっただろう。歌やダンスもこの先もっと馴染んでくるような気がする。

しかし初演キャストの安定感と新キャストのエネルギー、そして若々しいアンサンブルの躍動感が、懐かしく同時に新しい『ブッダ』の世界を作り上げていた。

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