
狙撃兵
劇団俳優座
俳優座スタジオ(東京都)
2016/07/23 (土) ~ 2016/08/07 (日)公演終了
満足度★★★★
メタファーを撃ち抜く銃弾
カナダの劇作家ジョージ・ウォーカー作の原題「デッドメタファー」の日本初演。分かりやすい物語だが、隠喩(メタファー)の効いた味のある舞台だ。
デッドメタファー、すなわち死喩は、ある言葉が使われるうちに別の意味を持つようになって変質していくこと。除隊した元狙撃兵が、再び狙撃兵として雇われるとき、その銃弾は誰を狙い、何のために放たれるのか。簡潔な、分かりやすい舞台だけに、客席に放たれるメタファーに考え込むことになる。
俳優座の出演者たちはさすがの演じぶりだ。特に、狙撃兵の身重の妻を演じた野上綾花に拍手!

ゴンドララドンゴ
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2016/07/16 (土) ~ 2016/07/31 (日)公演終了
満足度★★★★
今回もズシリ、坂手ワールド
都会のビルで窓拭きに活躍するゴンドラをモチーフに、坂手洋二さんらしい硬派な社会派ネタを散りばめながら急テンポで展開する。今回は客席との心理戦のような舞台で、目が離せない。だから、結構ずっしりくる。覚悟して乗り込まないと、ずしっと疲れるかも。
でも、これが、練り上げられた坂手ワールドだ。だから、期待通りの舞台だった。ゴンドラという着想が見事だ。坂手劇を演じきった俳優陣に拍手。

改訂の巻「秘密の花園」
劇団唐組
駿府城公園 富士見広場(静岡県)
2016/06/18 (土) ~ 2016/06/19 (日)公演終了
満足度★★★★
昭和の匂い、徳川の公園で
唐組の名作「秘密の花園」は、静岡ならではの雰囲気で行われた。徳川家の駿府城という土地の空気、昭和の匂いが濃厚な舞台、平成生まれと思われる若い多くのお客様。42年ぶりという静岡公演は、時空を超えたかのような雰囲気の中、盛大な拍手が鳴りやまなかった。
高校の夏服を着た女の子たちからは、物語が分かんないけど、という笑いも出ていたが、そんなことは関係なさそうだ。昭和のギャグ、音楽、男と女の微妙なトーク。これらを水を浴びるように味わいながら、テントの中は世代を超えた熱量が盛り上がり、一人一人が舞台に向き合うという演劇の原点が鮮明になっていく。
唐組の舞台、次はいつ見られるのか。拍手の大きさには、そんな思いも込められている。

農業少女
劇団静火
七間町このみる劇場(静岡県)
2016/06/03 (金) ~ 2016/06/04 (土)公演終了
満足度★★★★
モモコの熱演に釘付け
15年ほど前、野田秀樹が書いた濃密な戯曲。静岡・七間町という濃密な街で、地元劇団静火が好演した。
松尾スズキが演出して、多部未華子が主役のモモコを演じたという記録がある。農業が大嫌いと九州を飛び出して東京行きの寝台特急に乗ったモモコは、ロリコン男に住まわせてもらいながらいかがわしい商売やボランティアなどさまざまなところに首を突っ込み、ウンコがウンコの臭いを消すという『農業少女』という銘柄の米を不登校の少女たちに作らせて儲ける、という策略に巻き込まれる。
野田MAPらしい、テンポよく意外な展開が続く戯曲だ。列車の音、携帯の着信音などSEまで自分たちでこなす静火の役者たちの、汗とつばの飛び散る熱演に心地よく巻き込まれる。特に、モモコの熱演に釘付けだ。千秋楽のモモコを演じたのは海野とも代。その小さな体からは想像がつかないような熱量が発せられていた。
静火はこれまで、シェークスピアなどに取り組んできた小劇団だったという。今年は野田作品をやると決めて、「農業少女」はその実験公演という位置付け。秋にやるのは野田MAPの第一回公演の演目「キル」。千秋楽のあいさつでは、この秋公演での出演者を客席から募集した。
東京・下北沢などの小劇場では、客席と舞台の距離が近いのが味なのだが、静火を率いる演出家の渡辺亮史氏は、この静岡・七間町を「下北沢にしたい」と意気込む。千秋楽で次回公演の出演を募るという劇団は、本家の下北沢以上にシモキタちっくである。七間町が静岡の演劇好きたちによってどんな化学反応を起こすか。これは見逃せない。

セールスマンの死
文学座
あうるすぽっと(東京都)
2013/02/22 (金) ~ 2013/03/05 (火)公演終了
満足度★★★★
悲しいがまっすぐな親子
時代に取り残された男のかたくななまでな生き方、そのようにしか生きられなかったピュアな男と家族の姿が胸を打つ。東京で見られなかった文学座の名舞台を、静岡の地方公演で拝見した。
どちらかというとアトリエ公演向きの舞台なのかもしれないが、今日のステージは2階席もいれれば1000人は入る大舞台だった。そんな広い空間でも後ろの方まで客席の目を引きつけ続ける演技はさすがだ。
仕事一筋に生き、リタイア後はローンの終わった家で菜園をして、結婚して家族を持った息子たちの訪問を楽しみに生きる。日本でも、現代でもありそうな普通の夢。しかも、自分の意見を曲げず、息子たちの意見を聴こうとしないいわゆる頑固おやじ。アーサーミラーの作品だが、かなり日本的というか、日本人の俳優たちが演じて味を出せる舞台だとも言える。
ラストシーン、高齢の女性客がハンカチを握りしめる姿が目立った。まっすぐな親子をまっすぐに演じた俳優たちに、拍手を送りたい。

パーマ屋スミレ
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2016/05/17 (火) ~ 2016/06/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
前向きに泣ける舞台
1960年代の九州、炭鉱町を舞台にした感動作。鄭義信の在日韓国人三部作の一つで、新国立劇場が一挙上演。三部作の中でもかなり悲劇的な物語だが、その涙はなぜか前向きな香りがして、心の底から見て良かったと思える。
東京五輪があり、高度成長の最中の日本で、石炭から石油へ世の中のエネルギーが変わる時代。その波に翻弄され、会社にも国家にも見捨てらた家族の人生。あの頃の出来事を歴史にしてしまうのはまだ早い。豊かになったはずの現代日本でも、会社や国家に捨てられて苦しんでいる家族への想像力が問われる。
この舞台は歴史を振り返っているわけではなく、私たちが気づかないでいる現実への扉となっている。
掛け値なしに見る価値のある舞台だ。俳優たちの実力が、それを支えている。

ブンナよ、木からおりてこい
劇団青年座
旧さいたま市民会館おおみや(埼玉県)
2016/05/21 (土) ~ 2016/05/21 (土)公演終了
満足度★★★★
ブンナが愛される理由
青年座が千回を超えてロングランを全国で続ける、劇団の歴史とも言える戯曲。水上勉原作を、時の演出家がアレンジして常に新たな舞台を築き上げてきた。いま、新国立劇場演劇芸術監督を務める宮田慶子も若いころから関わってきた。ずっと見たいと思っていた舞台を、ようやく大宮でつかまえることができた。
カエルたち小動物を主人公に、生きるとは何かを分かりやすく演じていく。客席からは「青大将は毎回、イケメン俳優がやるのよね」という声も。ずっと楽しみにしているファンがついている舞台の一つなのである。
他者の命をいただいて自分の命をつなぐ場面では、シャボン玉による美しい演出があった。見て良かったと思える舞台だ。

トンマッコルへようこそ
ナッポス・ユナイテッド
Zeppブルーシアター六本木(東京都)
2016/05/04 (水) ~ 2016/05/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
桟敷童子が舞台を絶妙な色合いに
韓国で大ヒットした名作。東憲司だからこそ、という演出に加え、劇団桟敷童のおなじみのメンバーが、悲しい物語にさわやかな風を加えてみせた。劇団の本領発揮というところだろう。
国を守るためには武器を持って戦え、と言われる。武力にはそれ以上の武力が必要なのだ。では、武器を持たない人々は、本当に無力なのか?
この舞台は、武器を持っていた軍人たちによって救われた山奥の村の話だが、本当の強さとは何だろうと考えさせられる。
舞台は朝鮮戦争当時の半島だが、今はとてもリアリティを持ってのめり込める。

三代目、りちゃあど
SPAC・静岡県舞台芸術センター
静岡芸術劇場(静岡県)
2016/04/29 (金) ~ 2016/05/01 (日)公演終了
満足度★★★★
国際色豊かな野田演劇
1990年に野田秀樹が初演しているが、全く古さを感じない。シンガポールのオン・ケンセンの演出手腕が光る。
郷ひろみとか70年台のJ-POPの多用には違和感もあったが、光と影、影絵をうまく使っての演出は見事だ。野田の戯曲は面白い。それにどう味付けするなのだが、十分に成功している。英語と日本語の字幕が出るのもいい。国際色豊かな野田の戯曲を感じられる。ふじのくにせかい演劇祭の、間違いなく目玉作品。

二人だけの芝居―クレアとフェリース―
劇団民藝
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2016/04/04 (月) ~ 2016/04/21 (木)公演終了
満足度★★★★
奈良岡朋子の迫力がすごい
難解な劇である。パンフレットによると、それは訳・演出の丹野郁弓も認めているし、この二人芝居の出演者も同じだという。しかし、現実と空想、過去と現在、さらに芝居の練習と現実生活をシームレスに行きつ戻りつするこの会話劇を、奈良岡朋子と岡本健一が見事に演じきっている。
元ジャニーズの岡本健一は既に円熟というか、ベテラン舞台俳優の域に達している。そのベテランが「超ベテラン」の奈良岡朋子に堂々たる絡みを見せてくれるのだ。その岡本の迫力、言葉の強さ、声の通り具合にさらに負けない奈良岡の舞台は見事と言うよりない。40歳の年の差、86歳の迫力に客席は圧倒されている。だが、ある意味で、この奈良岡の迫力を引き出しているのは、岡本のすごさなのだろうと思う。
難解な会話劇で眠くなるかもしれない。だが、その節々で舞台に釘付けになる、その迫力を堪能したい。

ディズニーミュージカル「リトルマーメイド」東京公演
劇団四季
四季劇場[夏](東京都)
2013/04/07 (日) ~ 2017/04/09 (日)公演終了
満足度★★★★
素直に楽しめる
ディズニーの有名作品でロングランだから、家族連れやカップルが客席に多い。子どもの視線を釘付けにして、しかも飽きさせない工夫が凝らされている。愛と勇気の物語、思わず口ずさむ楽曲。そして、海の中と宮廷などを瞬時に変えてしまう演出。ヒットの要件はそろっている。
アリエルを演じた小林由希子はよかった。空中、いや水中での動きにちょっと苦しさがあったようにも見えたが、歌唱は安定感がある。カニのセバスチャンの荒川務もよかった。

毛皮のマリー
パルコ・プロデュース
新国立劇場 中劇場(東京都)
2016/04/02 (土) ~ 2016/04/17 (日)公演終了
満足度★★★★
やはり、美輪明宏でないと
寺山修司の名作で、あちこちで上演されてきた。だが、この戯曲は天井桟敷のときに寺山が美輪明宏に当て書きしたとされる。昨年末に花組芝居で上演されたのも見たが、今回の舞台を見ると、やはり美輪でないと思わせる。
モーニング娘。の曲を使ったりしていたが、それ以外はやはり、昭和のムードあふれる演出だ。それは、きっと成功の鍵だと思うのだが、オーディションで選んだという美少年役、勧修寺保都がどうしても浮いてしまう。時代の流れを埋めるのは難しいかも。特に、お客さんの層が幅広い今回の舞台では。
幅広い、と言ったのは、若い女性から年配の男女までという客層で、新国立中劇場は多彩な年代層で埋まった。笑うポイントがずれているというか、お客さんの年齢によって笑いが出る場面が違う。見ていて、それが結構な違和感がある。つまり、隣に座っている年配のおじさんがガハハと笑うのが、結構迷惑だったりする。
そういう意味でも特別な体験ができる貴重な戯曲だ。

イニシュマン島のビリー
ホリプロ
世田谷パブリックシアター(東京都)
2016/03/25 (金) ~ 2016/04/10 (日)公演終了
満足度★★★★
鈴木杏演じる暴力女の示すもの
生卵を頭でかち割るんである。かわいい顔した暴力女・ヘレンを鈴木杏、その弟を柄本時生が演じる。とにかく口は悪いし、すぐ殴る。気に入らないと売り物の生卵の相手に投げつける。その主な被害者は弟だ。
劇中、姉が「イングランド対アイルランド」というゲームを持ち掛ける。姉がイングランドの立場になってアイルランドの弟を殴る、蹴るという遊びだ。「これこそがアイルランドの歴史だ」と姉は言うが、相手を威嚇し、暴力で制圧する女から、この国の悲しい生い立ちを学ぶことができる。
さて、主役のビリーを演じた古川雄輝はなかなかの力演だ。「びっこ」に加え、結核に罹患。幼なじみのヘレンにも殴られたり蹴られたりするから、まさに体を張っての舞台だ。主役だけでなく、上記の姉弟、そして、江波杏子演じるアル中の老女など、脇を固めるメンバーも熱がこもった立ち回りを見せてくれる。

「安全区/Nanjing」ご来場ありがとうございました。
メメントC
Geki地下Liberty(東京都)
2016/03/17 (木) ~ 2016/03/21 (月)公演終了
満足度★★★★★
今回も魅せた会話劇
旧日本軍の南京侵攻で、南京市街に設けられた「安全区」。ここを舞台に物語は展開する。
主役は日本や英国に留学経験もある中国人経済学者。日本軍の侵攻後、国民党幹部の兄から諜報活動を頼まれ、南京臨時政府にやってきた特務機関の中尉の下僕となって自宅を守ろうとする。そこに戦地を渡り歩いてきた従軍僧が訪れる。作・演出の嶽本あゆ美の手腕は、今回もこの3人の会話劇で遺憾なく発揮されている。
見どころは、この怪しげな従軍僧だ。中尉は日本軍が民間人も暴行、殺戮するなど暴虐の限りを尽くしたという欧米によるリポートへの反証をする任務を帯びていて、従軍僧に南京などの戦いの現場を聞く。だが、この従軍僧は「殺される前に殺す」「戦場になった場所にはそもそも慰安所などない。民間の女性を相手にするのは当然だ」などと、暴虐はさも当たり前だというようにうそぶく。そんな彼の傲慢とも言える言動が、何だかまっとうな話に聞こえてくるが、それが嶽本の描く戦争の狂気だと思い知らされるわけだ。
日本軍は捕虜を取らない、という指令を出していた。日本軍に大量の捕虜を国際法に則って処遇できる能力などないからだが、捕虜を取らないというなら現場は、自分たちをいつ襲うかしれない敵国住民を殺すしかない。今回の戯曲では真正面から触れてはいないが、それが南京大虐殺につながったということは容易に想像できる。
前作の「太平洋食堂」「プロキュストの寝台」でも魅せたが、今回も戦争の狂気という大テーマに、戯曲の力でもある舞台での会話の応酬で、約二時間の上演に釘付けになる。
熊本の皆さん、ぜひ見てくださいね。

いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK『乱鶯 みだれうぐいす』
劇団☆新感線
新橋演舞場(東京都)
2016/03/05 (土) ~ 2016/04/01 (金)公演終了
満足度★★★★
古田さん、お疲れさま
50歳の古田新太の舞台だ。全編で登場し、冒頭とラストの殺陣までこなす。相当なハードさだと思う。同年代としては、敬服に値します。
劇団☆新感線初の本格的な時代劇という触れ込み。倉持裕の書き下ろしということで期待度も高い。劇団のテイスト維持したまま、笑いのツボも押さえ、楽しめる内容だ。特に、話が急展開する第二幕がいい。
古田新太あっての舞台だが、脇を支える人たちもなかなかの存在感。その中でも、江戸っ子の町人で居酒屋の女将役、稲森いずみが光っていた。この人は、しっかりした姉御肌だが繊細な面も持つという役はうまい。

家庭内失踪
森崎事務所M&Oplays
本多劇場(東京都)
2016/03/11 (金) ~ 2016/03/23 (水)公演終了
満足度★★★
豪華メンバーなのだが
風間杜夫、小泉今日子、小野ゆり子。出演者は豪華なのに、いまひとつピリッとしない。なぜだろう。それぞれの複雑な胸の内を出し切れてないのか、脚本に難があるのか。
ベテランの風間杜夫が要所で締めてはいるものの、ちょっと違うかな、という微妙な違和感は解消されないまま、最後まで来てしまった。もっと何かあるはず、という期待感は、カーテンコールが終わっても消えなかった。
キョンキョンの色っぽさがうれしい。

おれたちは天使じゃない
無名塾
ももちパレス(福岡県)
2016/02/10 (水) ~ 2016/02/18 (木)公演終了
満足度★★★★
明るく笑える囚人物語
無名塾も40年。仲代達矢は83歳だ。世代交代が大きな課題だと思われがちだが、やはり無名塾は仲代による演劇道場だ。世代交代というより、若手俳優がいかに仲代から学ぶかという舞台であり続けるのかもしれない。
今回は、明るく笑える楽しいコメディだ。3人の囚人役では、役柄の差もあるけどやはり仲代が一番おもしろい。さすが師匠、なんである。
もちろん、脇を固める無名塾のメンバーも高水準だ。安心してみていられると言っていい。
そんな楽しいコメディに仕上げたのは、またも民藝から仲代に呼ばれた丹野郁弓の本領発揮だ。丹野ならではの演出に、仲代らがきっちりハーモニーした。
人が死ぬ場面もあるのに、明るい囚人物語。東京公演は今日が千秋楽だけど、地方の皆さん、これはオススメです。

ルンタ(風の馬) 〜いい風よ吹け〜
劇団態変
座・高円寺1(東京都)
2016/03/11 (金) ~ 2016/03/13 (日)公演終了
満足度★★★★
そのまま受け止めた
東京公演は久しぶりとのことで、私は劇団態変は初体験。観るというより、体験する舞台だ。
自分はそうなのだが、周囲に障害者がいる人でないと特に、彼らがどう体を使って動くのか見たことがない。いや、想像だが、障害者が家族にいる人でも、このパフォーマンスは新鮮に映ったのではないだろうか。
本来、舞台芸術から感じるものは、一人一人違うはずだ。そんな観劇の原点みたいなものを思う。

ライ王のテラス
ホリプロ
赤坂ACTシアター(東京都)
2016/03/04 (金) ~ 2016/03/17 (木)公演終了
満足度★★★★
色あせない三島由紀夫
宮本亜門が熱望して実現したという舞台。初演時にできなかったのは、カンボジアの演者たちとの共演だろう。オープニングはそこから始まるのだが、やはり三島由紀夫が描いた世界観は、当地の人たちの姿があってこそ鮮明になるのだと思う。
主役の鈴木亮平が見事だった。鍛えられた肉体はいかにも三島のイメージ通りではないか。対照的な二人の王妃を演じた倉科カナと中村中にも注目だ。
舞台が成功しているのは、やはり宮本亜門の演出が最大の要因。影絵をうまく使った王妃の心理戦は印象的だった。

月の平均台
タテヨコ企画
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2016/03/09 (水) ~ 2016/03/13 (日)公演終了
満足度★★★★
シュールなひととき
スペース雑遊にウッドチップを敷き詰め、深い森を演出。そこに迷いこんだ、妻を捜す男の一行が森の住人たちに翻弄される。結構、シュールな展開に不思議と引き込まれていく。
夢の世界のようで、現実感がある。そんな微妙なリアリティーがいい。
妻を捜しに来た男を演じた西山竜一の演技が良かった。理不尽さに振り回されながらも前に進む男の小さな勇気を、目線で感じた。