jokermanが投票した舞台芸術アワード!

2020年度 1-10位と総評
人人

1

人人

くによし組

 凄かった(-_-;)。こんなにシリアスなくによし組は初めて。ポップに上演されているが、テーマは重く、考えさせられる内容だった。

真夏の夜の夢

2

真夏の夜の夢

東京芸術劇場

 野田らしい言葉遊びに溢れたシェイクスピアの脚本を、ブルガリアのブルカルーテが演出。楽しい舞台だった。
 92年に野田がシェイクスピアの戯曲を潤色して演出したものが初演だが、80年以降の野田作品は全て観ている私が唯一見逃していたのが本作である。その意味で、演出は違えど期待して観に行ったのだが、それに違わぬ見事な舞台だった。野田の潤色は、物語の骨格は活かしつつも、舞台を日本の料亭と富士の森に移し、パックだけでなくメフィストも登場させ、劇中劇で不思議の国のアリスをも登場させて、3つの物語を巧く溶き混ぜた、祝祭的な楽しい脚本だった。それをブルカルーテは、映像も巧く使い、役者の肉体を通して見事な舞台にしていた。
 軸になる女優2人、鈴木杏は貫禄とも呼べる存在感で、北乃きいの舞台は初めて観たが、鈴木とは違った色をしっかり出していた。今井朋彦と手塚とおるという名優2人のシーンにはゾクゾクした。

対岸の絢爛

3

対岸の絢爛

TRASHMASTERS

 トラッシュの新作があまりにも凄かったので、2度目の観劇。やはり凄かった。3つの時代,3つの場所を、家族の物語として繋ぐ構成力ある戯曲が魅力的だが、加えて、それを体現する役者陣も熱演だと思う。同じ役者が異なる時代に異なる役割を演ずることで、ある種の連続性を感じさせる芝居が作り上げられていると、改めて感じた。3つの時代で全く異なるキャラクターの役を演じた長谷川景と、物語を動かす役割の藤堂海という、2人の若手の活躍が目に止まる。
 休憩なし2時間40分というのは、初心者に勧められるものではないが、あえて勧めておきたい。是非観て欲しい。

好きな子として、生きていく

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好きな子として、生きていく

怪奇月蝕キヲテラエ

 女流棋士の世界を扱った作品で、劇団名に反して真当で見事な舞台になっていた。観るべし!プロを目指す女流棋士の明日香は、女流1級の雀と一緒に、普及のためのユーチューバーとなり、次々に動画を公開し、徐々に人気が出てくる。しかし、ある事件が…、ということで、前半は女流棋士の置かれた立場や棋士たちの個性豊かな性格が描かれ、後半は事件を巡る様々な思惑を描いているのだが、そのバランスがよい。女性のみ11人のキャストも熱演だし、このために将棋を学んだという主宰の三浦には頭が下がる。タイトルは『好きな事して、生きていく』の謂いだと思う。こんな素晴らしい舞台に空席があるのは勿体ないと思う。
 また、定時開演を宣言し、都営新宿線の遅延で開演を遅らせたいが都合のある方はいますか、と事前に聞くなど、真摯な態度は、他のダダ漏れ的に開演を遅らせる劇団に、是非とも見習ってもらいたいものだ。

NO.4 『バクステ!3rd stage.~舞台裏にも「スタッフ」という演劇人がいる。~』

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NO.4 『バクステ!3rd stage.~舞台裏にも「スタッフ」という演劇人がいる。~』

エヌオーフォー No.4

 小野寺ずる出演というので観に行った。いやーーー面白かった。昨年、2作品観たNo.4(エヌオーフォー)というユニットだが、2時間がアッと言う間に過ぎる演劇愛に溢れた舞台だった。観るべし!
 「3rd」とあるように、2018年に初演、2019年に再演したものの再々演だが、過去の作品は観てない。とある舞台の劇場入りからの3日間、仕込みの初日を30分、場当たりの2日目で30分、ゲネプロと初日開けの3日目を1時間で、その間のスタッフルームでのさまざまな出来事やあれやこれやを、笑わせながらも時折泣かせ、感動させてくれる作りが巧い。主人公は一応、制作助手役の上坂(納谷健)だが、群像劇としてよくできた脚本である。登場人物それぞれに物語がしっかりあり、終演後も各々のキャラクターを思い出すことができるほどに巧い。役者陣もしっかり演じ、芝居を楽しく面白く感動的なものにしている。
 最も感動的だったのは、部外者的な立場の特典映像撮影者の阿久津の発する「観客がいてこその演劇」というセリフ。これはコロナ禍で苦しむ演劇人の言葉でもあるし、先日PARCOで観た「大地」のテーマと同じとも言えそうである。
 期待の小野寺ずるは、クールでプロフェッショナルな照明助手を演じ、力量ある所を見せてくれた。
 座席は市松模様だが、この半分の座席すら埋まっていないのは残念でならない。

痴人の愛 ~IDIOTS~

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痴人の愛 ~IDIOTS~

metro

 初演も観たが、再演はグレードアップして、見事な舞台だった。
 谷崎潤一郎の小説を舞台化したものだが、原作のテキストを活かしつつ巧妙な劇作である。オープニング、痩せた男(影山翔一)が人形劇の舞台を持って登場し、語り手(サヘル・ローズ)の語りで物語は始まる。譲治(若松力)とナオミ(月船さらら)の物語は、最終盤から始まり、人形劇は時間軸に沿って、現実の演技は時間軸を逆上るように構成されている辺りが巧い。ナオミの立場から見た物語、というのも理解できる。初演ではおっかなびっくりに見える演技をしていた月船が、今回は確信を持って演じているように見えたのだが考えすぎだろうか。

赤鬼

7

赤鬼

東京芸術劇場

 書き忘れていたが、14日に2度目の観劇。Dグループだったが、いい出来だった。
 先日観たAグループとは演出も随分と違っていたのだが、構造がしっかりした緻密な脚本なので、あるレベル以上の演者が演じれば一定以上の出来になる、優れた戯曲だと改めて思った。

ひとよ

8

ひとよ

KAKUTA

いい芝居を観せてもらった。余裕のある人は観るべし!
 2011年にトラムで初演、2015年にザ・スズナリで再演した戯曲を、昨年、映画化されたことをきっかけにしたのか、再々演した。初演も再演も観ているけど、映画は観てない。
 田舎のタクシー会社を舞台に、超DVな夫を、長男・長女・次男という子どもたちを救うためにも、殺す決断をした母親が、15年ぶりに帰って来る。自分が夫を殺したことで全てうまくいくと信じた母親と、殺人者の母親を持ったことで全てがくるった子どもたちとの落差や、周囲の人々の善意と世間の悪意やらの擦れ違いをも巧妙に描く。KAKUTAにしてはややダークな作品だが、人間を信じる終盤への展開は緊張感を持って観ていられる。
 母親役が岡まゆみから渡辺えりに変わったが、それでテイストは変化するものの、良い舞台としてしっかり成立してる。初演からまいど豊が演じる、過去を持ってるらしい新人ドライバーがいい。複雑ながら気持ちよく帰路に付ける作品だった。

夜盲症

9

夜盲症

柿喰う客

 久々に観た柿だが、柿らしい楽しい舞台だった。
 本来は5月に予定された女優のみ9人の公演だが、コロナの影響で半年延びたものである。オープニングから、女優本人として出ているのと、役を演じているのとの混在で、演劇的トリックが満載。この時期らしくコロナ対策を考慮しているようでもあり、また脚本を削ったとのことで、どの部分が残り、どの部分が加わったのかを楽しむ興味もある。主に若手の永田と福井を軸に物語は展開されるものの、9人それぞれに見せ場を作るあたりも巧い。役者陣も役割をしっかり演じ分け、見応えある62分だった。

イケてるともだちX

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イケてるともだちX

なかないで、毒きのこちゃん

 メタ演劇的な手法が多い同劇団には珍しい(と私は思うのだけど)、物語のある芝居を面白く観せてもらった。と言っても、同劇団らしい趣向に満ちたものだった。4つの独立した物語が立ち上がり、それが緩やかに近づきながら、最後は収束する作りは巧いし、エンディングの舞台の作りも見事だし、大いに笑いつつ楽しく観ることができる舞台だった。大島朋恵のコメディを観るのは久しぶりという気がする。

総評

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