jokermanの観てきた!クチコミ一覧

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月の海 2018

月の海 2018

日穏-bion-

「劇」小劇場(東京都)

2018/07/11 (水) ~ 2018/07/17 (火)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/07/11 (水) 19:00

 2016年初演の作品の再演で、初演も観ている。初演を観たときも凄い芝居に出会ったと思ったが、今回も期待に違わぬ、素晴らしい出来である。初演とほとんど変えていないとのこと。認知症の母の介護のため、仕事を辞めて田舎に戻った静(岩瀬)を軸に、行方不明から戻った弟(?)や、幼馴染みのケア・マネージャー、近所の八百屋夫婦など、心温まる物語ながら、秘密が徐々に明かされるプロセスをドキドキしつつ楽しむ…、という展開。細かなエピソードの回収や丁寧な仕掛けは見事である。風鈴の音という効果音まで計算されている。
 ちょっと気になったセリフがあったのだが、終演後、主宰・作・主演の岩瀬氏に直接伺って納得。そこまでも考えていたのか、と感心させられた。

トイレの花子さんの帰宅

トイレの花子さんの帰宅

やまだのむら

イズモギャラリー(東京都)

2018/07/07 (土) ~ 2018/07/11 (水)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/09 (月) 18:30

 國吉咲貴の作・演出だというので楽しみに観に行った。面白かった!小劇場の役者である「ぼく」(野村)のトイレに幽霊の花子さん(山田)が現れ、住んでいると言う。また、「ぼく」のストーカーであるマルヤマさん(三澤)は、勝手に合鍵を作って入り込んだりして、「ぼく」のプライベートな空間が無くなっていく…、という展開だが、國吉にしては珍しく物語に不条理がない。幽霊の存在は一応不条理だし、マルヤマさんの行動は過剰ではあるけれど、スジは通っているので、普通の物語として観られ、それはそれで巧みに作りこまれている。終わり方は少し切なく、そこもまた私の好みにフィットしてる。

馘切姫-クビキリヒメ-

馘切姫-クビキリヒメ-

ヅカ★ガール

王子小劇場(東京都)

2018/07/06 (金) ~ 2018/07/10 (火)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/08 (日) 17:00

 壮大な物語だが、時代背景や場所も分からず、このような芝居をやろうとする意図が分からない。それなりに盛り上がりもあり、つまらなくはないが、面白いとも言えない。同様な芝居をやる劇団として、つい、昔の re:mix を思い出してしまったが、常にその世界観でやってるわけではないようである。また、似たような殺陣を活かした舞台をやる劇団としてX-QUESTを思い出したが、殺陣のレベルは全然違う。

熊ん子リバーバンク

熊ん子リバーバンク

桃尻犬

OFF OFFシアター(東京都)

2018/07/06 (金) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/07 (土) 19:30

 桃尻犬フィーチャーリング徳橋みのり、という印象の公演。何となく不満が残る。結婚した旦那が通販でバイブを買ったのを発見し呆然とする妻(徳橋)、という状況から始まり、同居する妻の友人とか、元カレとかが混じって、次々と人が死ぬ展開になる。死んだ人が見えるとか、見えないとか、いろいろやってる内に、ロードムービー風の展開になり…、というわけで、終わり方にも何かモヤモヤ感が残ってしまう。

悪役たちの反省会

悪役たちの反省会

tea for two

小劇場B1(東京都)

2018/07/04 (水) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/06 (金) 19:30

 気になったので2度目の観劇。要は、8人(組)の悪人が反省らしきことを述べようとするのだが司会に突っ込まれる、というパターンを8回やるわけで、2・3人の会話劇を中心とする同劇団らしくはないのだが、最後の仕掛けが効いてる。8人は、自分の番でなければ、相当フリーに演技してよいらしく、初日とは違った動きもあったりした。一方で、8人全員を相手にする司会役の西尾早智子の負担は大きいと思う。

serialnumberのserialnumber

serialnumberのserialnumber

serial number(風琴工房改め)

The Fleming House(東京都)

2018/06/21 (木) ~ 2018/07/16 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/05 (木) 20:00

 『nursery』を観た。詩森ろば自身が出演する短い前日譚に続いて本編。精神病院での患者と医師の会話劇だが、患者が2重人格というのはよくある話で、その「よくある話」に落とし込まない微妙な感触に巧さがあると思った。2重人格者を演じる田島も、一瞬で変化する違いの表現などが巧いし、相手役の坂巻もベテランらしい緻密な演技を見せてくれる。ただ、こういった話題は、どうしても日常と離れてしまうなぁ、という気持は残った。

悪役たちの反省会

悪役たちの反省会

tea for two

小劇場B1(東京都)

2018/07/04 (水) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/04 (水) 19:30

 同劇団ほぼ2年半ぶりの新作長編は、同劇団の別シリーズ「tea for ONE」的性格が強いように感じたが、最後に仕掛けが待ってた(^_^;)。アル・カポネやヒットラーなどの大掛かりな悪人が出るかと思えば、阿部定や切り裂きジャック等の犯罪者から、果ては船場吉兆食品偽装の社長と「ささやき女将」まで、さまざまな悪人に反省させるシンポジウム。司会の安藤陽子(西尾早智子)は容赦ない言葉を浴びせるのだが…、という展開から、思わぬエンディングに向かう。仕掛け好きの大根らしい劇作と言えるが、役者の力量というか、なりきり感がポイントで、なかなかの健闘である。阿部定を演じた高橋恭子は10年ぶりの出演だが短編映画「狂熱」で見せた艶っぽい所を出しているし、ヒットラー役の池田ヒロユキの熱演ぶりは見応えあり。

ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ

ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ

ニ兎社

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2018/06/23 (土) ~ 2018/07/16 (月)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/03 (火) 19:00

 昨年の『ザ・空気』に続いて、マスメディアの問題を扱う第2弾。第1弾との直接の関係はない。何だか、モヤモヤしてしまった。舞台は、国会記者会館の屋上。さまざまな疑惑を受けた総理の記者会見を前に、総理に近い記者が書いたQ&Aを手に入れた若い記者。そのQ&Aを取り巻く状況を、本来なら記者会館に入れないネットニュースの記者(安田成美)が覗く。書いた本人(松尾)や、総理に近い記者(馬渕)などが演じるドタバタが展開されるが…、というストーリー。永井さんならば、もっと書けるだろうに、という思いがどうしても強い。元々、多様な声色を使う松尾の能力を利用して総理の物真似をさせるところなど、観客は結構喜んでいたが、私には不要に感じた。「メディアを恨むな。メディアを作れ」というキーワードを活かしたいようだが、巧く活かされているようにも思えなかった。

めぐるひかり

めぐるひかり

BASEプロデュース

BAR BASE(東京都)

2018/06/26 (火) ~ 2018/07/10 (火)公演終了

満足度★★★★

 2015年にエビス駅前バーで上演されたものの再演だそうだが、初演は観てない。面白い!男に奔放な姉の娘「ひかり」(6歳)の面倒をみるのが大変になってしまった妹のしのぶが、ひかりの父親を特定し、預けようとするのだが、既婚の2名は妻まで連れてきていて、そこに姉が戻ってきたのだが、ひかりが失踪する。で、渋谷の町のさまざまな場所(初演では恵比寿の場所を使ったんだろうなぁ)を探すが…、という物語。やや予定調和的だし、御都合主義的側面はあるけど、米内山作品らしい技巧が活きてる。

お蘭、登場

お蘭、登場

シス・カンパニー

シアタートラム(東京都)

2018/06/16 (土) ~ 2018/07/16 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/06/30 (土) 18:30

 2度目の観劇。やや長くなっていて82分。これは日替わりの高橋・堤によるアドリブ部分の長さによるものらしい。初回はシスカンパニーとの契約の話をしていたが、今回は社長がコワイ(?)話になってて、高橋が「ちょっと長くないか」と言ってた。初回に観ていたときは、「遊び」の部分が固かったように思ったが、今回は存分に3人で遊んでて、楽しい舞台だった。不必要に乱歩の世界観にとらわれすぎていないのが良い。

人を殺して 生きている

人を殺して 生きている

オザワミツグ演劇

王子小劇場(東京都)

2018/06/27 (水) ~ 2018/07/03 (火)公演終了

満足度★★

鑑賞日2018/06/29 (金) 19:00

 高校の時いじめられていた加藤は、教師になり、いじめられた女生徒を助けようとするが、自殺されてしまい……、という物語が痛々しく展開される。ステレオタイプのいじめ、ステレオタイプの援交、ステレオタイプのDV、ステレオタイプの不倫、という、ステレオタイプだらけの物語で、共感できる登場人物がいないなど、現実的でない部分が多く、演劇的にも予定調和的な終息は不満が残る。特に、エンディング、後日譚2つの前に、前日譚を挿入しているのは、いかがなものかと思う。

『片思い』

『片思い』

コルバタ

新宿スターフィールド(東京都)

2018/06/28 (木) ~ 2018/07/01 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/06/28 (木) 19:00

 女子プロレスラーの志田光を軸に、元女子プロレスのMARUの作・演出で舞台を作る、女子プロレス系劇団を初めて観る。予想を超えて面白かった。伊藤奈須という女性(志田)は素人コーラス隊のピアノ担当だが、一方で、伊藤奈須という男性(後藤真一)は素人小劇団で冴えない役者をやってる。それぞれの父親が出てくるが、これが何故か同一人物。この何故?が明らかにされていく2時間……、というわけで、ネタは途中で分かるけれども最後まで一定の緊張と興味を持って観ることができる。日替わりゲストを呼んでのプロレスシーンは、劇作上の意味は余りないけど、元々がプレレスラー志田のファンを狙ってのことだから、興行上は必須なのだろうなぁ(^_^;)。タイトルは、あまり活きていないのが惜しい。

「琉球の風」

「琉球の風」

劇団東演

俳優座劇場(東京都)

2018/06/25 (月) ~ 2018/07/01 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/06/27 (水) 19:00

 2016年に初演の作品を再演だが初演は観てない。5・6月で3本目の中津留章仁作品である。沖縄出身の旅行代理店の社員が企画した沖縄ツアーが、反基地ツアーではないかと言われるが…、という、興味深い物語が展開される。再演に際して、若干の書き直しをしたそうだが、中津留自身は沖縄の出身でなく、反基地のスタンスを取っているようでもあり、それほど明確でもないので、第三者的な東京の人間から見た沖縄の問題という距離感をほどよく保っていると思う。エンターテインメント的要素もあり楽しめて考える舞台と言えるだろうか。

海と日傘

海と日傘

劇 えうれか

古民家ギャラリーしあん(東京都)

2018/06/22 (金) ~ 2018/06/28 (木)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/06/26 (火) 19:00

 1996年に岸田戯曲賞を取った松田正隆の代表作で、いろいろな所で上演されているが、観るのは初めて。死期の迫った妻と作家の夫を軸に、周辺の人々の物語が展開される。「静かな演劇」の代表とも言われているそうだが、会場の古民家しあん(ここに来るのも私は初めて)の雰囲気ともマッチして、丁寧な演出でしっかりとした芝居になっていた。何か大事件が起きるわけではなく、淡々と進む舞台だが、一定の緊張感を持って観られる115分だった。

serialnumberのserialnumber

serialnumberのserialnumber

serial number(風琴工房改め)

The Fleming House(東京都)

2018/06/21 (木) ~ 2018/07/16 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/06/25 (月) 20:00

 風琴工房あらため serial number の旗揚げ公演。『next move』を観た。将棋のプロ棋士を目指す2人の男の友情を、やや笑いも混ぜつつ、厳しさのある世界を見事に描いていた。天才棋士・藤井聡太の登場で注目される将棋界だが、以前から書かれていたという脚本を公開舞台化した。小学生から26歳までを田島亮・佐野功が演じるのだが、小学生を演じても愛嬌ある2人で、成長に応じて変化する様子と2人の関係の描き方が素晴らしい。ただ、最後の「負けました」のセリフを敢えて削る選択はなかったのかな、とも思う。でも素晴らしい舞台でした。

奇行遊戯

奇行遊戯

TRASHMASTERS

上野ストアハウス(東京都)

2018/06/20 (水) ~ 2018/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/06/22 (金) 19:00

 2010年に初演したものを、若手公演として再演する。力作だった。中津留自身の経験も元にして、九州の田舎町での若者たちの厳しい暮らし等のエピソードが展開され、それが、2場では中国との対立やシーシェパードを思わせる団体との絡み合いに発展する、という、社会派に転じた頃のトラッシュの代表作という意気込みで書かれたらしい。この頃は、1場と2場の間にナレーションを字幕で見せつつ、大きく場面転換をする手法を取っていたが、それが久々に復活した。田舎町に突然現れた謎の女(藤堂海)やDV夫から逃げようとする璃子(堤千穂)を始めとして、登場人物が2場で変化するところは見応えがあると思う。
 初演は2時間50分だったが、今回は実測で2時間38分。やや短くなっていた。
 なお、会場に、初演で謎の女を演じた林田麻里(初舞台だったハズ)、璃子を演じた川崎初夏がいて、新旧女優陣の勢ぞろいとなった。

海越えの花たち

海越えの花たち

てがみ座

紀伊國屋ホール(東京都)

2018/06/20 (水) ~ 2018/06/26 (火)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/06/20 (水) 19:00

 日韓併合後、朝鮮人と結婚し半島に渡った日本人妻達の姿を描く力作。実在する「ナザレ園」を扱いつつ、激しい4人の女性のそれぞれの物語をタイトに展開する。時間軸がしばしば飛躍するのだが、物語的には、いかにもありそうな(起こっていそうな)エピソードの連続で説得力はある。ただ、冒頭と最後のシーンの時代は、若い世代には分からないのでないかと、少し気になる。日本人妻を演じた4人の女優はいずれも熱演だが、最近は作家・演出家として大きな仕事をする桑原裕子が、純粋に女優としての力量を確実に表現してくれているのは嬉しい。西山水木をもう少しフィーチャーしてくれると良かったようにも思うが、石村みか演じる主人公の最後は切ない。

お蘭、登場

お蘭、登場

シス・カンパニー

シアタートラム(東京都)

2018/06/16 (土) ~ 2018/07/16 (月)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/06/17 (日) 14:30

 北村想が、日本文学にモチーフを得て、新作を書き下ろすシリーズの第5弾だが、私にも作法が分かってきて、独特の楽しみ方があるということだと感じた。今回は江戸川乱歩を題材に、悪役に小泉今日子演じる「お蘭」を持ってくるのだが、「江川蘭子」というのは「えどがわらんぽ」のもじりで、要は、乱歩の作品のいくつかを題材に3人芝居で遊ぼう、という企画だと思う。それが十分に成功しているかと言えば、そうは言えないのだが、乱歩ファンとして、それなりに楽しめる作品にはなっている。

日本文学盛衰史

日本文学盛衰史

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2018/06/07 (木) ~ 2018/07/09 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/06/15 (金) 19:30

 高橋源一郎の小説が原作らしいのだが、それは読んでいない。4場構成で、それぞれ北村透谷・正岡子規・二葉亭四迷・夏目漱石の葬儀に文壇陣や関係者、そして、市井の人々が集まったという体での物語。言文一致運動に腐心した人々の話として書かれていたであろう原作を、現代の話題等も入れ、エンターテインメントにしたのには、ちょっと驚いた。45分-35分-30分-20分と徐々に短くなり、3場の漱石の演説は本作の白眉だと思うが、同じ兵藤公美が4場で宮沢賢治を演じるなどの「遊び」も含まれていて、長さを感じない舞台だった。
 なお、前説の放送で「日本文学盛衰史」と言うべきところを「日本大学盛衰史」と間違ったのは、どうも本当のミスらしいが、最も笑えた。

肉の海

肉の海

オフィス3〇〇

本多劇場(東京都)

2018/06/07 (木) ~ 2018/06/17 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/06/13 (水) 19:00

 私にフィットする渡辺えり作品だった。上田岳弘「塔と重力」を原作としているそうだが、私は読んでいなくて、実際、世界観を借りたものということらしい。不思議の国のアリスと、阪神淡路大震災を2つの軸として、多彩な登場人物群が夢とも現実ともつかない物語を展開する。初期の雰囲気を残した音楽劇だが、豪華な客演陣を得て、音楽のレベルは確実に上がっているし、そのことで芝居の表現力が豊かになっていると思う。時間と空間を飛び越えて展開される物語は渡辺が得意とする手法だし、オフィス3○○の40周年記念公演に相応しい出来だとは言えよう。
 三田和代・久世星佳・土居裕子等のベテランや、舞台は滅多に出ない尾美としのりが興味深い味わいを出しているが、初舞台だという24歳の屋比久知奈の清涼感は際立った魅力がある。

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