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『瓶に詰めるから果実』『プラスチックは錆びない』

『瓶に詰めるから果実』『プラスチックは錆びない』

埋れ木

北池袋 新生館シアター(東京都)

2019/08/28 (水) ~ 2019/09/03 (火)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/08/31 (土) 14:00

『プラスチックは錆びない』観劇。
詳細はネタバレBOXにて。

ネタバレBOX

合宿にやってきた大学生たちの夏の恋の物語。

大学生というのは人生の中でも、なかなか、特異な
立ち位置であると思う。
法的に成人として認められているが、社会的な地位と
しては学生。
同じ学生とはいえ高校生とはまるで違う。

高校生を主人公にした『瓶に詰めるから果実』(以下『瓶』)
と大学生を主人公にした本作『プラスチックは錆びない』(以下『プラ』)

どちらも「楽しむ」ということについて終始、考え、
その思いを吐露していくが、その表現の仕方、世代における
差別化が実に見事でリアルだと思った。

双方ともに見ているこちらが、良い意味でむずがゆくなるような
もどかしくなるような、その辺りのさじ加減は、さすがと感じた。

ただ『瓶』の方が心の葛藤を描くという意味では軍配が上がる
気がする。
『プラ』の方は終始、問いかけがありつつも、そこまで重い感じには
ならず「まぁ、いいんじゃないの」という方向に流れていく。
個人的には、もう少し、お互い、悩み、苦しみ、ぶつかってほしい気も
したが、全編の流れを鑑みると、この作品でそれをやるのも
また少し違うのかな、という気もした。

『瓶』も然りだが、本作も実に気持ちよく爽快に終幕を迎える。
それぞれが思いを一歩進めたいと思っていながらも、不謹慎という
壁を目の前にし、進むことを躊躇する中、例え、自身の都合で
あったにせよ、川口の説得の結果として、それぞれが幸せを手にし、
まさに「楽園」を作り出す。
だがその生みの親たる本人は、ただ一人、思いを遂げることはできず、
自らが作った楽園に足を踏み入れることなく、ただ、外から眺めるだけ。
その理不尽さを見捨てることができなかったほたるの思いと行動力は
驚嘆に値するし、その呼びかけに答えようと一致団結する彼らの
友情に、何だか、直視できないほどの眩しさを感じてしまった。

淀川演じる五十嵐さんの演技は終始、圧巻。
あの眩しい笑顔の虜になったのは、おそらく、自分だけではないし、
終盤の川口への絶叫に近い語りかけと、物足りない気持ちを促す
その繊細な演技に、思わず涙したのも自分だけではあるまいと思う。

夏の終わりにふさわしい、実に爽やかな群像劇。
大変楽しませて頂きました。

素晴らしい舞台をありがとうございました。
埋れ木さん、大好きです!!
次回はTシャツちゃんと着ていきます。
約束したので。
『瓶に詰めるから果実』『プラスチックは錆びない』

『瓶に詰めるから果実』『プラスチックは錆びない』

埋れ木

北池袋 新生館シアター(東京都)

2019/08/28 (水) ~ 2019/09/03 (火)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/08/29 (木) 19:30

『瓶に詰めるから果実』観劇。
詳細はネタバレBOXにて。

ネタバレBOX

ある演劇部を舞台にした破壊と再生の物語。
部長選挙をきっかけに「楽しむ」という個としての感情を
重んじるのか「部活動」という集団としてのゴールを重ん
じるのかという、身近にありつつ、なかなか解決が難しい
課題がテーマ。

「部活動」を「仕事」に置き換えながら観た人も多い気がするし、
自分もその一人。
ただ金銭のやり取りが発生する仕事ではなく、部活を主軸に
したところがこの演劇の肝だと思う。
だからこそ、話は抉れ、登場人物は悩んでゆく。

非常にリアルな人間模様に息を呑んだ。
集団の目標達成のためには個としての感情を脇に置くべし。
その理想に賛同する人間だけが残れば良いという、原理主義者
とも言える沢村。

個としての快楽を追求し、結果として良い演劇が出来れば
それで良いとする土居たち。

まさかの立候補を果たした親友に協力を求められつつも、
その実、沢村の思想に傾倒する坪内。
アウトサイダーに徹しつつも要所では気にかける福田。

各々の思惑が複雑に絡み合う中、単純化すれば打倒沢村
を軸にして話は進むが、学生ながら傀儡まで立てる策を
打ち出すことには正直驚きもしたし、これが劇中の緊張感を
一層深めていた。

とは言え、彼らは、結果として「良い演劇を披露する」ことを
目標にしており(それが副次的な結果であるとしても)、
そう言う意味では沢村も含めてみんなが同じ方向を向いているのは
分かっているので、ゴールに至る手法については大きな隔たりが
あるものの、完全に白と黒を分けることが出来ない。

沢村打倒の策を打ち出す中、彼らが繰り広げる「楽しむ」ことへの
議論は非常に深く、議論を重ねる中で、各々が定義する「楽しむ」
が揺らいでゆくその過程と共に、当初の相関図が少しずつ崩れて
いく姿に、この舞台はいったいどうやって収束させるつもりなの
だろうと、非常にハラハラしながら見守ったが、最後はキレイに
まとまりハッピーエンド。

バッドエンドにはならないと思ってはいたが、最後まで良い意味
での緊張感を強いられた。

とにかく人間描写がリアルだなという印象。
彼らの振る舞いに演劇的な嘘くささがなく、自然。
特に沢村の、彼の言うところの「失敗」から形成される理想主義と
いうにはあまりに強硬な思想は「この分からず屋め」という思いが
ありつつも、私自身がこういう経験をしているので、彼の心情と
いうのは非常に共感できた。

彼が最後には、彼にとっては非常に勇気のいる告白と共に、妥協
を示す姿勢を万座の中で見せた事は個人的には、彼が大きな一歩
を踏み出したと言う事なのでとても嬉しかった。

ただ、沢村と坪内の絡みについては、もう少し時間を割いても
良かったように感じた。
尺の都合もあるので難しかったのかもしれないが、沢村陣営と
反沢村陣営とのシーンバランスは少々偏っていたかなと言う気はする。

平井の成長ぶりも驚きであると同時に見所が多かった。
何となく傀儡に仕立てあげられたものの、そこに悪意がないことも
あって、わりとあっさりと受け入れてしまう。
そのまま進むのかと思いきや、彼女は沢村と対峙する姿勢は変わら
ないものの、傀儡としてではなく、自らの意思で考え、そして、
自らの意思で立ち上がり、正々堂々と沢村、そして親友の坪内に
言うなれば宣戦を布告するシーンは、ホロリと泣けてしまった。
たなべさん、圧巻の素晴らしい演技だったと思う。

ある意味で最もリアルに感じたのは土居。
打倒沢村の急先鋒でありながら、自らそこに立つまでの熱量はない。
そこで平井という傀儡を立てて、思うように操ろうとするが、
そこに邪悪さは全くなく、ゲーム感覚で楽しんでゆく。
最後にはミイラ取りがミイラになるかのように興奮に乗じて自らも
立候補を果たすが、快楽主義者としての彼の有り様と言うのは、
高校生という若くエネルギッシュな世代である事も合わせて考えると、
非常にシンプルで、その姿には個人的には終始、好感を持っていた。

もう登場時から役どころが見えていた顧問の福田の存在もとても良かった。
昼行灯のような立ち位置ながら、要所では、しっかりと部員を締める。
終盤、沢村に告白を促すシーンは、緊張感があってとても良かった。
必要最低限の干渉にとどめつつも、しっかりと捌いてみせる器量は
名マネージャーのそれで、気持ちが良かった。

全編通じて感じたのは、言葉にしがたい思い、あるいは行間の表現が
非常に巧みだと言う事。
そういうものを台詞で表現するのは難しいように思うのだが、高校生
という、まだ成熟しきっていない世代ならではの拙さも見事に取り入
れて、非常に見応えがあった。
同様の展開は『プラスチックは錆びない』にもあるが、登場人物の世代が
違うこともあって、その表現技法は明確に差別化していて、両作品
ともに観劇後に振り返ると、改めてその巧みさに舌を巻く。

久保さんの脚本、演出は過剰にならず、説明的過ぎないところが、とても良い。
そして相変わらずタイトルセンスが抜群。
埋れ木さんの存在を知らなかったとしても、タイトルセンスだけで
劇場に足を運んでいたかもしれない。

今回も素晴らしい舞台をありがとうございました。
金星

金星

gekidanU

アトリエ5-25-6(荒川区南千住5-25-6)(東京都)

2019/04/20 (土) ~ 2019/04/29 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/04/29 (月) 14:00

平成最後の観劇は家公演。
日常と非日常の境界が取り払われる貴重な体験でした。
以下、ネタバレboxにて。

ネタバレBOX

平成最後の観劇。
きっかけはまたしてもフライヤー。

前日、前々日に、
「いつもの致死量」
「私の娘でいてほしい」
という傑作を観てしまっていたので、申し訳ないけれど、
この2作を超えることはないよなぁと、なんとなく思いつつ劇場へ。

と言ってもこの作品、劇場と言いつつもごく普通の一軒家のリビングで
観劇するというスタイル。
家公演というのは事前に知っていたけれど、ほんとに普通の家。
全員合わせて20名くらいが壁際に分散して座って観る。
当然のことながら席は狭い。

その変わった趣向に期待するというよりは、正直、不安になる。
自分は、例によって一番後ろの端の席を選択したのだけれども、
結果的にその位置からだと、リビング全体が見渡せる。
開演までの時間、リビングの端のキッチンではエプロンをした女性が
卵焼きを作っていた。
あまりにも当たり前のように作っているので、私はてっきり、主催の奥様が
観客用に料理をしているのだと本気で思った。
家公演なるものも何回かやっているようだから、もうすっかり慣れてる
んだろうなぁなんて。

それを横目にしつつ、なんかこれ意味あるのかなぁとちょっと
思い始める。
一軒家で舞台をやるのは確かに面白いけど、なんというか、色物的な
面白さで、ちょっと本筋とは違うよなぁなどと思っているうちに、
開演時間。

なんとさっきまで料理をしていた女性は奥様ではなく役者様だった。
まさかの開演前からすでに本編は始まっていたのだ(卵焼きが食べられなくて残念)。
少しすると、こんにちはという挨拶とともに女性が一人入ってくる。
そのおずおずとした姿勢に、これは本当に本編なんだろうか、それとも
実はこの人はリアル客人なんじゃないだろうかと頭が混乱し始める。

仕掛けとしては、本編の舞台はキッチンも含めたこのリビングであり、
そこに陣取っている我々観客は、演者の視界には存在しない。
舞台と客席を分割しているのではなく、舞台の中に我々が堂々と存在している
格好なのである。

こうして言葉にしてみると、ふーん、そうなんだ的なイメージしか
わかないが、この没入感はとにかく凄まじい。
現実と非現実の境界が非常にあいまいになり、不思議な感覚に襲われる。
もうこの時点で、見事なまでに主宰の術中にがっちりはまった。

失踪した夫を探すために集められた夫とつながりのある人々。
産んだ記憶のない娘を名乗る少女。
見ず知らずの他人同士が、会話を通じて失踪の謎を解きほぐしていくの
だけれど、この会話が秀逸。

没入感が高い故もあるのかもしれないけれど、会話のリアリティが高い。
登場人物の設定もリアルで大袈裟な感じもない。
なんというかフードコートで、隣のテーブルが丸聞こえ状態のような
ある意味自然な感じ。
必要以上に声を張る必要もないから「演劇っぽい話し方」は全くない。
家公演というのは、こういう効果もあるのかと、ちょっと感動。

謎が謎を呼ぶような話の持っていき方もリズム感があり、中だるむような
シーンもなかった。
核心に向かって物語は加速していくが、その加速具合も絶妙であった気が
する。

とにかく演者の皆様が素晴らしかった。
中でも圧巻はダブル美月さんの木村美月さんと森谷美月さん。
対照的な役どころではあるのだけれど、主治医(ミドリ...だったかな)
がキレるシーンは距離感が近いせいもあるんだろうけど、こちらが
震えるような緊張感。
一方で、ガールズバーの店員(スイ...だったかな)が、雨が未来から
やってきたことを確信してからの、雨に対する接し方が慈愛に満ちて
いてグッとくる。
特にメイクするシーンはちょっと込み上げてくるものがありました。

最後は一応はハッピーエンド。
みんなで食事をするシーンは、ふんわりとした優しさに溢れていて
良かったけれど、そこから離れて佇むスイの姿がなんともほろ苦い。
音楽的な演出と相まって、とても印象的なシーンに仕上がっておりました。

さて、今回は勇気を出して、一部の役者様たちにご挨拶を。
小学生みたいな感想しか言えなかったけど、役者様と言葉を交わすというのは
貴重な体験でした。

平成の最後を飾った『金星』。
前日、前々日に観た別の演劇に引けを取らぬ名作でした。
観劇出来て本当に良かった。
役者の皆様方も、引き続き、追いかけていきたいと思わせる
素晴らしい演劇でした。
私の娘でいて欲しい

私の娘でいて欲しい

劇団皇帝ケチャップ

浅草九劇(東京都)

2019/04/27 (土) ~ 2019/04/29 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/04/28 (日) 12:00

号泣必至の傑作。
ネタバレ満載のためネタバレboxにて。

ネタバレBOX

例によって観劇のきっかけはフライヤー…ではなくて、
確かTwitterだった気がする。
観劇を趣味にしようと思い始めて、Twitterで情報を
集めている時に、たまたま、目に留まり、なんとなく
気になって、そのまま予約した様な記憶がある。

前日に「いつもの致死量」という傑作を観てしまって
いたため、いくら初心者の自分であっても、一時的に
目は肥えてしまっていた気がする。
そんな中での観劇。

とにかく全編通じて、登場人物がしゃべる、しゃべる、
しゃべりまくる。
無音の時間というのは、ほぼ無いに等しく非常に忙しない。

実生活でも基本的に自分よりも高いテンションで畳みかけ
られるのが苦手な体質なので、超序盤での感想は、
「これはちょっと苦手な作品かも…」
というのが正直なところ。

硬軟、織り交ぜてのストーリー展開ではあるけれど、セリフ
回しや雰囲気的に言えば、硬軟のバランスは圧倒的に軟が高い。
ちょっとバランスが悪いなぁなどと思いながら観てはいたが、
話が進むにつれて、面白おかしい展開ではあるけれど、扱っている
内容は決して面白おかしくないことに気づき始める。

両親の離婚と再婚。
そして再婚相手も極めて近しい人物。
節目の誕生日のたびに、ショッキングな事実を明かされる主人公。

これ、こうして文字に起こしてみるとよくわかるように、
題材としては、かなり重い。
普通に扱えば、間違いなく、本編は重苦しい方向にと進んでいく。

それをコメディタッチでありつつも、最終的に優しく、そして
愛にあふれたラストへと持っていくがシリアスになりすぎなくする
ための方程式の解として、この硬軟のバランスを弾き出したのであれば、
これはすごい緻密さだなと思った。今振り返ってみても(二日しか経って
ないけど)、これは本当にすごいと思う。

いつも観劇の時は、わりと後ろの端を選択することが多いのだけれど、
今回は全席指定で、割り当てられた席は、前から2列目の中央付近。
うわー、近いーと思いながら観劇。
目の悪い自分でも、全ての登場人物の表情まで分かる距離感では
あったのだけれども、終盤の誕生日のシーンで皐月が涙ながらに
陽子に心中を吐露するシーンは、まったくもって圧巻。
ポロポロではなく、ボロボロと落ちていく涙が席から見える。
彼女のみならず、周りの人物ももらい泣き。
もうあれで完全にノックアウト。涙腺崩壊。
もともとそんなに強い涙腺ではないけれど、身体が震えるほどに泣いたのは
観劇史上初。自宅だったら声に出して号泣していたと思う。

いやー、参ったな。ちょっと恥ずかしいな。と思う間もなく、自分の
周囲からは啜り泣きの大合唱。
安心して引き続き泣けました。

印象に残っているシーンとしては、もちろん、その部分だけど、
それ以外で言えば、由紀子が皐月に一輪のバラについて諭すシーンと、
陽子と真奈美が子供たちについて語り合うシーン。
数少ない硬軟の硬に当たる部分になるんだろうけど、会話の行間に
それぞれの思いを感じた。

全編を通じてしみじみと泣かせるタイプというよりは、最後に一気に
爆発的に畳みかけてくるタイプの演劇。
なんというか、気持ちよく手玉に取られた感じ。
痛快無比の傑作でありました。


今回も例によって役者さんたちには挨拶することなく(チキンですいません)、
会場を後にしたのだけれど、ちょうど、場内に戻ってくる役者さんたちの
列に遭遇。
すれ違いざまに挨拶と会釈の中間くらいのふわっとした感じで一応、軽く感謝の
言葉だけ伝えさせていただいたが、陽子役の藤原澪さんにこちらの目を見て
ご挨拶していただけたことがとても印象に残ってます。
やっぱり素晴らしい舞台をみせていただいた以上、しっかりとこちらからも
挨拶したいなぁ。
令和の目標にします。
いつもの致死量

いつもの致死量

こわっぱちゃん家

王子小劇場(東京都)

2019/04/24 (水) ~ 2019/04/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/04/27 (土) 14:00

端的に言うと「愛と優しさにあふれた演劇」でした。
ネタバレ満載なので、ネタバレboxにて。

ネタバレBOX

観劇のきっかけは「降っただけで雨」の演技が印象的だった森谷
菜緒子さんが出演されていたから。
今回でご卒業とのことで寂しくも今後の飛躍を大いに願ったり。

チケットを予約していた時点ではフライヤーは出来ていなかった
気がするけど、タイトルが何といってもキャッチー。
本でも映画でも音楽でもわりとタイトルだけで選んじゃうくらい
タイトルマニアなので、そういう意味でも期待しながら観劇。

場所は以前行ったことのある王子小劇場だったので、なんとなく
場内の雰囲気をイメージしていったのだけれど、入場してまずは
その舞台セットにびっくり。
ありとあらゆるスペースを徹底的に利用し様々なセットが配置。
観劇回数5回程度の初心者だけど、これがすごいことだということは
何となくわかった(笑)。

映像作品であれば、場面の切り替えなんぞひどく容易なんだろうけど、
舞台、しかも、小劇場という限られたスペースでそれを実現するのは
至難だと思う。
だから自分がこれまで見てきた演劇(小劇場以外で観たことないです)
は、セットが一つで、物語はそこを軸に進められていたし、それが当然と
思っていた。
ところが既に目の前には5つのセットが用意。
あぁ、なるほど、こういう見せ方もあるんだとちょっと感動。
小劇場ゆえの制限の中で、どうやって場を演出するかも、小劇場ならではの
面白さなんだろうなと一人で納得。

私は何よりチキンなので最前列で堂々と見るなどということは出来ないタチ。
したがいまして入り口に近い最後列の端を選択。
普通なら結構みづらい席だけど、今回の舞台セットではこれが大当たり。
若干声は聞こえにくいものの(森谷さんの声は大きいのでよく聴こえる)、
あちこちで展開される物語を見るには絶好のポジションだった。

印象的だったのは開演前の来園者の誘導と気遣い。
入り口に近いところにいたので、見るともなしにその様子を見ていたん
だけど、とても親切丁寧、空調の温度まで気にされていて、あぁ、なんか
素敵だなと思った。

開演までの時間って単なる待ち時間かと思いきや、その演劇によって意外に
違うもので、ほんとに単なる待ち時間のものもあれば、退屈させないように
趣向を凝らしていたり、はたまた、実はすでに演劇の一部が始まっていたりも
するんだけど、今回は単なる待ち時間。
一番退屈なパターンであるにもかかわらず、全くそれを感じなかったのは、
場内に満ち満ちた期待のオーラ。
「今回は絶対に面白いに決まってるでしょ」
なんか、そう言っているようなオーラで、すっかり自分もそれに呑まれた感じ。
劇団、あるいは役者さんたちへの信頼に近いものも感じた。
そのワクワク感が退屈を遠ざけてくれた。
あんな経験は初めて。この時点で結構テンション上がる。

さて本編はといえば、アプリゲーム「MCM」とそれに絡んだ様々な人たちの物語。
立場も違えば、思想も違う。
それぞれの思いが複雑にぶつかりあい・・・という感じなんだろうけど、実際のところ、
そこまで激しいぶつかり合いはない。
もっとも激しい自己主張をしてくるのは進藤だが、彼女も決して頑固一辺倒なわけではない。
リアル社会にはもっとタチわるい連中はいくらでもいるし、娘を失った充も、頑なではあっても
決して非理性的な行動には出ない。
晴香や美羽という緩衝材的な存在があるにせよ、登場人物はみな、自身の思いを強く主張しつつも
決してわからずやではなかった。

要はみな大人なのである。
「十人十色」であることを潜在的に理解し、そして人を傷つけることを望まない。
それぞれがみな優しさと愛に満ちている。

登場人物の個性というものをもっとどぎつくしようと思えば、あるいはリアルに
はびこるわからず屋どもを再現しようと思えば、いくらでもできたと思う。
それをやらなかった理由は、それこそ脚本を書いた本人のみぞ知ることだけれど、少なくとも
自分は、明確な個性というものを登場人物に与えつつも、同時に彼らに「他者への愛」を与えた
その設定は非常に心地よく、どこか安心して終始、観ることができた。
書いた人の優しさがにじみ出る、そんな演劇であったと思う。

この演目を端的に表現するなら「愛と優しさにあふれた演劇」だろうか。
「いつもの致死量」という、どこかスリリングで抜群のセンスを内包したタイトルは、
観る前にはある種の痛みを伴う劇であろうという覚悟はしていたが、自分としては
決してそんなことはなく、とにかく優しさに満ちた劇であったと思う。

脚本を書いたトクダ氏の終演後の丁寧な挨拶を聞いて、あぁ、なるほど、この人だからこそ、
こういう劇がかけたんだなと納得。
この方が書く演劇というものをこれから先も、もっともっと見続けて行きたいと思った。

終演後のアンケートで気になる役者さんは?という項目もあったが、これはあまりにも
野暮というものでしょう。
選べませんって。
あなたの描いたキャラクタはみな素晴らしく魅力的で、愛と優しさに満ちている。
どうしても選べというなら全員。
本当にそう思える素晴らしい演劇だった。

演出的なことで言えば、同時多発的に舞台のあちこちで展開する物語の見せ方は
ほんとうにすごいと思った。
何というかちょっとアメコミでよく見かけるコマ割をちょっと連想させた。

印象に残っているシーンはいくつもあるけど、本筋の見せ場としてはやはり
ルイージのくだりだろうか。
本人にしかわからない理由があるからこそ、その人の行動を否定してはならない
ということは、至極当たり前のことではあるけれど、だからこそ、忘れがちで
思い当たる節がある自分としては、ハッとなる瞬間でもあった。

少し外れたところで印象に残っているのは、なんといっても木ノ下と須田の
終盤のやり取り。
木ノ下は間違いなく全編通じて一番の愛され男。
彼らのシーンになると、終盤は場内が一気に和んだ。

素晴らしい演劇でした。
DVD化されるなら観たいし、買うと思うけど、やっぱりこれは
劇場で観たい。
そんな作品でありました。

降っただけで雨

降っただけで雨

埋れ木

シアター711(東京都)

2019/03/21 (木) ~ 2019/03/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/03/23 (土) 14:00

23日。傘チーム公演を観てきました。
控えめに言って最高でした。
会話劇というやつになるのでしょうが、その会話のテンポが個人的には
心地よく、シリアス、コメディのバランスも完璧。
何よりも、登場人物がみな「愛すべき人達」であったことが良かったです。
議論を重ねつつも、相手を尊重する姿勢を崩さない。
終始気持ちよく観劇できたのは、その部分が大きかったかもしれません。
非日常の中で、日常を静かに問いかける傑作だと思います。

ネタバレBOX

時間を忘れた100分間。
ヒーロー物かと思いきや、劇中で提示される問題は、ごくごく身近に、そして、
誰にでも身に覚えのあるような問題。
それに対して登場人物たちは、各々の立場、視点から、各自の見解について
語っていきます。
この会話劇が、巷にあふれる会話劇と一線を画しているところは、自身の見解を
熱く語りつつも、決して、相手の見解を全否定しないこと。
立場、視点が変われば、当然、見解も異なるはず。
人の数だけ、正解があって、正義がある。
至極、当たり前のことではあるのだけれど、当たり前であるがゆえに、忘れがちなことでもある。
登場人物のすべてが、まずはそれを大前提として、議論が重ねられていることは、
私にとっては、ちょっとした驚きであるとともに、とても心地よく、彼らすべてを愛することが
出来た大きな要因になったと思います。

打ちのめすための議論ではなく、前に進むための議論。
そうして繰り広げられる彼らの議論は、緊迫感がありながらも、どこか安心して
集中して見守ることができたように思います。

それにしてもシリアスとコメディのバランスが本当に絶妙でした。
力でねじ伏せようとする笑いではなく、ゲリラ的に仕掛ける笑いがとても心地よかったです。
かと思うと、お笑い役の双璧を為すと思われた尾田や井上が中盤から終盤にかけて、核心を突く
見解を披露して見せたり、誰よりも先に前に進もうとしてながらも、揺れる胸の内を思わず
吐露したりするシーンは、なんともグッとくるものがありました。

私は傘チームしか観れていませんが、キャスティングも完璧で、どの方もはまり役だと思いました。
お世辞ではなく、本当にどの役者さんも素晴らしかった!
こんなに素敵な舞台を見ることができて幸せでした。
山の中、みたらし

山の中、みたらし

おにぎり、ください

RAFT(東京都)

2019/03/16 (土) ~ 2019/03/18 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/03/17 (日) 14:00

何を書いてもネタバレになるので、ネタバレboxにて(笑)

ネタバレBOX

1時間の劇とは言え密度は十分。
フライヤーのコピー、あらすじ、開演前のラジオ番組、あらゆる場所に
伏線が詰まっていて、2度観たくなるタイプの演劇。
気持ちよく作者の掌の上で転がされてきました。
タイムトラベルものだとは全く思っていなかったので、度肝を抜かれました。
とは言え、最初は分かったようで、分かってないような、そんな微妙な感じでしたが、
台本に書かれた年表を見て「うわー!」と腑に落ちました(笑)。
劇場の空気感もよかったです。
冒頭のラジオ番組が実は演出の一環であったことが分かった時、そして、終盤、
タイムトラベルものだということがはっきりした時の、劇場内の無言のざわつきは
観ている側のこちらも、とても心地よいざわつきでした。
私は小劇場でしか演劇を見たことがありませんけど、ああいう演者と客席の一体感は
小劇場ならではなのかなと思いました。

井浪の頑なに過ぎる態度は張り倒してやりたいくらいの頑なさでしたが、彼女同様
「周回遅れ」である私としては、彼女の頑なさには共感できる部分も多々ありました。
だからこそ、張り倒して、目を覚まさせてやりたいんですが(笑)。
牧原氏がそこはうまいことやってくれました。
彼の優しさに心からの拍手です。
『ワンダーランド、跡地』

『ワンダーランド、跡地』

遠吠え

王子小劇場(東京都)

2019/02/27 (水) ~ 2019/03/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/03/02 (土) 15:00

価格3,000円

きっかけは印象的なフライヤー。あらすじもどこか切なくミステリアスな印象でした。
人生で初めての観劇。
私の中で、演劇というのはどこかわざとらしく、仰々しいイメージがありましたが、
繰り広げられる物語や会話は、日常の中にあるそれと変わらず、
「あぁ、こういう人いるよな」と心の中で、ある時は苦笑し、そしてある時はいたく
共感し胸が痛くなるような思いもしました。
全般的な話として「舞台は目の前で繰り広げられる非日常的な世界が醍醐味」という感想を
しばしば見かけますが、この作品に関して言えば、私はむしろ「どこにでもある日常」を
感じました。
もう少し言い換えるのであれば「『こうであってほしい』どこにでもある日常」。
劇中の登場人物は、心中、色々な思いを抱きながらも、最後には私にとっては嬉しい選択を
してくれました。
鑑賞後、数時間を経て、ようやくこういう感想を書くことができていますが、終演直後は
ただただ幸せで、温かい気持ちで、それ以上の感想は思いつかず、アンケートに書いた感想は
子供以下(笑)
そのあたりが心残りではありますが、私の観劇デビューは、大変に素晴らしく、思い出深いものと
なりました。
素晴らしい舞台を演じていただいた劇団の皆様、劇場の皆様、ありがとうございました。

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