ヴォンフルーの観てきた!クチコミ一覧

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20の物語 -週末を、劇場で-

20の物語 -週末を、劇場で-

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『ロング・クリスマス・ディナー』
【作】ソーントン・ワイルダー
【演出】宮田慶子

1931年発表、否が応にも『わが町』を連想させる内容。『わが町』は1938年発表なので今作のアイディアを更に練り上げたのだろう。
中央に長いダイニングテーブル。上手に無機質なドア枠、下手に花で飾られたドア枠。
アメリカ中西部ベィアード家の90年間に渡るクリスマス・ディナーを書物をぱらぱらめくるように描く。

①ロデリック・ベィアード(前田一世氏)
妻ルシア(浅野令子さん)
ベィアード夫人(村中玲子さん)
結婚して初めて迎えるクリスマス。張り切る新妻の浅野令子さん。家長の前田一世氏は工場経営で地元の名士。義母の村中玲子さんは惚け始めていてこの土地がまだ開拓中だった幼い日の記憶を語り出す。ミシシッピー川を渡る為に筏を作ったこと。
村中玲子さんが車椅子で出て来るシーンで「これはちゃんと観なくちゃ駄目な奴だ」と思わされた。

アラスカ帰りのロデリックのいとこ、ブランドン(中山祐一朗氏)がディナーに加わる。
産まれた長男チャールズ(中西良介氏)
そして長女ジェネヴィーヴ(岡崎さつきさん)
乳母車に乗せた赤ん坊を運ぶ看護婦もしくは乳母(向井里穂子さん)

ネタバレBOX

上手のドア枠を越えると死の世界に去って行く。下手のドア枠からやって来るのが誕生。

②アルコールで体を壊していたロデリックが亡くなりチャールズが工場を継ぐ。
結婚し、妻リオノーラ(美利さん)が一家に加わる。
だが産まれた赤ちゃんはすぐに亡くなってしまう。
更にブランドン、ルシアが続けて亡くなる。

リオノーラが双子を産む。
サミュエル(佐々木優樹氏)
ルシア2世ベィアード(石川愛友さん)
その後に三男が産まれる。
ロデリック・ブランドン・ベィアード2世(森唯人氏)

チャールズのいとこ、アーメンガード(中原果南さん)を家に呼び寄せる。

軍に入隊したサミュエルは戦争で戦死。
ロデリック・ブランドン・ベィアード2世は父と揉めて家を出て行く。
ルシア2世ベィアードも結婚して家を出る。

ジェネヴィーヴはこの家での暮らしに幻滅して外国へと旅立つ。
チャールズは勘当したロデリック・ブランドン・ベィアード2世を許す手紙を書く。だが送る前に亡くなってしまう。

③リオノーラは娘、ルシア2世ベィアードの家へと去って行く。
一人残されたアーメンガードはルシア2世ベィアードからの手紙を見付ける。彼女とその息子と娘の写真。

前田一世氏は堤真一っぽい風格で神田正輝っぽくもある。
中西良介氏は品川祐っぽい。

時代が幾ら移り変わってもずっと繰り返されるものは人々の感情とその遣り取り。耐え難い苦しみを解決するものは時間だけ。他に何もない。
七面鳥を切り分け、腿肉か胸肉かを何度も尋ねる家長。ワインを注いで勧める。
今朝の牧師の説教に感動して涙が止まらなかったと言う妻。
どの小枝も氷に丸く包まれていて、こんなの見たことがないとうっとり呟く若い女性。
こんな可愛い赤ちゃん、世界で誰も見たことがない筈と浮かれる母親。

1840年からの90年と考えていいのか。サミュエルは第一次世界大戦で戦死したのか?

浅野令子さんの物語だと最後まで思わせることが不思議。この物語を始めた者に感情移入してしまうのか。
※ただ浅野令子さんのファンなだけかも。
バッグの中からスフィンクス

バッグの中からスフィンクス

艶∞ポリス

劇場HOPE(東京都)

2026/07/28 (火) ~ 2026/08/03 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

笑いが鮮烈。VTRの使い方とかに澤田育子さんの「good morning N˚5」を想起。

自分の持つ岸本鮎佳さんのイメージはシュタタタタと真顔で漫画走りするあの感じ。切り口が独特。「へえこういう面白さが気になるのか」みたいな。

遠峯ありさみたいな美人、北香那さんには驚いた。ハーフと思う程のルックスと流暢な英語の発音。チケット即完だし、メチャクチャ人気あるのだろう。(TVは一切観ていないので世の流行り廃りには疎い。※全く知らないと思っていたが、彼女が主人公を演ったアニメ、『ペンギン・ハイウェイ』を映画館に観に行っていた)。

①アフレコ現場で一緒になるオーディションを勝ち抜いて来た声優二人。『超音速戦士プリズムレイン(?)』みたいなプリキュア系のバトルもの。岸本鮎佳さんは名前も経歴も年齢も嘘臭い不思議ちゃんキャラ。パチ屋でバイトしながらこのチャンスに賭けている北香那さんは「こいつ随分ぶっ込んで来やがったな」と一々苛つく。

北香那さんのキャラがヤバイ。何なのこの人?負けず嫌いなのか岸本鮎佳さんの繰り出す技を簡単に完コピして返してくる。このルックスでこの笑いのセンスかよ。昔、浜辺美波を『センセイ君主』で初めて観た時、「このレヴェルの美少女がここまでお笑いやんのかよ」と途方に暮れたことを思い出す。
要チェック。

ネタバレBOX

①ジャムみたいな名前のマスコットキャラがいて台詞の語尾に「〜ジャム」と付ける。岸本鮎佳さんが演っていたのを北香那さんが奪い、それが気に食わない岸本鮎佳さんは泣き出して現場を止める。二人共、声の種類が多彩。

インタビューの映像が流れる。北香那さんがやさぐれて煙草を吸い苛つく。アフレコしたアニメは埼玉のパチンコ屋の台で流れるだけだった。

②埼玉のパチンコ屋店員の岸本鮎佳さんと客の北香那さんのカウンターでの遣り取り。お互い帰国子女であることが判り、意気投合。ガキが嫌いなところ、ギャンブルが好きなところ、全て気が合う。

二人でドライブしながらギャンブル三昧の映像が流れる。

③スピード違反の車が警察に捕まる。逃げようとする岸本鮎佳さんと女性警官・北香那さん。二人の持ち物が入れ替わっており、確認すると同姓同名。どうやら並行世界の自分自身らしい。警察官採用試験の日、猫が逃げて捜す為に試験に行かなかった岸本鮎佳さんは今ではギャンブル狂のパチンコ店員。試験に行った北香那さんと大きく人生が分かれた。ちなみに北香那さんの猫はすぐに戻って来たそうだ。
その後、火を焚いて踊ろう

その後、火を焚いて踊ろう

アル☆カンパニー

雑遊(東京都)

2026/07/27 (月) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

平田満氏と井上加奈子さん夫妻が主催する演劇ユニット、アル☆カンパニー。そこから派生した短編戯曲リーディング無料公演の「パタカラぷろじぇくと」 。そこで発表された三本の短編「妹の子ども」「オーストラリアの母」「盆踊りに行こう」を今回演劇として一つにまとめて上演する。
『瀬戸内の小さな蟲使い』、『グロリアストラベル』、そして今作と、野田慈伸氏の笑いのセンスは揺るがない。コンプソンズ金子鈴幸氏もそうだが、笑いに関しては敬服せざるを得ない。悔しいけれどメチャクチャ面白い。

冒頭、9歳の小学生、平田満氏の絶叫。その伯母である浅野千鶴さんの謝罪から幕開け。スイカバーのアイスの棒で作った夏休みの課題、小田原城を浅野千鶴さんが踏んで壊してしまった!平田満氏は浅野千鶴さんがわざと壊したと疑う。夏休み、祖母の家に帰省している長女と次女親子の物語。

ネタバレBOX

祖母、井上加奈子さん。次女の旦那、野田慈伸氏のことが大嫌い。家のタオルが臭いと言われたことを深く根に持っている。意地の悪い婆さんを演らせたら最高。
長女、浅野千鶴さん。結婚もせず婚活パーティーの司会をしていることで陰口を叩かれている。「アヴリル・ラヴィーンも40歳だよ」の名台詞。
次女、片桐美穂さん。すぐに母親と口論になる。おかずの名前と食べれない物についての会話がハイ・センス。
次女の旦那、野田慈伸氏。たむらけんじ、RG系と言うか町山智浩っぽく感じた。この人、天才だと思うのだが今作のラストは···。
次女の息子、平田満氏。心が病んでいる。このクラスの大御所が今作を面白いと判断して自ら演るセンスにひれ伏す。

浅野千鶴さんの知らない所で、祖母と次女と息子でオーストラリア旅行に行っていたり。家族間の微妙な不信感が面白い。何もないところから笑いを掴み出す野田慈伸氏は天才。

※平田満氏を詰める浅野千鶴さん。「トロッコ問題」の例えが面白かった!
20の物語 -週末を、劇場で-

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新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『不毛ドライブ』
【作・演出】蓬莱竜太

体調も天候も悪くて一日中気が滅入る。けれど今作は面白かった!関口アナン氏は竹下景子さんの息子であることと『青春、絶望を笑う』のイカれたお笑い芸人のイメージしかなくて、特殊な役専門だと勝手に思っていた。今作はズバリの適役。職場のムカつく嫌な年下の先輩が朝5時に電話してきて家までの送迎を頼んでくる。糞、何で俺が!?居酒屋「呑兵衛ちゃん」に入って3ヶ月の濱仲太氏。8年いるヤンキーが抜け切れない偉そうな関口アナン氏。

誰もが似たような実体験があるであろうバイト先の人間関係。イライライライラしながらハンドルを握る濱仲太氏に横柄な態度の関口アナン氏は横浜に向かえと指示。え?家に帰るんじゃねえのかよ!

松本大洋の描き下ろしみたいな味。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

カーテンコールもなしに終演するとすぐ観客に退場を促す。客席の清掃と次作品の舞台美術の準備の為。とにかくスタッフはよくやっている。この企画を成功させようと一丸。RESPECT。
20の物語 -週末を、劇場で-

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新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『命を弄ぶ男ふたり』
【作】岸田國士
【演出】大澤遊

三上陽永氏演出、串田十二夜氏&中田春介氏ヴァージョンを観たことがある作品。話は知っているのだが顔中包帯ぐるぐる巻き男・渡邊りょう氏の解釈と喋りに驚いた。パーフェクト。渡邊りょう氏の包帯はルチャドールのマスクのようになっているのだろう、良い出来。耳まで塞いでも聴こえるように工夫されている。
眼鏡をかけた男・寺内淳志氏は田島亮っぽくてカッコイイ。涙を拭き洟をかむハンケチが重要なアイテムに。岸田國士の1925年発表の戯曲。101年前の作品とは思えない軽妙な遣り取り。少し弄っているのだろうと思ったがオリジナル通り。

『口に花を持つ男』
【作】ルイジ・ピランデルロ
【演出】大澤遊

深夜、駅近くのバー。最終電車に乗り遅れた寺内淳志氏がやって来る。先にいた渡邊りょう氏が彼の様子を窺って話し掛ける。
ルイジ・ピランデルロはイタリアのノーベル文学賞作家。1922年初演。原作では渡邊りょう氏の妻が登場するようで、そこをテキレジか?

ネタバレBOX

寺内淳志氏はイケメン狩野英孝みたいな雰囲気。渡邊りょう氏の訳の分からない長い長い独白が始まるとドリンクを飲み干したりスマホを見たりキョロキョロしたり···、居心地悪そうなその一挙手一投足がツッコミとなる。松本人志やシソンヌの長尺コントのような空気感。この二人の間の見えない関係性の変化こそが今作の醍醐味。

エピテリオーマ=悪性の腫瘍。口腔内に花のように腫瘍が咲いている。余命宣告されて死を待つのみの渡邊りょう氏。

渡邊りょう氏祭。もう感服する以外ない。この人は一体どんな役に辿り着くことになるのか?
20の物語 -週末を、劇場で-

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新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『チョコレート・アンダーグラウンド』
【原作】アレックス・シアラー
【脚色・演出】鈴木アツト

元は2002年にイギリスBBCの子供向け連続TVドラマ『Bootleg』として全3話で放送。それを原作者アレックス・シアラーが小説化。日本の出版社である求龍堂がタイトルを変え、『チョコレート・アンダーグラウンド』として邦訳。コミック化アニメ化『チョコレート・アンダーグラウンド~ぼくらのチョコレート戦争~』として配信&劇場公開。更にミュージカルにまでなった人気作品。健全健康党が政権を握り、「チョコレート禁止令」が発令されたディストピア社会。チョコを愛する中学3年生二人組が密造&密売で立ち向かう。

6人でこれを演るのか。一体何役を兼ねるのか数えられない程のチームワーク。開演前から客席をチョコレート警察が巡回している。
スマッジャー役國崎史人氏。松村雄基系。
ハントリー役仁木祥太郎氏。表情が時々、片岡愛之助。
バビおばさん役佐乃美千子さん。流石に美人、中学生から老婆までこなす。
チョコレート警察隊長役柳内佑介氏。古坂大魔王や坂本ちゃんっぽい。ボイパのように環境音を音マネ。
フランキー役斉藤悠氏。凄腕。どの役も薬味が効いている。
スマッジャーの母親役篠原初実さん。大忙し。

国でも企業でも知性の欠けた連中に好きにやらせておくとさっさと滅びる。マトモな奴等は相手にせず皆黙って去って行く。それが世の理。
「リンゴしゃきしゃき気分を、同志」
「オレンジじゅくじゅく気分を」
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

バビおばさんの取り調べで爪を剥がす拷問などいきなりハード・モードに。『時計じかけのオレンジ』をイメージしていたので洗脳されたスマッジャーが皆を裏切るのだろうと思っていた。

政治や法律は民衆の為のものでなくてはならないというデモクラシー精神が作品を貫く。政府や独裁者は反逆敵対する者達を刑務所に入れられるが国民全員を収容することなど出来ない。国民全員が間違っている物事に対し否を唱え立ち上がることさえ出来れば国は変えられる。

ラストは歌とダンスが必要じゃないか?
Perfumeの「チョコレイト・ディスコ」なんて欲しかった。
20の物語 -週末を、劇場で-

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新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『軽塵』
【作】秋元松代
【演出】須貝英

かなり味わい深い戯曲。戦後、三好十郎の弟子となり1947年に発表した秋元松代の処女作。その後、三好十郎とは訣別する。秋元松代は横浜生まれ、父親が早世し母親が必死に家計を支えた。口先だけの社会主義にかぶれた兄達を憎悪し二十歳で家を出る。今作は三好十郎に促されて記した、「書いて置かなければ一生後悔する自分自身の核」。

昭和20年夏、空襲が毎夜繰り返される横浜。家長である猪野学氏、妹の堺小春さん、妻の横山友香さん、妻の妹である小口ふみかさん、叔父(亡父の弟)のまいど豊氏が暮らす。隣に独りで住む女学生、きし朱紗(あかしゃ)さん。小口ふみかさんは嫁いだ先で旦那と揉め、帰って来ている。堺小春さんは東京で夜学校の教師をしていたが空襲で焼け出された。

父親を14で失い、その日から家長となった猪野学氏。根津甚八っぽい風貌で表情は國村隼。
モデルとなったのは秋元松代の兄、俳人・秋元不死男。

きし朱紗さんの側転。凄く当時っぽい喋り方。『青い山脈』みたい。

秋元松代の自己を投影したであろう堺小春さん。

MVPは小口ふみかさん。オーバーアクト気味だがここまでしないと作品が盛り上がらない気もする。

空から爆弾が降り注ぐ日常。“死”がすぐ傍にある毎日。そんな状況だからこそ、人は自分の“生”と真剣に向かい合う。今、自分自身にならないと自分の人生は一生送れない。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

8世紀の唐の詩人、王維の有名な漢詩である「送元二使安西(元二〈げんじ〉の安西〈あんせい〉に使いするを送る)」。朝降った雨が細かな土埃を潤し、宿の前の柳は青々と鮮やかだ。さあもう一杯飲ってくれ。君が旅立つとここに親しい友はいなくなる。
これは現在も中国で送別の際の定番となっている詩だそうだ。これが今作のタイトルの由来。

堺小春さんと小口ふみかさんの対峙がドラマを生み、猪野学氏との互いの存在を賭けた対話がクライマックス。犠牲にした物の数を競うような生き方ではなく、誰も犠牲にさせない生き方を。

※FUCK OFF!
『嘘つきは、漂流のはじまり』

『嘘つきは、漂流のはじまり』

劇団Q+

シアター711(東京都)

2026/07/18 (土) ~ 2026/07/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

[teamC]

船員・光永勇輝氏が開演前からステージを甲板に見立てモップ掛けしている。ロカビリー調の髪型。立ち姿が絵になる。
伊豆諸島北部の伊豆大島、活火山三原山を擁する観光地。横浜市会議員(フミヤ氏)の当選を祝して後援者とのフェリーによる二泊三日のツアーが組まれる。

傲慢な議員(フミヤ氏)、尊大なその妻(三月モナさん)、秘書(瑤寺姫乃〈たまでらぴの〉さん)、人語を解するペットの猫(新谷亮介氏)、お付きの獣医(斎藤ゆうさん)。

特別ゲストにアイドルグループYKM99のメンバー(河本百華さん)、追っ掛けのファン(一条文葉〈あやは〉さん)。

ろう学校の教師(はるさん)、生徒(さといさん)。

オープニング、YKM99の曲を皆で踊るのだが、その曲の出来が良い。

夜中、ダビット(クレーン)に吊られた救命ボートに偶然集まった者達。突然、フックが外れ艇ごと海に落とされてしまう。まさかの漂流。

高取英の『帝国月光写真館』は1933年(昭和8年)三原山火口投身自殺事件が題材。今作に似たものを感じた。

ネタバレBOX

前半はつまらない。笑いのセンスなのか全てが空虚。こりゃ失敗した···と自責の念。だが高橋たか子の『誘惑者』を愛するアイドルとオリキ(追っ掛け)の黒魔術のような展開から俄然面白くなる。女なのに男性アイドルとして生きる嘘を母親から背負わされ、啓示を受けたかのように三原山の火口を目指す河本百華さん。漂流した艇はいつしか火口の中心に向かっている。その先は地獄。全てを知る幼馴染、一条文葉さんのキャラが良い。篠原哲雄の『命』のラストなんかこんな風景だった。

殆どの登場人物が嘘を背負いその嘘と向き合って生きている。ここをもっと練るべき。生きる為に皆があさましく争う類型的な流れよりも、正義を信じ尊ぶ誇り高き者達を河本百華さんが一人ずつ破滅させる展開の方が物語としての筋は通ると思う。

※暑過ぎてもう演劇どころじゃない。どっこいガンガンに押し寄せる観客。確かにこういう時こそガッチガチに観劇かも。これが人間心理の妙。クーラーの効いた涼しい部屋で寝っ転がっていたって同じこと。時間は等しく過ぎていくだけ。
パール食堂のマリア

パール食堂のマリア

青☆組

吉祥寺シアター(東京都)

2026/07/17 (金) ~ 2026/07/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

戦後、連合国軍将兵と娼婦(を含む日本人女性)との間に「GIベビー」と呼ばれる混血児が多数誕生した。連合国軍40万人の内、約10万人が横浜に駐留、土地と施設を大規模に接収した為、横浜出生の割合は大きかった。育てられない赤ん坊が横浜外国人墓地に毎夜棄てられ、当時の墓守りが個人で根岸外国人墓地に埋葬していたという。その嬰児の数、ざっと900体。運良く育てられても白人や黒人、一目で日本人でない容貌はずっと差別の対象とされ、「あいのこ」と蔑まれ生まれながらに不幸を背負わされた。

舞台美術の濱崎賢二氏は凄いな。まるで童話の挿絵、しかも薄っぺらく嘘臭くない。この世界を成立させている。紙風船みたいな幾つもの外灯も美しい。

テーマは「痛みと美しさ」。

ネタバレBOX

前回、『星降る教室』を観たが世界が綺麗過ぎた。優しい善人達の思い遣りに満ち溢れた透き通った世界。自分の世界ではなかった。今回もヨコハマメリーをモデルにしていると知ってちょっと不安。彼女について自分が知るのはほぼドキュメンタリー映画を観ただけだが。(ラストに老人ホームに入居中の本人の映像が映る衝撃。実は無許可の隠し撮りだったらしい)。かつて西浅草周辺のラブホにも老婆の立ちん坊が複数いて常連らしき老人客とホテルに入るのをよく見かけた。とても美しい話なんかではない。心の病んだ頭の壊れた浮浪者なんかそこらここらにいた。とてもメルヘンには成り得ない。自分もいつかこんな境遇に陥るのではないかとの漠然とした不安。他人事のような気がしない。痛みと恐怖。孤独な浮浪者の発するあの臭い。あてもなく西友の食品売場をうろつき、電話ボックスや公園のトイレに閉じ籠もり、嫌われ罵られ追い払われ一日中逃げ回っている。それは野良猫ともよく似ている。この暑さで野良猫が駐車場の車の下で鳴き声を上げて助けを呼んでいた。身動き出来ないようだ。エナジーちゅ~るを4本あげたが無事だったろうか?もっと何かするべきだったか?(※後日、無事を確認)。

だが今作は好き。松本紀保さんの存在も大きいと思う。(開演前から立っていたが本人とは思わず、なんか似てるなと思ってた)。ああ成程、メリーの痛みが伝わってくる。

一条さゆりをもじったストリッパー、小瀧万梨子さんが綺麗過ぎて恐い程。杉本彩にさえ見えた。何か魔法がかった感じ。
ストリップ劇場の支配人、代田(しろた)正彦氏はヘタウマな味。この役作りは独特で癖になる。
黒人の血が入っているのだろう紫音琉花さんも魅力的なキャラ。

「パール食堂」の店主、藤川修二氏。亡き妻、松本紀保さん。店に全てを捧げ自分を犠牲にしてきた長女の福寿奈央さん。次女の土屋杏文(あずみ)さんは大学まで行かせて貰い教師になった。もう一人、死産した弟がいる。米兵に輪姦されて孕んだ子供。死産で外国人墓地に藤川修二氏が埋めた。松本紀保さんはずっとその子のことを夢に見る。どんな子だったのか?本当に死産だったのか?墓参りに行きたい。例え夫婦の間の子供ではなくても育てたかった。この痛みこそが今作を貫くテーマ。誰にも益しない産まれてくるべきではなかった存在について。彼等は悲鳴を上げる心の傷でずっと後を引くトラウマでどうしようもない罪悪感で···、その痛みはもう自分自身そのものだ。自分自身をどうにかして救いたい。抱きしめてやりたい。

イタリア人ハーフの川尻アンジェロ氏は昔の知人に似ている。その彼もモデルだった。クレモンティーヌから習ったトマトを使った惚れ薬レシピ、賄いとして福寿奈央さんにそっと提供し続ける。

野良猫のノワを演じる蓑輪みきさんがMVP。ゲイバーを経営するクレモンティーヌがノワール(フランス語の黒)を縮めて名付けた。冒頭、ふと魂を抜かれたように死んでしまったノワ。死んだ彼女がこの街について思い返す構造。(『焼肉ドラゴン』もそうだった)。ナナシの猫や福寿奈央さんと紫音琉花さんの少女時代他も兼ねて演じる。

シャンソン歌手・永登元次郎をモデルにしたのか、エスムラルダ氏演ずるクレモンティーヌ。彼が死んでいった猫達の名前を一匹ずつ確かめるように口にするシーン。一匹思い返す度にその猫が確かにこの世に存在していたことを知らしめる。記憶の蝋燭が灯る。

土屋杏文さんの受け持つ生徒、高校生の百武宏洋(ひゃくたけ・こうよう)氏は帰っても家に誰もいないので時間を持て余している。絵が好きでメリーや死んだノワをデッサンしたいと思う。世界は痛みと美しさで作られた結晶。とても残酷でとても痛く、それが故に涙が出る程美しくもある。ステッドラーの高級鉛筆、「マルス・ルモグラフ」(?)に憧れる。その母・大西玲子さんは女手一つで美容院を経営。何とか息子を大学まで行かせてやりたい。立ちん坊を罵倒し追い払う剣幕。だがこの態度こそが普通。弱い立場の者に優しく接してやる住民の方が変わり者。それがこの世界。

同僚の教師・吉田智則氏と土屋杏文さんとが仄かに心寄せ合う日々の描写。

メリーと猫の描き方に好感。断片を提示して物語を垣間見せ観客の頭の中で想像完成させる方法論。凄く良いと思う。逆に後半、水島家の物語ばかりが続き、比重が傾き過ぎたのは全体のバランスとしては勿体無い。ラストの佐賀県(?)から送られてきたクレモンティーヌの香りを嗅ぐ福寿奈央さんの表情はパーフェクト。他の終わり方がない。

リュシエンヌ・ボワイエの「聞かせてよ愛の言葉を」やジャコモ・プッチーニのオペラ『ジャンニ・スキッキ』からアリア「私のお父さん」が使用されているようだが、何故か自分は映画『慕情』のサントラだと勘違いしていた。記憶の混同?

夏に咲くピンクや白の花、芙蓉(フヨウ)。朝に咲いて夕に萎む一日花。生まれては死んでを繰り返す輪廻の花。また巡り逢おう。

BLANKEY JET CITY 「ダンデライオン」

夕焼けを見た 憶えているかい?
屋上に座りオレンジ色を見た
二人の間を流れてたあの風は
今は何処を旅しているのか 空の下で
20の物語 -週末を、劇場で-

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新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『トイレはこちら』
【作】別役実
【演出】西沢栄治

森の奥、首吊り自殺を決行しようとする女、そこにやって来た妙な男。
浅野令子さんは凄腕。『無頼の女房』でも圧倒されたが今作もパーフェクト。室井滋っぽい。
佐野陽一氏はタカアンドトシのトシっぽい。
二人の計算がズバリ当たり、戯曲の芯を突く。自分の観た別役実作品で一番納得させられた。観客はどっかんどっかん沸いていた。
コントのように観ていたが、これは落語なのかも知れない。目的が笑いではなく別にあるようだ。価値観をずらす狙い?

『或日の一休和尚』
【作】武者小路実篤
【演出】西沢栄治

土器(かわらけ)売りを脅して追い剥ぎするなどギャグ漫画のような一休。気違い坊主のようでいて彼には彼の哲学があった。ポップな衣装。

一休(原金太郎氏)、寺男(佐野陽一氏)、土器売り&葬式の依頼主&野武士(石原由宇氏)。

二本で55分。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

厳しく戒律を守って苦しむ生き方よりも、自身の欲望の存在を肯定することでより正しさに近付こうとする生き方。屁理屈のようだが弱い人間の側に立たない正しさなんかに意味はないと断じる。自由で自然であってこそそこに正しさがあると。成程とは思うが余り一休のキャラが好きじゃない。良寛のような無邪気さがない。
20の物語 -週末を、劇場で-

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新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

リーディング公演 『マクベス』
【作】ウィリアム・シェイクスピア
【翻訳】小田島雄志
【構成】小田島創志
【演出】鵜山仁

あるのは四脚の丸椅子のみ。展開に合わせ、中央天井から吊り下げられたジョーゼット幕がドレープをくねらせて上下に舞い踊る演出。
岡本健一氏、中嶋朋子さんとビッグネームが並び、リーディングとはいえ今企画の看板のような作品。
『マクベス』はロマン・ポランスキー・ヴァージョンが一番印象的。後はやはり『蜘蛛巣城』か。平蜘蛛で手を洗う山田五十鈴の妖気。

マクベス岡本健一氏とバンクォー木下浩之氏が荒野で魔女・一柳(ひとつやなぎ)みるさんと邂逅するシーンからのスタート。手紙で予言を知るマクベス夫人・中嶋朋子さん、城に逗留する国王ダンカン木下浩之氏。客席通路を大きく使う。

やっぱり『マクベス』は面白い。リーディングを逆手に取ったシーンもあり、65分でも味わえる。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

中嶋朋子さんは前髪の中央だけ赤くインナーカラーで染めているのが効果的。マクダフの妻も兼ねる。
木下浩之氏、一柳みるさんは文句なしの助演。
岡本健一氏はマクダフも兼ねて独りで殺し合う狂気のラスト。

散々煽っておいて罪の意識で気がふれ、さっさと死んでしまうマクベスの妻。独り残されたマクベスはもうどうしようもない。地獄まで一直線。欲望を刺激する魔女達の笑い声。何かを得るということは何かを失うということだ。

自分の欲望が自分を苦しめている話。欲望を叶えれば叶える程、苦しみは増大していく。壺から手が抜けなくなって苦しむ猿の寓話。掴んでいる物を放せば手は抜ける。でも手放せない。苦しんで苦しんで苦しんで死んでいく。自分を苦しめているものが自分自身であることに気付け。
20の物語 -週末を、劇場で-

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新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『水のほとりの女』
作 田中澄江
演出 小林七緒

凄く成瀬巳喜男を感じたが、やはり彼と組んでいだ脚本家の作品だった。1955年(昭和30年)、NHKのTVドラマとして単発放送された作品。演出の小林七緒さんは流山児☆事務所!台本を持って女優が現れ、ト書きを読み上げ、役を演じ始めてのスタート。

戦後の未亡人漫才のようなテイスト。戦死したとされる旦那を未だに待ち続ける貞淑な妻(町田マリーさん)とさっさと死んだ旦那なんか忘れてダンサーとしてさばさば生きる鹿野真央さん。対照的な学生時代からの友人の会話劇。「主人が、主人が、」と繰り返す町田マリーさんに痛烈なツッコミを入れる鹿野真央さんで観客がどっと笑う。

町田マリーさんは初めて観たと思うが鄭亜美さんっぽく感じた。
鹿野真央さんは『無頼の女房』で観た。さばさばして非常に魅力的。
ワンシーン登場の笹野美由紀さんの喋りは市川崑の『あなたと私の合言葉/さようなら、今日は』を思い出した。早口ざーます言葉の応酬が卓球の高速ラリーのように延々続き観客が酔っていく作品。
2回しか演らないのは勿体無い。
45分。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

最後の子供の声は誰だろう?

肝心な所で台詞を噛んでしまうミスが多発。勿体無い。でも凄く楽しい作品。ラスト近くの話の右往左往振りが自分的には蛇足気味か。ラストは台本放り捨てて女優二人に戻るべき。
20の物語 -週末を、劇場で-

20の物語 -週末を、劇場で-

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『ラッツォクの灯』
熊谷達也の連作短編集『希望の海 仙河海叙景』を再構成
脚本・演出 赤澤ムック

宮城県気仙沼市をモデルとした架空の仙河海(せんがうみ)市が舞台。気仙沼では麻の茎(オガラ)に硫黄を塗ったもの=ラッツォクをお盆に焚いて海からやって来る霊を迎える風習がある。

実家暮らしの永嶋柊吾氏はある日会社に行けなくなり、今ではコンビニのバイトで日々をやり過ごしている。彼を気遣う中学時代からの恋人、那須凜さん。家を出ている妹の小林未来(みく)さんは近く結婚するとの報告。

永嶋柊吾氏の一人語りに味があって惹き込まれる。
那須凜さんみたいな彼女がいれば楽しいだろうな。

客は入っているが空席もある。役者や養成所の人が多い感じ。65分。1時間位の芝居を気軽に観れる感覚が良い。演じたい役者、演出したい演出家、観たい観客がぶらっと集う空間。名画座みたいな雰囲気。
是非観に行って頂きたい。

SION 「早く帰ろう」

そう言えば10年前、朝のラッシュに我慢出来ずに
せっかく決まった会社の書類をゴミ箱に投げ捨てて
どっかへ行っちまったあいつは一体どうしてるだろ?
もしかしたら隣の車両で黙って目を瞑ってるかも知れない

ネタバレBOX

延増静美(えんそうきよみ)さんはラスト近くにチョイ出演。

東日本大震災の被災地で全てを失った男が自分の心を取り戻す為に長い長い真っ暗なトンネルを歩き続ける物語。白石和彌の『凪待ち』に近い感覚。ラストは西原理恵子の『パーマネント野ばら』なんか思い出した。

劇中劇として『永久なる湊』が挿入されている。那須凜さんが永嶋柊吾氏に紹介する小説の内容として始まる。那須凜さん自身が80歳の清子婆さんとなるほぼ一人芝居、場内をぐっと沸かす。登場する白菜の古漬け、メヌケのアラ、味噌等を酒粕で煮る郷土料理、「あざら」が気になった。
この話の嵌め込み方が難しい。現実と同時進行にして点々と描写した方が効果的かも。ちょっと観ている方としては構成が唐突で違和感も。
NORA

NORA

東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2026/07/15 (水) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ステージ前面にマジックミラーが何枚も隙間無く立てられていて、開演前は鏡として観客が映っている。どうも空席が見えてしまう。開演すると場内が暗転して光が透過しステージ上が見えるようになる。ステージの上部にはキャストの持つそれぞれの巨大なスマホ画面がリアルタイムで投映されている。基本はLINEだ。カチカチカチカチLINEを打つキャスト達。それをじっと眺める観客。録音したボイスメッセージを送ったり、ビデオ通話をしたり、写真を送信したり。素早く会話を進行する為、打ち間違いが多発。黒木華さんは多かった。

イプセンの『人形の家』を観たことがなかったので黒木華さん主演で観れる喜び。ただ、外国人演出家による現代アレンジ、スマホがテーマ···、と知れば知る程不安は拡大。ロシア人演出家はスマホという新しい言語を使った舞台を作る為に『人形の家』を選んだそうだ。登場人物が少ない会話劇だからと。『人形の家』の夫婦間ディスコミュニケーションを現代病理として描く為のスマホ使用ではなかった。カチカチカチカチ打ち込まれる会話をずっと見上げて読んでいるだけの観客達。一体これは何の時間だ?その観客とのディスコミュニケーションをテーマにした方が良い作品になると思う。

基本、原典通りだが何故かドクトル・ランクがいない。不治の病に冒された長い付き合いの医師。ノラを密かに愛している。

子リスちゃんことノラ役黒木華さんのタランテラは最高。
トールヴァル・ヘルメル役勝地涼氏は土屋佑壱氏っぽく見えた。
クリスティーン・リンデ役瀧内公美さんはいい女オーラ全開。
クログスタ役鈴木浩介氏のマッチングアプリのチェックが会場で受けた。

賛否両論と言うか、どうやって関係者が今作を褒めようとするのかお手並み拝見。あの手この手で楽しませてくれ。

ネタバレBOX

ヘルメルが役所勤めを辞めて弁護士になり、病に罹って療養。その間の医療費生活費をノラが工面した。借金を嫌うヘルメルの為、父親から借りたと嘘をつき、実際はクログスタから1000万円近く借用。その後、父親が亡くなったので返す必要がなくなったとヘルメルには言い、隠れて8年払いの分割で返済し続けていた。いよいよ来年の1月に完済。銀行員クログスタは個人で高利貸しを営んでいたようだ。それが何らかの事件となり社会的制裁を受け、妻に逃げられた。子供達の為にも銀行員として社会的信用を取り戻したい。だがそれも今、新頭取になるヘルメルに馘首されようとしている。こうなってはヘルメルの妻、ノラに縋るしかない。ノラに貸した大金の借用書はどうも怪しい。保証人であった父親のサインはノラが勝手に偽造したもの。それを使ってノラを脅す。自分が馘首されたらこのことを世間にバラすと。新頭取の妻が詐欺事件を起こしていたなんて格好のスキャンダル。世間が黙っちゃいない。

南イタリアの舞踏タランテラをナポリの伝統舞曲「タランテラ・ナポレターナ」に合わせて踊るシーンが印象的。ナポリ出身の外交官のクリスマス・パーティーで披露する為に毎日練習。スマホをちらちら見ながら踊るノラに苛つくインストラクター。クログスタからの告発の手紙をヘルメルに読ませないように必死のあの手この手。頭の悪そうなノラがヘルメルの意識をこっちに集中させようと思い付くものはもうコント。パーティー前日に「全て忘れて踊れなくなった」とビデオ通話でヘルメルに泣きつき、スマホ中継でダンスをリモート・チェックさせる。

相原コージの『漫歌』だったかで携帯依存中毒カップルのネタがある。常に携帯を手にし、携帯越しでないと会話も出来ない。何かそれを思い出した。

ノラのモデルはデンマークの女流作家ラウラ・キェラア。ラウラの夫は教師だったが神経症になり、療養生活に。その費用の為、ラウラは借金を重ねる。次第に返済に困り到頭手形を偽造。それは直ちに発覚し、怒った夫に離婚を突き付けられる。追い詰められたラウラは発狂、精神病院に入れられた。知人だったイプセンは詳細を調べ今作の構想を練る。(後年、ラウラは『人形の家』のノラは自分がモデルではないと世間に発表してくれとイプセンに頼んだがイプセンは拒否)。

クリスティーンがクログスタを懐柔する為に、急によりを戻そうと訪れるシーンも嘘臭い。それでころっと行くクログスタも駄目男。原作通りだが。

ノラはヘルメルが自分の犯した罪を庇い一緒に背負ってくれるものと思っていた。妻の罪は自分の罪だと。だがそれは全くの誤解、ヘルメルは馬鹿な妻を罵倒し己の保身を考えるばかり。夫の為に手段を選ばず必死に何でもやったのに。そこにクリスティーンに懐柔されたクログスタが謝罪文と共に借用書を送って来る。それを読んだヘルメルは安堵しノラを許すと言う。だがノラの心はもう動かない。ペットを可愛がり可愛がられるような主従関係ではなく、夫婦とは対等な人間と人間の向かい合いであるべきだと強く思う。このまま暮らしていてもいつまで経っても自分自身にはなれない。今、何よりも必要なことは自身への教育だと。

※初日に4列目で観た。

※「愚人にほめられたるは第一のはぢなり」。またフランスの食い物にされたのかと思ったらロシア人演出家だった。(ウクライナとの戦争を批判した為、ロシアを離れて欧州を拠点にしている人らしい)。日仏芸術ラベリングで国から金をせびるシステムを蓮實重彦一派が構築した。向こうで箔付けしてから逆輸入。フランスで賞を取れば日本は土人のようにへこへこ拝む。芸術を口実に国から金をせびり取るシステム。(Rock 'n' Roll Swindleとしては凄く頭が良いとも思う。だがフランス人の鑑賞眼なんかこっちは全く信用していない。ここずっとこのシステムの壁打ち芸術ごっこばかり見せられているが日仏共にどんどん作品の質は落ちているのでは?システムの乞食ばかりが増殖。蓮實重彦なんか引きずり下ろせ。国から金をねだる芸術なんか皆死ね)。···なんて書くと袋叩きに遭うのでお勧めしません。ソシュールの言語学や構造主義なんかを仏壇に祀り上げ、呪文のように唱え拝んでおけば一安心。
プライマ・フェイシィ

プライマ・フェイシィ

シス・カンパニー

ザ・スズナリ(東京都)

2026/07/01 (水) ~ 2026/07/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

Prima facieはラテン語で法律用語、「一見して明らかな」こと。
オーストラリアの劇作家、スージー・ミラーによる2019年の作品。彼女は弁護士として働きながら戯曲を発表して来た。今作を小説化したものが現在映画製作中。

灰色の壁に囲まれたステージ背面、カーテンやドアの隙間のように縦に一条の光が差す。この演出が効果的。照明のおざわあつし氏にRESPECT。

何の話か全く知らずに観ていて、役者は魅力的だが話は単調だなと思っていたら、「あの日」から一気に持って行かれた。観る方もキツイ描写、これを演る方も相当辛いだろう。トラウマとの対峙、凝視、恐怖と屈辱と惨めさで心が張り裂ける。

三浦透子さんのことは全く知らず驚いた。このレヴェルの一人芝居を難なくこなせるとは。田畑智子さんっぽい演技派。前半のノリノリの遣り手弁護士振りは海外ドラマ調。

今作を観れたことは運が良い。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

裁判をゲームであると描く前半。被害者の発言の些細な不一致を突いての印象操作、陪審員へのアピールがレースの決め手。そこに真実は要らない。着順しかない。毎日行われているゲームに過ぎない。

今作の巧いのが加害者が法律事務所の同僚弁護士で恋愛感情さえ抱いていたところ。一度、オフィスでセックスもしている。そんな男をレイプで訴えることへの葛藤。自分が我慢すれば終わる話。主人公が突き付けられるのは正しさについて。自分が何度も拒絶した性行為を強行された時に感じた自らの不在。自分がいなくなってしまった。夜明けのタクシーでの老運転手との遣り取りが文学的。

レイプされてから782日、到頭裁判に臨む。
一人芝居だがワンシーン、録音された声との対話があった。

性被害に遭った伊藤詩織が被害者である自身を曝け出して撮ったドキュメンタリー映画『Black Box Diaries』と重なる作品。映画ではその裁判の過程が辛すぎて何度も自殺を考える姿も刻まれる。今作の主人公の目的は加害者の告発だけではない。もっと根源的な問題、今の司法制度では性被害者は泣き寝入りで終わる現実。男社会が作った法律では性被害は本質的に裁けない。女性が訴えるに値する信用に足る法律の改正へと。

日本だと渡邊渚なんかがアフタートーク・ゲストだと盛り上がったろう。現実世界の司法制度さえ男社会の価値観であることを知らしめる良い機会になったと思う。
鉾久奈緒美「死者の書」

鉾久奈緒美「死者の書」

大駱駝艦

座・高円寺1(東京都)

2026/07/02 (木) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

開演前、下手に置かれたガラス鉢に天井から一筋の水が滴り落ちている。ぴん、ぴん、ぴん、ぴん···。劇中、綺麗な水を探す物語だと老婆は語る。

鉾久(むく)奈緒美さんが振鋳(振付)・演出・美術・鋳態(出演)。原作は折原信夫の『死者の書』。長身の鉾久奈緒美さんの肉体は手塚治虫のキャラクターのように美しい。鶴が沢山描かれた紅い着物で写経。今まで観てきた大駱駝艦の舞踏は男性作家の作品ばかりだったと思う。女性がやると全く違うもので美しさ、色気、気品がある。原作を理解した上でもう一度観たいと思った。(全く予備知識なく観たので『チベット死者の書』を勝手にイメージしていた)。

滋賀津彦(しがつひこ)を演じた小田直哉氏は薄皮一枚隔てて筋肉一つ一つの動きが透けて見えるような圧倒的な肉体美。鍛え抜かれた人体模型。

語り部の老婆が急に喋り出すことに驚いた。バレエのようにシーンごとの筋立てをあらかじめ提示してもいいと思う。

左脚が骨になっている骸。男達が首を奪い、左胸に槍を突き刺す。神隠しにあった郎女(いらつめ)が首を拾い、もう一度付けようとする神話。

この美しさは何だ?
人をこの世を救うことの出来るものがあると仮定して、それを舞踏で表現しようとしている。とんでもないことだ。

ネタバレBOX

滋賀津彦(しがつひこ)=大津皇子(おおつのみこ)は飛鳥時代、天武天皇の第三皇子であったが686年、謀反の疑いで捕らえられ24歳で自害に追い込まれた。50年経ち、彼は目覚める。

藤原南家の一の姫である郎女(いらつめ)。郎女=上流階級の女性の尊称。称讃浄土経の千部写経に明け暮れる。郎女の肉体から魂が脱け出て、魂を呼び戻す為に九人の杖人が魂乞いを行なう。その魂乞いにより、滋賀津彦が目覚める。尊い俤人(おもかげびと)に着せる衣を織り始める郎女。それは曼荼羅となる。

郎女=中将姫(ちゅうじょうひめ)。奈良時代、中将姫の当麻(たいま)曼荼羅伝説。蓮の糸を使い、一晩で極楽浄土の曼荼羅を織り上げ、775年入滅。
ディアマイドクター

ディアマイドクター

演劇ユニット「暇つぶしチェルトン」

萬劇場(東京都)

2026/07/01 (水) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

〈A班〉

明治27年(1894年)3月、日本橋の元大工町の高水病院。医師の高水せい(梅本あき乃さん)のもとに運ばれてきた路上に倒れていた少女(小林音花さん)。遠い昔に病でこの世を去った妹ちかにどこか面影が似ている。「からたちの花が咲いたよ」と二人で歌った幼き日々。若き自分(後藤ひまわりさん)とちか(小林音花さん)の姿が瞼に蘇る。

ざんばら先生、歌唱指導も兼ねている主演の梅本あき乃さん。皆文句なしの歌唱力でキャスティングに誠実さがある。
個人的MVPは高水せいの若き日々を担ったもう一人の主演・後藤ひまわりさん。何か不思議な魅力がある。
共に戦った学友である萩原ぎん子役の神田亜由子さん、吉沢クノ役の山川莉恩さんも美声。
驚く程、演技レヴェルが高い大西達之介氏。少女の働かない父親役と衛生局長役を兼ねた。野太い声と台詞回しから舞台の空気感が変わる。衛生局長は外波山文明調。
本多一生氏の学長もユーモラスで良かった。

ネタバレBOX

三河国(現・愛知県)、幼きせい(小林音花〈おとか〉さん)に高名な漢学者だった父(本多一生〈かずお〉氏)は学問の道を指し示す。「志しを持て」と。激動の時代、幕府は潰え明治維新が成る。父は早世し、没落した家は家督を継いだ兄(齋藤蓮氏)、母(行橋〈ゆくはし〉安美さん)、せい(後藤ひまわりさん)、妹のちか(小林音花さん)。寺子屋で読み書きを習う幼きちかに付き添うせい。「女に学問は不要」との兄の言葉に反し、学問に焦がれていた。教師である坂田伊織(蘭丸氏)はそんな彼女に好感を持ち二人は密かに恋に落ちる。伊織に許婚がいることを知り、身分の違いから身を引くせい。東京の吝嗇家の伯母(白川りらさん)の家に嫁に入り、夫(阿久津城〈しろ〉氏)との間に子を身籠る。故郷では妹が病に倒れ、里帰りも許されないせいも昏倒。夢の中でちかが逢いに来て、産まれた赤ん坊に「さき」と名を付けてくれる。長い眠りを経て目を覚ますと母が上京して看病してくれていた。妹が死んだこと、赤ん坊は死産だったことを知らされる。そのまま伯母に焚き付けられた夫に離縁され、家を出るせい。吉原の花魁・駒太夫(七海真帆さん)の下働きをしている時に出会った助産婦・津久井磯子(岩崎紗也加さん)に弟子入りを直訴。自分が目指すべき医学への道がうっすらと見える。

第一幕は女『赤ひげ』の正統派物語。ちょっと直球すぎるとも思った。もう少し観せ方を捻った方が面白くなる題材。『赤ひげ』は三船敏郎に反感を持つ若き加山雄三が段々と考え方を変えていく過程と観客の心とが重なり教育劇として秀逸。高水せいの内面をそう易々とは明かさずに後半まで引っ張った方がいいかも。(飛び飛びに垣間見せる)。無力故に散々踏み躙られてきた明治の一人の女性が世界を変えていく物語。世界は変えられる。本当にそう信じられたなら。

主人公、高水せいのモデルは高橋瑞子(戸籍名は高橋瑞〈みず〉)。明治21年(1888年)、36歳にして日本で三人目の公許女医(国に認められた女医)となる。
明治18年(1885年)、34歳で初の公許女医となったのが荻野吟子。
明治20年(1887年)、23歳で二人目の公許女医が生沢クノ。
古来、無資格だった産婆から助産婦(現・助産師)への橋渡し的存在になったのが津久井磯。明治21年(1888年)、私立産婆学校を設立し人々に医学を啓蒙した。
長谷川泰の創立した私立医学校・済生学舎は後の日本医科大学。高橋瑞子の入学を許可する英断。
その苦学ぶりを順天堂医院の院長・佐藤進と妻の佐藤志津が支援。偶然、高橋瑞子の隣家に佐藤進の甥が住んでいた縁から。
高橋瑞子は明治23年(1890年)、38歳の時に単身ドイツに渡航。何のつてもなく片言のドイツ語でベルリン大学への入学を望む。当時、女性の入学さえ許されていない状況。命懸けの彼女の覚悟に打たれた周囲の尽力により聴講生として受講が許された。

第二幕は明治32年(1899年)のペスト襲来を上手く組み込んでいる。パニックを起こした群衆が暴徒化して患者をペスト菌ごと殺戮しようと殺気立つ。手の打ちようのない現実を前に絶望する高水せい。ふと「からたちの花が咲いたよ」のメロディが聴こえる。生きたくても生きられなかった妹のちかと産まれることの出来なかった娘のさき。「生きている私が挫けてる訳にはいかない」と奮い立つ。このシーンが一番良かった。
阿呆船

阿呆船

演劇実験室◎万有引力

座・高円寺1(東京都)

2026/06/19 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

2回目。

苦しみは正方形、笑いは丸。
悲しみも正方形、笑いは丸。

何故か毎回森ようこさんのキャラはナチスの女強制収容所所長イルザ系。(映画のモデルになったのは女性看守イルゼ・コッホ)。

髙橋優太氏、三俣遥河氏といった看板俳優も出ない。
ベテラン勢はこれからの劇団を担う若手達へのサポートに徹するよう。名前で客を呼べる新しい役者が現れないことには。とにかくチャンスを与えて育てていくしかない。

「Quo vadis, Domine?」=ラテン語で「主よ、何処へ行かれるのですか?」

曽田明宏氏はちょっといしだ壱成っぽい。バンドのヴォーカルみたいな妙な吸引力。身体表現は化物級。

開幕前からステージ、客席通路を使って大人数の寺山スローモーション。巨大な時計台の内部構造のように機械的に動く面々。ステージ上部に高く飾られたアンモナイト。時間を象徴しているのか?集団で何かを示すように、秘められた暗号、繰り返される反復運動、からくり人形のような動き、猫のように前脚をかく、ぴょんとキョンシーのように跳ねる、フェンシング、うさぎ跳び···。

阿呆船(あほうぶね)。
15世紀から17世紀、中世ヨーロッパにて狂人を船に乗せて町から隔離する風習があったという。エビデンスがある実話なのか一種のフォークロアなのか。(ミシェル・フーコーは幾つかの記録を持ち出している)。今作では何処にも目的地はなく港から港を永遠に航海し続ける海上隔離施設。

ステージ上手奧でJ•A•シーザー氏のドラム生演奏。下手奧で多治見智高ジーザス氏のヴァイオリン生演奏。

オープニングは東大法医学部の床の下、自ら生き埋めになって冬眠している裁判長(加藤一馬氏)。裁判をする為に穴掘り人夫が掘って探す夜更けから。

ネタバレBOX

裁判長、検事(𫝆村博氏)、被告人(髙田恵篤氏)、弁護士(飯塚勝之氏)が座り、遥か頭上から森ようこさんがそれを見下ろしている。森ようこさんがガベルを叩く度に反時計回りに一席ずれて皆の役割が替わる。二匹の蝸牛を入れ替えた罪。

今作の主人公である眠り男(曽田明宏氏)は青い髪の等身大人形(青木万奈〈まな〉さん)と結婚しようと思っている。母親(伊野尾理枝さん)は呆れている。そこに登場するもう一人の自分(飛永聖〈きよし〉氏)。曽田明宏氏が眠ると飛永聖氏と交代するそうだ。どちらが本物でどちらが夢なのか?阿呆船に拉致しようとする男達に襲われる曽田明宏氏。

小林珠実さんの読む本としてのスケッチ。

歌うことが止められなくなった渡部みかさん。ジュゼッペ・ヴェルディのオペラ、『リゴレット』の「女は気まぐれ」(女心の歌)を歌い続ける。彼女が個人的MVP。

閑話休題として根本豊氏が客席に配る「ヲ」。観客に「馬鹿と阿呆、どちらが嫌ですか?」と質問。自分が観た回はどちらも「阿呆が嫌」との答。根本豊氏は「自分の望んでいた答じゃなかったですね」。

くじ引き女(小林珠実さん)「ねえ、くじびきしよう。」

ラムネの瓶の中にもっと素晴らしい世界がある。そこに入るには蓋となって遮る玉を何とかせねば。球体=ガリレオ=常識。
手の平の中に地図はある。右手がマストとなり、阿呆船に乗り込んで正気と狂気の旅に出よ。

飛永聖氏はどことなくゴー☆ジャスっぽい。

赤い洋服におさげ髪、ゾンビメイクの小林珠実さん。
青い髪のフランス人形チックな青木万奈(まな)さん。目を瞠るポッピン。どこかで見た覚えがあったが思い出せない。
小林珠実さんと青木万奈さんはアングラ・レディとして売り出せば人気出ると思う。

ラストはJ•A•シーザー氏がドラムを叩きながら歌う「阿呆船」。これだけグラサンが似合うのは氏と真樹日佐夫ぐらい。劇画調の声は三上寛や人間椅子に似ているのか。
緑が丘

緑が丘

カレーカレーグループ

あさくさ劇亭(東京都)

2026/06/26 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

目黒区の緑が丘かと思ったら、千葉県の東葉高速線、八千代緑が丘駅なんだな。

スーパーの夜勤で働く二十代半ばの瀧上(たきがみ)ねねさん。兄からLINEが来て母が倒れたので奈良の実家にすぐ帰れとのこと。母とは折り合いが悪かった。高校を出てすぐ家出のように東京に逃げて来た。ずっとファミレスやらスーパーやらで目的のないフリーター生活。一度帰ろうかと思う。こっちでお世話になった人達に挨拶回り、心ばかりの御礼品を。

語り手的な不思議な立ち回りの服部淳子さん。
ファミレスのバイトで世話になった役者志望の山本泰暉(たいき)氏。喋りが立つ。BreakingDownのひかぴーに似ている。
やたら自虐的な鹿内聡氏。「こういう奴よくいるな。リアリティがある。」と思っていたら作・演出の人だった。
元彼の與那城史登(よなしろあやと)氏。NPC喋り。

詰め掛けた観客に熱がある。若い頃の村上春樹みたいな文体。期待値が高いのだろう。空気感はヴァネッサ・パラディの『絶世の恋』か。瀧上ねねさんに妙な魅力がある。運の良い出逢いがあれば凄く売れそう。黒木華みたいにその辺にいそうな『特別な普通』をまとっている。「へ?」

もう駄目だと思いながら今日を何とかやり過ごす。全てのそんな疲れ果てた連中のふと見た何だかよく分からない夢。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

キンミヤ焼酎をWILKINSONで割って眠剤を飲む。眠ってページをまた一日めくらないと。眠って起きて眠って起きて···、ページをめくる。何で?

女性が書いていると思っていたら男性作家だった。筒井康隆の『夢の木坂分岐点』を思わせるような後半の緑が丘駅構内での展開。丘をくり抜いた内部に駅の地下通路がある。自分の心の中を下に下に無意識の方へと降りていく。記憶を過ぎて何処まで行っても真っ暗闇で何も見えない。もう先へも進めない。でも···。

The ピーズ 「じゃますんなボケ(何様ランド)」

仲間外れを寂しがる余裕ねえ
もう興味ねえにした
わがままBEST! 流されねえ
ヒトの気分はヒトの気分だ
使えないんだ 付き合えねえんだ
自分自身があてになるんだ
夢の中で夢を見るんだ
裸足

裸足

劇団道学先生

雑遊(東京都)

2026/06/23 (火) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

〈黄色いヘビチーム〉

『どんな色がすき』
『ホ・レッ!』
開演前SEで育児サポート音楽YouTubeチャンネル、「うたスタ」がカバーした楽曲が流れている。出来が良い。ノリノリで客席案内をしているのは〈青い鳥チーム〉の和田渚さん。

演出における青山勝氏と寺十吾氏には全幅の信頼を寄せているので今回も間違いなかった。何が良くて何が駄目なのかの価値観がハッキリしている。そこをあやふやにしていない。その感覚は信用出来る。

今作は畑澤聖悟氏の『親の顔が見たい』の本歌取り、幼稚園における教員内虐めのドラマ。作品内にちゃんと「親の顔が見たい」との台詞もある。岸田國士の『紙風船』オマージュも。役者達はきちんと為すべきことをこなしている。
面白かった。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

虐めのターゲットになっている教員、鎌宮彩羽(さわ)さん。
実は視野が広い園長、永川剛志(つよし)氏。
その息子で気の優しい教員、鵜飼拓斗氏。
実は彼の恋人でもある教員、木下綾夏さん。
ベテラン教員の冨岡奈央さんは味があって巧い。
方言丸出し天然の新人教員、小松崎郁(かおる)さん。

虐めの加害側教員、石川佳那枝さん。リアル。
虐めの加害側教員、河原邦恵さん。

教材メーカーの山口拓人氏。鎌宮彩羽さんに惚れている。
ある意味主人公の松田一亨(かずあき)氏。鵜飼拓斗氏の中学時代の先輩。彼の紹介で送迎バスのドライバーに雇われる。鎌宮彩羽さんに惚れている。この人の大暴れがドラマを生む。

どうしようもなく追い詰められた時には、自分の持っている運を信じるしかない。自分に与えられた天運を。

The Rolling Stones 「In The Stars」

カードで運を試す奴がいる
ウイスキーグラスに骨を放り込む奴だとか
成功したいなら沢山の幸運が必要
雷が落ちた時、俺はそこに立っていた

手が重たく感じる
立てた計画に縛られてしまう

全ては星の中に それが俺達の運命
全ては星の中に お前と俺は決まってた
全ては星の中に 全く不思議なことじゃない
全ては星の中に お前と俺は決まってた

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