自由を我らに
カプセル兵団
ワーサルシアター(東京都)
2019/05/28 (火) ~ 2019/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★
舞台上に続々と集まってくる言論・文章に長けた登場人物。
序盤にてその人柄が順々に伝わってくるのですが、 これは絶対揉めるわ(笑)
一般人にとって読解しづらい日本国憲法を分かりやすい口語文に書き換える為に集められたというのに皆発言が自由過ぎ。あぁ~だからッ 意味まで変えちゃいけないんだってばっ(笑)
文言の解釈と表現方法に対して、作家・歌人・随筆家、いわゆる文章で楽しませる職業人の発言は、ここでまかり通ったとしても、どうせ後で訂正されるでしょう的な微笑ましく笑えるものが多かったけれども、同じ文章を楽しませる職業人とはいえ広告文案家の発言はその笑いに紛れて「んっ?」どさくさにちょっと怖い事を言っている気が・・・
一番の見どころはやっぱり9条のくだり。
ここで一気に身が引き締まったし、そう!正にこんな論争が観たかった!という思い。
それこそ一言一言を噛みしめるように聞き入りました。
毎回役者さんが、その場の感情で自由に演じるという「フリー・リアクション演劇」
皆さん負けず劣らずの熱き言論・演技バトルを繰り広げられてていましたが、そこをあえての個人的熱弁賞は新聞記者・大町さんと政府の役人・生粋さん。
観る回、観る人によって変動する可能性が面白いです。
後家安とその妹
明後日
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/05/25 (土) ~ 2019/06/04 (火)公演終了
満足度★★★★
プロデューサーに名を連ねる小泉今日子さんは、ずっとアイドル時代からどこに身を託すのかを含め映像・演劇を問わず自己プロデュースの天才。
今回女優として御自身は出演されてはいないのだけれど本作における重要な二人の女性
「極上の男をたぶらかす女性」と「下衆な男に弄ばれる女性」それぞれの役に想いを託されていたのではないかと思えた公演。
小演劇界から抜擢された役者さんに目を向けただけでも「なるほどコレは期待できる!」な顔ぶれ。
ただ期待したイメージがそのまんまそっくり舞台で具現化されるというのは難しいもので・・・音響・照明を含め、ここはもっとケレン味を身方につけた方が・・・と思いながら、狙いどころはどこを取っても理解ができるのでドキドキ心弾んだり、狙いが理解できるが故にもどかしく思える箇所があったり、中々こころ忙しい観劇となりました。
ドラマチックな殺陣シーン、要所要所における豊原功補さんの巧さ、毎熊克哉さんの人を思いっきり不安にさせる表情etc見どころは沢山。
なんだかんだ言っても観る価値充分にありました、私は満足です!
受付で観客を出迎えてくれる小泉今日子さん。
にこやかに、ごく当たり前といった感じで・・・うん、やっぱりキョンキョンはかっけーッ
10分間2019~タイムリープが止まらない~【ご来場ありがとうございました】
中野劇団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/05/24 (金) ~ 2019/05/26 (日)公演終了
満足度★★★★
気心知れた仲間うちの飲み会と悪夢のような無限タイムリープの取り合わせが何とも絶妙!
気心知れているのと気が通じ合うのは別物なのですね、なんか逆に厄介(笑)
さり気なく関西弁効果も大きい。
何より見事だと思ったのがタイムリープの回数を重ねていく程に可笑しさも増し増し、更に話も広がっていくという展開。
止まらない笑いを増幅させたまま勢いで一気にラストまで・・・と思いきや途中からまた流れが変わってハッとしてしまうのもイイ感じ。
敢えて言うなら舞台に登場しなかったキーマンの人物像だけがいまひとつ実体としてイメージしづらかったのですが、舞台上の人物達は誰もが親近感湧く完全キャラ。
特に主人公の人間臭さが逐一味わい深く、そして可笑しい。
会場は序盤から笑いの起きる暖かい雰囲気だったので遠慮なく笑えるし、やり取りの妙はどんどん加速していくし、ええそりゃもう思う存分笑い倒してやりましたよ(笑)
お隣りのキャラメルボックスファンの女性も、ひとつ後席のコリッチメンバーミドル英二さんも負けずに笑っていて何だか楽しかった!
俺は間違っている。
空想実現集団TOY'sBOX
遊空間がざびぃ(東京都)
2019/05/22 (水) ~ 2019/05/26 (日)公演終了
満足度★★★★
「育ち盛り」という言葉がピッタリに思える劇団さん。
通常より観客収容人数の少ない劇場公演なので多少こじんまり、かと思いきや、とんでもなくパワフル!メチャ伸び伸びと楽しんでいる感じが愉快爽快でした。
基本、下手が主人公の村上悠太さん率いる妄想軍団エリア(彼の幼馴染役、中舘早紀さんもこちら側)
上手が引っ越してきたお隣さん小田島凛さん率いるライバル(笑)妄想軍団エリア。
ただでさえ近いのだけれど、もしお目当ての役者さんがいて、その役者さんをより贅沢に観やすい席で楽しみたい場合は、早めに入ってスタッフさんにどのあたりに座れば良いのか尋ねれば教えてくれそうなので是非。
独り悦に入っている妄想の中に、偶然世界観が一致してしまったお隣さんの妄想が紛れ込んでくるという発想が面白いストーリー。
こんな感じの妄想、子供の頃自分も楽しんでいたかも(笑)
当時は我ながらバカバカしい事やってるなぁと思っていたけれど、妄想力が無くなった今としては何とも懐かしい・・・
パンフと一緒に入っている手紙の演出も小憎らしく、良かったです。
一段とキャラに磨きがかかった演出家さん。
前説兼ストーリーテラーとして何とも良い感じ・・・こちらもどんどん育っていくのではないかと楽しみ。
ねこのはこにわ
teamキーチェーン
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2019/05/17 (金) ~ 2019/05/21 (火)公演終了
満足度★★★★★
過去に拝見してきたteamキーチェーンさんのミステリーinの作品には、どうやったら創り出すことができるのかと思うほどにヒンヤリとした空気が流れ込みゾクゾクしながら引き込まれてしまうのだけれど、本作は番外公演。
また全然違った空気感でもって、大いに楽しむことができる作品になっていました。
家賃の安そうなアパートに6世帯。
それぞれの生活が時には交わったりするものの、それぞれに独立した営みがしっかりと描かれており、幸、不幸を推し量ったところでそれは本人にしか分からなく、道半ばの人達でもあるのだけれど、彼等の十人十色様々な人生模様に触れることで観劇後は喜怒哀楽、実にカラフルな感慨の風呂敷に包み込まれたようでした。
六つの世帯を見せる演出方法はいくつか考えられるのでしょうが、本作での見せ方は良く考えられていて、ちょっと視線を移すだけでどの部屋にも焦点を当てる事が可能。
見るべきポイントの誘導も巧みなので、観進めていくほどに自然と各家庭の内情が伝わってくるし、時にはスポットの当たっていない家庭をチラ見してみると思わぬ様子を垣間見てしまったりで舞台全体が実に表情豊か。
そう、ここのアパート住人はとても在宅率が高いのです(笑)
一言に群像劇といっても、こういう魅せ方もあるのだなぁと、素敵な「ねこのはこにわ」に酔いしれてしまいました。
musical『ジキル&ハイド』
Hell Cat Fire
ザムザ阿佐谷(東京都)
2019/05/18 (土) ~ 2019/05/19 (日)公演終了
ドラマチックな名曲が多く、見どころ満載なミュージカル『ジキル&ハイド』
流石に帝劇のそれとは別腹モノとはいえ、その作品と真正面から向き合った実に誠実な公演でした。
特にジキルと深く関わり合う二人の女性、「婚約者エマの純潔さ」と「娼婦ルーシーの艶やかさ」のコントラストがとても良かった。
基本素舞台ながら衣装や調度品は細部にまでこだわった色とりどりなゴージャス感、綿密な群像の動きといい会社員役者の本気が沢山詰まっていました。
逆襲の花束
生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した
新宿LIVE FREAK(東京都)
2019/05/12 (日) ~ 2019/05/14 (火)公演終了
満足度★★★★★
大盛り上がりの千秋楽!
ALL STANDINGの回はガッツポーズしたいくらいに大正解。
大いに興奮して良い汗かいた!外の夜風がめっちゃ気持ちいい・・・しかしこれは観劇の感想か?(笑)
全身に響き渡る生演奏の会場は正真正銘のライブハウス。
もちろん演技パフォーマンスありきの構成ではあるものの、観客に向けての台詞が多用され、いわゆるストレートプレイとは一線を画する斬新な形態。
個人名では無く、どこか象徴的な名前と業を背負った囚人たち。
彼らの多少オチャラケが入った前半も良いが、看守が登場し雲行きが変わってからの後半戦がとても熱い。
通常、かねてからファンのアーチストライブでもなければ容易に盛り上がれるものでもないはずですが、この演技パフォーマンスあってこそのライブパフォーマンス、大興奮でした。
燃え上がる炎と血の赤。
もっと若い頃に観ていたならば、突き刺さり方もストレートに更にガツンときたかも。
ハッピー・new・メリークリスマス
劇団マリーシア兄弟
Geki地下Liberty(東京都)
2019/05/09 (木) ~ 2019/05/12 (日)公演終了
満足度★★★
個人的に、前作『バンブーオブビッグ』で感激した者としては、かなりの落差でもって伝わってくるモノが少なかったです。
台詞が台詞としてでしか頭に入ってこなかったのと、台詞の中心にいない時の役者さんが目立たぬよう、きっちり動きを抑えられているのも逆に気になりました。
新参者ながら、等身大で自然体(少なくともそう感じさせる)な世界観がマリーシア兄弟さんの大きな魅力だと捉えているので、本作での作り込み感がどうしても馴染めなかった。
それでもシンプルな舞台の中、演技で魅せようとする心意気と気概ある劇団精神は充分に伝わってくるので期待値が高い劇団さんであることには全く変わりはなく、次の一手が楽しみではあります。
生ビールミュージカル
宇宙論☆講座
スタジオ空洞(東京都)
2019/05/01 (水) ~ 2019/05/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
本気で酔っぱらい、半ば狂人状態で演じる事を前提に構成された公演なので、しっかり只事ではありませんでした(笑)
観客も積極的にビールのサービスを勧められ、つまりは「酔っ払い」VS「酔っ払い」色々とリスクも考えられそうですが、何しろ演者さん全員が酔っぱらい軍団、毒は毒で制する方式にて最強。
舞台手前では阿鼻叫喚、奥では横一列に可愛い振り付けを踊り続ける役者さん達、ポツリとオムツ姿で佇む役者さん・・・イメージできるでしょうか
喧嘩上等ならぬ不謹慎上等、作品の全てを集結したかのようなエンディングで歌い上げられるテーマ曲がもう圧巻!
夢か現か、ほろ酔い加減で盛り上がり、半目でエンディングを見届けたあと眠りに落ちる・・・これが最高の鑑賞法かも
評価点つけるのも野暮な気がしますが、前人未到?の飲酒公演達成に星五つ。
はたして追従する(できる)劇団はあるのか(笑)
それからの夏
“STRAYDOG”
ワーサルシアター(東京都)
2019/05/02 (木) ~ 2019/05/05 (日)公演終了
満足度★★★★
情感ある台詞に溢れた脚本がスンバラシイ!
個人的に今まで拝見してきた“STRAYDOG”さんの作品で、コメディーな笑いを一切ぶっこまなかった演出作品は初めて。
新鮮であり、本作においては伝わりやすかったと思います。
両サイド客席に挟まれた舞台からは、汗や草木の匂い、時には死者を弔う煙の匂いが香り立ち吹き抜けていくよう。
報われなくともひたすら走りまくる主人公。
その身体を通り過ぎる風もがこちらに伝わってくるようでした。
美しくて残酷、その中から強い生命力を感じる物語。
痛みこそが生きている証でもあるような切なさに胸を締め付けられました。
H&ERO
Peachboys
シアター711(東京都)
2019/04/23 (火) ~ 2019/05/06 (月)公演終了
満足度★★★★★
『令和』一発目、ドッカ~ンと突き抜けたエロパワー大放出公演 凄かった~!
華麗なる前説にて笑いの準備態勢は完璧、いつでも本編カモ~ン状態からの幕開け(つまり前説でもう大笑いしまくっています)
全く遠慮のない実名パロディーや容赦ない下ネタが受けまくって会場丸ごと正真正銘、大爆笑の渦が巻き起こりました。
(ただしパンチとボリュームあるラーメン二郎系公演なので少食の方はご注意を)
時代を駆け抜ける“童貞こじらせ3人組”はこの世に事件がある限り、今後もまだまだイケますね(笑)
見入っている間はひたすらスゲーなこの劇団!と、おもちゃ箱をひっくり返したような笑いの連打に現を抜かしていましたが、あらためて思うに本作の台本から下ネタやパロディーの数を拾い上げるとすれば、その作業だけで一体どれだけの労力を要することやら。
面白い面白くないは別としても(メチャ面白かったのですが)ひたすら観客を楽しませる膨大なエネルギーの陰に一体どれだけの努力と覚悟と本気が隠されているのかを思えばジ~ンと感動の念すら湧き起ってきます。
間違いなく根っからのサービス精神旺盛、楽しい事大好き集団。
大盛況の会場 楽しい処には人が集まってくる。という自然の流れが気持ち良かったです。
演劇♡顧問
神保町花月
神保町花月(東京都)
2019/04/26 (金) ~ 2019/05/06 (月)公演終了
満足度★★★★
これ本物の演劇顧問教師が観に来たらど~すんの(笑)
お馴染みといった様子のメンツが揃った教師たちの飲みの席、その一部始終。
舞台では序盤から程よく酒が入ってイイ感じの荒れ具合。
これはナイスな本音が飛び出してきそうな予感。
おっ!絶対いると思っていましたよ、作品に教育論を被せてくるキッツい女教師・・・まずは手堅く笑いをゲット。
しかしこれは嵐を迎えるほんの前触れに過ぎず、ほどなく審査員も席に加わったことを契機に・・・人間味丸出し。赤裸々ですね、赤裸々すぎるッ(笑)
会場全体が程よい熱気と笑いに包まれて、とても良い公演だったと思います。
しずるのお二人はお笑いコントで演技力がそこそこあるのは分かっていましたが、本作では更に深みが加わって抜群の安定感。
バイク川崎バイクさんはネタしか拝見した事がなかったので役者姿が新鮮でした。
もちろん□字ックの面々も全然負けてはおらず、もう芸人さんと役者さんの区別がつかないほどに渾然一体。
芸人さんの演技パワーと脂が乗った□字ックワールドが合体した完全ウィンウィンの企画だったので、今後の展開がとても楽しみです。
ランチタイムセミナー
劇団ジャブジャブサーキット
ザ・スズナリ(東京都)
2019/04/27 (土) ~ 2019/04/29 (月)公演終了
満足度★★★★
実際に起こった人質事件。
前作とはこれまた大きく異なった題材だったなぁと思いきや、アフタートークにてゲストの方が観劇感想をシャボン玉に例えられており、ナルホド歴史的大事件勃発で世間は大騒ぎの嵐のなか、当の公邸内は意外なほどの無風状態、思わぬ共通点がありました。(境界線がとても壊れやすくはじけ飛んでしまう膜である事も例えられた理由のひとつ。とても上手い表現です)
とは言え舞台は人質となったまま3カ月も経過した状況からのスタート。
不思議な和やかさの中にも時折ピリッとした緊張感が走り、微妙な歪みを感じ取れるのが印象的であり、この事件の結末を知っているだけに感慨深く感じられるシーンも多々ありました。
吹き荒れる外部の政治的思惑はどうあれ、もしかすると外国人から見ればヘタレに映るかもしれない人質日本人の戦闘を戦闘でぶつけようとはしない人間性にはとても好感を持っての観劇でした。
疾風のメ
くちびるの会
吉祥寺シアター(東京都)
2019/04/17 (水) ~ 2019/04/22 (月)公演終了
満足度★★★★
前々作「逃げぬれて、夜」に続き、世知辛い社会に蔓延る闇の中、人間性がキラリと光る主人公をストーリーの中で泳がせるのが本当に上手い劇団さんだなぁと。
自分的には本作をヒーローものとして鑑賞しました。
とことん人間臭くて好感度ナンバーワンヒーロー。
ヒーローにはいつも葛藤と哀愁が伴います。
気持ちいい穴の話
劇団きらら
王子小劇場(東京都)
2019/04/19 (金) ~ 2019/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★
耳かきエステ・・・劇中で提示されていた料金は30分3千円、60分5千円(微妙な感じのオプション設定あり)
一種のエステティックサロンというにはインチキ臭く、かと言って風俗でもない中途半端さがどこか宙ぶらりんな業務形態。
ではあるのだけれど、そんな土壌だからこそ生まれる根無し草の人間ドラマが何とも可笑しく美しく切ない。
薄暗い雑居ビルの一室に何かを求めてくるお客・・・何かを求め、もがいているのは雇われ店長や女性従業員たちも同じ。
ひっそりと泡沫に消えてなくなってしまった楽しくもほろ苦い日々。
改めてフライヤーを眺めてみると、あのワンシーンが蘇ってくる写真であるのが心憎い・・・うん、あらためてあれは良いシーンだった・・・
本来は満点の作品だったのかもしれないのだけれど、数日前のオパンポン創造社「さようなら」の世界から未だどっぷり、全く抜けきっていない自分・・・それが何とも悩ましい。
さようなら
オパンポン創造社
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2019/04/18 (木) ~ 2019/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★★
人は健康で定職があって食うに不自由していないのであれば幸せと思わなければいけないのかもしれない・・・しかし幸せと思えないものは思えない。これはどうしようもない事。
そこに暮らす人間描写の鮮やかさに自然と笑ってしまいながらも同時に襲ってくるのは圧倒的な閉塞感。
楽しい事なんてひとつも無く愚痴ばかりが蔓延する生活には、いい加減前向きな気持ちも萎え萎えになってしまうのは容易に想像できるし「こんな狭苦しい地方からは出ていきたい!」と考えてしまう気持ちは自分にも身に覚えがあります。
ただ共感とはまた違う・・・ここまで呆れた人間環境に身を置いたことがないし、自分と似たタイプの登場人物が登場しているわけでもない。
それでもただの傍観者としてニヤニヤしていられないのは、舞台の生々しい世界へと引きずり込んでしまう役者さん達の力量に他ならないと思います。
そして追い打ちをかける様に強く心揺さぶられるのは「こんな現状から抜け出したい」「今の自分からサヨナラしたい」そんな時代を思い起こさせるからかもしれない。
にしてもサヨウナラの手段が、隠し金の横領って・・・絶対間違ってるし(笑)
間違っていても この状況この人達ではさもありなん、もう止まらないし止められないし、あぁもうどうなっても知らね~し(笑)
事が上手くいったかはさておき、兵どもが夢の跡・・・様々な想いが拡散していき、それぞれの人生に思いが巡ります。
とりわけ常々気の毒だと気にかけていた青年の心の内,落ち着く先を見届けたときには、他人の本音は表面を取っ払ってみないと本当に読めないものだなぁと単純ではない個の違いを思い知りました。
つくづく感慨深いです。
大納得のCoRich舞台芸術まつりグランプリ受賞作品。
どんなに書き連ねてもこの公演の素晴らしさを表現しきれなくて非常にもどかしいのですが、う~ん何故に空席が存在するのか?
公演はほんの数日すぐに終わってしまうのに・・・早く、どうにか情報伝達力っ!
SAKURA no SONO
平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co.
OFF OFFシアター(東京都)
2019/04/18 (木) ~ 2019/04/22 (月)公演終了
満足度★★★★★
古典作品「桜の園」を踏み台に、華麗にジャンプの抱腹絶倒コメディー。
踏み台が「桜の園」である必要があるのか?(というのは途中までの疑問)・・・いや確かに味付の一部として活かされておりました・・・配役はこれでいいのかなぁ
結論的には「桜の園」を知らなくっても全く問題なしです(笑)
それにしても劇団バックステージものは劇団さんにとって、よほど扱いやすいのでしょうか、これまでの作品を振り返っても当たり作品しか観たことがない。
たとえ似た感じのシチュエーションがあったとしても、それぞれの劇団カラーが実に良く出ているから新鮮で面白い。
平泳ぎ本店さんの本作は、劇団あるあるの枠をピョ~ンと飛び越えておりました(笑)
そして困れば困るほど面白い。
同年代の役者さんのみならず、仕事や何かに頑張っている人には突き刺さる“笑い”がここにはきっとあるはず。
喫茶ティファニー
ホエイ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/04/11 (木) ~ 2019/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★
かなり昔の記憶だけれど確かにあった!ありました。
入店しなくても外観から既に違法の臭いがプンプンするゲーム喫茶。
なるほど、こんな感じでしたか。
重要な回想シーンが数か所挿まれるものの2時間弱ほぼリアルタイムにてその内部を大公開。
もう心憎いくらいディテールが細かいところまで。
賭博とは関係ないのだけれど、中央のテーブルでは何やら怪しいやり取りが繰り広げられており、思わず耳がダンボ。
というのも、この香ばしい切り込み口調、私にも過去経験アリ。
私のケースではこの手にハマっていたのが男の学友なので、本作のシチュエーションとは多少異なるものの舞台上で創り出されるベクトルはあの時の彼とソックリ!
いや、ずっと用意周到(?)なので、グイグイ笑っちゃったり、あ~ぁそうなるかと笑えなかったり。
今でもはびこっているのでしょうかうか、この商法。
ある1日のある時間を切り取っただけで自然と浮き彫りになってくる幾つもの人生。
報道等でちょっとは情報を持っていたとしても個人的にはほとんど縁の無い生い立ちの人々。
非常にデリケートな問題も含有しているのでコメントしづらいですが、思うところは多かったです。
YESTERDAY ONCE MORE
劇団アルファー
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2019/04/11 (木) ~ 2019/04/15 (月)公演終了
満足度★★★★
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を筆頭に、タイムスリップするのは大概若者が相場なところ、定年退職を迎えたオジサン2人が30年前にタイムスリップしてしまうところが絶景ポイントだなぁと思えた作品。
60代の方々にはドストライク!何かと感慨深いシーンが多かったのではないかと。
そういう意味で自分とはちょっと世代的にはズレていたものの、若い頃の自分と直面するというシチュエーションには何かと心ざわつかせて頂きました。
大人の意見よりも自分の自信みたいなものを主張する青さが何ともくすぐったい。
それにしても若い時って大人の言う事、なかなか聞かないものですね(笑)
バブル時代といえば「株高」を真っ先に連想してしまう自分にとっては、そこをしっかり押さえた内容だったのもツボ。
「友情とお金は絶対切り離しておいた方がいいのに」とハラハラしながら見入っておりました。
自身を含めて人が歩んできた歴史を何だか愛おしく肯定してくれるような優しさが残り香の心温まる公演でした。
半永久的なWIFE
劇団NLT
オメガ東京(東京都)
2019/04/12 (金) ~ 2019/04/19 (金)公演終了
満足度★★★★★
新人さんの戯曲ゆえに「少々荒削りな部分があっても致し方なし」という心配は一切無用、それどころかあまりの高い完成度に思わず「マジで!?」
いやなるほど、原作の良さを壊すことなく、ちゃんとベテランの地ならしがなされていた様で「そうじゃなきゃ巧すぎるよね」納得です。
見事なほどに気持ち良く追っていけるストーリー。
少し先の未来を思わせる無国籍な感じ(何故か関西弁も登場)は、星新一をちょっとだけ彷彿。
観劇初心者にも優しい「分かりやすさ」を全然浅いものと感じないのは、心のひだに触れてくる言動,、滲み出る可笑し味と・・・これ自分ちだったら・・・と思いが巡る状況展開の面白味があったから。
お洒落な小劇場、役者さんの演技スキルはその枠に納まりきらないほど堂々たるもの。
全くもって贅沢な時間を過ごす事ができました。
「奥様に永遠の命を与えましょう」と持ち掛けるセールスマン。
「笑ゥせぇるすまん」に出てくる喪黒福造みたいのを想像していましたが意外にも美人セールスマン。
自分だったら「う~ん何かが違う。やっぱり契約しないな」・・・しかし油断すると心が揺らいできそうな絶妙トーク(笑)
もちろん契約成立するわけですが、さあどうなる!?その先への期待を膨らませる冒頭の手腕からしてお見事。
連れ合いを失うかもしれない、どうしようもない気持ち。そこに一石を投じる感慨深さと共に、しっかりコメディーな作品でした。