代が君・ベロベロ・ケルベロス 公演情報 ケダゴロ「代が君・ベロベロ・ケルベロス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    青のパーティードレスに身を包んだ女性(木頃あかねさん)が開演前からステージにしゃがみ込んでいる。物干しにシーツを三枚干しそれが国旗掲揚のようにするすると上がる。赤いライトが当たり3つの日の丸に。『女囚701号/さそり』の処女を捨てた梶芽衣子、白いシーツに血が滲み日の丸にだぶるシーンを想起。
    その下に現れるのは3つの巨大な回し車。ハムスターの運動用のアレが人間サイズで登場。
    それを走って回し始める者達。女優陣は白いシャツに黒いゴワゴワした厚手のズロース姿。昭和のブルマ姿の女学生を思わせる出で立ち。
    褌姿の男優三人(鹿野祥平氏、佐藤冴太郎〈こたろう〉氏、金指喜春〈かねざしきはる〉氏)。戦前の田舎者の風情。
    一見、企画モノ乱交AVのような猥雑さ。全員前張りを仕込んでいる。由緒正しき暗黒舞踏、大駱駝艦の貫禄すら感じさせる佇まい。当時のその勃興の体験を令和の今にトランスレーションしてみせているかのよう。
    突然のパラパラ。大阪府立登美丘(とみおか)高校ダンス部の『バブリーダンス』やアバンギャルディの流れも感じる。
    軍隊アリの生態をイメージさせて変顔して四つん這いに歩く女達。矢鱈長く舌を出す。(画風が相原コージ・タッチ)。唐突なマジック・ショー。切断される上半身と下半身。ズロースをずり下ろしての生尻折檻。この辺からおっさん客が大受けで声を上げて笑い出す。戦前の童謡『皇太子さまお生まれなつた』が流れて大爆笑。アキラ100%っぽいネタもある。一見、天皇制を奉った大日本帝國を嘲笑っているような左翼的観方。だがこれはそれだけの安っぽい見世物ではない。国体論であり、日本列島で数千年生きてきた自分等民族の背負ったアイデンティティとカルマの物語。今村昌平の『神々の深き欲望』なんかもそうだった。
    中国映画『南京!南京!』で奇妙な舞踏を舞う日本兵達の南京入城が描かれる。それが表現しようとしたグロテスクな異文化。この視覚から来る直接的な気味の悪さとそれを伝統だ文化だと好意的に受け入れ正当化しようとする、自分に内在された気味の悪さ。日本人特有のドメスティックで閉鎖的なローカルルールを苦笑いで許容する国民性。

    昔、死ぬ程尖っていた時期のラフィンノーズは発表する作品ごとに『この音源に対する一切の批評を拒否する』と宣言していた。そんなRADICALなAttitudeすら感じさせる。

    鹿野祥平氏はヤバい人だと思っていたが終演後に知人とまともに歓談している姿を見てほっとした。
    5911と右脇腹にTatooが入った佐藤冴太郎氏。その眉毛。
    金指喜春氏は亀田兄弟のような気安さが武器。

    今作を言語化するのは不可能だ。醜くて愛おしい我が民族。ここまで何とか生き延びたんだ、どうにかしてもう少し生き延びろ。
    主催の下島礼紗さんにRespect。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    三位一体ケルベロス。半人半獣ケンタウロスの美しさ。軍帽取り騎馬戦。男達の褌を額に巻く三色ドレスの貴婦人達。いつの間にか赤紙が貼り付けられた股間。薩摩弁の歌。謎の生物の生態系を観察している気分。中島みゆきの『時代』が掛かる。どうもこの生物はがむしゃらに時代を回し続けねばならないようだ。「そぉーれぇー!!」

    ど田舎の糞インディーのプロレス大会を暇潰しにだらだら眺めていたら何か途轍もない情念を見せつけられて思わず身を乗り出し無言で食い入るように見つめ始める。これは何だ?リングに神を呼び込む為の儀式なのか?最早試合ではない。祭祀だ。

    とっくの昔に精神は果て、限界を越えた肉体の運動量だけがあらゆる意味を一瞬だけ凌駕する。その“瞬間”を降臨させるとでもいうつもりなのか?その一瞬だけを皆が信じて狂った。原始の神事。言葉にならない。

    奇跡は必ず起きるからこそ奇跡という。
     
    ※殺してくれ その腕で何度でも名を呼んで
    FLASH BACKで FLASH BACKで

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    2024/08/24 00:44

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