byassistが投票した舞台芸術アワード!

2019年度 1-10位と総評
Solace-慰め-

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Solace-慰め-

さくリさく企画

20日19:45開演の、A面『水曜、19時、スターバックス』(70分)を拝見。
かってはNHKの手話番組で司会まで勤めていた宮嶋清香(演・加藤なぎささん)。だが、とある事情から、今では手話の個人レッスンで細々と生計を立てていた。
今日も一流企業勤務の丸山綾太(岸田大地さん)相手にレッスンを開始しようとしたその時、いきなり春日優里子(斉藤麻衣子さん)が首を突っ込んできた。実は彼女、聴覚障がいに生まれた子供に手話を教えようと…。

殿様ランチの公演でお馴染みの斉藤麻衣子さん
『瞑目のパノラマ』以来の岸田大地さん
何度も舞台を拝見している加藤なぎささん
の3人による70分の会話&手話劇。
三人三様の登場人物たちが、ときには衝突しながらも、互いに影響し合い、前に進んでいく様子を描いた本作。とりわけヒロインのかたくなだった心が打ち解けていくさまには胸打たれた。

なお、終盤にかかる直前、加藤なぎささんが魅せてくれた手話による「独唱」、私にはフィギュアスケートの演技を目の前で披露されているように感じた。まさに圧巻!…このシーンを目撃しただけでもAPOCシアターに来た甲斐があったというものだ。

殊類と成る

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殊類と成る

劇団肋骨蜜柑同好会

5日19時開演回(125分)を拝見。

随所に頭のフル回転を求められてるようなセリフ解釈の難解さ。だが、かといって、凡人の観客を拒絶する訳では決してなく、(本当に理解したかどうかはともかくとして)観客にとって、実は案外、とっつき易いテーマであり・作品であったのではないか。
私のささやかな観劇経験の中ではあるが、これまで「類似品」に出くわしたことが一度もないフジタタイセイさん独特の作風に、今回もまた引き込まれた125分だった。
過剰なまでの自己評価に支えられた、しかしひ弱で傷つきやすくもある自尊心を御し切れず、他人に信を置かぬ故に知人や同僚、家族からも遠ざかり、次第に自身を追いつめていった主人公の、心身の崩壊から再生までのストーリー。
元ネタ『山月記』の李徴(りちょう)は結局、自ら招いた運命から逃れられなかったのに比べ、本作の主人公ナカヤマ・サンゾウは桜の花びらが舞い散る中、これまで出逢って来た人々に支えられて「生還」する…この結末故に、観客の誰もが救われた気分で帰路についたであろう。まぁ、突き放したままで終わらせなかったのが、フジタタイセイさんの優しさ、なんだろうな。

【配役】
サンゾウ(メンタルを病んだまま、大学卒業後も引きこもりを続けている主人公)
…室田渓人さん(ご自身の体験が人物造形に反映しているんだろうな、と少しヒヤヒヤしながら観ていた)
ナカヤマ(ここ最近は持病の喘息の発作も起きず、高校?の生物教師として、生活している主人公)
…藤本悠希さん(舞台の進行につれて、「山月記」の李徴とイメージが重なってきた)
主人公の父親・タビト
…岩井正宣さん(The「昭和の父親像」だなぁと郷愁と共感を抱きながら拝見)
主人公の義母・カツヨ
…丸本陽子さん(義理の子・実子分け隔てなく愛情を注いできた、愛情と心労の半生が透けてみえた)
主人公の妹(カツヨの実子)・スミコ
…星秀美さん(兄のサンゾウ相手に、感情の昂まりを抑えたり・抑え切れなくなったりしながら、心の内をぶつけるシーンには、こちらにも気持ちがガンガン伝わって来た!)
主人公の叔父・マサシ
…日下部そうさん(前出演作での「信心深い生真面目なトンマーゾ」とのイメージの落差が凄い)
ナカヤマの妻・タカコ(ナカヤマは何故か、既婚者であることを勤務先の学校に教えていない)
…嶋谷佳恵さん(しえさんの演技の真骨頂は、それまで耐えて・耐えてきた怒りを爆発させるところかなぁと再認識)
フカダ(サンゾウの大学での先輩。現・出版社勤務)
…塩原俊之さん
クギモト(サンゾウの大学での友人。現・文科省所属)
…森かなみさん
シズカ(ナカヤマが勤務する学校の生徒。ナカヤマに想いを寄せている)
…林揚羽さん(過去作で抱いていたイメージが良い意味で崩された)
ワタナベ(学校の音楽教師。ナカヤマのことが気になっている)
…赤星雨さん
ヨシカワ(学校の国語教師。ナカヤマを自分と同種の人間だと思っている)
…石川琢康さん
医者(主人公の主治医)
…やまおきあやさん
ナース/タカコのバイト仲間のパン子
…杏奈さん(トリックスター?な役割を好演)
乞食(劇中の節目節目に登場。このままだと主人公が陥るであろう将来を、その零落した身なりで暗示?警告?する存在←主人公に内在する自己防衛本能の具象化?)
…安東信助さん(あちこちの舞台で引っ張りだこな理由がよくわかりました)
劇作家/その他
…フジタタイセイさん(ラストシーンの「花咲か爺」で、ぜぇ~んぶ持って行ってしまったw)

第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

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第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

DULL-COLORED POP

DULL-COLORED POP 福島3部作の第1部『1961年:夜に昇る太陽』(2時間)
28日の福島三部作通し上演で拝見。

さすがにジャストでないものの、ほぼ同世代の人間なためか、三部作のうち、本作に一番親近感を覚えた。
高度経済成長・所得倍増計画への明るい希望
(全国で公害問題が露呈する前の)『鉄腕アトム』に象徴される科学への万能信仰
かといって、戦争の惨禍の記憶は未だ生々しく…
誰もが先の大戦を忘れ去ろうと・貧困から抜け出そうと、がむしゃらに上を向いていた、当時の空気感が実によく再現されていた2時間。
ただし、後年の3.11の悲劇を知る者として、ラストシーンには薄っすらと涙が浮かんだ。

【追記】
挿入歌共々、本作の牧歌的雰囲気を構成した、マペット操作で演じられた子供たち、やっぱり『ひょっこりひょうたん島』のオマージュかぁ…と世代がバレる感慨に耽っていますw

【配役】
穂積孝(東大の理系の学生22歳。本編の主人公)
…内田倭史(うちだ・まさふみ)さん
穂積忠(孝の弟19歳。町の青年団の青年部長。後の双葉町町長~第二部の主人公)
…宮地洸成(みやち・ひろなり)さん
穂積真(孝の3歳の末の弟。第三部の主人公。第一部では『ひょっこりひょうたん島』風のマペットで演じられる)
…井上裕朗(いのうえひろお)さん
穂積豊(孝たちの母45歳。夫・一(はじめ)は常磐炭鉱に出稼ぎ中で不在)
…百花亜希(ももか・あき)さん
穂積正(孝たちの祖父。田舎にいがちな、家長意識の残る、昔ながらの農家の主)
…塚越健一(つかごし・けんいち)さん
美弥(孝を慕っている双葉町在住の19歳。太田裕美『木綿のハンカチーフ』のイメージ)
…倉橋愛実(くらはし・まなみ)さん
佐伯(大学の先生風…実は東電の原子力開発部長兼主任研究員。広島の惨禍を経験、原子力の平和利用に心血を注ぐも…)
…阿岐之将一(あきの・まさかず)さん(『みのほど』の青年紳士役以来の方) 
三上(東電の原子力開発部の職員)
…大内彩加(おおうち・さいか)さん(第一部終演後、客席を出たら、もう売り場に!…あまりの驚きに台本を第一部だけのつもりが、まだ観ていなかった第二部・第三部まで購入!)
田中(双葉町の町長。田中建設社長)
…大原研二さん
酒井(内密で原発施設の立地調査をしている福島県庁の職員)
…東谷英人(あずまや・えいと)さん

伯爵のおるすばん

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伯爵のおるすばん

Mrs.fictions

23日ソワレを拝見(途中休憩10分間込み2時間50分)。
登場人物の名前を眺めていると、何故かおやつの時間が恋しくなる本作品、最後の大団円を含めた5つのエピソードの各々につき、観客がどんな結末を期待しているかを充分踏まえた、巧みなストーリーテラーぶりを堪能させてもらった。
おかげで、途中休憩込みの上演時間2時間50分の長尺も正真正銘「アッという間に」だった。
でっ、「どんな人間であれ、無駄な人生を送ることは決してない」…ちょっと大げさかもしれないが、そんな人間賛歌の作品として、本作を理解させてもらった。

【1.18世紀初頭・フランス~ブルボン夫人】
勿論、木本夕貴さんの丁寧な・丁寧な演技が第一だが、前田友里子さん・星秀美さんのコメディーリリーフぶりもなかなかのもので、気がつけば、すっかり脳裏に焼き付いてしまった。

【2.1995年・日本~佐久間ひよ子】
フライヤーのモデルでもある相原佳花(あいはら・かはな)さんに尽きるかなぁ。
恐らく、観客の大半が予想した通りの結末にも関わらず、相原さんが演じる「ひよ子」だからこそ、説得力があったのだろう。
あと、カクダイ(体育教師…実は、ひよ子の兄)役・海老根理さん熱演!

【3.2119年・日本~テキ屋のよっちゃん】
前半のエピソード2本が直球勝負とすれば、邦画『アウトレイジ』みたいな世界観のエピソード3と、往年のTV番組『宇宙家族ロビンソン』を想起させるエピソード4は、目先を変えた変化球の趣きか。
でっ、ここからはあくまでも個人的嗜好だが、前半のエピソードを受けとめての話の続きとしては、正直、弱いなぁというのが率直な感想。

【4.3315年・地球~宇宙家族UHA】
小劇場の舞台で目撃した「戦隊モノのヒロイン」としては、森田涼花さん以来となる金城茉奈(きんじょう・まな)さん、スラッとした肢体が舞台映えする。
あと、60年代のアメリカ映画によく登場する銀色のゴミバケツ然とした、ロボットのパパ(声・野口オリジナルさん)は出色。

【5.56億7千万年後・地球以外の惑星~コリス夫人】
トリッキーなテイストのエピソード4から、出演者全員が正装しての大団円に持っていくためのムードチェンジ役として、渡邉とかげさんの落ち着いたオトナの佇まいはまさに適役。

最後に配役を記しておく。

伯爵(モデルであるサンジェルマン伯爵が一種の「化け物」ならば、本作品の伯爵はまさに「血が通う生身の人間」!)
…岡野康弘さん

【1.ブルボン夫人】
ブルボン夫人(無知だった伯爵に学問を授けた)…木本夕貴さん
モロゾフ夫人(ブルボン夫人からは煙たがられているサロンでの知人)…前田友里子さん
ロイズ夫人(ブルボン夫人からは煙たがられているサロンでの知人)…星秀美さん
右足(ブルボン夫人の使用人奴隷。才覚がある)…石井卓真さん
左足(ブルボン夫人の使用人奴隷。皮肉屋)…榊原美鳳さん
リスカ(メイド。伯爵に告白するが振られる)…永田佑衣さん
ユーハイム(奴隷商人。目端が利く)…市原文太郎さん

【2.佐久間ひよ子】
ひよ子(病弱な女子高生)…相原佳花(あいはら・かはな)さん
赤城(ドッチボール好きな高校生)…手塚優志郎さん
不二(湖池の恋を応援する親友)…関彩葉(せき・さやは)さん
湖池(伯爵に告白するも振られる。後にCAへ)…宮内萌々花さん
カバヤ(モテないクンだったのが、いつの間にか不二と…)…東野良平さん
カクダイ(体育教師…実は、ひよ子の兄)…海老根理(えびね・おさむ)さん

【3.テキ屋のよっちゃん】
よっちゃん(この時代における、伯爵の「カノジョ」)…大宮二郎さん
江崎(伯爵の組?の若頭?)…伊神忠聡(いがみ・ただあき)さん
でん六(伯爵の組?の組員)…野澤太郎さん(ヤクザ役でよく拝見した方)
ハリ坊(伯爵の組?に入ったばかりの新入り)…齋藤智哉さん

【4.宇宙家族UHA】
UHA(明朗快活な娘)…金城茉奈(きんじょう・まな)さん
ママ(疑似家族における母親役)…浅利ねこさん
パパ(疑似家族における父親役のロボット)…声・野口オリジナル
たらみ(疑似家族における姉)…佑木つぐみさん
ヨックモック(疑似家族におけるペット!)…今村圭佑さん

【5.コリス夫人】
コリス夫人…渡邉とかげさん

病室

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病室

劇団普通

26日19時半回(2時間)を拝見。
地方の病院で入院生活を送る4人の中高年男性とその家族、医療関係者を描いた群像劇。劇団普通にしては珍しく!取っつき易い作品。

全編茨城弁のセリフ、よそ者(私は福岡出身)にはトボけた味わいに聞こえ、日常感をいや増す効果を強く感じた。

また、家族を見舞う側も・見舞われる側も共に体験した身から観ても、患者や田舎の親族の言動の端々に、あるある!と頷くばかり。相部屋病室で長い一日を過ごす入院患者、その家族の心理を大変よく観察されておられるなぁ、と。
それにしても、こうした日常スケッチ中心で約2時間、観客に飽きさせず、更には、各々に「思い」を抱かせて帰路につかせただろう、作者の力量には敬服せざるを得ない。決して大向こう受けする訳ではないが、今年の私的ベスト10には数えられるだろう「逸品」だった。

なお、先に触れた通り
癌で入院した亡父のために毎週末、飛行機で東京から実家に戻っていた頃
数年前、私自身が1年の大半を病院暮らししていた頃
の記憶が上演中度々オーバラップされ、冷静に芝居を観るのがちょっと難しかったことを付記しておく。

演じ手に関しては
見舞い家族への素っ気ない対応も・スネるところも・実は寂しがり屋なところも、私の亡父そのものに映った、片岡役・澤唯(さわ・ゆい)さん
久しぶりに東京から帰省した娘に、これ幸いにと?! 延々と(娘は何の関心も無いだろう)地元の出来事を喋り続ける、片岡の妻役・松本みゆきさん
のお二方が特に印象に残った。

【配役】
入院患者・片岡(健常時は亭主関白。妻は従うのみ。娘は帰省して見舞い。息子とはうまくいっておらず、週末も見舞いに来ていない?)
…澤唯(さわ・ゆい)さん(『今度は背中が腫れている』以来の役者さん)
入院患者・佐竹(話好きで情は深い。妻が見舞いに来る。どうやら先は短いらしい)
…用松亮(もちまつ・りょう)さん(『シンクロ・ゴッサム・シティ』ぶりの役者さん)
入院患者・小林(今は仏のような穏やかな性格だが、健常時は暴君。妻子は見舞いに来ず?)
…渡辺裕也さん(『これは中型の犬ですか?』ぶりの役者さん)
入院患者・橋本(見舞いに来る娘は離婚の意思を…)/片岡を診る医師
…折原アキラさん
片岡広也(息子)/遠藤タケル(片岡を担当する理学療法士)
…函波窓(かんなみ・まど)さん(先月、同じスタジオ空洞での『ヘブンズサイン』で観たばかりの役者さん)
片岡あみ(娘。東京から見舞いのため帰省)/小林の娘(家族に高圧的な父親を非難)
…古田希美恵さん(『城』よりも『ツヤマジケン』での印象の方が強いかなぁ)
片岡の妻(夫に従うばかりの昔風の妻)
…松本みゆきさん(『これは中型の犬ですか?』『カーテン』よりも『城』での印象の方が強い女優さん。「海外戯曲を読む会」主催者)
橋本の娘(離婚覚悟で子供を連れて実家に戻ってきている)/小林担当の看護師(遠藤の恋人)
…小林未歩さん(お初の女優さん)
佐竹の妻/佐竹の担当看護師(妻や担当看護師の佐竹への接し方を見ると、一見ぶっきらぼうな彼が実は魅力ある人物だということが察せられる)
…石黒麻衣さん(白衣がホンモノの看護師みたいに似合う劇団主宰)

わが家の最終的解決(再演)

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わが家の最終的解決(再演)

Aga-risk Entertainment

26日ソワレ(上演時間150分+途中休憩10分)を拝見。
途中休憩10分ありとはいえ、上演時間150分の長丁場。普段のアガリスク作品のような笑いの連打だと、さすがに観客が酸欠死しかねないんで、今回は緩急に富んだ進行のワン・シチュエーションコメディ&ドラマの趣き。
その「ドラマ」だが、ナチスドイツに占領された国家の中で、ユダヤ人狩りが最も苛烈だったオランダを舞台にした作品は、(作者が意図されたかどうかは不明だが)笑いのオブラードで包んではいるが、今日的な人種差別の問題をやんわりと私たちに突きつけているように思われた。
それにしても、この題材を笑いに繋げる発想って、一体何処から生まれてくるのだろう? 凡人には窺い知れぬ境地に作者の冨坂友さんはおられるのだろうな、と。

【追記】
私のうがち過ぎかもしれないが、ハンスとエヴァが最後に結ばれてハッピーエンド!とはならなかったのは、個人の愛情だけでは解決し得ない、迫害する側・される側の不幸な歴史の溝の深さに、作者が言及したかったのかなぁ?

役者陣。

ド素人が言うのもおこがましいが、共演者からのどんな剛速球・クセ球も見事にキャッチして間髪入れず投げ返す、ハンス役の主演・斉藤コータさん。平成最後のコメディー界の名捕手かもしれないなぁと感心しきり。
熊谷有芳さんのエヴァ、榎並夕起さんのリーゼには、(あくまでも自分が観てきた限りにおいてだが)今までお二人が演じて来られた役柄にはなかった(失礼ッ!)フェミニンさが伝わってきた。それから、身にまとった、青いドレス(熊谷有芳さん)・鮮やかな紅いドレス(榎並夕起さん)の対比が、彼女達が演じた2人の若い女性の、それまでの半生を象徴しているようにも感じられた。

最後に配役を記しておく。
ハンス(ゲシュタポの一員であることを隠して、エヴァと恋人関係に)
…斉藤コータさん
エヴァ(ハンスに匿われているユダヤ人。自身の出自に誇りを持っている。文才あり)
…熊谷有芳(くまがい・ゆか)さん
アルフレッド(ハンスの親代わりともいえる使用人。本作のコメディリリーフ)
…矢吹ジャンプさん(影のMVP!)
オットー(エヴァの父親。一見厳格そうだが間の抜けたところもあり)…藤田慶輔さん
レア(エヴァの母親。穏やかな性格)…前田綾香さん
ヨーゼフ(エヴァの元恋人。どうしようもなく情けない性格)…津和野諒さん
マルガレーテ(ハンスの姉)…鹿島ゆきこさん
フリッツ(マルガレーテの夫。何事にも細かい能吏だが、妻には逆らえず)
…伊藤圭太さん
ルドルフ(ハンスの学友で、ゲシュタポでの同僚。ハンスのことを愛してる?)
…高木健さん
リーゼ(ハンスのゲシュタポでの上司の一人娘。ハンスを慕っている)…榎並夕起さん
ゲルトナー(リーゼの父。冷酷なゲシュタポだが娘には弱い)…中田顕史郎さん
サンドラ(ハンスの隣家に住む、世話好きなオランダ人)…前田友里子さん
ヘルマン(サンドラの夫。誰彼無しに妻の浮気相手だと疑っている)…山田健太郎さん
ファン・デン・ベルク(ハンスの家の大家。裕福なオランダ人)…山岡三四郎さん
原稿を取りに来る男(正体不明の人物だがエヴァに片思い)…淺越岳人さん

大塚由祈子ひとり芝居「売り言葉」

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大塚由祈子ひとり芝居「売り言葉」

サキクサ

23日13時開演回(95分)を拝見。

『智恵子抄』の高村智恵子の一生は承知しているし、演じ手である大塚由祈子さんの演技は幾度も拝見しているし…
予想の範囲を軽々と越えられました。
高尚で泥臭く・会場狭しと動き回る「大塚智恵子」に、大袈裟でなく、魂持っていかれました。

野外劇 吾輩は猫である

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野外劇 吾輩は猫である

東京芸術劇場

20日17時半開演回に続き、二度目の観劇を27日17時半回(100分)に。

今回は下手の席を狙ったものの叶わず、前回より更に上手の上袖みたいな視野の席での観劇。
10月末の夜風は肌寒くて随分と往生したが、演技・歌唱・パフォーマンス等、集団の力で織りなす滑稽劇に、観る側も心軽やかに弾み、まるで夏祭りのようなワクワク感を堪能させてもらった。
小難しい屁理屈抜きに、素直な気持ちで臨むのが適切な作品なのかなぁ。
個人的には、もう一度「体験」できたことに心から感謝したい。

しだれ咲き サマーストーム

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しだれ咲き サマーストーム

あやめ十八番

21日14時開演回(途中休憩10分込み2時間35分)を拝見。

大胆な舞台セットに度肝を抜かれ、人々の愛憎が複雑に絡み合うシリアスな題材が、生演奏をバックに、落語のテイストで軽妙洒脱に展開し…『江戸系 諏訪御寮』等、自分が過去に観てきた、あやめ十八番の9作品のうち、今回が最高傑作ではないかと思う。

役者陣。
まずは中野亜美さん。あやめ十八番・代表の堀越涼氏の指導の下、初舞台を踏んだ女子高校生が、2年後の夏、同じ吉祥寺シアターの舞台で主要キャストの一人を立派にこなしているのを目にして、胸熱な気分にさせられた。
次に、メインの役柄ではないが、本作品の軽妙洒脱なテイストを象徴するような役柄を演じた田久保柚香さんが、個人的には、とても印象に残った。
【配役】
風間東薫(かざま・とうくん。亡くなった六代目・大酩酊白菊の元弟子)
…藤原祐規(ふじわら・ゆうき)さん(色悪(いろあく)を好演)
お袖(東薫の新妻。六代目・大酩酊白菊の娘)
…大森茉利子さん(以前、ギャラリールデコで観た『恋愛恐怖病』のような作品での客演も拝見したい方)
お万喜(おまき。六代目・大酩酊白菊の妻)…井上啓子さん
岩鼻牡蠣右衛門(戯作者。六代目・大酩酊白菊の元弟子)
…村上誠基(むらかみ・まさき)さん(拝見するのは『メロン農家の罠』以来?)

<岡倉町の長屋>
番匠アキ(ばんじょう・あき。東薫の友人。大工)…尾﨑宇内(おざき・うだい)さん
お文(おぶん。アキの妻)…内田靖子さん
のよ(Vチューバー=アバターのユーチューバー)
…シミズアスナさん(レティクル東京座の方。適役!)
三竹なお八(「のよ」の声優)
…ムトコウヨウさん(「二代目なっちゃんの愛人。」で知った、劇想からまわりえっちゃんの役者さん)
栗田蜂五郎(「のよ」のアニメーター。元・浮世絵師)
…山本周平さん(新宿公社『死ぬ気はなかった。』『13番地のパブロ・ピカソ』に出ていた方)
猿若雛太郎(歌舞伎役者)…渡邉素弘さん

猿若藤七郎(雛太郎の兄弟子の歌舞伎役者)
…和知龍範(わち・たつのり)さん(『肥後系 新水色獅子』の高校教師役以来、あやめ十八番を初めとして何本もの作品で拝見している方。色悪(いろあく)役が巧い)
お力(おりき。両替商。藤七郎にカネを貸している)…蓮見のりこさん

三浦屋・幽霧(ゆうぎり。花魁。藤七郎に惚れている)
…澤田千尋(さわだ・ちひろ)さん(総英学院の副部長さん(役柄)だぁ!)

<吉原の有ま屋>
楼主・徳兵衛(牡蠣右衛門に吉原俄を依頼)…山下禎啓(やました・よしあき)さん
有馬菊子(徳兵衛の娘。世間知らずで、東薫に騙されて貢いでいる)…中野亜美さん
清平(せいべえ。若い衆)…酒井和哉さん
お琴(やり手…遊女の世話係)…田久保柚香さん(『みのほど』で知った女優さん。好演!)
薄蜘蛛(うすぐも。花魁。藤七郎に惚れている)…融羽子(とわこ)さん
朝蛾於(あさがお。遊女。藤七郎に惚れている)…金子侑加さん
鬼瀬川(きせがわ。花魁。東薫や藤七郎から惚れられている)…配役なし

七代目・大酩酊白菊(故・六代目の弟子。牡蠣右衛門に新作落語を依頼)…堀越涼さん

<大酩酊白菊の弟子/演奏>
…ピアノ・吉田能(よしだ・たかし)さん
 パーカッション・吉田悠(よしだ・はるか)さん
 ギター・島田大翼(しまだ・だいすけ)さん
 サックス・藤林祐聖(ふじばやし・ゆうき)さん

<後妻打ち(うわなりうち)の女房衆、物売り、他>
…内田京(うちだ・みやこ)さん(過日の新宿公社『死ぬ気はなかった。』で知った方)
 旭レナさん
 安藤陽佳(あんどう・はるか)さん(何度も舞台を拝見している方)
 悦永舞(えつなが・まい)さん
 北原葵さん

彗星はいつも一人

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彗星はいつも一人

ことのはbox

13日19時開演回(2時間)を拝見。

「SF的設定」と、「作品全体を通しての軽快なテンポの良さ」と、「たとえ何かの行き違いがあっても、いつかは互いにわかり合える日が来る、という人間性への絶対的な信頼感」に立脚した、キャラメルボックス作品らしい、心地良い2時間を過ごさせてもらった。
まるで、素のご本人?が当て書きされているみたいに「朝倉ヒカリ」に成り切っていた
廣瀬響乃さん
泣いたり・笑ったり・スネたり・おどけたり…と変幻自在⁈の表情・所作に芸達者ぶりが光る
朝倉ナオ役・木村望子さん
(自分の)世代的に、過ごしてきた人生への悔い・プライドの内に隠された人間的弱さ…シンパシー抱きまくりの
佐々木岳彦役・加藤大騎さん
を初めとする実力派の皆さんと、若手?の役者さん達との座組が織りなす作品の世界観、ご本家とはまたひと味違った魅力が感じられた。
それにしても、ことのはboxさんとキャラメルボックス作品との相性がこれ程までにいいとは!…キャラメルボックス作品による更なる公演を希望する観客が出てくるのもむべなるかな、かと。

【配役】
北条雷太(土方歳三と共に函館五稜郭で戦った新選組隊士。だが、ヒカリ達の前では土方と名乗る。朝倉家の人々とは以前から何かのご縁が…)
…原弘さん(本作品での「殺陣振付」も兼務)
朝倉ヒカリ(東京で高校の教師を勤める傍ら、小劇場の女優としても活動。明朗快活)
…廣瀬響乃さん
朝倉ナオ(ヒカリの実家・下関に住む、お茶目な祖母。実は北条と過去に面識がある)
…木村望子さん
酒井しずえ(故郷でのヒカリの親友。彼女に頼まれて世話を焼いているうちに、ナオとすっかり仲良しに!)
…篠田美沙子さん(2018年2月の『見よ、飛行機の高く飛べるを』以来、出演舞台を5作品拝見してきたが、これまで一番、今回の役柄が引き立っていたように感じられた)
丹羽和生(ヒカリの同僚教師。ド素人なのに剣道部顧問。実はヒカリのことを密かに…)
…大河日氣(おおかわ・はるき)さん(篠田さんとお二人、私も拝見した『タイタス・アンドロニカス』での演出助手コンビの再来か!)
鳥居洋子(ヒカリの高校の教頭先生。佐々木の事情を承知したうえで「取材」を許可する)
…光希(みつき)さん
佐々木岳彦(新聞記者。ヒカリへの取材を口実に高校に出入りするも、実は隠された目的が…)
…加藤大騎さん
村越恭子(ケーキ屋を営む、大地の母親)
…新井利津子さん
村越大地(ヒカリのクラスの高校2年生。佐々木とは何やら因縁が…)
…佐藤ケンタさん
井沢薫(高校1年生。大地のことを大っぴらに慕っている。歴女)
…田中菜々さん
柳生宗太郎(大地が属する剣道部のキャプテン)/朝倉トクゾウ(北条と親友だった、ナオの夫)
…岡崎良彦さん
遠山陣八(函館五稜郭での雷太の戦友。幕府の御家人)
…星藍徳仁さん
大岡騎一郎(函館五稜郭での雷太の戦友。儒学者の家の出故か、大の読書好き)
…西村尚恭さん

総評

12月26日時点までの観劇188本からの選出。

10位は、キャラメルボックス作品と座組との相性の良さ
9位は、豪華絢爛、尚且つ、繊細
8位は、祝祭的な楽しさ
7位は、大塚由祈子さんの熱量
6位は、あの設定をコメディーに仕立てた凄さ
5位は、「非日常の日常」の丹念なスケッチ
4位は、5つのエピソードに強弱はあるものの、全体としての見事な大河ドラマ的構成を評価
3位は、所謂『福島三部作』のうち、原子力への理想、貧困からの脱却といった当時の事情が丁寧に描かれていた第1部に特にシンパシーを覚えた
2位は、作品自体の良さもだが、藤本悠希さん・室田渓人さん・安東信助さんの三位一体組に、とりわけ星秀美さんの熱演が強く印象に残ったため
そして1位。
手話の講師・宮嶋清香役の加藤なぎささんが、ストーリーの終盤に披露してくれた手話による「歌唱」。
指先・手元・表情から伝わってくるヒロインの心境に、ちょっと動揺するくらいに胸を打たれた。

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