挽歌
トム・プロジェクト
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2016/11/30 (水) ~ 2016/12/04 (日)公演終了
満足度★★★★
避難民の現在
原発の恩恵を受け、原発に故郷を奪われた人々。
登場人物達の、事故から5年経った「今の想い」が各人漏れることなく心に響いてきます。
あの忌まわしい惨事が否が応でも思い出されてつらくなってきますが、忘れてしまってはいけないのですね。
最近問題となった避難民いじめの元凶となる誤った考え方も提示されていました。
作品の最も重くて深い役どころを高橋長英さんが担い、短歌に故郷の想いを託す聡明な女性、安田成美さんが全体をまるで柔らかい光で照らしてくれる様に救いとなってくれました。
しらゆき
劇団コスモル
OFF OFFシアター(東京都)
2016/11/23 (水) ~ 2016/11/27 (日)公演終了
満足度★★★★
入魂のファンタジー
閉ざされた少数民族の中、魔女としての業を背負い、それに翻弄されながらも生き抜こうとする母娘を中心に描いた骨太な現代のおとぎ話。
独特な劇団カラーに好き嫌いは別れるかもしれません。
ですがもし、ちょっと苦手かなーと思ったとしても積極的に劇中世界に集中すれば、めくるめく場面のひとつひとつにストーリーの肉付けが巧く工夫されていて、逆に段々と病みつきになってしまうかもしれない不思議な魅力を持った劇団だと思いました。
「3歳の子供からお年寄りまで」が謳い文句ですが、特別解りやすくそちらにすり寄った感じは無く、普通に大人も楽しめる創りになっていたと思います。
実際、お子さんもいらした様ですが今回は特にグズリ問題を感じる事なくよかったです。
特筆すべきは魔女の母親役の石橋和加子さん(作・演出者でもある)。
カリスマ占い師?はたまたドラッグクイーンかという堂々たるいでたちで他の役者さんが皆ひよっこに見えてしまうほどの存在感。
今作のパワーバランスも決して悪くないのですが(実際皆さん熱演でしたし)もしも、この女優さんと対等に渡り合える女優さんがもうひとり存在したら、とんでもない化学反応が起きるのではないかという想像をしてしまいました。
ベッドトークバトルS
ショーGEKI
小劇場B1(東京都)
2016/11/19 (土) ~ 2016/11/27 (日)公演終了
満足度★★★★
初めてのベッド
初体験もしくは初めての相手とベッドを共にするとき、多少なりとも「あれっ思っていたのと違う!」とか「なぜ、このタイミングでこんな事が!」というのは結構なあるあるだと思う。
そこを なし崩しにできない人達の肥大した自意識と、性欲のせめぎ合いが面白い。
開演前に「笑ったら変態だと思われるから笑わない。なんて考えないでください」とアドバイス的前説が。素直に女性の笑い声が多くて、そこがまた面白い。
舞台はダイレクトにそのものですが下品な感じはあまりしなかったので、そこんとこ心配されている方も大丈夫だと思います。
さようならば、いざ
ONEOR8
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2016/11/16 (水) ~ 2016/11/23 (水)公演終了
満足度★★★★
むせかえる様な人間臭さ
問題の多い父親が亡くなった。
翌日には遺族や関係者が群がりそれぞれの思惑が錯綜する。
悲しみよりも優先される損得勘定の数々。
誰もが無慈悲な人間に見られたくはないが、人の良い事を言って貧乏くじは引きたくない。
リアルでそれゆえ滑稽に登場人物達の図々しくも面倒臭い姿が浮き彫りになっていく怪作。
存じ上げなかったが中村蒼という俳優さんをピックアップし今作の要となるポジションを託した演出効果は莫大。
ご来場ありがとうございました ロイヤルホストクラブ
ミュージカル座
光が丘IMAホール(東京都)
2016/11/17 (木) ~ 2016/11/20 (日)公演終了
満足度★★★★
ギラギラホストと夜の蝶(女性客)で溢れかえった店内は豪華絢爛
著名なミュージカル俳優の出演が無くても しっかりがっちり楽しめるミュージカル作品。
舞台は新宿のホストクラブ。 それ故ダンスミュージックは当然として演歌調、
セクシー系等、歌のバリエーションも多種多様。
異文化ごった煮の歌舞伎町らしさが良く出ていました。
ダメホスト達の成長ストーリーで、予想外の展開はなくとも面白さのツボをしっかりおさえた安定感があります。
特に目を引いたのはSM女王様(ホストクラブの女性客)の歌唱シーン。
あまりのド迫力に鳥肌がたちました。
今回ホストクラブがアリって事なら次はキャバクラが舞台というのもアリなのでは!と思いついたのですが、いかがでしょう。
あと、前の方が指摘されていた客列の整理。しっかり声が届いたようで改善されていましたよ。 なんだか人多すぎで大変そうでしたが(苦笑)
酔いどれシューベルト
劇団東京イボンヌ
ムーブ町屋・ムーブホール(東京都)
2016/11/15 (火) ~ 2016/11/18 (金)公演終了
満足度★★★★
アートを楽しむワンランクUPのデートなんかには最適な作品
演劇、オーケストラ、声楽それぞれが一定の割合で演じられるのかと思っていましたが、あくまでも演劇が主体。
演奏、声楽はストーリー的にここぞっ!というタイミングですかさず織り込まれてくる感じが良いです。
演劇に もの凄い武器を装着させた感じで他には真似できない世界観を創り出していました。
シューベルト役いしだ壱成さんの、お調子者で浅はかながら繊細なキャラクターもばっちりハマリ役。
前半はコメディータッチ、徐々にドラマ色が濃くなりストーリーに集中させていく構成は演劇初心者でも自然に物語に入っていける様、配慮されたエンタメ心を感じさせます。
コメディー部分はもっと突き抜けた感じの方が個人的には良かったのですが、観終わった感想としては 本格的な「音楽」を有効活用しつつ最大公約数の観客が「演劇」というものを楽しんで帰っていける様、色々工夫されていたなーといったところでしょうか。
演劇のより広い普及率アップに一役買っていこうとする姿勢が好ましい劇団さんだと思いました。
灯トモシコロ
Fallen Angels
シアターシャイン(東京都)
2016/11/10 (木) ~ 2016/11/13 (日)公演終了
満足度★★★
秋の夜長にミステリーを鑑賞
観終った後は、長編の推理小説を一気に読破したような感覚でした。
血生臭い歴史をもつ森が鎮座する山奥の集落。
そこはかとなく横溝正史の世界。
ただし事件を追うのは金田一探偵ではなくベテラン&新人刑事の2名(言うほどの推理力なし)
そして村民は、謎めいた老婆や未亡人ではなく、どこにでもいそうな若者たち。
そこはかとなくホラー映画「ラストサマー」の世界。
なかなかの年月をまたいだ大作で数々の謎めいたエピソード(事件)を煙に巻く終わらせ方ではなくストーリー的に決着させているのが好印象でした。
ただ前半は若者たちの氏名やキャラクター、関係性を追うのに忙しく、出来れば最初の段階ですんなりインプットできる工夫があればなーと思いました。
役者さんは新人が多いのでしょうか、ボリュームある台詞量にまだ追いつけてない印象ではありましたが、一気には読めない長編小説を目の前で実演しきってもらった感じが面白かったです。
☆はまだまだ面白くなる伸びしろの期待をこめて。
ここで、明転
劇団金馬車
シアターブラッツ(東京都)
2016/11/03 (木) ~ 2016/11/05 (土)公演終了
満足度★★★★
青春爆走エンターテイメント音楽劇
大学卒業後、会社の色にまだ染まり切っていない数年間は、無性にサークル仲間に会いたくて仕方なかった。
「あいつこんなのにハマってヤバくないかー」と笑いあったり、部の存続の危機に奔走したり、人生を語り合ったり、はっきり言って社会の役にはクソにもたってないが、あの頃なりに一生懸命で青臭かった日々。
本作の様に演劇部ではありませんでしたが、そんな想いを重ね合わせつつの観劇でした。
この場合、個人的にはしみじみする作風が好みですが、そこは青春爆走エンターテイメント音楽劇。
サークル員たちのドタバタ演劇部時代、卒業後、各自の方向性に時事ネタや職業あるあるを盛り込んだ人生バラエティーショー、そして再結集に向けて・・・。
観ていて「この劇団 本当に演劇が好きなんだなー」と演劇愛が存分に伝わってくる公演でした。
おそらくは随所に当人達とリンクする部分があるのだろうと想像します。
社会人になっても、これだけの情熱をもつ「劇団金馬車」そのものに心動かされます。
さらに年月が経ち、それぞれの居場所に向けて各自が離れてしまっても、彼らにとってずっと宝物であり続ける公演になるんだろうなーと思いました。(次回作が無い様な言い方になってますね。 次回も可能ならぜひ!)
とにかく何だか羨ましい気持ちになったという事です。
わたしを、褒めて
旋風計画
ザ・ポケット(東京都)
2016/10/26 (水) ~ 2016/10/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
冒頭は、ある女優の腐乱死体の現場から
とにかく脚本が超絶面白い。
多重構造になっているのに、すごく解りやすい。
解りやすいが故にどれだけ巧い脚本であるか、より実感できます。
冒頭の女優の死体は誰なのかラストまで明かされません。
謎解きでありながら、しばしそれを忘れてしまうくらい興味深い、女優やスタッフたちの思惑が渦巻く演劇制作現場を目撃できます。
2016 音楽劇「赤毛のアン」
DGC/NGO 国連クラシックライブ協会
東京国際フォーラム ホールC(東京都)
2016/10/21 (金) ~ 2016/10/23 (日)公演終了
満足度★★★★
元祖サクセスストーリー
「華やかなミュージカル」とはいえ帝劇のそれとは違って、かなり気楽に楽しめる雰囲気。
「赤毛のアン」のストーリーに沿って歌唱を沢山盛り込んだ流れで、繊細な心理表現は難しいにしろ2時間半強は、あれよあれよと終わってしまった感じでした。
お約束である、マシンガントークのアン、最初は嫌味ったらしいマリラ、気のいいマシュウの掛け合いは面白おかしく、子役の芸達者ぶりには感心します。
5時に夢中、黒船特派員のガウがリードをとったアンコールショーは隠し玉だったかのように弾けて華やか。 クライマックスにふさわしいラストでした。
新宿カンタータ(聖歌)
ピープルシアター
シアターX(東京都)
2016/10/19 (水) ~ 2016/10/23 (日)公演終了
満足度★★★★
予想は裏切られるから面白い
セットは猥雑で狭苦しい店をイメージしていたのですがステージショー感溢れる広々とした舞台。
ストレートプレイというよりミュージカルを観ている様な感覚でした。
ミュージカルほど頻繁に歌が展開されるわけではないのですが、私には台詞回しが翻訳されたものの様な独特な感じを受けました。
歌舞伎町というよりはダウンタウン。
カフェバーに集う男女は日本人の悪党というよりウエストサイド物語の不良達のイメージに近い印象。
何故だかシアタークリエでブロードウェイ日本人公演を観ている様な錯覚すら起こしそうでした。
ただ特徴的なのは、すごく臨場感溢れるシーンがいくつもあったこと。
台詞での表現より、様々なパフォーマンス的アプローチがとても優れている演出だった様に思います。
ちょっと気になったのは舞台両端に設置された観客席。
せっかくの世界観が観客も視界に入ってくる事で興醒めしてしまいます。
意識的に見ない様にしていましたが、デメリットの方が多い気がします。
なんとその席で結構大きな声で喋り出すカップルのお客さんがいて、そばにいた役者さんが芝居の延長線上の上手い感じで睨みをきかし、黙らせてくれたのには、さすがっ!プロだねーと思いました。
フェス
ゆうめい
スタジオ空洞(東京都)
2016/10/19 (水) ~ 2016/10/23 (日)公演終了
満足度★★★★
思惑が交差するヌード教室
気になるヌードモデルは男性の方でした(笑)
突拍子もない遺言書に振り回される遺族達を描いたストーリーの妙もさることながら、主人公男性の大人になりきれない劣等感、恋心、嫉妬など心情表現が全面的に引き立った作品でした。
こちらの劇団は、“ちょっとこじれてしまった男”の内面に関しての表現力が、かなり秀でていると思います。
女性陣はキャラで好演している印象でした。
主人公が一人っきりでいるシーンでは、その仕草、行動だけで、今何を考えているのかがバシバシ伝わってきて面白く、シ~ンと観客の集中力が高まる中、役者の息づかいのはっきり聞こえる間近な距離で、まるで自分が透明人間になって人間観察しているみたいで奇妙な感じでした。
本当にこの演出は面白いので「あっ、今ここで大笑いしたら、このリアルな空気を壊してしまうっ。」と笑いを堪えるのに一苦労です。
ちなみに複数の役者さんが出ているシーンでは心置きなく笑えます。
あとラストがメチャクチャいい感じでセンスあるなーと思いました。
名ラストシーン大賞の公募があれば私はここに一票入れたいくらいです。
MOLOK
劇団メリケンギョウル
明石スタジオ(東京都)
2016/10/14 (金) ~ 2016/10/16 (日)公演終了
満足度★★★★
予想外のマクベス像
マクベスは幾つかの公演で観たことがありますが、公演の印象は、かなり主演のマクベス役にかかってきます。
私にとって今回、初の小劇場でのマクベスでしたが、起用された役者さんはその重要な役割を充分に果たされていたと思います。
そして本作で何より特徴的なのは史実に近いマクベス(本名マクベタッド)を描いた作品だという事です。
史実に近いといっても、結構盛ってる内容なのですが、シェイクスピア版とは登場人物の人物像、志向性が全然違っいて、そのあまりの違いっぷりに驚いてしまいました。
ひとつ挙げるならマクベスってかなりの名君だったということ。
ヒーロー感すらあるマクベスでした。
実はどんだけマクベスを悪い人格に書いていたんだというシェイクスピアの脚色っぷりという事になりますが、やはりこちらの方が面白さ的には勝ってしまうんですよねー。
とは言え、本作のタイトルにもなっている「モロク」という魔人の登場や、意外すぎる人間関係がドラマを生み、とても楽しめる内容になっていました。
ちょっと残念なのは若手の役者さんに笑いで少し話を軽くしようと試みるも、笑いも結構技術が必要なんですよね。 ベテラン役者さんの取る笑いとの実力差がはっきりしていました。
理想の不幸
HIGHcolors
「劇」小劇場(東京都)
2016/10/05 (水) ~ 2016/10/11 (火)公演終了
満足度★★★
万人受けではなく勝負に出たところは好感
主人公の心の闇に浮かび上がり一生付きまとう白い魔物。
視覚的なこだわりを強く感じました。
主演女優さんは、しなやかな西洋猫の様でつかみどころがなく魅力的です。
ただ、この女性の性格、思考面においては、理解が到底及ばず、この作品の要となる部分を楽しめなくて残念な思いが残りました。
価値観が周りと違う焦燥感は解らなくもないのですが、あまりにもこじれすぎていて病的。
主人公以外の人物は理解の範疇内で、共感したり、滑稽だったり、とても面白い。 凡人の私にとっては見所ポイントでした。
主人公のどこかに共鳴し、彼女の最期のシーンにメッセージを受け取れるか否かが感想の分かれ目ではないかと思いました。
「66~ロクロク~」
円盤ライダー
シダックス カルチャービレッジ6階(東京都)
2016/10/08 (土) ~ 2016/10/10 (月)公演終了
満足度★★★★★
演劇を超えた演劇
過去にはカフェやホテルラウンジで公演しているそうで、その場合、店の雰囲気や装飾品がそのまんまリアル舞台美術として機能するだろうが、今回はこの場所、非常に不利ではないだろうか。
入室して、まずそう思った。
無機質だし、特に舞台照明もなく、天井のLEDが部屋全体をまんべんなく照らしている。当然音楽も無し。
近代オフィスのお洒落さはあるが、あまりにもリアルな空間すぎて、とても演劇を鑑賞する雰囲気ではない。
ステージ予定スペースにはテーブルも無いのだから会議モノじゃなさそうだし。
結論から言うと円盤ライダーはこの不利な状況を、全て身体ひとつで覆してくれた。
開演。ドヤドヤと入ってきた役者さん達。
どうやら男達は、協力し合って会社を設立し、このオフィスを手に入れるところまで漕ぎ着けたようである。
全員が達成感で高揚しハイテンションである。
私は冒頭からハイテンションの芝居はちょっと苦手で、どうしても一歩引いてしまうクセがある。(世界観に入れた後なら全然OKだが)
たとえ最前列であっても座席と舞台の境界は明確で、距離を勝手に感じてしまう。
なのに本作では距離など意識することは無かった(できなかった)。
舞台と客席の境界は存在せず目の前、後方の夜景、ガラスパーティション、倉庫、とにかく会場のすべてを味方にして役者のパッションが炸裂する。
客イジリなど一切無いのだが役者熱が力づくで演技の世界へ巻き込み、そして完全に引きずり込んでいく。
よく体感型というが、これもまさに体感型である。
ストーリーは当然存在するが、それよりも役者ひとり一人の生きざま、人間そのものを観てくれと言わんばかりのガチ魂。
こういう演劇を何歩か超えたようなスタイルは何と表現すれば良いのだろうか。
企画力+実現力+演技力そして熱い役者魂。すべてが揃わなければ不可能な公演。お薦めするしかありません。
あっ、あとすいません。この公演コメディーです。
- 愛が枯れている -
COoMOoNO
キッドアイラックアートホール5階(東京都)
2016/10/06 (木) ~ 2016/10/10 (月)公演終了
満足度★★★★
舞台と役者が溶け合った瞬間
いい感じに使い込まれたツヤのあるフローリングの部屋には丸形クッションひとつと電球スタンド1脚。目の前には空へとつづくベランダが大きく開放され、灯りのついたランプがふたつ。めちゃくちゃオシャレじゃ~ん。
観客席が並べられ、それは実質舞台上で観劇するのと同じ状況。
自分の来た回では観客数10人。(元々大人数を収容できるハコではない)
この場所で10人のために5人の役者さんが演じてくれる。めちゃくちゃ贅沢。贅沢すぎるっ!
始まる前からこんなゲスなことを考えてしまう自分はもしかして場違いなのではと少しソワソワしてきます。
開演。観客と同じ出入り口から入ってきた役者さんたちの醸し出す声、立ち振る舞い、台詞のなんと美しいことか。
社会に上手く迎合できないガラス細工の様な登場人物たちは、寄り添うように言葉を紡ぎます。
実際の会場であるキッドアイラックアートホールが今回で最後となる特別な想いも作品に織り込まれ、何だかやり切れない気持ちになりました。
所々、目の前の光景が美しい絵画のようでハッとしてしまいます。
この場所に決して「足が酸っぱくなるまで働けー」という輩を立ち入れてはいけないっ。
少女を登校させるよう説得に来た教師の声が、紳士的ですごくまともな事を言っているのに残酷な力量を帯び、野太く聞こえたのが興味深かったです。
ラストシーンもとても美しかった。
貴重な空間に身を置かせてもらえて感謝です。
Regulation's High!
BLACK JAM
上野ストアハウス(東京都)
2016/10/06 (木) ~ 2016/10/10 (月)公演終了
満足度★★★★
初日ストロベリーチーム観劇
体育会ものと演劇はとても相性が良いと認識できる作品でした。
スポーツエリート校で烙印を押されてしまい監獄入り(!)となった選手達と、同窓生なのに彼らを管理する看守部との脱出攻防劇。
想像より大きな劇場で舞台スペースはしっかり確保されています。
まず沢山の俳優陣なので、ちゃんと登場人物の区別ができるか心配でしたが、全員部活の種目が違うのと、濃口キャラで何ら問題ありませんでした。
ただ人数が多い分、個々の抱える心情部分が薄口になった印象。
学校サイドの陰謀、しごきの筋トレ、脱出作戦、何かと見せ場が多いのだから残念ではあるけれど仕方ないかとも思います。
地獄の筋トレはもっと観たかったくらいですから。
終演後、役者さん達が客席にやってくると、もうお祭り状態に。
アンケートをおちおち書いている状況ではありませんです。でも楽し~っ!
他にツッコミどころはいくつかあるのですが、一々挙げるのは本質から離れてしまうかと。何より後印象がすこぶる良かったので。
月の剥がれる
アマヤドリ
吉祥寺シアター(東京都)
2016/09/23 (金) ~ 2016/10/03 (月)公演終了
満足度★★★★
騙されたくないなー
一番興味深かったのは、誤った思想であっても、そのプロデュース力によって世間に通用させてしまうプロセスの描き方でした。
ドラマチックに印象付けられてしまうと「正義」と勘違いしてしまう怖さ。
そしてドラマチックとは程遠い、薄汚い内情。
今のマスコミはあっさり騙されてしまうほどバカじゃないと思うけど・・ちょっと心配。
今作を完成させるにあたり、どれだけ沢山のエネルギーが注がれているのかと思うと頭が下がります。
思ったより理解しやすいストーリーで良かったですが、この2時間30分の力作に対しては、こちらも相応な気合で挑まなければ負けてしまうのではないかと思いました。(観劇に勝ち負けとは何を言っているんだか)
かえってきた不死身のお兄さんー赤城写真館編ー
演劇企画ハッピー圏外
Route Theater/ルートシアター(東京都)
2016/09/26 (月) ~ 2016/10/02 (日)公演終了
満足度★★★★
【定説】人情派公演の劇団は受付・案内も人情派である
破天荒なお兄さんが帰ってきて、気さくな家族や町人を混乱させ、最後には泣けてしまう。そんな感じを想定していました。
いや、大枠の筋道は違っていないのですが、事前のイメージとはかなり違った公演でした。
やはり初めての劇団さんの場合、そう単純に想像通りで無いところが面白いです。
まず福山雅治の物まねが得意そうなお兄さんは当然やんちゃ系で、これは想定内なのですが、それを上回る厄介な登場人物が次々と現れ、そして色々とやらかし、見事にドッカンドッカンと話を炎上させていきます。
声帯の頑丈な役者さんが多く、騒然たるドタバタの るつぼに思わず笑ってしまいました。
好き嫌いが分かれる作風だと思いますが2時間の公演時間の中で、まあいろんな事が起こります。
最後はもちろん、お兄さんに帰結していきますが。
舞台スペースが広めで役者さんが何人いても伸び伸びしており、且つ観やすかったです。
帰りに役者さんの写真入り当日パンフレットを眺めながら「まーいろんなキャラの人がいたなー」とニヤけてきました。
『ニュー俺ラップ~韻フンデミル?~』/『心優しき野郎ども』
すわいつ企画
テアトルBONBON(東京都)
2016/09/21 (水) ~ 2016/10/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
まさかの・・
ラップを聴いているとムズムズしてきて、やがてこっ恥ずかしくなってくる。
つまり苦手なのですが、演劇の中に取り込むとなると話は別で新機軸な意欲作を観ようと行ってきました。
ただ、出掛ける前に見たレビュー評価が意外にも低めだったので、ちょっとハードルを下げた方がいいのかも・・・とも。
さえない中年の父親と若者ラッパーとの本来混わらないはずの交流が面白く、テンション高めで攻めてくる笑いも良いけど、こういうすっとぼけた笑いもすごく好きだなーと思いました。
内容は荒削りなところもありますが、中途半端に整っているよりも、とにかく面白い方へ展開していくのならアリでしょ、とそんな感じで見入っていました。
そして見入っていると、突然ポロポロと涙が・・
ちょっと自分でもビックリしてしまいました。
演劇で泣いてしまうなんて、ほとんど数える程しか無いのに。
父親の家族を想う心情が一気に伝わってきて、めちゃくちゃ心を揺さぶってきます。
ベタと言えばベタなのですが、何とも心地の良いベタでした。
公演を観終えてラップが好きになったとまでは言いませんが、とてもうまくラップが取り入れられていたと思います。いい公演でした。グスン