アトムが来た日
serial number(風琴工房改め)
ザ・スズナリ(東京都)
2018/12/20 (木) ~ 2018/12/29 (土)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/12/21 (金) 19:30
詩森ろばはいつも、期待に違わない作品を作る。…と言うか、しばしば期待を超えてスゴイ作品を作る。今回もその思いを強くした。2つの時代、原子力が未来のエネルギーとして期待されていた1950年代と、2040年代(浜岡原発が事故を起こし全世界が原子力発電から撤退した世界)という2つの時代の時間軸を巧みに移動しつつ、原子力への期待と不安を、ニュートラルに描く。原子力発電、というと、反対の立場から描く作家が多い中、この「ニュートラル」という立場は見事なものだと思う。役者陣も詩森の作品に慣れた者が多く、2つの時代で数々の役割を担いつつ、詩森の脚本を具現化してる。
一つ注文を言うなら、科学と工学の立場の違いを意識してほしかった。原子物理学者と原子力工学者では、スタンスの違いがあるはずだと思う。
ミセスダイヤモンド
ろりえ
駅前劇場(東京都)
2018/12/19 (水) ~ 2018/12/23 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/19 (水) 19:00
久々に観たろりえだが、面白かった。ビッグカメラ(ビッ「グ」であってビッ「ク」ではない)の下北沢駅前店で、創立30周年を記念してソフトボール部を作る話が起こる。北北沢中時代にソフトボール部だった3人(岩井七世,徳橋みのり,斉藤可奈子)を中心に作った部の、さまざまな出来事を描いた青春スポ根ドラマ。適度にふざけて、適度に真面目で、バランス良く気持ちよく観ることができた。難を言えば、長い。2時間25分は要らない気がする。
十二月の蜘蛛と火曜日のオルガン
キコ qui-co.
駅前劇場(東京都)
2018/12/12 (水) ~ 2018/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/16 (日) 17:00
Aバージョンを見て気になってしまい、やや無理をしてBバージョンを観劇。少し笑った。80分まではAと同じだが、Bはその後の主に男たちの物語に重点を置く。「青春」と言えない人々のもがいている姿を描いて、ハッピーエンドではないが、一応は気持ちよく終わる。しかし、とにかく登場人物が多く、行動の動機も明らかではない作劇は、小栗らしいとは思うが、分かりやすくはない。
十二月の蜘蛛と火曜日のオルガン
キコ qui-co.
駅前劇場(東京都)
2018/12/12 (水) ~ 2018/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/15 (土) 19:30
Aバーションを観劇。切ない。小栗はロマンチストなので、ロジックで芝居を組み立てない傾向がある。死んでしまったサッカー少年と、死んでしまったバンド少女の周辺の人々の物語だが、80分までは同じで、そこから先がA・Bで変わるという。Aは10年前に戻り、死んだバンド少女が夢見たもの、そして、成し遂げられなかったものに重点を置く。エピソードの羅列に見えなくもないが、「青春」の切なさは感じる。
スカイライト
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/12/01 (土) ~ 2018/12/24 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/13 (木) 19:00
圧倒的な会話劇。圧倒はされるが、翻訳劇特有の問題はあるように思う。ロンドンのさびれたアパートに住むキラ(蒼井優)の所に、元不倫相手だったトム(浅野雅博)の息子エドワード(葉山奨之)が訊ねてくる。妻が死んで、不安定な父トムを助けてほしいとのこと。その夜、トムもキラの所を訊ねて、2人の出会いから関係からを振り返るが…、という物語。何と言っても、2幕休憩ありとはいっても2時間半ほどの間、出突っ張りの蒼井優が凄い。ほぼ、その相手を剃る浅野も凄いが、蒼井はスパゲッティを作ったりしながらの演技で、確かにそこには圧倒される。
ただ、ロンドンの物語なので、今キラが住んでる場所がどういう場所か、かつてトムや家族といた場所がどういう場所か、キラとトムの階級がどう違うのか、それがどう影響されたのか、等々、文化的な差を埋められているかと考えると、ややそれは疑問だ。プログラムで説明されてはいるが、翻訳劇にありがちが文化や宗教の差が重要な意味を持つ作品だと思えて、残念な気持ちが残る。
へたくそな字たち
TOKYOハンバーグ
座・高円寺1(東京都)
2018/12/05 (水) ~ 2018/12/12 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/10 (月) 19:00
劇団は初見だが、再々演だそうで、劇団として自信のある作品らしい。夜間中学を舞台にした作品だが、真摯に夜間中学を取り上げていて、いかにもなエピソードの連続だが、役者陣の好演もあり、飽きることなく観ることができた2時間だった。手紙を出す、という宿題を出された生徒(と言っても成人ばかり)達が戸惑う様子や、丁寧なセリフの吟味など、誠実に芝居作りに向かっているのが分かる。
SHIP
浮世企画
APOCシアター(東京都)
2018/12/04 (火) ~ 2018/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/07 (金) 19:30
浮世企画久々の本公演は大ヒットだった。バザー出品物を作るのに集まった30代女子が4人。他愛もない会話の中で、徐々に明らかになってくる各々の過去のダークな部分が、フラッシュバックのように挟み込まれる、…、という手法で、ある意味等身大の30代女子を描いている。役者陣のフィット感もあり、本音なのかセリフなのか分からないような場面もあり(もちろんセリフなのだが)、楽しめる90分だった。
ただし、アフターイベントは余計だと思う。
逢いにいくの、雨だけど
iaku
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2018/11/29 (木) ~ 2018/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/12/06 (木) 19:30
iakuらしい素敵な時間を過ごすことができた。10歳の時に、ある事件で加害者になった女の子と、被害者になった男の子。その現在と27年前の子どもの頃と交互に時間軸が動き、それぞれのエピソードの積み上げで物語を紡ぐのは横山らしい手法だ。加害者・被害者とその周辺の人々の誰に対しても共感できる部分があり、ある意味で悲惨な話なのだけれど、気持ちよく2時間を観ることができる。
ゼブラ
ONEOR8
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2018/12/04 (火) ~ 2018/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/12/05 (水) 19:00
初めてONEOR8を観たのが、TOPSでの『ゼブラ』(のおそらく初演2005年)だった。そのときもすごい芝居だと思ったが、今回も見事な芝居だった。父が浮気して母子家庭となった4人姉妹の母が亡くなり、葬儀の準備をするのだが、時に時間軸が動いて子ども時代に戻ったエピソードなどが繰り返される。一人残される三女を演じる冨田直美が秀逸。エンディングが印象的だった初演とは終わり方が違っているように思ったが、勘違いか?それでも、心に残る舞台である。
日本の歴史
シス・カンパニー
世田谷パブリックシアター(東京都)
2018/12/04 (火) ~ 2018/12/28 (金)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/04 (火) 18:30
『日本の歴史』を期待して観に行くと肩透かしを喰らう。単純に日本の歴史を扱うのではなく、テキサスの一家の歴史を、日本の歴史と比較して描く、という変わった手法で、歴史は繰り返される、というメッセージを伝えているように思った。しかも、それを7人のミュージカルで、というのだから、役者陣は大変だが、面白い舞台ではあると思う。
毒づくも徒然
MCR
OFF OFFシアター(東京都)
2018/11/20 (火) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/02 (日) 19:00
新作の『親展』を観た。パンクバンドをやってる4人と、そのそれぞれの恋人との物語。MCRらしく一筋縄ではいかない恋人たちの関係だが、そこの機微をキレ味あるセリフで紡ぐ。今回観た他の2本と少し違って、全体に温かい笑いが多く、エンディングもハッピーになってる。何となく、シンクロ少女の『LOVE』シリーズを思い出した。
間の女(再演)
めがね堂
RAFT(東京都)
2018/12/01 (土) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/02 (日) 14:30
初演も観たが(https://stage.corich.jp/watch/331612/stage_comments)、また少し違った芝居になっていた。テキストはそのままなので、1人の男を巡る2人の女を永井久喜が演じ分ける、という展開で、巧みな物語と永井の圧倒的な演技力を感じさせてくれる点は変わらず。ただ、今回のラストシーンは、乱歩の「お勢登場」のお勢が永井に乗り移ったような終わり方だと感じた。演出か、永井の変化か、それとも気の所為か(^_^;)。
毒づくも徒然
MCR
OFF OFFシアター(東京都)
2018/11/20 (火) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/11/30 (金) 19:30
『リフラブレイン』を観た。ちょっと常識の壊れた、両親を亡くした姉弟の物語。今で言う「共依存」の関係を描いたと言えなくもないが、次々と襲いかかるエピソードは、どれも切なく苦い。MCRらしいセリフやら、常識外の人々の登場など、笑えるけれど笑っていいのか、という気持ちになる。エンディングのわたなべあきこのセリフは、ハッピーエンドと言って良いのだろうか。
青いプロペラ
らまのだ
シアタートラム(東京都)
2018/11/29 (木) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/11/29 (木) 19:30
「らまのだ」らしい、いい芝居だった。金沢の南にあるスーパーのバックヤードが舞台の群像劇。近所に大型ショッピングセンターができるというので、対応に苦慮する店員達だが、何故か緊張感は薄い。その緊張感の薄さから、結局は…、という展開はいかにもありそうな物語である。細かいエピソードの積み上げから、過去の事情も明らかになっていくのも巧い。時計を細かく交換して時間経過を示す演出も面白い。「青いプロペラ」というのは扇風機の羽根のことだが、これが実に秀逸なタイトルだ。
ロミオとジュリエット
森崎事務所M&Oplays
本多劇場(東京都)
2018/11/20 (火) ~ 2018/12/16 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/11/27 (火) 19:00
宮藤官九郎の演出で三宅弘城がロミオとあっては、一筋縄ではいかないかと思ったら、意外に普通にロミジュリをやってた。もちろん、ギャグを入れたり笑いを取る演出が随所に折り込められてはいるのだが、松岡訳のシェイクスピアそのもののセリフを高らかに語るシーンもあり、それが意外に前後とマッチしていて、面白く観ることができた。初舞台の森川葵は初々しくジュリエットを好演。だが、ではなぜ今ロミジュリ?、とは思った。
毒づくも徒然
MCR
OFF OFFシアター(東京都)
2018/11/20 (火) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/11/26 (月) 19:30
『櫻井さん』を観た。面白かった。最近MCRを観始めた私だが、過去の作品も面白いものがあるのだという発見があった。詩人を夢見る青年の悲しい物語で、最近のMCRとは少しテイストが違う気がするけれども、時間軸が動いたり、家族や周辺の人々の行動がシュールだったりというあたりは、最近の作品とも共通する。ちょっと切ない気分になるのは珍しい気がした。
贋作 桜の森の満開の下
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2018/11/03 (土) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/11/25 (日) 14:00
ひょんなことから千穐楽のチケットが手に入って4度目の観劇。千穐楽だけに出来も良く、カーテンコールが何回も続いた。初演から観ている友人3人と終演後に少し話した。初演では、匠の技の競い合いを軸に、夜長姫と耳男の物語という面が強かったけれど、今回は国造りの物語に軸を動かした印象があるというのが皆同じ見解。そのために、印象的だった「好きなものは、呪うか殺すかしなければ…」というセリフが減っていたのだという話が出た。フランスに持っていくからだろうか、等の推測がいろいろ出た。
私のイスラム・燈・その他の短編
Ammo
SOOO dramatic!(東京都)
2018/11/22 (木) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/11/23 (金) 18:00
Nヴァージョンを観た。面白かった。何と言っても組み合わせが良い。
リーディング『私のイスラム』は、イスラムに改宗しようとするOL女子を巡る物語だが、日本人の「宗教」観が、あるある話で繋がれて、イスラムになることの特殊性と普遍性の両面が見える。
その上での再演『兄は原理主義者になった』は、イギリスBBCのドキュメンタリーに題材を取った実話ベースの物語だが、日本でない国でのイスラムの有り様や、宗教に対する文化的差異が現れてくるようで、興味深く最後まで緊張感をもってみることができた。かつてtrashmastersでイスラム教徒の役を演じた川崎初夏が母を演じていたのは面白かった。妖精みたいな不思議な存在を演じることが多いレベッカが感情表現の激しさを見せる力量を見せ、成長を思わせた。
「実は素晴らしい家族ということを知ってほしい」(仮)
株式会社PFH Entertainment
新宿シアターモリエール(東京都)
2018/11/21 (水) ~ 2018/11/28 (水)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/11/23 (金) 14:00
福澤重文,宮下貴浩がその都度劇作家を選んで公演を行なう2作目だそうだが、今回は東京マハロの矢島弘一に依頼。「いい話」が展開される。終末期の患者を入院させる病院で、患者を殺したと批難される看護師の家族の物語。当の看護師は自殺未遂で植物状態になったということで登場せず、3年半を経て亡くなるのだが、それまでに兄・看護師・妹と看護師の夫、その愛人、耐えられないで逃げ出した母と愛人、など、さまざまな人物が次から次へと逆転技を繰り出し、最後はややいい感じで終わる。矢島らしい物語とは言える。
男優を目当ての女性客が多い中で、女優ファンとしては、女優陣の充実ぶりが嬉しい。軸になる妹役の佐津川愛美がますます巧い役者になっていたのは見事だ。母役で久々の舞台となる山下容莉枝は大事な場面での存在感は見事で、夫の愛人役もたい陽子はいつもと少し違った「いい人」の役を演じる。兄・夫の旧友である山本真由美は大事なシーンで無色な役を演じる。斎藤ナツ子も重要な役割を好演するが、2シーンしか登場しないというのは勿体ない。
誰もいない国
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/11/08 (木) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/11/22 (木) 18:30
ピンターの不条理劇だが、あれだけのセリフを重ねても何も解決しないのは、ピンターらしいとしか言いようがない。会話が成立しているようで、全く筋が通らない、というのがピンターっぽい、と私は思っているのだが、1幕65分の最初と後半でハースト(柄本明)のキャラクターが一変し、15分の休憩を挟んだ2幕55分でも変化する。何が本当なのか、全く分からず終わるが、不思議な感触を残すのは、個々の役者の力量と言えるだろうか。水を効果的に使った美術と照明は見事で、公共劇場らしい存在感を見せる。