
フランケンシュタインー現代のプロメテウス
演劇企画集団THE・ガジラ
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2018/06/07 (木) ~ 2018/06/13 (水)公演終了
満足度★★★★
定番であるモンスターなビジュアルを封印し、心の葛藤に強くスポットライトを当てた演出はとてもガジラさんらしいと思いました。
原作の本質は尊守されていたとはいえ、それでもビジュアルの影響はかなり大きく、どこか楳図かずお的な恐怖のテイストを感じたのは自分だけでしょうか。
造った者も造られた者も、そして周りの者も不幸・・・ほんと何故造った。

ボーダーリング
やみ・あがりシアター
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2018/06/07 (木) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★
観る前は「忍者」の設定がちょっと邪魔の様に思え、実際マンガチックな要素ではありましたが、大いに笑える作品として「なるほどな~」と納得、巧く機能していました。
婚活にあたってパーティー主催者のアドバイスが逐一的確に聞こえ唸ってしまうものの、それが為にロマンティックからはどんどん遠ざかっていき「結婚ってそもそも何だっけ」と何だか思考の泥沼にはまっていく様な感じがたまりません。
お見合い回転テーブルが如く参加者全員の人物像が廻り描かれ、中でも熟練参加者の手慣れているが故に、なんかもう戻れないキャラになっちゃってる感がツボでした。
本人の「いい加減ここで妥協してもという気持ち」と、「イヤイヤもう妥協できない気持ち」の揺れ動きも何となく分ります(笑・・・でよかったか?)
誰もが脇キャラだけで終わらず、ちゃんと生きているところがイイ。

隻眼の産婆
SYOMIN'S
シアター711(東京都)
2018/06/06 (水) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★
フィクションではあるものの教科書には決して載らない庶民の歴史を目撃してきたかの様な力強さ。
貧しさの中、生き抜く凄まじさと笑いが同居した世界観には思わず「うわっ!」とか「ぬおっ!」とかのけぞってしまうシーンも多々あって引き込まれました。
決してハッピーな話ではないけれど、ちょっと落ち込んでいる人も、これを観れば元気になれそう。
状況説明的な部分で荒削りに感じるところはありましたが、力量ある役者さんのネットワークが強そうなSYOMIN'Sさん、今後の公演も楽しみです。
旗揚げ公演、初日。良い感じの愛と熱気が会場に溢れていました。

Last Night In The City
シンクロ少女
ザ・スズナリ(東京都)
2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★★
シンクロする男の半生や、縁あっての数々の生き様がズッシリ、さすがに見応えありました。
どうにも薄幸な人生が多く胸が締め付けられますが、それ故にちょっとした幸せが宝石の様に貴重で美しく見え、何とも切なくなります。
個人的には如何にも生き下手でうわぁ~っ苦手なタイプだと思ってしまう女性ミキに最初からもう目が釘付け、彼女に関わるとその相手まで輝いて見えるくらいにダーク、且つ面白くもあり味わい深いキャラクターでグイグイ引き込まれました。

全部ホントで全部ウソ
MacGuffins
北池袋 新生館シアター(東京都)
2018/05/29 (火) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
なまじ良い思いをしたばっかりにモーニングTVの占いに依存するようになった主人公青年、恋や仕事の熱血人生奮闘記。
冒頭からのハイパーエンジン全開っぷりに「最初から、こんなにかっ飛ばして大丈夫?」という心配をよそに次々と展開するトラブルストーリーが微妙に絡み合い、それを養分に増々パワーアップしていく様がもうスゴい!
大人の本気と演技力が伴った全力疾走コメディーは、もはやコメディーの枠を超えたジャンルになるのだという実感。
観客を笑わせ楽しませる為ここまでやるか!!と、かなりジ~ンときてしまったようで、観終わった後はじっとしているのが勿体なく無性に走りたくなりました(笑)
それにしても強烈、強力な登場人物達と終始渡り合う主人公の、一公演あたりの消費エネルギーはマラソンに置き換えるなら何十km相当になるのだろうか・・・主人公と役者さんが相まって、その完走を見届けられた様な達成感が何とも良かったです。

追想のエレジー
踊る演劇集団 ムツキカっ!!
シアター風姿花伝(東京都)
2018/05/24 (木) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
開演前に読んだ当日パンフでの作・演出家さんの言葉、これが私にはすこぶる効果的でした。
前後にも文章があるのを前提に一部抜粋すると
・ドラマ部分をダンスに託しました。
・伏線を回収しませんでした。
・色々な説明をしませんでした。
・登場人物の変化にあまり関係のないキャラクターがいます。
一言でいうと「分かりづらい作品ですよ」的な事が書かれているのです。
そうなると、こちらも「よし、わかった!分かりづらいわけね、オッケー」とそれなりに観る体制が整ってくるものです。
ただひとつ気になるのは、観客の中にはそう演劇慣れしている風でもない、ご年配の方々も多数おられて、そんな難解な作品に対して不満が出てこないかという事でした。
そして公演がスタート。
んっ?全然分かりにくくなどありません。
むしろコメディー色が前面に出たアットホーム感が漂っています。
東京から帰ってきた娘はどこか気難しい所があるものの、島の家族や仲間達が創りだす空間は和やかで笑いも起こります。
ただ観進んでいくうちに段々違和感が生じてきました。
どうやら謎は随所に挟まれるダンスシーンにあった様です。
観終わった後には工夫が張り巡らされた演出にちょっと感動してしまいました。
あのダンスにはそういう意味があったのか~等ポロポロ気付きが浮き上がってきて面白いのです。
その気付きの数々が全て演出家さんの意図するものと一致しているのかは確かめませんでしたが、うんそれでOK。
イマジネーションを強く刺激する画期的な作品だったと思います。
前の当日パンフの言葉が自分にとって効果的だったのは、法律的な解釈や登場人物のバックグラウンドといった細かい事に対して逐一追求しようとは思わず、ただひたすら本流の物語に没頭できた点にあります。
気になっていた年配のお客さん達も満足気な笑い声をたてながら「あそこはこういう事だったのねー」と終演後の談義に花を咲かせていたのが印象的でした。

Silent Majority
劇団龍門
サンモールスタジオ(東京都)
2018/05/23 (水) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
もし現在、問題を抱えて行き詰っている人には、きっと何らかの指針になってくれるのではないかと思えるエンターテインメント作品。
予定調和に収まらないエネルギッシュな展開に終始圧倒されながらも観終わった後には、登場人物に比べ全然平穏で甘ちゃんな私にも、どこか視界が開けてくる様なスッキリ感をもたらしてくれました。
既に見た目だけで人生ドラマを感じさせる趣ある役者さんと、若さ溢れる役者さんが混在していて実にバラエティーに富んだ座組でした。

フーリッシュゲーム
劇団なのぐらむ
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2018/05/17 (木) ~ 2018/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
思うに、演劇という創作である事を前提に「お葬式」モノにはハズレ無しだなーと。
それぞれが抱く大小様々な故人を偲ぶ気持ちに、個人的思惑・性格が合わさって出来上がる独特の空気感。
これにはつくづく創り手さんの観察眼の鋭さに感心してしまいます。
暗転なし、リアル進行の1時間30分。
本作の舞台は葬式会場そのものではなく、有志が別宅で行った「偲ぶ会」であり、ご家族がいない場所であるが故に生まれる ちょっと気が緩んだ空気が実に活かされていました。
“あらすじ”ほどのイケイケなドンチャン感はありませんでしたが「ゲーム」的な要素があるとすれば、故人「安藤くん」の死因に憶測が飛び交い「真相を知りたいよね」という目的を含有しているところでしょうか。
そしてこの部分が「安藤くん」の人柄を肉付けしていき、多種多様な人達のリアルに雑多な「偲ぶ会」の進行の軸にもなって、もうひとつの面白味となっていました。
本当に沢山の人が出入りしますが、その一人の故人をめぐっての雑多さがかえってリアルで味わい深く、この人間模様こそが面白味のメインでした。

カッター
シアターノーチラス
RAFT(東京都)
2018/05/10 (木) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★
アガサ・クリスティー張りに全員が真犯人の可能性を秘めたストーリーではあるものの、謎解きを楽しむというより、どうしても注目してしまうのは、その人間模様。
仕事仲間が容疑者のまま自殺してまだ日が浅いというのに、この雰囲気は一体なんだ。と最初からイヤ~な人達だという印象を持って観ていましたが、さもありなん。
己のセンスを競い合うパッケージデザインという業種も関係しているのでしょうか。
本来視線をそらしてしまいたいはずなのに、思わず凝視してしまう心の闇。
日々満員電車に揉まれ、会社では自信をすり減らしていく都会の日常が、自分でも意識しないうちに心を歪めていく人物サンプルを目の当たりにしている様でゾッとしました。

Y FUTAMATA vol.2
ロ字ック
小劇場B1(東京都)
2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
『ぼんやりした話/セプテンバー』
せっかくオムニバス企画公演をするなら、この機会に振り切った作品がしたい!
そんな思いが伝わる不条理を遊び倒した様な作品。
いい出汁がいっぱい出そうな役者さんの旨味がよく出ていて楽しめました。
「う~ん」といった感じのお客さんと、思わず笑ってしまうお客さんとがいらっしゃいましたが私は後者。
「何じゃそりゃ」「そこスルーかよッ!」脳内でツッコミまくっていました。
『Re:』
役者さんの瞬発力が生かされていた作品で、こちらも実験的な作風。
後半もうひと工夫欲しい気もしましたが、世知辛い社会に対してのメッセージは大いに共感でき、じんわり沁みてきました。
『カラオケの夜』
前2作とガラッと変わって超リアルな二人芝居。
男女の機微が何気ない会話や所作だけでビシバシ伝わってきて思わず感動。
まだ若い役者さんなのに職人芸の様な味わい深さで、最後に根こそぎもっていったなーと。
どう考えても実体験が存在していなければ描けないであろう血の通った切なさでした。
全編を通じて「巧いなー」と感じたのですが、前2編がタイプかどうかで全体の印象が大きく変わってくるのかも。と前に掲載されているレビューを拝見していて思いました。

「篝火」
劇団 背傳館
インディペンデントシアターOji(東京都)
2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★
客席が舞台を3辺から囲む臨場感仕様。
実際に、社会から弾き出されて自殺しようと集まった男女が醸し出すダメ~な空気の臨場感がたっぷりでした(笑)
ただ人数が多い中、会話からはちょっと説明的なアプローチが少なく感じられ、同時に2か所でやり取りが始まったりで個人的には追いつくのに必死な面も。
観ているうちに、かなり練り込まれた「空間」そのものの体感を最優先すべきと思えてきたので、途中からは台詞の咀嚼はほどほどにする事にしました。
歪んでいく様な、救いがある様な無い様な、自身の身をそこに置かなければ表現しきれない、群像で創り出された不可思議な「空間」
何というか、出来る限り全員の観客に的を合わせて打ったというより、打った後に、はて何人にヒットしたのか確認してみようかというギャンブル性を感じる公演(異色作)でした。

ラーメン
宇宙論☆講座
スタジオ空洞(東京都)
2018/04/27 (金) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
満足度★★★★
「飲酒上演」の回を拝見。
ホントに酔っぱらっていたみたいですね、スゴイ。
これで客席全体も酒に酔っていたら、とんでもない事になりそう(笑)
通常の回は観ていないのですが、恐らく群を抜いてハチャメチャだったのでは。
もはや本当のトラブルも普通に溶け込んでいました。
ストーリー的には過去に拝見した作品とかぶっている様なところもあってかトキメキに欠けた反面、いくつも新しい試みが。
その中には確実に不快と感じる人もいて然りなモノもありましたが、チャレンジ精神が素敵だと思います。
帰宅途中「あのぐちゃぐちゃになった会場を誰が片付けるんだろう」という心配が。
終演後、片付けボランティアを募集するのも一案だったかもと(人によってはそれもエンターテインメント)

じぶんさがし
RISU PRODUCE
赤坂RED/THEATER(東京都)
2018/04/25 (水) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
満足度★★★★★
多くの小劇団さんの作品を拝見していると、一体稽古場ではどの様な時間が流れ、作品創りをされているのか俄然知りたくなってきます。
出来れば茶化したものでなく、リアルな姿を。
そんな私にとって本作はもろストライクな作品で、本当にこういうのをずっと観たかった!!です。
出番の多い少ないに関わらず登場人物の劇団員の皆さんは、まさにそこに「生きて」いました。
とても自分にはできる職業ではないなーと思いながらも共感できるところは沢山あり、笑い観進んでいくほどに目の周りが熱くなってきます。
日々東京だけでも数えきれない程の公演が打たれていますが、その1~2時間半の作品の裏に、一体どれだけの人間ドラマが息づいているのだろうと思いは巡ります。
その一方で私なんかの感想よりも、実際に劇団をされている方、目指そうと思っている方々がこの作品を観てどう感じられるのか是非聞いてみたいと思える作品でした。

美愁
The Vanity's
APOCシアター(東京都)
2018/04/24 (火) ~ 2018/04/28 (土)公演終了
満足度★★★★★
稀にですが観客“全体”の集中力が結集し、舞台と完全に繋がる奇跡の瞬間を感じる事があります。
私の拝見した回では、その醜くも美しい作品の吸引力が、ほぼ観客全体を魅了し、愛情の渇望渦巻く世界へと一気に飲み込んでいく、まさに奇跡の様な時間でした。
座った席がサイドブロックだったので意図的でない限り視界には入ってこないのですが、メインブロックからの圧は感覚として伝わってきます。
この客席からのエネルギーは役者さん達にも伝わったと思うのですが・・・もちろん源である舞台からの上質なパワー、凄かったです。
本作は一言でいえばダークファンタジー作品なのかもしれませんが、グリム童話の様な完成度と残酷さ、少女漫画の様な華やかさと悲劇性、歴史ドラマの様な強い生命力と因縁絡み合う重厚さ、とても一言では言い表せるものではありません。
哀しくも美しい音楽と共に劇場全体が「美愁」の世界でした。

空観
ヒンドゥー五千回
座・高円寺2(東京都)
2018/04/25 (水) ~ 2018/04/26 (木)公演終了
満足度★★★★
ガーーン 台詞が何を言っているのか全然わからな~い(笑)
登場人物が使用するのはスペイン語風言語(タモリが、よくなんちゃって中国語をネタにしていたスペイン語版的?な)なので一体目の前でどういう会話が取り交わされているのか具体的には全く分からないのです。
たまに日本語に切り替わったりしてドキッとしますが、その部分で他を全てカバーしているという訳でもなく、ヒンドゥー五千回さんは正攻法でこないと覚悟はしていましたが、まさかこう来るとは。
そうなるとストーリーを読み解くには彼らの態度や口調、表情、リアクションが頼り。
外国映画をあえて字幕なしで鑑賞しているのにも似ています。
内容的には群像劇の様相で、どこの国だか分かりませんが生活水準や文化水準はそう高くなくてガサツな人が多く、村社会的な繋がりが強そうです。
そして集団の中でも、ちょっと特別に扱われている人物や、何かしでかしたらしい嫌われ者もいるようで・・・あれっ、彼らのコミュニティーや事の流れがそれとなく伝わってくるではありませんか。
更に面白いのは、描かれる内容がストレートプレイの域にとどまらず、パントマイムの技術を取り入れた不思議な感覚へといざなってくれる世界観でしょうか。時には呪術的でもあります。
こうして言葉の概要を取り払ったカタチで人間社会を観ていると、虫も動物も人間も大した違いは無く、そこに意味が本当にあるんだか無いんだかワサワサと生きているなーと、どこか達観した様な気になってきます。
ひょっとしてこれは神の立ち位置から見た作品?・・・解釈は自由な作品だと思います。
演劇でありながらダンスパフォーマンの様に、どこの国の人が観てもほぼ条件は一緒というのも面白いです。

げんせんじゃ~2018
劇団たいしゅう小説家
萬劇場(東京都)
2018/04/18 (水) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★★
愛と情熱の旅館「宝や」
新番組『崖っぷちホテル』ならぬ『崖っぷち老舗旅館』は若社長と個性ある従業員による経営立て直し奮闘記。
何年かぶりのたいしゅう小説家さんでしたが、すっとぼけた笑いは健在。というか益々磨きがかかっていた様な気が。
王道のハートフルコメディーに加え、再演を重ねてじっくり煮込まれた安定の味わい。
笑いは緩めですがキャラクターへの入り込みはガッチリで、役者さん達にも味がよ~く浸み込んでいました。
演出に応えた全くブレの無い演技は観ていて、とても清々しいものです。

2018「月いち座布団劇場 四月篇」
占子の兎
阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)
2018/04/20 (金) ~ 2018/04/21 (土)公演終了
満足度★★★★
落語と芝居の良いとこ取りみたいで面白いスタイルですね「座布団劇場」
人の情けと業の深さがミックスされた純ジャパニーズコメディーは、もう鉄板の面白さ。
笑いの沸点が100℃として、常に90℃から100℃を行ったり来たりの愉快痛快な時間でした。笑ったーっ。
暗転ごとに次はどんな配置に変わって、どんな展開が待っているのかとワクワクします。
ラストの作品は人情モノで登場人物がとても多い力作でしたが、それ故に場面転換のバランスがちょっと気になるところ。
かえってそこから、いかにテンポやバランス、その他全てが完璧になっていないと、ほんのちょっとした事でさえ気になってしまう落語の厳しさをうかがい知る事ができました。

逃げぬれて、夜
くちびるの会
調布市せんがわ劇場(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
世にも奇妙で切ないラブストーリー。
世知辛い東京の片隅で、涙ちょちょぎれるくらいセッコい人間関係に翻弄されながら、煤けた風呂無しアパートで暮らす主人公女性。
ジメジメした雨模様が良く似合う日常でありながらも、何故か陰湿な印象を受けない不思議な作品。
その理由は人間のふてぶてしさ、もとい逞しさにあると思われ、加えて会話の端々からほとばしる余りのトホホぶりにはヤバい、笑ってしまいます。
恋の行方はリアルすぎる現実を歪めていく勢いをもって、どこに転がっていくのか全く予測不能。
あぁそこに着地したのかと思ったら、更に転がっていくので気が抜けません。
まだ舞台の残り香があるうちに二人の恋の軌跡と、取り巻く輩(やから)達の生き様を今一度よーく噛みしめてみたく、台本をじっくり読み込んでみたいと思います。
【補足】見てきた様なスーパーや深夜コンビニのバックヤードの生々しさは、ぜったい作者さん経験者だな!と

Life pathfinder 4th WALL
パスファインダ制作室
吉祥寺シアター(東京都)
2018/04/20 (金) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★★
オフ・ブロードウェイの香りがする観客も一緒に参加意識型の公演。
『主役』は何と1名の観客代表。(事前に公募されていた様です)
『主役』は参加意識のみならず正真正銘舞台上に立ち(というか可動式特製椅子に座り)作中に取り込まれます。
結構いじられつつも、普通一生こんな事無いくらいの臨場感最大MAXのステージを体験する『主役』を我々は見守る様な形態でもありました。
吉祥寺シアターの会場はいつもの段々席が一切合切撤去され、まるでバレーコート1面分くらいの広さの体育館の様。
「模索」をテーマにしたストーリー(?)とミュージックナンバーは『主役』や外周を取り囲む客席に、もろダイレクトに向けられ、これは小劇場でしかあり得ない親近感と迫力。
役者さんと目が合う度にドキドキします。(『主役』のドキドキ感は一体これの何倍なんだろうか)
できれば「模索」する対象が自分にとって、もっと身近なものであれば、より強く入り込みやすかったかも。

青春超特急
20歳の国
サンモールスタジオ(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/29 (日)公演終了
満足度★★★★
演じられる学園生活の卒業と、ずっとこだわり続けた『青春作品』とのダブルの卒業が重なって、ちょっと切ない。
本作への想いの反映でしょうか、台詞が洗練されていた気がします。
彼等の高校生活の断片を観ていると、否が応でも自身の記憶の断片まで浮上してきて、そのまま自分の世界に浸ってしまいそうになるので振り払うのに大変でした。
それにしても大学受験の悩みを持つ人は、相変わらず少なかったです(笑)
20歳の国マイベスト「花園」がもう再演されないのかと思うと、やっぱり寂しい。