リチャード三世 公演情報 東京芸術劇場「リチャード三世」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    冒頭。パーティだ……と思ったのは、人々がシャンングラスを手にしていたからだろう。白塗りで談笑する男たちは、皆同じように白いシャツに黒いズボンで、シャツの前をはだけている。サックスを吹く者もいる。

    そう書くと陽気な場面のようだが、実際に観ているときはまた違う印象があった。何かが始まりそうな不穏な空気。いや、何が始まるかは知っている。有名な物語だ。なんなら台詞のひとつもそらんじてみせることだってできるだろう。

    その有名な物語の最初の台詞を男が口にする。なるほど、彼がリチャードなのだ。

    訪れたつかの間の平和に飽き足らず、野心を語る男。ときに片足だけハイヒールを履いて、不具を演じる道化めいた動きも、すらりと立ち上がって女を口説く様子も、自然に目を引かれる熱量がある。

    キャストはほとんど男性で、彼らの演じる王妃や元王妃たちが禍々しくてとてもよかった。

    手塚さんのアンの独特の存在感と色気とか、植本さん演じるスキンヘッドのエリザベスの肩の辺りのたおやかさとか、今井さんのマーガレットがもうスゴい素敵(←語彙力w)だったこととか。

    今井さんは、萬斎版リチャード三世『国盗人』で理智門(リッチモン)を凛々しく演じてらっしゃったので、なおさらインパクトが強かった。

    この舞台のマーガレットは「絶望して死ね」という強い呪詛の言葉の代わりに、歌うように呪っていた。いや、ホントに歌っていたのだ。「この世に想いを絶って死ね」と。

    高い天井。いくつかの場面で水の降る音。三方に張り巡らされた幕が水しぶきで濡れていく。

    王位に就くことを承諾する場面は雨。広場に集まった人々が傘を差している。それを建物の内側から観ている。そこで演じられる、望まれて王位に就くという茶番劇。

    ビニール袋に包まれた王座への愛撫がなんかもう生々しくて、エロいなどというより、観ちゃ行けないモノを観ている感じだった。

    彼の王座への執着は、野心というより、なんだろう、もう少し切実な何かだったように見えた。

    物語の後半を覆いつくすようなリチャードの狂気。手に入れた王位への歪んだ執着。破滅へ向かって物語が加速する……。

    陰惨な物語を解体する演出と、物語を牽引する佐々木さんの熱量。悪魔というよりは、かすかに道化めいた哀しみを感じさせるリチャードであった。

    0

    2018/01/02 03:06

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大