
昇らぬ朝日のあるものを
劇団芸優座
調布市文化会館たづくり・くすのきホール(東京都)
2017/04/08 (土) ~ 2017/04/09 (日)公演終了
満足度★★★★
通常は全国の学校等を対象にした公演で飛び回っている劇団さんが、地元 近郊にアピールすべく企画されたものだけあって、良心的な料金で本格的な舞台を楽しめる公演であった という印象。
ストーリーも政治的な部分をかなり観やすく工夫されていたと思います。
オリンピックに向けてそれぞれに輝いていた3名の若者達。
オリンピックが幻と消えた現実を前に、彼らが選んだ三者三様の生き様(運命といってもいいのかもしれないが)その行く末にしみじみとした思いが残りました。
学生さんを対象に長い歴史を積み上げてこられただけあって、なるほど独特の様式美が感じられ、笑い要素は少なめだったものの自分も学生気分を味わえたぞっという気になったのでした。

トビウオの翼
東京カンカンブラザーズ
ザ・ポケット(東京都)
2017/04/05 (水) ~ 2017/04/09 (日)公演終了
満足度★★★★
思い起こせば中学時代、学園ドラマの世界観に憧れ先生になったと言う担任教師を「熱血ぶっていても何か保身が垣間見えて胡散臭いなー」という目で見ていた私はなんと可愛げのない子供だったことか。
今作の様に一見和やかそうに見えても問題が起きた途端、パッと顔をそらす教師達の姿には思わずため息が出てしまいます。
熱血教師なんてとてもやってられない世界ですね。
それでも当日パンフにある作・演出者の“いじめは無くならないだろうが世界には夢と希望が溢れている”という言葉には、もう激しく共感!
いろんなダークな問題を提示されながらも後味スッキリなのは、その込められたメッセージをしっかり感じ取る事ができたからではないかと。
観る者にとっては教師、生徒、保護者それぞれ思い思いの視点から楽しめる作品になっていますが、私は大好きだった先生(実に淡々とマイペースで実直だった)を久しぶりに思い浮かべながらの観劇でした。

誕生
ラビット番長
演劇制作体V-NETアトリエ“柴崎道場”(東京都)
2017/04/01 (土) ~ 2017/04/02 (日)公演終了
満足度★★★★
結構ラフな感じで、こういうのもイイねと思って観ていたのも最初のうち、アドリブが入りながらも中々に計算された策士な作品。
黒いシミが徐々に広がっていくようなダークな表現が巧いと思いました。
約1時間はあっという間で、これなら2作連続でもペロリといけそう。
レトロな会場は趣があり実験公演的なものにピッタリな感じがしました。

大改訂コメディ版「いつもある場所」
+ new Company
調布市せんがわ劇場(東京都)
2017/03/30 (木) ~ 2017/04/02 (日)公演終了
満足度★★★★
ファミリーホーム「ひまわり荘」での心の絆を軸に「笑い」をこれでもかっ!というほど盛り込んだ王道のホームコメディー。
前半は「ひまわり荘」の子供時代が描かれ、いったんストーリーは完結。
後半は12年後の大人時代となるので、実質2作品の連続公演の様な構成。
子供時代はちっちゃな子供役者さん達が大活躍。
スタート時の少々のスベリも物ともせず笑いで攻めまくり、最後は泣かされてしまうイイ話でした。
後半は子役が大人の役者さんに入れ替わり、怒涛のお笑い攻撃。
すっかり「ひまわり荘」の空気感に馴染んできたのか、めくるめく笑いの洪水が気持ちよかったです。
ボリューム満点でお得感ある公演でした。

家族の神話
劇団 でん組
ザ・ポケット(東京都)
2017/03/28 (火) ~ 2017/04/02 (日)公演終了
満足度★★★★
虐待がテーマだけに重苦しい雰囲気でくるぞ、さあ来いっ。と思っていたら、なんとサスペンス調。
事件の真相解明に夢中になっているうち、徐々に虐待の影が濃厚に迫ってきます。
兄妹役のお二人が、大人になっても心深く残った虐待の傷を、身を削るような熱演で見事に表現しておりグイグイ引き込まれました。

萩咲く頃に
トム・プロジェクト
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2017/03/21 (火) ~ 2017/03/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
親子、兄妹の機微が見事に描写され、これ以上ないと思えたほどの家族ドラマ。
原発問題もテーマとして描かれていますが、圧倒的に心に迫ってくるのは、震災の先にも息づく濃厚な家族の人間模様。
音無さん、大和田さんをはじめとする全ての役者さんの演技に魂が込められており、否が応でも舞台に釘付けになります。
終盤、家族全員が揃った場面からは誰の表情も見逃したくないが為、眼が非常に忙しく嬉しい苦労をしました。
いつまでも拍手を送り続けたいと思った素晴らしい公演でした。

HOTEL ONEIROS
劇団ICHIGEKI☆必殺
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2017/03/16 (木) ~ 2017/03/19 (日)公演終了
満足度★★★★
コンシェルジュ風の受付からのホテルマン風の会場案内、開演前までの雰囲気づくり効果で、気持ちがストーリーの中へと入りやすい。
「このホテルに泊まると夢が現実になる」という奇怪な現象も、オーナーとホテルマンが醸し出す空気で「あぁそういうホテルなんだねッ」と自然に納得できてしまいます。
3組の宿泊客のエピソードが微妙に絡み合い、基本コメディーでありながらブラックな要素があったり、恋愛モノであったり、人間ドラマであったりして、まるでホテルのビュッフェで色んな種類の美味しいもの食べまくった様な満足感。
観劇初心者でも すんなり馴染んで最後まで楽しませる演劇アプローチを熟知している劇団さんだと感じました。

うつろな重力
シアターノーチラス
RAFT(東京都)
2017/03/15 (水) ~ 2017/03/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
人の不幸をビビるくらいの至近距離で存分に堪能しました。
小さな劇場なので限られた人数しか体感する事ができない贅沢な空間。
後味が決して良いわけではないが、それを遥かに凌ぐ舞台の面白さに満足感が漲ります。
まとわりつく不遇を振り払う事すら疲れ切った様子の姉。
幸福オーラバリバリで姉を見下した感じが意地悪気な妹。
憎悪と絆と虚栄が複雑にブレンドされた感情関係が絶妙でした。
姉妹を取り巻く人物もそれぞれにスパイシーで、静かにそして確実に壊れていく姉の姿に説得力を持たせます。
気をつけないと誰もが陥ってしまうかもしれない悪意の罠。
「人間関係ホラー」という新たなジャンルを発見した気分です。

快楽の谷
劇団 背傳館
インディペンデントシアターOji(東京都)
2017/03/08 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
大学時代なぜかアニメ研の部室に入る機会があり、何とか話を合わせようと当時のある人気アニメを面白いと発言した途端、猛然と抗議され、あちこちで論議が勃発し始めたので、這う這うの体で退出した記憶が蘇りました。
どうやらアニメ界の腐敗に加担した作品を褒めてしまった様です。
「しっ知らんがなっ!」
本作はこの時の、別の空間を生きているようにも感じてしまった人達を彷彿させ、興味深かったです。
エロゲー制作事務所の、とある時間をそのまま切り取った形での進行で、説明的な台詞は特にない為、何とかその日常風景から内情を探り出そうと集中力が高まります。
エロゲ―新作がヒットしたのに、誰もさほど盛り上がることもなく、事件が起こっても不思議な収拾力をみせますが・・・
共感性ゼロ、心情不明・・・識別不可能ッ レーダーマ~ン♪(古く且つマニアックですいませんがピッタリきた曲)
只々リアルなひとつの世界を目の当たりにした残像が後に漂います。
1名だけでも普通?な登場人物を投入してもらえれば良きナビゲーターになってよかったかも。

肝っ玉おっ母とその子供たち
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2017/03/10 (金) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
年月をかけ良く手入れのされた、いぶし銀のような作品でした。
予測不能のリスクを意識しながらも戦争の機に乗じて商いに奮闘する肝っ玉おっ母。
戦争を恐れ憎んでいるのか、それとも商売上歓迎しているのか、矛盾した人間臭さとパワフルさにはぐうの音も出ないが、どうにもその生き方は観ていて危なっかしい。
案の定、子供が次々と死んでいくじゃないか!
家無しの母1人子3人にとって、その当時どういう生き方が正しかったのか皆目見当もつかないが・・・。
母親の一面を見せながらも、したたかに生きていこうとする中年女の幌車を引く姿が目に焼き付いて離れない。
そして怒り、悲しみを焼き尽くしたような目力も。

第19回公演『隣人』
劇団天然ポリエステル
OFF OFFシアター(東京都)
2017/03/08 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
シリーズ第5回公演からの途中参加ながら「寂し部」のキャラクターはしっかり脳にインプットされていました。
「寂し部」のお馴染みの面々&公演ごとの客演、のスタイルは抜群の安定感。
さらに「寂し部」に新スタッフ陣も加わったようで今後も楽しみです。
第4回公演をDVDでゲットしたので、シリーズの半分はコンプリートできてヨカッタ。
このシリーズ第4回公演「稀人」は今月12日(あと3日!)までノーカット版でYouTube動画にて配信されているそうです。

エリちゃんの呪い
法政大学Ⅰ部演劇研究会
法政大学市ヶ谷キャンパス 外濠校舎 多目的室1番(東京都)
2017/03/04 (土) ~ 2017/03/07 (火)公演終了
満足度★★★★
渋谷辺りでの上演が最も効果的だと思われる作品。
ピンクの汚部屋が印象的。
「美」に固執した生き方を選んでしまったエリカ。
外見美を存在意義と思い込んでしまっている。そして覚せい剤の罠。
心の闇と薬の恐ろしさを説教臭く無くポップに描いているところが、若者から若者に向けてのメッセージらしくて好感。
社会的意義のある公演だからだろうか、しっかりしている。
そう、ポップでカラフルなのにとてもしっかりしている。

悪女たちのララバイ
劇団クロックガールズ
新宿シアターモリエール(東京都)
2017/03/02 (木) ~ 2017/03/06 (月)公演終了
満足度★★★★
怪女5人による遺産相続バトルって面白く無いわけがない。
最後のオチは途中で分かってしまったが、それでもしみじみとした余韻が残ります。
中村中さんが、ちゃっかり笑いをとる演技をされていたのは意外でした。

大東京ダダダ’ダンシングスターダストDX
創像工房 in front of.
慶應義塾大学日吉キャンパス塾生会館(神奈川県)
2017/03/03 (金) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★
冒頭の掴みからの怒涛の場面転換の数々。
役者さんの振り切った演技、何気に凝った衣装、美術。
舞台を大いに盛り上げる照明、音響。
どれをとっても素晴らしかったがストーリーが読み古した漫画の様でもどかしい。
ワンシーン、ワンシーンの観せ方、やり取りは絶妙なのに全体のストーリーがもどかしい。
もどかしいと言いながらも、この中から間違いなく日本のエンターテインメントを牽引する人材が輩出されるであろう事を確信させる力強い公演でした。

get cranky
劇団スクランブル
シアター711(東京都)
2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★
ナイナイのお見合い大作戦というバラエティー番組は、参加者の中でも注目されるのは主に人気のある男女、もしくはキャラの濃い人物である。
今回の作品は、逆にその他大勢にあたる人達が繰り広げる恋愛バトルにスポットをあてた感じと言えばいいのだろうか。
TV番組的にはあまり旨味のない人達かもしれないが、本作はそういう「そこそこで普通」な人達のドラマチック未満なドラマをうまーく描写しており、ちゃんと見せ場やクライマックスも用意されている。
限りなく身近に感じる恋愛モノと言えるかもしれない。
超美形やブサイクが登場しないラブストーリーは劇的なうねりこそ発生しないが、大いなる親近感をもって笑わせてくれる。
劇団モットーである「最高の暇つぶし」のニュアンスが分かった様な気がしました。

「緑のオウム亭ー1幕のグロテスク劇ー」
雷ストレンジャーズ
小劇場B1(東京都)
2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
外は革命直前の物々しい状況。にもかかわらずエンタメボケした貴族達が「犯罪人ごっこ」に現を抜かし、挙句の果てに右往左往するであろう姿を苦々しく楽しむ予定の観劇でした。
ところが実際には、どれが本当の犯罪でどれが即興芝居なのか区別がつかなくなり頭が混乱してくる中、これはちょっとヤバいだろうという状況になった時、なんと自分自身も一人の貴族と気持ちがリンクしてしまい「こんな面白い場面、めったに観られるものじゃないっ!もっともっと刺激をカモーン!」と欲求心に火がついてしまっていました。
これじゃエンタメ亡者じゃん!ガーン
もちろん劇中劇だと分かったうえでの感情ではあるが自分にもこんな野次馬根性みたいなモノが潜んでいたとは。
我ながら滑稽であるが、ちょっとショックでした。
演出の術中にはまったという事なのでしょうが。
観客席は小劇場B1ではお馴染みの舞台から見て正面と左手の2方向。それに加えて右手にも一列だけ設けられています。
舞台デザインからしてどの席から観ても面白そうで、どこに座るか非常に悩ましいところ。
全体をまんべんなく楽しむなら当然中段~後方になりますが、劇中の混沌に巻き込まれるなら(舞台からみて)右手一列と貴族席近辺がお薦めです。
なんだか劇中の演出のひとつとして活用されている気がしますが、それを含め普段の観劇では中々無いアングルを楽しめます。

悦楽乱歩遊戯
虚飾集団廻天百眼
ザムザ阿佐谷(東京都)
2017/02/26 (日) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★
美輪明宏版とは違った「黒蜥蜴」はいかほどのモノか期待しての観劇。
原作を劇団カラーにどっぷりと染め上げたエログロ、アブノーマル感たっぷりのアングラワールドは江戸川乱歩作品の懐の深さも同時に実感でき、とても良かったです。
脳裏に焼き付く総合美術、コアなファンがついているのも納得できます。
ただ開演前に役者さん達が、景気よく物販活動されるのはちょっと・・・
頭の切り替えがうまく出来ず、すぐに劇中に入り込めなかったのが惜しかった。
しかし公演後では舞台も役者もグッチャグチャで難アリだし、ファン恒例のお楽しみかもしれないので慣れればいいのか。
妖しい感じで売るっていうのはどう?

トラブルショー
ミュージカル座
光が丘IMAホール(東京都)
2017/02/23 (木) ~ 2017/02/27 (月)公演終了
満足度★★★★
さすが鉄板シチュエーションのコメディーミュージカル。
綿密に考え抜かれた構成は一切創り手に任せて、観る側は只々心躍るミュージカルショーと勃発するトラブルを楽しんでいればよく、何とも贅沢な時間。
メイドインジャパン作品ゆえにギャグに使われる固有名詞は全て日本のモノ、人物なので妙に親近感がわくミュージカルでした。

アテンションブリーフ
劇団うけつ
しもきた空間リバティ(東京都)
2017/02/24 (金) ~ 2017/02/26 (日)公演終了
満足度★★★★
人気者ゆえに友人観客動員数も随分多かろうと思える俳優陣。
各自色んな大学から集まったメンバーだからか、それぞれが個性豊かで普通の学生より一皮むけている感じがしました。
特に川野辺氏の腹の据わった感が尋常ではなかった。
気になるのは、身内は特にアドリブものにはハードルが低くなりがちで受けやすいかもしれないが、そこに甘んじた方向へは進んでいって欲しくないところ。
通常の枠にはまらない劇団カラーはメンバーのタレント力と併せて将来性をビシバシ感じられ、この先の進化が楽しみな劇団です。
持ち回りでツイキャスとかやってみたら面白そうだと思うのだが。

戦争戯曲集 三部作
劇場創造アカデミー
座・高円寺1(東京都)
2017/02/21 (火) ~ 2017/02/25 (土)公演終了
満足度★★★★
第三部 『大いなる平和』を観劇。
休憩時間を差し引いても4時間30分の恐るべき世紀末を描いた大作。
溢れだすほどの感情とセリフ量に、これはなるほど演者にとって成果の問われるハードな修了作だと思いました。
狂気的な政治、混乱する市民そして‥全面核戦争。
悪夢のように荒廃した世界の中で営まれる人間関係は逞しくもあり虚しくも映ります。
未来の象徴である赤ん坊に対しての捉え方が強く印象に残る作品でした。