満足度★★★★★
再演初日となる京都公演を観てきた。
開演の少し前からほの暗い舞台に人がぽつりぽつりと現れて気怠そうに床を磨き始める。
客席はまだ明るいが、舞台の様子に気づいたのだろう、観客がしだいに静かになっていく。
突然鳴り響く音楽!氾濫する大河!
人々は流され、渦を巻き、そして1人の赤ん坊が生まれる。
そこからの展開を観ながら、そうだった、わかりやすいとはいえない作品だった、と初演を観たときの印象が蘇り、初めてご覧になる方はどんなふうに感じられただろうと気になったりした。
説明めいた台詞もないまま物語は動き出し、登場人物それぞれの過去や想いは鮮烈だけれど断片的で、時間の経過にも飛躍がある。けれど気がつけばそれらはひとつの流れのように、シッダールダの人生を映し出していく。
後半になるともう怒涛の展開だ。目に見えない渦が会場を満たし、理屈を超えて観客を巻き込み押し流していく。
客席の人々は、息を呑むように静まり返って舞台を見つめている。
人々の嘆きや苦しみが渦を巻く終盤の場面はやはり圧巻であった。
説明しきれない衝動や圧倒されるような感覚。そういう変わらない何かを抱えたまま、新しいキャストを迎えて鮮やかに蘇った。
まだ初日らしい硬さもあっただろう。歌やダンスもこの先もっと馴染んでくるような気がする。
しかし初演キャストの安定感と新キャストのエネルギー、そして若々しいアンサンブルの躍動感が、懐かしく同時に新しい『ブッダ』の世界を作り上げていた。