満足度★★★★★
美と醜悪がとぐろを巻いた様に絡みあった物語。
そのビジュアルイメージが損なわれる事ない役者陣「よくまあ揃ったなぁ」と。
見た目だけでなく、レトロで美しい日本語が心地良く、何ともミステリアスな雰囲気。
個人的にはこの原作、何十年も前に一度読んだっきり、それでも未だ強烈に覚えている事で、面白い内容だという事は観劇前から織り込み済み。
同時に、とは言っても舞台化って…そうおいそれと実現できない作品であろう思いもありぃの。
なので今回そこも含めてどんな公演になるのか楽しみな観劇でしたが、まずは見事なほど真正面から原作と向き合ったスタイルだったのに加え、80分という時間内で収め切った独自の構成力が素晴らしかった!
「そうそう、そうだった!」と記憶をなぞらえる楽しみと、新しい物語に出会えた様な新鮮な楽しみが同時に味わえました。
怪しげな「灯り」と表現してもしっくりする照明も効果的、演技力との合わせ技で舞台の場を自在に変換。
小説に生身の役者さん達が息を吹き込んだ舞台版は、小さな劇場の密室感をも味方につけ濃厚な空気を創り出し迫力満点でした。
大胆な発想の怪奇エンターテイメントな中、おぞましく(その時代での感覚では)も哀しく残酷な恋の顛末を改めて認識させてもらった類い稀なる人間ドラマ。
台風の影響を受け幾つかの回が中止になってしまうのは非常に残念ですが、13日には振替公演が設けられるそう。