三人姉妹
アイオーン
自由劇場(東京都)
2023/09/23 (土) ~ 2023/09/30 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ようやくチェーホフの4大戯曲をコンプリート。
この「三人姉妹」が一番ストーリーが豊かで現代のTV・映画のドラマに近く肩肘張らずに自然に観ていられる。
将軍であった父が亡くなり来訪者も減ったとはいえ、自前のお屋敷に住み、父の年金のお陰で働かずに暮らすことができ、使用人を雇ってパーティーを開く余裕さえある。チェーホフの登場人物はこんな人が多く自分の身をどこに置いて捉えれば良いのかとまどってしまう。まあ100年以上前の外国の話なので「へえ、そうなんだ」と傍観していればサーっと流れて行く。それにしても「モスクワに行きたい」という姉妹の気持ちは「東京に行きたい」と思っていた若き日の私とオーバーラップして懐かしい。念願かなって東京(埼玉だけど)に出て来ることができた私としては姉妹にもモスクワに行って貰いたいと祈るばかりだ。
1・2幕は姉妹のダイニングルームで展開される。その家具が気品があってきらびやかに輝いている。規模こそ小さいが「レオポルト・シュタット」を思い出してテンションが上がった。
「自由劇場」は1・2階合計500席のコンパクトな作りで舞台との距離が近く、今回5列目だったせいもあって実演の面白味を満喫することができた。観客には念のいった着物姿のご婦人もいらしたりして、ちょっと幅が広く作りの良い椅子と相まって非日常に入り込むことができた。
ヨーコさん
演劇集団円
吉祥寺シアター(東京都)
2023/08/26 (土) ~ 2023/09/03 (日)公演終了
実演鑑賞
佐野洋子さんのことは名前を聞いたことがあるくらいで、この劇を観に行ったのは演劇集団「円」の作品だからである。皆さんが書かれているように完成度は高い。主演の谷川清美さん(現在の演劇集団円の代表取締役)はさすがの圧倒的演技で会場を制圧していた。休憩なしの1時間50分
しかしながら佐野さんのことをほとんど知らない私は最後までとうとう入り込めなかった。何も書けないので佐野さんのことを調べていて気が付いた不思議なループを書いておく。
佐野洋子はジュリー(=沢田研二)のファン(とこの劇の冒頭で言っていた)
ジュリーのファンと言えば悠木千帆(後の樹木希林)
悠木千帆の夫は岸田森(その後離婚、岸田森さん懐かしい!)
岸田森の父の兄は岸田國士
岸田國士の娘は岸田衿子(と岸田今日子)
岸田衿子の夫は谷川俊太郎(その後離婚)
谷川俊太郎の妻は佐野洋子(その後離婚)
SHINE SHOW!
東宝
シアタークリエ(東京都)
2023/08/18 (金) ~ 2023/09/04 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
お馴染みのaga-riskの面々がシアタークリエで有名スターの方々と共演しているのを見るのは不思議な感覚だ。安定のaga-riskクオリティが更にパワーアップしていて大いに楽しませてもらった。
これを観ていて確信したのは、私がTVとか劇場でのプロのお笑いを必要としておらず圧倒的に音楽を求めているということだ。そういうわけで感動するのはお芝居そのものではなく歌となってしまう。その中でも高音炸裂2連発の
栗原沙也加さん「ロマンスの神様」(広瀬香美)
木内健人さん「粉雪」(レミオロメン)
とそれに続くバラード
中川晃教さん「楓」(スピッツ)
には心が震えた。
この舞台は歌が主役ではないので曲の途中にドタバタが入るのだがそれがかなり鬱陶しい。歌を聞かせてよと叫びたい気分だ。それを一番感じたのは朝夏まなとさんのあの歌である。コメディとしては拍手喝采をする場面なのだろうが私は逆にすっかり落ち込んでしまった。もちろんこれは私が観方を誤っているのである。それは分かっている。最後の1コーラスくらい演出を無視して爆発してくれないかと期待したが当然それはなかった。
MC役の鹿島ゆきこさんにシアタークリエ級の華を感じた。
*実在の大会の決勝が行われました。
「新宿三井ビルディング会社対抗のど自慢大会」、4年ぶり開催の第46回はPayPay銀行が優勝(2023/8/25)
十人のエスパーたち の殺人
カスタムプロジェクト
調布市せんがわ劇場(東京都)
2023/08/11 (金) ~ 2023/08/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
毎年8月お盆休みには仙川劇場での観客参加型の推理ドラマが行われていたが2020年からコロナのために中止になっていた。昨年は会場を変えて行ったのだが私は知らなかった。
この推理劇の肝は正確で精密な理屈ではなく、屁理屈、糞理屈、謎理屈、言い張る本人しか分からない理屈、「いやいやそれだけは無い」理屈、などの理屈にならない理屈の数々である。これらの地雷を大量にまき散らし観客の正しい判断力を麻痺させ、後半の種明かしで炸裂させ無条件降伏に追い込むのだ。そういう目くらましをかいくぐって全問正解する人が9%もいるという。もう尊敬しかない。
2018,19年に参加したときは来年こそは全問正解するぞと細かく作者の癖を研究したのだったが間が空いたせいかすっかり忘れて真面目に考えてしまった。当然ながら何一つ分かるはずもない。いやあそれにしても全く手も足も出ないのは老化もあるなあ(泣)。
千秋楽が終わってネタバレの拡散が推奨された。この後、来年のために今年の分析を少しずつ書いて行く。配布資料を持っていない方にはチンプンカンプンであろうがそれでも解けるんじゃないかな。
問題1:劇中で殺された二人を、殺害した犯人は誰?下記から選択せよ
志保、写田、複井、由解、未来、姫野、陶磁、大念、速水、振原
問題2:エスパー複井の超能力は何?下記から選択せよ
瞬間移動、変身、磁力発生、透視、念写、頭脳明晰、精神感応、潜水、念力、透明化、
ダウジング、時間跳躍、加速装置、爆弾、暗号解読、動物操作、未来予知、複製、治癒、発火
問題3:陶磁殺害の方法(密室トリック)は?選択肢から選び、空欄□を埋めよ
※選択肢は複数回使用可能です。
犯人が出たのは□から。□を□の隙間に使い、□を低くして□ことで密室を作った。
壁、棚、換気口、天井、抜け穴、ナイフ、お茶の葉、本、エアコン、指、
死体、ベッド、室温、歯、音量、身長、ステッキ、ドア、燃やす、磁力、
瞬間移動、重くする、軽くする、凍らせる、滑らせる、火、ボンド、窓、姿勢、遅らせる、
走らせる、頭、目線、水、未来予知、念力、加速装置、油、眠らせる
解答はネタバレBOXへ。舞台も捜査資料も見ずに解けるか?
桜の園
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2023/08/07 (月) ~ 2023/08/29 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
最初は♪チェーリー、チェリベイビー♪と「シェリー」の替え歌で始まり昭和のおっさんはニヤッとしてしまうが、こういう軽めのコミカルな演出がこの舞台の売りである。最初は「面倒くさいなあ普通に演ってよ」とイラっとしたが、チェーホフが題名に続けた「喜劇」の意味はこういうことなのかと最後には説得されてしまった。嘲笑とか冷笑とかではなく普通の軽めの笑いである。まあそれに本当に何の工夫も施さないと退屈な舞台になりそうだし。他の「桜の園」よりかなり長めの 90分+20分休憩+70分。
演出のショーン・ホームズさんは昨年「セールスマンの死」を手掛けた方。いろいろ変わった演出が出て来るが半分も意図は分からない。特に最後のあの機械の轟音はいったい何の意味があるのだろう?(追記:意味が分かったのでネタバレへ)そういう個々の不満もあるのだが全体としてはかなり心地良い。そういうわけで3rd callでやや迷いつつも立ってしまった。立ち上がり率は40%くらい。まあ今日はまだプレビューだし、こんなものか。
ラネーフスカヤ達はどんどん落ちて行き、そのことも分かっているのに何も変えられない、というと最近ずっと日本について言われていることと同じだ。…とボヤキを書こうとしたが救いがないので中止。
Proof
ハルナツ
シアター風姿花伝(東京都)
2023/07/21 (金) ~ 2023/07/29 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【日本語版】を観劇、【英語版】もあり(60分+10分+55分)
亡くなった天才数学者ロバートの遺稿から画期的な証明(proof)が発見される。状況から故人の手になるものと思われたが娘のキャサリンは自分が書いたと主張する。さて真実は…。
というミステリー風な看板を掲げているが、実は数学でもミステリーでもないラブストーリーなのだ。キャサリンのことを恋人のハルは信じたいのだが彼の数学者としての理性はそれを拒否する。証明を精査している内にハルはあることに気づく…。
そういう葛藤と昇華の物語。と続ければかなり正確な紹介になるだろう。前にダルカラード・ポップ版を観たときは数学でなくても小説でも何でも良いだろうにと反発したのだがこの舞台も観て数学であることの必然性に少し理解が深まった気がする。
この公演は小林春世さんと佐藤千夏さんによるユニット「ハルナツ」の旗揚げ公演。お二人は持ち味全開というかやりたい放題(笑)。私はロバート役の高川裕也さんの落ち着いた良き父親振り(と静かな狂気)に好感を持ったが、会場で一緒になった知り合いの女性はハル役の祁答院雄貴(けどういん ゆうき)さんがいたくお気に入りの御様子。確かにイケメンでオーラが出ていた。ああしかしロバート役はダラカラード・ポップ版の中田顕史郎さんの派手な演技も良かったなあ。原作の設定は静だと思われるがそれを外した中田節は誰にも真似はできない。
二回目は一回目とは真逆に下手後方から観劇。
場所のせいか熟成が進んだのか私に余裕ができたのか前回とはかなり印象が異なる。特にロバートが感情を激しく表すようになったと感じたが観る場所の違いかもしれない。主宰のお二人はやりたい放題と書いたが小林さんはNYKのセレブ風から田舎のマイルドヤンキー風まで声色も変えなが表現力の幅を試す一方で佐藤さんはひたすら自分の道を追求していて対照的であった。
会場は2回とも満席で新団体まずはめでたし。
灰色の街
Project JUVENILE
中板橋 新生館スタジオ(東京都)
2023/07/20 (木) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
殺人請負会社のお陰で成り立っている街というブッ飛んでツッコミどころしかない設定は良い。そして主要な役者さんは自分のキャラを確立し演技もしっかりしている。
だが、そこで展開されるのは時代劇やヤクザ映画や刑事ドラマなんかで見たようなシーンばかりだ。こういうお話はいくつかキーワードを与えるとChatGPTなんかのAIが作ってくれるようになるだろう。人間はもっとワクワクするものを作らないと。
ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)
劇団チョコレートケーキ
シアタートラム(東京都)
2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
意外性の全くない筋書きだった。
追記:
…と書いてから考えた。何か別の意味があるのではないかと。次の二つがすぐに思い浮かんだ。
1.これはEpisode1ですべての差別がなくなった未来を描くEpisode2がある。
2.実はこの戯曲はあらすじを ChatGPT で作った実験戯曲なのである。
この二つを検討して行くうちにEpisode2をChatGPTで作るとどうなるかが俄然気になって来た。長くなるので結果はネタバレBOXへ。
或る女
演劇企画集団THE・ガジラ
シアター風姿花伝(東京都)
2023/06/30 (金) ~ 2023/07/09 (日)公演終了
実演鑑賞
会場に入ると赤ん坊の悲しげな泣き声が流れている。それが開場から開演まで休むことなく続く。あまりに気持ちが悪いのでトイレに行ったりしてできるだけ聞かないようにしていたが、ほとんどの皆さんは何事もなく着席している。この時点で来てはいけないところに来てしまったと悟るべきだった。
お芝居が始まると今度は怒鳴り声が飛び交い、ところどころ何を言っているのか分からない。そして突然の大きな音、特に大きな鉄の蓋をバタンと閉める音は心臓に悪い。金と時間の無駄は良いけれど健康まで蝕まれては困るので中休みで退散した。
まあ蒙古タンメン中本に行って辛いと文句を言っても仕方がない。迷い込んでしまった私が悪いのだ。この団体には二度と近寄らないだけだ。
アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2023/06/29 (木) ~ 2023/07/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
舞台は中学3年のクラス。主役の姉妹は二卵性双生児で父は日本人だが母は在日朝鮮人であり、姉妹が生まれて1年で両親は離婚した。それ以来、姉のソジン(瑞生桜子)は母と、妹のゲン(藤松祥子)は父と暮らしていたのだが父が亡くなってゲンが二人と同居することになりソジンのクラスに転入してくる。
という最初の設定だけで重さに押しつぶされそう。さらに妹は転校してきてすぐに父親の形見の自転車を盗まれる。大事なものだから一緒に探してくれと頼む妹に姉は取り付く島もなく断る。ゲンはクラスの不良が犯人だと思い危険な裏山にまで出かけるのだが…。ここで更に重りが大量に追加される。
実は2年前の公演も観たのだが重さに耐え切れず休憩時間に帰って来てしまった。重さといっても作られた重さと感じたのだ。当時はまだ演劇のわざとらしさへの耐性が低かった。そして今回、心の準備はできているので再度の挑戦である。その結果はちょっと欲張りすぎて散漫ではあるが結構感動的じゃないか、ということになった。
登場人物は生徒24人と担任、副担任それに用務員のおばさんの計27人である。その人々が単独あるいは2人から4人の塊になって恋愛、部活、子育てなどでそれぞれの1年間のストーリーを紡いで行く。それらは独自の世界を持っていて見ごたえがある。さらには全員によるダンスもあったりして、姉妹のことを忘れたころソジンがゲンに「生まれて初めて母親に逆らって二人の前から消える」ことを宣言する。そしてソジンのいない卒業式へ…
ダンスが素晴らしくて星一つ増しとなった。しかしこのダンス、キレッキレの人もモタモタの人もなく、かといって全員の動きをピタリと合わせようというのでもなく、個性を出しつつほどほどに調和させるというこの劇全体の作りがそのまま出ていたように感じた。
SUNNY
梅田芸術劇場
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2023/06/26 (月) ~ 2023/07/05 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
あらすじ:夫や娘との生活もまあまあ順調な奈美(花總まり)は母親の入院先で偶然30年前の高校時代の遊び仲間「サニー」のリーダー千夏(瀬名じゅん)に会う。千夏はガンで余命1か月だという。彼女の願いで昔の仲間を探すことになる。彼らはある事情で連絡を取り合うことが無くなっていたのだった……
舞台は二段に分かれ、主に下の段で現在を上の段で高校時代を展開する。同じ人の現在と過去の姿が全然似ていなかったりするのはあまり気にしないことにしよう。
よくあるお話で普段なら絶対に行かないのだが「SUNNY」という題名に引き込まれてしまった。「SUNNY」は1966年のBobby Hebbの大ヒット曲。もっとも1976年のBoney M.のディスコバージョンの方が私の耳には馴染んでいる。それでこの曲を中心に60-70年代のアメリカンポップスが歌われるのかと思いきや、他は80年代の日本のポップスであった。オープニングは花總+スクールメイツもどきの「センチメンタル・ジャーニー」である。たしかにこの時期のJ-POPは大豊作なのでこれも良しと頭を切り替えた。何にも考えずに歌とお話を楽しんでいる分には結構快適である。
母娘混合のダンスは体操のレベルだったが、若者だけになって「ダンシング・ヒーロー」の2017年登美丘高校ダンス部版「バブリー・ダンス」で一気にスピード&パワーアップして盛り上がる。ミュージカルとしての不満はここから始まる音楽の怒涛の大波であらかた吹き飛ばされてしまう。
…としても満足度は3つ星半だなあ。
『消えなさいローラ』『招待されなかった客』2本立て
Pカンパニー
西池袋・スタジオP(東京都)
2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了
実演鑑賞
いやあこれは私には難しい方の別役だ。何かそれらしいことを書いてみたいのだが「説明」にあること以上にはつかみ取ることができなかった。もちろん実際に観たのだから短い文章とは全く違う膨大な情報を浴びているはずだ。しかしそれを沈殿させ言語化することがまるでできない。
まあでも「わが町」も「ガラスの動物園」も観たことがあったのは演劇ファンとしての基礎ができているようで単純に嬉しい。
ダ・ポンテ
東宝
THEATRE1010(東京都)
2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
素晴らしくて大絶賛ということはないが、地味に良い舞台だった。音響が良くて歌もセリフも明瞭に聞こえる。小編成オーケストラの生演奏も素敵だった。ダ・ポンテ役の海宝直人さんの歌声は朗々と響き、後半の一曲でこの舞台全体の満足度を一段上げてくれる。モーツアルト役の平間壮一さんはセリフは良いが歌声は力が入りすぎて潤いに欠けていたかも。
演出では歌の終わりの拍手の求め方が下手だ。これは音楽劇の基本だと思うのだが他の舞台でも設定をしっかり考えていないなと思うことが多い。この舞台では拍手を求めない曲では間髪を入れずセリフが発せられるのはうまくできていたが、この曲で拍手はないでしょうというのもあった。あの沈黙が辛い。俳優さんには地獄だろう。
ロレンツォ・ダ・ポンテ(1749-1838)は、イタリアの詩人で台本作家。モーツァルト(1756-1791)の3つのオペラの台本を書いたことで知られている。『フィガロの結婚』1786、『ドン・ジョヴァンニ』1787、『コジ・ファン・トゥッテ』1790。(ウィキペディアから抜粋)
このダ・ポンテ氏、なぜか日本で人気で昨年には
音楽劇『逃げろ!』〜モーツァルトの台本作者 ロレンツォ・ダ・ポンテ〜
が上演されている。ダ・ポンテは天才ではなかったという設定で音楽もロックだったが本日の舞台では彼は天才であり音楽もクラシックである。
この公演はこの後は名古屋に移り再び東京に戻ってから大阪でフィナーレとなる。
カーテンコールの写真撮影がOKだった。「追記」これはプレビュー公演だけの特典で続く本公演では撮影禁止となった。
池袋Brilliaホールの本公演も行ったが完成度がずっと上がっていた。上で苦言を呈した平間壮一さんも全く問題のない仕上がりだった。また何度かBrilliaホールは音響が悪いと書いたが今回はコーラスの一人一人が聞き分けられるのにしっかり融合していて文句のつけようがない。オーケストラの音が明瞭なのも素晴らしい。どうやらホールのせいではなく音響技術者の問題のようだ。この池袋公演の満足度は星5つ。納得のスタンディングオベーション。
カーテンコールでの観客の動きが面白かった。2ndで立つ人が中段席でチラホラ、しかし前方席は微動だにせず(まあここは私も早いと思った)そして3rdで全員起立。リピーターなんでしょうね。NYの本屋の場面で奥さんが歌った後で食い気味に拍手を入れていたのも彼女らなのだろう。普通は短すぎる歌なので戸惑ってしまう。全体に拍手をするかどうかに困るのは相変わらず。16日の東京千秋楽は2ndで全員起立となると予想。
楽園
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2023/06/08 (木) ~ 2023/06/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
こんな田舎あるあるの聞き飽きた話は退屈なだけだ(まあいろいろ現代の日本をまぶしてはいるけれど)。最初の1時間はもう拷問。もっとワクワクするお話を作ってよ。もっとも村長の娘と区長の妻、どちらも嫌味さが秀逸で、かなり興奮させられた。
R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2023/06/09 (金) ~ 2023/06/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
一人の男が二つの家庭のお父さんを交代交代せわしなく演じる。そんなカオスなオープニングでつかみは十分。理想の家庭とほころびのある家庭、お父さんもなかなか大変だ。そして突然お父さんは殺されてしまう。
犯人は誰かとあまり考えずに舞台に集中しよう。テンポの良い展開でそれは容易だ。そうすれば大きなカタルシスを得ることができるだろう。まあしかし、いつものことではあるけれど、犯人の動機は1ミリも私の心に入ってこない。
初日だったせいか登場人物が多いせいか、俳優さんたちの演技が融合していなかった。同じく恒例のmoveダンスも劇団員抜きで行われたため似て非なる何かになっていた。どちらもしばらく寝かせておけば自然と熟成して行くものと期待している。
『カミの森』『<花鳥風月>短編戯曲セレクション1・2』
ティーファクトリー
座・高円寺1(東京都)
2023/05/31 (水) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
一度に3つの舞台が交互上演されているが、今回は2時間を超す長編『カミの森』を観た。あとの2つは短編集。
滅茶苦茶簡単に言うと「兄(今井朋彦)は新興宗教の教祖、弟(加藤虎ノ介)はゾンビ映画の監督。そういう兄弟の20年前に失われた関係の再生の物語」ということになるのだろう。「崩壊した別の家族の修復」も外せないか。
それを様々な演出技法で展開し拡大して行くのだがこちらの頭が回らない。笑いを取りに来る場面があっても一般観客はとまどうばかりでプロらしき一角で反応があるのみ。
今井さんと加藤さんの持ち味は楽しめた。
『クロノス・ビギンズ』『あしたあなたあいたい』
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2023/05/20 (土) ~ 2023/05/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「クロノス・ビギンズ」を観劇
原田樹里様を久しぶりに拝みに出かけたのだが、かなり後ろの席だったのとどんどん悪くなる視力のために御本人かどうかもよく分からなくて涙目だった。
演目はこの劇団が舞台化を進めている梶尾真治の小説「クロノス・ジョウンターの伝説」の新作「クロノス・ジョウンターの黎明」の最初の上演なのだった。旧作では設計図を渡されその通りに作ったとしか書かれていないが新作ではその辺の事情が少し明らかになる。
シリーズものだがほとんどリセットに近く私のように初めてこのシリーズを観る者にも支障はない。タイムマシン+ラブ・ロマンスがこのシリーズのコンセプトで本作もそのど真ん中である。新しいものや尖ったものはないが普通に楽しめるエンタメ作品であった。
ホロー荘の殺人
ノサカラボ
三越劇場(東京都)
2023/05/03 (水) ~ 2023/05/08 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
三越劇場は5月を「ミステリー月間」として二つの公演を行う。
第1弾が本作、アガサ・クリスティーの戯曲版「ホロー荘の殺人」である。1946年の小説版ではポワロが登場するのだが1951年の戯曲版はポワロ無しに改作されている。また論理的にも物理的にも構造が簡素化され舞台映えのする解決篇になっている。70分+15分休憩+90分
5人の女優さんのうち4人が元宝塚である(凰稀かなめ、紅ゆずる、旺なつき、綾凰華)。4人も揃えるのは犯人が誰かを分からなくするためだが、なぜに宝塚なのかは後半になって犯人がブラックな感情を爆発させるところで分かる。普通の女優さんではできない表現をプロデューサーの野坂実さんが期待したのだろう。…って犯人が4人の誰かだって言ってしまった(汗)いやでも4人を差し置いて元アイドルの高柳明音さんが犯人だったりしたら詰めかけた宝塚ファンが暴動を起こすでしょう。配役表を見ると河相我聞さんが犯人臭いけど殺される方だし。
執事役の佐々木梅治さんがさすがの良い味を出しておられた。
夜叉ヶ池
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2023/05/02 (火) ~ 2023/05/23 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初日観劇。いやあ素晴らしかった。今年のナンバー1だ。
泉鏡花というと私的には受験勉強で覚えた名前で作品は読んだことがなく、時代遅れの作家という認識で、あまり期待しないで出かけたのだった。しかし、静から動へのダイナミックな話の展開、美しく斬新な衣装と踊りにすっかり引き込まれて3回目のカーテンコールでは周りの人に先んじて立ち上がってしまった。もちろん視界の端でどなたかが立ったのを確認してからなのだが(笑)
1913年(大正2年)の戯曲、つまり110年前の作品である。大正初期というと日本でもまだ人間と妖怪が共存していた時代だ。雨乞いで若い女子の生贄を捧げることも毎年どこかの村で行われていたという(「大正風俗大辞典」民明書房刊より)。そんな時代のお話……おいおい大正の人に叱られるぞ。
登場人物は
・山奥の釣鐘堂を守る晃(勝地涼)と百合(瀧内公美)、そして失踪した晃を探しにやって来た学円(入野自由)の3人。
・夜叉ケ池に封じ込まれた竜神の白雪姫(那須凜)とその乳母などの家来たち。家来たちは魚の精のようだ。
・干ばつにあえぐ村人たちと議員に雇われたヤクザ者たち。雨乞いを企てている。
の3つのグループに分かれる。
と書くと皆さんストーリーの大筋は想像が付くだろう。まあでもそんな余計なことを考えずに目の前に展開する美しきものことをただただ楽しめば良いのだ。
瀧内公美さんのはかなげな美しさ、那須凜さんの躍動する美しさが堪能できる。私の推しの勝地涼さんはもちろん素晴らしく、眼鏡姿の入野自由さんはぴったりの雰囲気を醸し出している。
原作は短いもので争うシーンの記述も簡素でもちろんダンスシーンなんて書かれていない。そこを限界突破に膨らませたのが演出の森新太郎さんと振付の森山開次さんだ。満足度は余裕の星5つ。
***
千秋楽も観劇
序盤の芝居はほとんど舞台下手で行われるので上手席の今回はかなり退屈であった。しかし魑魅魍魎がワラワラと湧いてくる歌舞伎風「スリラー」の踊りでダイナミックモードに入ってからはそうそうこれこれと膝を打っているうちにそのままエンディングまでハイテンションで持って行かれた。
本当は初日と千秋楽を比べてどう進化したかを比較するはずだったのだが三週間も空いてしまうと今の記憶力では無謀な試みであることを思い知った。
カーテンコールで一番に立つぞと意気込んでいたのだが2nd callで皆さん立ってしまって涙目だった。千秋楽と初日では違って当然。しかし2ndで真っ先に立つ勇気はないなあ。
*当日5/23はPARCO劇場50歳の誕生日ということで入口で御礼の大入袋が全員に配られた。中身は恒例の5円玉1枚。
令和5年の廃刀令
Aga-risk Entertainment
としま区民センター・小ホール(東京都)
2023/05/01 (月) ~ 2023/05/02 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
アガリスクらしさが満喫できる一作。文句があるとすればもう少し長くて変化があればなあということくらい。まあでも建前はタウンミーティングなのだからこんなものか。
私が参加した回の投票は廃刀令賛成が6割、反対が4割くらいだった。アメリカの銃社会の置き換えなので日本人が真面目に考えればほとんどが賛成だろう。しかし、それでは投票後の舞台がつまらなくなるので敢えて反対をした人(あるいはただのひねくれ者)が4割いたということだと思う。私ももちろん条例案には賛成だが投票は反対に入れた。
やさぐれた江益凛ちゃんが最高だった。