
イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー It runs in the family ~パパと呼ばないで~
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2014/09/20 (土) ~ 2014/10/13 (月)公演終了
満足度★★★★
痛快、笑える舞台
ウソにウソを重ねて切り抜けようとするのは男のサガか(笑)
舞台は病院で、翻訳劇なのだが実際に日本でもありそうなシチュエーション。現代は、血は争えないなあ、というちょっと冷笑的なタイトルだが、見終わって笑いながらこのタイトルに納得する。
錦織一清が主役としての存在感を発揮している。脇を固めている、はしのえみ、池谷のぶえが特によかった。

とりあえず、お父さん
ホリプロ
天王洲 銀河劇場(東京都)
2015/12/03 (木) ~ 2015/12/23 (水)公演終了
満足度★★★★
台本を生かし切った演者たち
浅利慶太氏は、劇の成功で演出などが力になるのは2割で、基本的には台本の力である、と言っていたような気がする。アラン・エイクボーンによるこの作品は、彼の出世作だったという。とにかく、台本が面白い。演者たちもそう、口をそろえている。柄本明は「この台本をきちんとやることだ」と言っていたそうだ。だが、この舞台が成功しているのは、面白い台本をきちんと生かし切った4人の演者たちの力のたまものだと思う。
主役の藤原竜也は今日、少し声がかれ気味だったように思う。最初はちょっと元気のなさそうな様子もあったが、尻上がりに調子を上げていた。相手役の本仮屋ユイカ。彼女はテレビドラマでもこうした喜劇テイストのドラマに出ていて経験はあると思うが、もはやかわいらしいだけの女優ではない。ごまかしの利かない舞台で、女のしたたかさを十分に発揮していた。
そして何よりもこの舞台を締めたのは、柄本明と浅野ゆう子だ。このベテランの二人の力量によって、若い二人をぐいぐい引っ張っていた。勘違いに勘違いを重ね、ウソを隠そうとまたウソをつき泥沼にはまる。この戯曲の古典的と言っていいおもしろさを、4人は今の時代でも十分笑えるおもしろさとして立派に引き出したと思う。

ファルスタッフ
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2015/12/03 (木) ~ 2015/12/12 (土)公演終了
満足度★★★★
愛すべき酔っ払いの物語
ドタバタ喜劇で、オーケストラの演奏中にも客席から笑いが漏れる。何と言っても、この世はすべて冗談なのですから。
二人の既婚女性を誘惑をしようと乗り込んだのだがその女たちの策略で洗濯かごに入れられてテムズ川に放り込まれたり、オバケが出そうな深夜の公園に誘い込まれていじめられたり。巨体の大酒飲みは、その道化師ぶりを存分に発揮する。
最後の盛大なアンサンブルがとてもいい

泳ぐ機関車
劇団桟敷童子
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2015/12/05 (土) ~ 2015/12/15 (火)公演終了
満足度★★★★★
今作もヒマワリに元気が出る
「オバケの太陽」に続いて、私はこの炭鉱三部作を拝見した。前作に続いて胸を打つ物語、それを力演する客演を含めた出演者たち。手作り感あふれるが迫力ある舞台セット。見事でした。
悲しく、やるせない、救いようのない展開だが、前を向ける。その舞台装置が機関車であり、ヒマワリなのだ。炭鉱の底に沈む海として、水の使い方も効果的で、演出の勝利。
もし、あなたがこの小劇場から明日への勇気がほしいなら、見逃す手はありません。

バグダッド動物園のベンガルタイガー
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2015/12/08 (火) ~ 2015/12/27 (日)公演終了
満足度★★★★
人間も動物も幽霊に
バグダッドには、人間も動物も幽霊になってさまよっている。人間と動物、生者と死者が交錯する舞台。戦争の現実をこのように描いた作品は、異色なのではないか。
トラッシュマスターズの中津留章仁により、衝撃的な台本がさらに力を増した。客席はちょっとしたセリフの面白さで何回も笑いが漏れたが、私は笑うどころではなかった。そのセリフの重さに心を奪われていた。
演出からは恐らく、相当ハードルの高い指示が出ていたと思うが、虎を演じた杉本哲太、イラク人通訳の安井順平がとてもいい。

12月文楽公演
国立劇場
国立劇場 小劇場(東京都)
2015/12/02 (水) ~ 2015/12/14 (月)公演終了
満足度★★★★
せつなすぎる袖萩
これは名作だ。親子の情の切なさが胸に響く。それを伝える人形の動きの見事さ。歌舞伎として人間が演じるより深く突き刺さってくるかもしれない。
朱雀堤の段では、物乞いに身をやつした袖萩が娘のお君と一緒に登場するが、このお君がとても健気だ。袖萩は浪人と恋に落ちて勘当された身。父親は、天皇の弟環の宮が何物かにさらわれ、苦しい立場に追い込まれているが、その捜索としてここに来た時に物乞い小屋の女が自分の娘であると気付く。しかし、盲目の袖萩は父が来たことに気付かない。
父と娘の関係は、次の環の宮明御殿の段でさらに、劇的になる。雪の降る中をお君に手を引かれて父がいる御殿に来るが、その女が袖萩と気付いた父親は戸を閉めてしまう。母の浜夕が娘の姿に驚くが、夫の手前素知らぬふり。そして袖萩が歌祭文に乗せて親不孝をわびるそのシーンが本当に切ない。
父親も結局、環の宮失踪の責任を取って切腹、袖萩も我が身の不幸を嘆いて自害する。人形たちの名演技もさることながら、情感を込めた大夫の語り。物語に引き込む伝統の技は、脈々と続いている。

書を捨てよ町へ出よう
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2015/12/05 (土) ~ 2015/12/27 (日)公演終了
満足度★★★★
藤田流、寺山ワールド
今、池袋ではこの初期作品と晩年作「レミング」という二つの寺山作品が同時に鑑賞できる。しかも、今作「書を捨てよ町へ出よう」は、若手の注目株、マームとジプシーの藤田貴大、レミングは大阪発で注目の維新派、松本雄吉。30歳の藤田、69歳の松本。二人がどう、寺山を料理するかが大きな見どころだ。
藤田の舞台はとてもユニーク。見る人それぞれの寺山像が浮かぶような、万華鏡のような仕上がり。お笑い芸人の又吉直樹、歌人の穂村弘の映像を効果的に使っているし、藤田が自分で咀嚼した寺山を2015年という舞台空間に再現し、記憶にとどめていく意志を感じる。
寺山の書いた同名エッセイ集「書を捨てよ」は、読んでから行った方がいいです。何倍も寺山を楽しめます。

女学生とムッシュ・アンリ
加藤健一事務所
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2015/12/02 (水) ~ 2015/12/13 (日)公演終了
満足度★★★★
泣ける舞台です
笑い満載のカトケンの舞台なのだが、今回のフレンチ・コメディーは、人間の温かさを存分に描き、泣ける舞台に仕上がっている。
息子が勝手に、老いた父親が住むアパートのルームシェア広告を出す。ここに応募してきた女子大生。老人を加藤健一、女子大生を瀬戸早妃が演じる。
頑固で融通が利かず、自分勝手な老人を存分に見せつける加藤は言うまでもなく、瀬戸の演技も軽快であり、かつしっかりしていて見応えがある。
半年間練習したというピアノの腕前もしっかり披露。なかなかの多才ぶりだ。
モデル出身だけあって、タイトなミニに身を包んで老人の息子を誘惑する瀬戸にご注目。
加藤は「フレンチコメディはえぐいんです」と言っているが、まあ、父親がたまたま一緒に住んだルームメイトを使って息子を誘惑し、離婚にもって行かせようとする筋書きは確かにえぐいかも。でも、見終わった感はとてもさわやか。

お召し列車
燐光群
座・高円寺1(東京都)
2015/11/27 (金) ~ 2015/12/06 (日)公演終了
満足度★★★★
暗い過去ほど受け継ぐ努力が必要
お召し列車は天皇、皇后両陛下を運ぶ列車のことだが、ハンセン病の患者輸送でも、この言葉が使われていたという。まず、勉強させられる。
舞台は今度の東京五輪を引き合いに展開する。外国から来た人のおもてなし列車というお話を設定したのは興味深い。ハンセン病元患者を演じた渡辺美佐子さんは見事だった。
この戯曲のテーマでもあるが、加害の歴史とか、自国にとって暗い過去は、何よりも努力して、次に伝えていかなければならない。見終わって、そんなことを痛感させられる。
舞台は軽快に進行するが、重いテーマである。予習なしでタイトルから想像して見に行くと、ズシンと重すぎると感じる人もいるかもしれない。

洗い屋稼業
東北えびす
上野ストアハウス(東京都)
2015/11/25 (水) ~ 2015/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★
レストラン地下で人生を考える
ゴーリキーの「どん底」とは違う。レストランの地下にある皿洗い職場に、人生を考えるお皿が山積みになっている。
全部で4人しか出てこない。しかも、洗い場の主任役は物語を引っ張り、さまざまな場面を演出する。相当な力量を問われるが、私が見た渡部ギュウは見事だった。
SENDAI座プロジェクトは、東日本大震災で大きな被害を受けたときも公演を打ち続けた。全国各地を回って被災地の声を発信し続けてのだ。今回も、モーリス・パニッチの戯曲をひっさげて、尼崎や名古屋でも公演してきた。上野の小劇場で、その心意気に触れた。

お母さんが一緒
ブス会*
ザ・スズナリ(東京都)
2015/11/19 (木) ~ 2015/11/30 (月)公演終了
満足度★★★★★
強烈トークバトルを楽しもう
ブス会初の家族劇とか。母親を喜ばせようと温泉旅館に行った三姉妹のバトルトークが強烈で、これがメチャクチャおもしろい。
よそでは絶対に見せないだろう本音が炸裂。息をつく間もなく激しく展開する。笑いに巻き込まれ、トークの展開に共感したり、反面教師だとズキッと来たり。恐らく、大半の男はビビる。女兄弟のない私には新鮮な感動すらあった。
脚本・演出のペヤンヌマキの痛快さは、今回も遺憾なく発揮されている。最後の落とし所も秀逸だ。

トスカ
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2015/11/17 (火) ~ 2015/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★
代役でも大活躍!
私が観劇した23日。第一幕が普通に終わり、第二幕開始時に、トスカ役のマリア・ホセ・シーリさんが体調不良で突然降板するとのアナウンス。リザーブの横山恵子さんの衣装調整のため「30分遅れます」とのこと。そうして始まった第二幕は、トスカが、強姦しようとしたスカルピアをナイフで刺し殺す場面など、物語が大きく動くが、横山さんは堂々たる演技と歌声を披露。第二幕終了時に幕間から登場し、大きな拍手を浴びた。主要な登場人物には、カバーの役者たちを置いているということを、今さらのように認識させられた。
「トスカ」はプッチーニオペラの中でもかなり演劇的、と言われる。今回、新国立劇場の舞台では、第一幕の教会の場面での舞台転換がとてもお見事。豪華絢爛なる舞台には、最初から目を奪われた。私のようなオペラ初心者でも楽しめます。

ミュージカル『HEADS UP !』
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2015/11/13 (金) ~ 2015/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
劇場愛を共有できる
舞台の仕込みからバラシまで、普通の演劇では滅多に見られない裏方さんたちを主人公にしたミュージカル。「普段、僕たち(俳優)は裏方さんへのリスペクトが足りない」と言うラサール石井の渾身のステージ。
客席を巻き込んだ物語の展開、お客を楽しませようとするサービス精神。ラサールならではの展開だ。ノリが良くてギャグ満載。今回はさらに、ラサールが胸に持ち続けてきた「劇場への愛」が描かれる。
感動のラストシーンも。スタオベは当然の帰結だ。

ラスト・イン・ラプソディ
劇団俳優座
俳優座劇場(東京都)
2015/11/18 (水) ~ 2015/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
胸を打たれる人間模様
行き場のない患者を受け入れている診療所が舞台。入院できるベッドがあるので診療所というより病院か。実際にはあり得ない診療所であるが、患者たちの物語はリアルだ。
格差社会、そして貧困。どこの病院も受け入れないであろう人たちに、過去を持つ医師らスタッフが真正面から向き合う。患者たちはそれぞれ複座な事情を抱えているが、舞台は患者の今とこれからを中心に描かれる。
幅広い層を持つ俳優座の俳優たちだからこそ演じられる舞台。いかに死ぬかということは、どう生きるかということ。見る人の心に突きつけている、見事な舞台だ。

虹を渡る男たち
劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)
サンシャイン劇場(東京都)
2015/11/07 (土) ~ 2015/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★
今回も笑えます
三宅裕司率いるスーパーエキセントリックシアターは、10代から60代までの幅広いメンバーで、「こなせない役はない」(三宅)という円熟期だ。ミュージカルコメディの先頭を行く心意気なんだろう。
今回はタイムトラベルがテーマだが、笑いのツボは多彩だ。また、このまま音楽番組に出てもいけるんじゃないか、という振り付けでのアイドルソングも楽しめる。
期待を裏切らない!ステージだ。

オレアナ
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2015/11/06 (金) ~ 2015/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★
劇場帰りに白熱トークを
何とも後味の悪い舞台だった。舞台の出来が悪いわけではない。むしろ逆で、強烈な後味を残した田中哲司、志田未来の大熱演二人芝居に拍手だ。
訴訟社会のアメリカで書かれたから、と見切ることはできない。この戯曲は、セクハラ事件という以外にさまざまなことを提示している。見る人によって、きっと受け止めは千差万別であるに違いない。劇場帰りには、きっと白熱トークになる。このような舞台は、そうそうあるものではないのでは?

再びこの地を踏まず
文学座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2015/11/06 (金) ~ 2015/11/15 (日)公演終了
満足度★★★★
偉人の意外な素顔
野口英世と言えば、学校で教わる日本の偉人だ。大やけどの話、お母さんとの関わりなどで語られ、そういう側面でしか知らない人がほとんどではないか。
戯曲の前半は、とんでもない浪費家で大酒飲み、しかも女癖が悪いという意外な素顔で展開する。資料は踏まえていると思うが、マキノノゾミの創作も多少は入っているかな。米国留学資金を得るために資産家の娘と婚約して婚礼金をいただくというエピソードも。その後、米国人と結婚したということは、このお金(当時の金額で300円)は返したのだろうか?
だが、このトンデモ男には、人生の節目節目で支援者があった。これは野口の才能を見込んでというか、おそらく援助したいと思わせる人間的魅力があったのだろう。舞台ではそのあたりも含め、野口が相当な名声を得た後もなぜ危険を冒して、アフリカへ渡ってさらなる研究へと走ったのかが語られていく。
とても分かりやすい筋立て。盛り込まれているたくさんの笑い。楽しめる戯曲としてはとても完成度が高い。
野口が生まれ故郷の家の柱に刻みつけた文字である、タイトルの「再びこの地を踏まず」が舞台転換にうまく使われ、とてもかっこいい。

>(ダイナリィ)
カムカムミニキーナ
座・高円寺1(東京都)
2015/11/12 (木) ~ 2015/11/22 (日)公演終了
満足度★★★★
キテレツだが奥が深い
カムカム25周年記念として、莉奈らを客演に迎えて盛大なる舞台。何だか訳の分からない物語なのだが、政府が露骨な劇団つぶしに走る劇中劇なども盛り込まれていて、結構強烈。秘密保護法が施行されて、劇団関係者にイヤーな空気が流れているが、これが絵空事ではないかもしれないという警鐘も入っている。
プロレスリングのような舞台を客席が囲むスタイル。役者たちは3方のお客さんにいずれも真正面からの演技を見せるために、リングを駆け回る。小道具の使い方も、一方向のお客だけしか分からないなどということがないように工夫されている。さらに、舞台の下をあえて少し見切れるようなつくりにし、その周囲も役者を走り回らせて活用する。いわば「2階建て」の舞台は、蜷川幸雄の演出でも見たことがある。
それはともかく、有名俳優を輩出している元気のいい劇団だけあって、どの役者も切れがいい。ちょっと気を抜いていると、劇中劇の演出家から檄が飛ぶ。まあ、これも演技なのでしょうが。

からゆきさん
劇団青年座
紀伊國屋ホール(東京都)
2015/11/14 (土) ~ 2015/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★
次の世代に受け継ぎたい舞台
青年座が四半世紀ぶりに上演する。「からゆきさん」と聞いて意味が分かる人が減りつつある今、次の世代に受け継いでいかなければならない舞台。俳優たちもそのつもりでの力演だ。劇団としての強い意思を感じた。
かつて西田敏行、高畑淳子という看板俳優たちが演じた舞台。今回は、やはり売り出し中の俳優が登板した。特に、各劇団の女優たちによるユニット「オンナナ」を立ち上げて劇団外でも活動の幅を広げる安藤瞳に注目した。娼館の女主人として冒頭から登場。美しさだけではない、貫禄も漂う演技だった。
男が都合良く女を捨てる、というだけでなく、国家が在外で貢献していた国民をあっさり切り捨てるという二重の構図。国家が国民を見捨てるというのはなにも戦前、戦争中の話ではない。からゆきさんたちが語る舞台は、そういう意味で特に、心に留め置きたい。

現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2015/11/08 (日) ~ 2015/11/21 (土)公演終了
満足度★★★★★
マキノノゾミの舞台に酔った!
原作は三島由紀夫の近代能楽集で、卒塔婆小町と熊野から。マキノノゾミがこれを大胆にアレンジして、魅惑の舞台に仕上げた。
舞台はネットカフェだ。いきなり、ももクロの強烈なメロディーで幕開け。渋谷・道玄坂のネットカフェに居着いた連中が主役である。中でも、いきなり仙人のような風貌で現れた一路真輝には度肝を抜かれる。
時空を超える「能」の世界よろしく、一路真輝があでやかなドレスで登場するときは、二・二六事件前夜だ。シンプルな演出もさることながら、ネットカフェに巣くう人たちの生態をベースに、ほかの登場人物も同様に時空を超えていく。
三島が舞台を見たら何と言うだろうか。演劇の持つ創造性、観客の想像力を大いに刺激する秀逸な舞台だと言える。
見ないと損しますよ。