鯉之滝登の観てきた!クチコミ一覧

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幻想のリチェルカーレ

幻想のリチェルカーレ

フリスティエンターテインメント

キーノートシアター(東京都)

2019/07/25 (木) ~ 2019/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/07/26 (金) 19:00

16世紀ぐらいの話、21世紀中盤の学校の話、21世紀のオリンピックの架空競技を巡るドラマ、そしてそれらの話に大きく関与する未来の話と複雑な重曹構造で、そこに過去の人物や某アニメキャラのパロディなどの笑いの要素も盛り込まれていて、そして今までの4つのリンクする話が実は21世紀に生きる少女が仲の良い友達に自分が構想中の小説のプロットを話して聞かせていたという作りになっており、ここまで若手の小劇団で劇の構造が複雑で考えさせられる話を上演したと言うことに驚き、意外に感じた。最初ビジュアル的にライトノベルなどを下敷きにした2.5次元舞台のようなものかと思ったが、いざ見てみて中身もしっかりしていて見直した。老若男女誰が見ても、鑑賞に耐えうる、教養や知識があり複雑で自分が見ているものが本当か疑いたくなり、ダンスなどのシーンは非常に前衛的かつ実験的作品だと考える。

鬼〜贋大江山奇譚

鬼〜贋大江山奇譚

むさしの芝居塾

現代座会館(東京都)

2019/08/09 (金) ~ 2019/08/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/08/12 (月) 18:00

人は他人を鬼として見て生きているが、相手を貶め、思いやりのかけらもあらず、自分が幸せになる為なら、平気で人を裏切り、罵り、他人の人生を崩壊させ、自分が得をしていれば、他人がどうであれ無関心で良いのか、と私自身にこれらのどれか1つでも当てはまるものがあるか、あったとしてこれからそれにどう向き合っていけば良いのかと言うことを、この劇を通して、考える良い機会になった。

獄中蛮歌

獄中蛮歌

生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した

四谷OUTBREAK!(東京都)

2022/12/28 (水) ~ 2022/12/29 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/29 (木) 19:00

 檻の中にいる方が楽だろう?別に何不自由なく生きられる。だから何?お前らはそれで良いのか!?そうやって自分とちゃんと向き合わず、自分の殻に閉じこもったままで良いのか!?実際の監獄は勿論のことながら、心の檻からも脱獄しないと本当の自由は得られないという二重の意味を脱獄という行為に込め、教訓的じゃなく、押し付けがましくなく、ハイスピード、パンク・ロックあり、激しい社会批判や過激な言葉やえげつない言葉、大麻などを連発するラップを取り込んだ、ダンスあり、アクションあり歌ありの一風変わったミュージカルで、音楽も含めて、気付くと、その独特な世界観にのめり込み、自分も迷える囚人の一人と錯覚させられるほどに没入していた。

 囚人を演じているのは全員男優だったが、男優たちの実際の実生活やアルバイト、ホームレスなどの真実、男優たちの性格や感情の機微を個性的でアクの強い囚人たちの性格やその囚人たちの今までの生い立ちに、ところどころさり気なく混ぜられていて、抱腹絶倒したり、悲しくなったり、感動したりと感情移入し、あまりに俳優が演じる囚人に俳優が寄せてきている感があって、男優が囚人を演じているのか、それとも、囚人が男優を演じているのかの見境がつかないほど、肉体全身を使って全身全霊で表現していて、眼を見張る程見事だった。

 ロックやラップに乗せて2.5次元俳優を猛烈に批判したり、自虐があったり、社会、政治批判に、戦争批判、現状批判、常識に対して鋭く疑問を叩きつけたり、ディズニー批判に、しまいにゃ著作権問題に対して辛辣に批判、さらには個人的な恨み辛みもねじ込んでくるその無神経さ、図太さ、言いたいことを言う感じに、共感し、大いに笑い、時にハッとさせられた。
 『獄中蛮歌』というパンク・ロックな曲が劇の終盤とアンコールでも再び流される頃には私も、ノリに乗って、体中のアドレナリンが爆発し、公演が終わってもしばらくは興奮が覚めやらなかった。

人魚姫の庭

人魚姫の庭

マルチリンガル演劇実行委員会

あうるすぽっと(東京都)

2022/12/12 (月) ~ 2022/12/12 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/12 (月) 19:15

 アンデルセン童話の『人魚姫』を下敷きにした劇が始まる前に、あうるすぽっとという劇場のホワイエに入った瞬間から、劇のタイトル『人魚姫の庭』のイメージに沿った心地良くもなんだか妖しく幻想的で、美しい音楽が流れ、目の前には人魚の住まう世界を想起させるアートマーケットが広がっていて、その一種の美しき世界観に心を洗われる思いがした。
 また、劇が始まる前のオープニングアクトでは、一人の背の高い女性が踊っている間に、もう一人の女性が巨大な白紙に大きな筆でダイナミック且つ繊細に「夢」という字と今回の劇世界に多少寄せた絵を描いていて、その二つのパフォーマンスがあまりにもさり気なく淡々と、ごく普通に行われているのに、シュール且つ、凄いと感じた。

 アンデルセン童話『人魚姫』から大きく内容は変わらないものの、今回の本編の劇『人魚姫の庭』では、王子の住む人間の国、人魚姫のいる海底王国とは別に、新たに弱小の湖の国に住まう王女様を描き、さらに人魚姫の一連の悲恋の物語を旅芸人がその仲間たちに語って聞かせている場面を導入することで、この物語が多角的、客観的に見える視点を持ち得てきているように感じ、感傷的、自己犠牲的にイメージしがちであり、そういうふうに描かれがちなところを、新しい少し距離を取った視点を取り入れることで、新鮮に感じた。
 また、弱小の湖の国の王女が陸の人間の国の王子と結婚しないと、陸の国の人間の好奇心や欲望、野望のために戦争を仕掛けられて、王国を滅ぼされ、新たな支配地にされるのは時間の問題というようなことが劇中の台詞であったり、人魚姫のいる人魚の海底王国において、人間にこの美しくて平和な海の世界が見つかったら、きっと放ってはおかないだろう。私たちの世界を手に入れる為だったら、どんな手を使ってくるか分かったものじゃないというような台詞から、支配する側、される側、植民地主義や現在のアメリカ資本主義、格差社会、多様性やSDGSといいながら、とてもじゃないが色んな価値観や人種、生まれや性差などに対して社会が寛容になったとは到底言えないし、もちろん、だから不寛容を象徴するかのような戦争や紛争、デモ弾圧が行われ、年々それらが激化し、人間同士だってそういう感じなのだから、人類が自然に対して、人類の生活をより良くするために行ってきた自然破壊も一部では、極端で露骨になってきていることを痛烈に批判しているように感じ、深く考えさせられた。
 
劇場に入った瞬間、劇の本編など全体を通して、幻想怪奇、特に本編が始まってからのエロティックな描写、少しのグロ描写、それらを包み込むような美しい世界観に気付くと、没入し、海底にいると錯覚させる照明や独特な音楽によって、しばらくは現実に引き戻されることなく、体感した。
 劇中本編の終わりの10分前頃から写真撮影OKというのも、却って海底や人魚が住まう世界観に溶け込めた。

プロパガンダ・コクピット

プロパガンダ・コクピット

ミュージカル座

光が丘IMAホール(東京都)

2019/04/18 (木) ~ 2019/04/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/04/18 (木) 18:30

座席1階H列6番

この作品は、平和や自由、本当の幸せとは、真実とはについて考えさせられました。

ネタバレBOX

東と西に分断された世界の中間地点に位置するプロパガンダ・コックピットが舞台で、トリオと先輩、準主役のユズが中心に、この演劇は展開する。
8人の女たち

8人の女たち

T-PROJECT

あうるすぽっと(東京都)

2019/11/13 (水) ~ 2019/11/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/11/15 (金) 19:05

 お屋敷の主人であるマルセルが、7人の女性達の主人に対する秘密を暴くため、主人の奥さんの子供の姉妹のうち、道化的役割を担っている中性的で弁舌が立ち、妙に大人を客観視することに長けている妹に頼んで、主人人が殺されたと言う芝居を打ってもらう。そして7人の女性が誰が犯人かを言い当てるため、相手の隠し事を暴露し合うが、それを聞いていた主人は、最終的にその膨大な7人の女性達の秘密に耐え切れず、自害してしまうという、とてつもなく悲劇的な結末に自分の身体に衝撃が走り、暫くの間動けず、思わず身震いした。
 この密室推理劇はコミカルなキャラや何事にも大袈裟なキャラ、狂言回しに道化キャラと面白くて魅力的な人物がたくさんいるので、それぞれの特徴や個性が引き立ち、最初は誰が誰だかわからなくても、段々とそのキャラたちの世界に入り込んだかのような錯覚に陥っていく。また、コメディ的要素と緊迫感がある密室推理劇のシリアスな要素が合わさっていて見事だった。
 私は休憩前の前半で4人まで絞り込む事ができたが、後半の種明かしシーンの少し前にその4人では確実にないことが分かり、もっと意外で身近な人物であることを発見し、今まであまりに堂々としていたので犯人から除害していたので、つくづく灯台もとぐらしだと感じた。










演劇×オペラ「マクベス」

演劇×オペラ「マクベス」

若い演奏家の為のプロジェクト

渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール(東京都)

2019/11/21 (木) ~ 2019/11/22 (金)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/11/22 (金) 17:00

 オペラの場面と会話劇の場面、交互に入れ替えているのと、オペラと会話劇が複合している場面もあったりと画期的な演出がされていて、斬新だと感じた。
 オペラと会話劇で、笑える場面や、舞台会場を題材にした自虐の笑いと歌を題材にした自虐に 、差がつけられていて面白かった。




汚れた世界

汚れた世界

無頼組合

シアターKASSAI(東京都)

2019/12/06 (金) ~ 2019/12/09 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/12/06 (金) 19:00

 主人公のグンが、怪我をしたことによって徴兵されない代わりに、映画ではなくて記録映画をとるよう政府から強いられている友人のため、恋人のため、自由を束縛して実質の監視社会を創設して徴兵を強要する政府を欺くため、政府に支配され、監視社会になり、自由を束縛されているのに、どうせ変わらないと諦め、見てみぬふりをする人たちを変えるため、自分が最終的に犠牲になる可能性も十分わかった上で、一世一代の芝居を打ち、友人に記録させることにより、自分の存在意義を見出し、自分のやりたい事をやろうとすることで、自分なりの自由を勝ち得ようとする、逆境にも負けない不屈の精神に感銘を受けた。
 グンの芝居に途中まで私は騙されたが、中からグンが本当にやろうとしていることがだんだんわかってきた。また、自分のやろうとすることを相手が何を言おうがお構いなしに断行しきろうとする、自分の考えを貫く不屈の精神、現代人にはほとんど失われている、自分に出来る限りのことで自由の権利を保持するために努力すことが大事なことで、諦めたり政治に関心を示さなかったり、メディアから顔を背けることがどんなに恐ろしく、政府が指摘するより前に自粛する事の怖さ、政府による管理社会、自由を束縛する社会の危険性がこの作品を通じて示唆されているように感じられ、自由の権利を勝ち得る為には、常に矛盾している世の中の事柄に疑問の目を向け、無関心にならず、他人に流されず、諦めず、自分なりの確固たる信念を持ち、現状に満足せず、常に自分なりの自由を追及していくことが大事だと改めて実感した。

自由を我らに

自由を我らに

カプセル兵団

ワーサルシアター(東京都)

2019/05/28 (火) ~ 2019/06/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/06/01 (土) 13:00

 現代まで続く、日本国憲法を口語訳していく作業において、疑問が飛び交うなか、最終的に元々書いてあった文章のままでいいことになり、近年日本のA,S首相が改憲を訴えているご時世と考えると感慨深く感じた。

ネタバレBOX

 戦後の新たな日本国憲法の発布にあたり、言葉のプロを集めて文語で書かれた憲法を口語訳させる作業を依頼し、それを2時間で終わらせる事を何とか承諾させ、開始させる。
天使よりも綺麗な私たち

天使よりも綺麗な私たち

劇団「やぶ~ぶ~」

ひつじ座(東京都)

2020/02/06 (木) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/07 (金) 19:00

 主人公の青年が抱えるコンプレックス、主人公の恋人の秘密、主人公が小学生の時に出会った変わっている少女、主人公があるときから見えるようになる不思議な雰囲気で、幻影のように現れたり、消えたりする女性、奇妙で謎めいた掃除婦、天候が相当悪い為に泊まったホテルの浴槽で偶然のように発見した女性の遺体、そして自分たちが犯人だと誤解されないために謎を解き、犯人を突き止めようとすることなどの要素が折り重なって、先が読めない展開と、唐突に来るコメディ要素、いきなり主人公の夢のシーンになったり、夢から冷めたあとの痙攣であったりの次々と展開されるシーンと観ていて飽きなかった。また、ミステリー要素にサイコ·ホラー要素、幻想的な場面に前衛的でありながらもアグレッシブなダンスシーン、そして不条理な物語展開と従来の密室殺人ミステリー劇のイメージをことごとくぶち壊していて、誰が犯人なのか考えつつも、いつの間にか作品の世界の中にのめり込んでいけたので、新しいミステリー劇が誕生したという感じがして、観終わった後に自分の中ではとても感慨深く、満足感があった。そして、余韻を残しつつ、曖昧な終わり方に、安易にハッピーエンドやバットエンドに持っていくよりも観客の想像の余地を残していて、良いと感じた。

FACE

FACE

令和座

cafe&bar 木星劇場(東京都)

2020/02/20 (木) ~ 2020/02/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/20 (木) 19:00

 「ロミオとジュリエット」のような現代的純愛要素を絡めつつも、人を見た目で判断したり、価値基準を測りにかけたり、数値化したり、お金の価値が絶対的で、給料が無いと暮らしていけないなどのしがらみに縛られて、本当に大切な心を見失っていることを訴えていて、やはり何よりも心ほど大切な物はないと改めて実感させられた。どんなに見た目が醜くても、穢のない澄み切った心でいられるようにできる限り心がければ、少しは報われるんだと感じさせつつ、やはり現実は見た目や表に現れる事柄、お金などのものに執着する人間の浅はかさが描かれ、そういう人間の弱さもしっかりと描かれていたが、それでも、それらを認めたうえで、純粋な心を保ち続けようとする努力、せめてそうなりたいという希望を捨ててはいけないと、この劇を見て強く自分の心に刻んだ。

立ちバック・トゥ・ザ・ティーチャー

立ちバック・トゥ・ザ・ティーチャー

Peachboys

ザ・ポケット(東京都)

2023/04/19 (水) ~ 2023/04/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/04/21 (金) 19:00

 劇が始まる前のMCの俳優が、自虐あり、ぼやき芸あり、ツッコミあり、客いじりありと、観客を飽きさせず、自分の話術に観客をいつの間にか参加させていく、その巧みさ、可笑しさは前回を飛び越えていて、大いに楽しめた。

 ケン・ヨーヘイ・ハヤオの3人は仲良し童貞3人組。
「絶対に好きになった人としかヤッてはいけない」鉄の掟で結ばれた彼らだったのだが、今回、それどころではない事態に直面する!!!
3人の前に現れる、よく知らないおじさんの科学者「毒(どく)」。彼は突如、自身の作ったタイムマシン「ペロリアン」を彼らに見せびらかし、前日に性欲を異様に増大させるクスリを飲んでいたハヤオが暴走し、「毒」の腹を自らの股間で貫いて殺してしまう!逮捕され、連行されていくハヤオ。ケンとヨーヘイは「ペロリアン」に乗ってハヤオが暴走を止めようと思い、暴走前の時間に戻ろうとするのだが、辿り着いたのは、30年前の1993年!
令和5年と平成5年!2つの時代を行き来あいながら、童貞3人組は「今からそいつを殴りに」行って、ヨーヘイの父の童貞を捨てさせ、歴史を変えることが出来るのか!?
あと、多分尺的に無理そうだけど、3人組は童貞を捨てられるのか!?
あと、Peachboysは、本当に、ザ・ポケットの広さを使い切れるのか!?といった疑問も持ったが、前作を良くも悪くも凌駕し、今回かの有名な映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を下敷きにしつつ、あまりにもしょうもなく度を越したレベルの露骨な下ネタ満載、時事ネタ、政治話題を徹底的に揶揄り、これでもかというほど市井の目線で下らなく、面白おかしく、それでいて鋭く斬り込んでいて、そのあまりの自由っぷりと、何でもありなうえ、今流行のものから昔懐かしいものまで詰め込めるだけ詰め込みすぎて、大体の予定時間を大幅に過ぎてもやり続け、収集がつかないと思いきや、意外と最後は上手く締めくくっているあり方に、演劇として、一表現としての無限の可能性を感じた。

 令和5年の現代の場面において、フワちゃんはそんなにイメージを崩しては来なかったものの、ユッキーナこと木下優樹菜が極端に誇張されたギャルキャラなうえスシローの店長をやっているという無茶苦茶な設定のうえ、Breaking dawnの朝倉未来が主催するYouTubeで生配信される公開オーディションに何故か、かつて一斉を風靡したドラマ『家なき子』の家なき子がヤバ過ぎる情緒不安定なサイコパス少女として登場したり、今話題筆頭中のアドちゃんが毒(博士)の元ダッチワイフ人形で現在は毒の改造によりアンドロイドという奇想天外で支離滅裂、こじつけがましく、あまりに本人に対して失礼すぎるが、さらに主人公の一人ハヤオに対してアドちゃんが○○○しよっと抱きついてみたり、何かというとアドちゃんが過去に行っている時でも「新世界だっ」と言っていたりと、呆れを通り越して大いに笑えた。
 令和5年の現代の場面で、ガーシーがドバイから謝罪動画を配信しているのだが、謝る気ゼロどころか、つらつらと文句を並べ立て、ところどころ苦しい言い訳をするあたりが妙に生々しく、それでいて馬鹿らしく大いに笑えた。

 30年前の1993年(平成5年)の場面では、意味もなく漫画でアニメ化もされた『ドラゴンボール』の曲に合わせておそらく初代〜現代のドラゴンボールのアニメの戦闘シーンや飛ぶ場面を、かなりチープに作り込んでいたり、漫画でアニメ化もされた『ワンピース』の主人公が現実にいることになっていたり、喫茶店で漫画『タッチ』のヒロイン朝倉南が働いており、さらに病院でも働いていることになっており、さらにはSTEP細胞の開発にまで携わっていたと、歴史の整合性以前に、あまりに荒唐無稽な設定すぎて唖然とした。
 家なき子がこの時代では令嬢で、漫画『白鳥麗子でございます!』の主人公白鳥だったといういくら何でも苦し紛れ過ぎる設定、シンスケ(紳助)が、後に漫画『タッチ』の朝倉南と結婚して、その子どもがBreaking dawnの朝倉未来だという、誰がどう考えたって突飛で無理矢理過ぎて、あまりにあり得ない設定の連続で面白すぎて、気がつくと爆笑していた。
 最後のほうで、メガヒット映画『シン·ゴジラ』をパロってシン·平成は出てくるし、一大ブームを巻き起こしたRPGゲーム『ドラゴンクエスト』を再現した場面でかなり尺を取るわ、敵役ピーチ姫をの妨害をかわし、シン·平成を倒すため大ヒットゲーム『マリオカート』で勝負したり、最終的にシン·平成にドラゴンボールを投げつけるとシン·平成が爆発し、かつて流行ったゲーム『ポケットモンスター』に出てくるポケモンボールが開き、シン·令和が出てくるというファンにとっては嬉しい限りかもしれないが、盛り込み過ぎて、玉石混交で、何でもありで、色々同時多発的に起こり過ぎて、前作以上にお腹がよじれるほど連続して大笑いしていた。

 途中の場面で、WBCの栗山監督の2刀流と言っているところの音声が変な意味で無駄に使われていたり、ジュリアナ東京は出てくるわ、大谷翔平選手が、主人公のケンに対してヌートバーを静的な意味として使われたりとイメージダウンもいいろところなうえ、最後の場面であのちゃんはイメージ通りででてくるわ、喫茶店のマスターとして出てきた藤井風に至っては、主人公の一人ハヤオの背後から立ちバックするオジサンとして描かれるという扱いが雑なうえ、最悪な描き方に、現実とはあまりにかけ離れ過ぎていて、吹き出した。

 第2部のレビューショーでは1970~80年代くらいのアメリカンポップスをあまりにしょーもない下ネタが露骨に歌詞に入った替え歌になっていて、馬鹿馬鹿しくて大いに笑いつつも、役者人に歌が上手い人も多くて、ノリつつ、感動した。
 レビューショーの最後のほうで、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公が最後のほうで言う有名なセリフをオマージュしたセリフをヨーヘイ役の俳優がいっていたのに胸を打たれた。

玉響ノイズ〜空蝉に、風光る〜

玉響ノイズ〜空蝉に、風光る〜

えび

シアター風姿花伝(東京都)

2019/06/05 (水) ~ 2019/06/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/06/07 (金) 19:30

お父さんが亡くなったことへのショックから立ち直れないで、感情が無いような放心状態でいる少年が、少し変わった人たちに合うことで変わっていき、自分とは何者なのか、自分の個性とは何なのか、ということを考え、成長していったことに感動した。

おくすり、ひとつ

おくすり、ひとつ

法政大学Ⅰ部演劇研究会

YouTube Liveにて上演致します(東京都)

2020/07/17 (金) ~ 2020/07/20 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/07/17 (金) 19:00

 リモートでの上演とあって、正直不安でもありましたが、実際にその動画を見てみたら、逆にリモートの特性を活かして、緊密な心理描写をした近未来のドラマに仕上げていて、こういうふうな演劇もありだなと実感した。
 世界では人が消える謎の病気が蔓延し、人知れず消えた人が来る診療所があり、そこで処方される特別な薬を飲むと元の世界に戻れるという設定になっている。そしてそこに来る患者たちに対して盲目の女性の先生と助手のAIが悩みを聞いていくのだが、それぞれの画面で悩みを話していく患者との対応が、すぐ隣で話すよりも、心理カウンセラーとのリアルな対応に思えた。また、リモートだからこそ諦め、思い込み、泣くなどの感情を役者が身体を張った演技で、モロにさらけ出している気がして、こちらまで引き込まれた。
 そして、劇を観終わった後、あまりにも今今私たちが抱え込んでいる様々な悩みとフィットし過ぎていて、共感し感動して眼から涙がとめどなく流れ、そのせいで眼は充血し、暫くは余韻に浸り、胸が熱くなった。

暁の帝〜朱鳥の乱編〜

暁の帝〜朱鳥の乱編〜

Nemeton

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2019/06/13 (木) ~ 2019/06/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/06/14 (金) 19:00

飛鳥時代、壬申の乱後の世界を舞台に繰り広げられる、愛憎陰謀渦巻く物語。兄弟同士でどちらが天皇になるかで争わなければならなくなり、最終的に兄のほうは、クーデターを起こすことを勧めた蘇我氏に利用された挙句、斬殺され、弟は蘇我氏と相討ちになってなくなった。この一連の悲劇を見た皇后は7日の間引き籠るが、その悲しみを乗り越え、天皇になる姿に凛々しさを感じ、今の政治にも通じる所を見て、深く考えさせられ、母としての子を思う気持ちに感動した。

スーパー・ウーマン・リヴ

スーパー・ウーマン・リヴ

藤原たまえプロデュース

シアター711(東京都)

2020/08/04 (火) ~ 2020/08/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/08/09 (日) 13:00

 スーパーで働く女性たちを中心とした日常を描くドラマだが、それぞれの店員の個性や思惑、レジ打ち選手権を巡ってのドラマ、途中から新規で入ってくる女性店員、主人公の女性の抱え込む悩みや責任感、主人公が依存していく占いの女性、などいろいろな人や事柄が絡み、スーパーという小さな空間を主に置きながらも、その中で繰り広げられる人間ドラマは意外にも壮大だということに感慨深くなった。
 また、笑えるシーンも多く、自分の中に溜め込んでいたであろうストレスを払拭することが出来た。
 そして、自分の性格や特性を相手に十分に伝えているつもりでも、余り相手に伝わっていなかったり、相手をfollowしたり、周りに合わせたり、普通であることに必死になって、自分を見失っている主人公に共感した。
 仲間意識があり、新人のスーパー店員に対して、敵意むき出しの店員に対しても、優しく諭すスーパーの人達が、安定した給料を貰える会社員でも無いのに、それよりもある意味では、スーパーの店員さんたちの方が人間味溢れて見えた。

想い出の鐘が鳴る街/想い出はコンビーフに乗せて

想い出の鐘が鳴る街/想い出はコンビーフに乗せて

ねこのしま

APOCシアター(東京都)

2019/06/18 (火) ~ 2019/06/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/06/22 (土) 15:30

「思い出はコンビーフと共に」では、男の子が今は亡き猫やお父さんの面影を求め、最終的に、もと飼っていた猫にそっくりな猫の飼い主探しに、お母さんもそれを手伝い、ある写真館の前に着き、ふとお父さんが1年前に撮った写真を見つけ、お母さんが今まで息子に辛く当たり、亡き夫を忘れようとしても忘れられない所から、それを一生懸命に克服し、乗り越えようとする姿に感動した。

「思い出の鐘が鳴る街」では、実は○○な孤児院出身の少年と、実は△△な戦士で頑張り屋な少女が出会い魔王を倒しに行くのだが、最終的に自分たちの記憶が蘇り、悲劇的な結末に突き進んでいき、記憶を消すに至り、果たしてそれが不幸か、それとも幸福なのか!?なんとも言えない気分になった。







『布団漂流記』

『布団漂流記』

尾米タケル之一座

Geki地下Liberty(東京都)

2021/02/24 (水) ~ 2021/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

 『布団漂流記』において、政府による不正事件をあからさまに嘲笑して皮肉った笑いや、何度か同じ様な動作や言動を繰り返し続ける笑い、体を張ったスラップスティックコメディの要素、騎士が自身の過去を語るシーンで映像で文字が浮かぶはずが浮かばず、肝心のことを言わずに終わったので、そのことに対して周りが突っ込んだりすることによって起きるその場限りの笑いなど、とにかく終始笑わせてくれたが、主人公の竹広が引きこもりだったり、非常に人間味溢れたラブドールが出てきたり、暗い過去を持つシングルマザーフミ江に敵とも味方ともつかぬ騎士などが出てきて、物語の中に、出てくるキャラの過去や引きずっているものに現代の社会問題を内包させていて、終わる頃にはグッとくるものがあった。
 主人公の竹広役の人が、本当の引きこもりってこんな感じだよなぁと感じさせるほど、演技から引きこもりの雰囲気を自然と醸し出していた。ほぼ主役と言って良いラブドール役の人は、劇中最後の方の竹広との○○○の場面で、手慣れた雰囲気と生々しさ、色気が際立った腰の振り方であったりの演技が目が離せない迫力があった。
 竹広が劇中後半で言う「次元の王が部屋から出られずに引きこもっているのは、皆の特にユキさんの、王様は責任を持って国を治め、政治を行い、命令を出さなければならず、まずは部屋から外に出てもらわないと、という大きな期待や価値観の押しつけ、次元の王を心配していろいろなことをする、そのことが王にとってむしろ大きなプレッシャーとなり、結果、10年、15年、いやもしかしたらそれ以上部屋から出ない引きこもり生活が続くんだよ!!分かるか!?ユキさんが良かれと思ってやること、皆が呼び掛けに来ることそれ自体が逆効果なんだよっ!!!!」的な台詞を聞いてなるほどなぁと引きこもりの心理が少し分かったような気がした。「そうだとして、だとしたら、どうすれば良いってのよ」という皆の意見に、竹広は「2、3日といわず、最低でも3ヶ月はユキさんはお暇でも頂いて、城の外に出て、長旅でもし、皆んなは執拗に次元の王に声をかけず、そっとしておいてあげようじゃないか」というような台詞を言っていて、必ずしも引きこもりの人を支援しようとしたり、応援しようとしたりして、何とか外に出て普通の生活ができて、仕事をすることが本人のためにも幸せであり、引きこもり当人の生きがいにもなっていくという考え方事態が間違いなんだなぁと深く考えさせられた😓引きこもりの人が立ち直るように応援したり、支援することで立ち直ることよりも、返って当人のプレッシャーになることの方が多いということをこの劇で知って、距離を置くことも大切なのだと痛感した😔

ツバメの幸福

ツバメの幸福

ツツシニウム

キーノートシアター(東京都)

2020/09/09 (水) ~ 2020/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/09/11 (金) 14:00

 オスカー·ワイルド作の「幸福の王子」を参考にした『ツバメの幸福』という劇を観ました。
 ほとんど原作通りなのですが、ところどころ違うところがあって、例えばそれぞれのキャラが凄く個性的に演じられていたり、幸福の王子像よりもツバメがむしろ主人公にされていたり、ツバメの葛藤や本当は幸福の王子に言われて立ち回った事なのに、自分はツバメなので、人に自分の言葉が上手く伝わらず、何か責任を感じたりする人間の様な、いやそれ以上の思いやりや切なる願いだったり、温かい心などを持っていることを劇中では強調しているところ。
 自己犠牲の物語ですが、舞台ではそこの部分はそんなに大袈裟には強調されておらず、むしろツバメの心理描写や物語に出てくる他の人たちの一つ一つの小さなドラマの部分がかなり強調されていて、幸福の王子が強調されないことによって、神秘性や浮世離れした感じが薄まり、現実味が増して、感情移入しやすかった。
 また、観ているなかで、涙があとからあとからほとばしり出てきて、涙腺が崩壊した。それぐらい感動した舞台です。まぁ、ツバメ役の女優の泣く演技や悲しむ演技が真に迫っていたので、本気で泣いたり、悲しんだりしているのかなと私に思わせたことも大きかったのかも知れませんが…。
 後、今どき珍しく演出家が主要な役で出演しているのは驚きでした。現在において、なかなか演出、脚本、俳優の三つを器用にこなせる演出家なんて、ほとんど私が見てきた限り、特に若い世代ではあまりいないと思うので。


サヨナフーピストル連続射殺魔ノリオの青春

サヨナフーピストル連続射殺魔ノリオの青春

オフィスコットーネ

シアター711(東京都)

2022/03/11 (金) ~ 2022/03/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/03/11 (金) 19:00

 始まってすぐ、主人公の永山則夫の東北にある実家の家に、面識のないはずの、ある招待状が送られてきたことが共通していて、何か勘違いしている4人の男性とのやり取りになるので、これはてっきり不条理劇かと思いきや、劇の途中からだんだんと分かってくるのだが、実はこの4人の男性、主人公の永山が射殺して殺された人物たちで、毎年事件当日になると、永山の前に現れ続ける、永山の後悔や自責の念との葛藤、不安や怖れから生み出した幻影だということが分かってくるという、劇のどんでん返しに目を見張る思いがした。
 そのかつて射殺した4人の幻たちとの対話を通じて事件を起こすに至る経緯や動機などが語られていき、少年から青年時代の永山則夫がいかに網走で生まれたことで、戸籍差別を受け、職場でも東北弁の訛りがないことで、先輩から目を付けられといったように苦労の連続であったというようなことから、もし、私自身が永山則夫の立場だったらどうしていただろうと思うと、居たたまれなくなった。このような事件は他人事ではなく、誰にでも似たような状況は起こりえるのではないかと考えると、深く考えさせられてしまった。
 しかも、4人の男性を射殺したあと、大一審は逮捕から10年に渡り1979年7月に死刑判決が言い渡されるが、弁護団が控訴したことで1981年8月に一旦は死刑判決は破棄され、無期懲役判決となったが、その後1982年に小説を書いて文学賞を受賞したりもするが、しかし安心するのも束の間で、1987年3月に再び死刑判決となり、本人が上告するも、棄却され、1990年5月に死刑が確定、1997年8月1日に東京拘置所で死刑が執行されるという、その間、永山則夫は、喜んだり、希望に燃えたり、ほっとしたり、不安になったり、後悔したり、自責の念に駆られたり、といったように運命にイタズラに翻弄されていく一人の無力な人間として描かれていて、共感する部分も多くあった。
確かに4人殺すのは良くないというのは分かるものの、そうは言っても、30年弱も牢屋に入れておいて、勉学の機会まで与えておいて、でもやはり最終的に死刑という在り方自体に疑問を禁じ得ないし、日本の死刑制度の必要性に疑問が残った。

また、劇のあとに姉の回というのがあって、それでは、永山則夫の長女にフォーカスが当てられた一人芝居だったが、彼氏らしき検事志望の学生に勉強を教えてもらっているところから始まるが、最後には、長女セツは、その学生にとって遊び程度の関係としか思われていないことを知り、発狂して狂うまでが丹念に描かれ、長女役の俳優が、健気で明るく元気でしっかりしていて、純情なところから、終盤で狂気に取り憑かれていくまでをしっかりと表情豊かに、声にも波長をつけ、肉体も駆使しながら、身体全体を使って表現していて、何か迫ってくるものがあり、思わず魅入ってしまった。

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