満足度★★★
孤独な少女が通うことになった学校は、孤島にあった。たどり着くことさえ困難なその場所で、若者たちは「声優」を目指す。
AIによるアフレコが主流となった近未来に、生身の人間が演じることの意味を模索するヒロインの過去。そして孤島に暗躍する怪しい影が……。
などという物語が進む中、(あ、そうか!)と思った。
開演前に場内に流れていた曲が懐かしいドラマの主題歌だった理由に気がついたのだ。
舞台の設定は近未来だけれど、実は懐かしの大映ドラマ、それも主として1980年代の学園ドラマのテイストなのだ。
ありそうで実は荒唐無稽な設定、むやみにドラマティックな展開、個性的というより変わり者ぞろいの登場人物、仲間同士のややベタな反発や友情、ミステリー要素と家族への情、仲間の死という重い出来事さえ、どこか見覚えがある。
リスペクトもあるだろうけれど、それ以上にパロディの色が濃くて、全編笑いが絶えない。
それらの笑いは確信に満ちて、過去のドラマを知らなくても充分面白いはずだ。
一方で、キャストのほとんどが人気の声優さんたちということで、その背景を活かした笑いもたくそん散りばめられていたようだ。残念ながら最近のアニメに疎いのでなんとなく察するしかなかったが、会場内は大いに盛り上がっていた。
そういうさまざまなネタや笑いを散りばめつつ、物語の骨格はしっかりとしたミステリーであり、そしてその底にあるのは、人を想う気持ちなのだ。
個性の強いキャラクターを演じるキャスト陣のエネルギーが、そういう物語を支えた。
脚本の島田さんは、劇団しゅうくりー夢に長く在籍されていた方で、そのためしゅうくりー夢ファンの自分に取って(ああ!)と思う雰囲気が随所に感じられ、いっそう楽しかった。
いくつもの伏線がピタピタ回収されていく終盤の展開にカタルシスを感じ、夢を追う人々の熱い想いが心地よく胸に残った。