byassistが投票した舞台芸術アワード!

2018年度 1-10位と総評
空想科学II

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空想科学II

うさぎストライプ

1日ソワレ(90分)を拝見。
孤独死した「女」と、アタマに斧が刺さったままの男との、「女」がまだ若かった頃から続く、ごく日常的な、ささやかなラブストーリーを縦軸に
通夜のために「女」のめいやおいが居合わせる「女」の部屋
斧を手に、その2つの世界をさ迷い歩く、姉の方のめいの夫
…生者と死者が行き来する、夢と現(うつつ)の境目が曖昧な世界を描いた作品です。
過労死したらしい、めいの夫・龍太郎の業の深さ(夢の中で、斧を振って人を殺すことでしか、魂が救済されない!)が対比として置かれているため、より一層、「女」の生涯が体現する至福感が尊く感じられた90分、「女」と同様、自分の人生も晩年に近づいていることもあってか、いつまでも余韻が消えない作品でした。

最後に配役を記しておきます。

タカハシ・ヒデキ(頭に斧が刺さったままの男。「女」と一夜を共にした晩に殺された?)
…斎藤マッチュさん
「女」(生涯、独身を貫いたうえで老衰で孤独死したはずが、どこか男の影が…)
…江花明里(えばな・あかり)さん(『ビューティーコロシアムの憂鬱』2期生・堀内ミオナ役で知った役者さん。本作での愛らしさは特筆モノ!)
慎之介(「女」のおい。保険会社勤務)
…高橋義和さん
龍太郎(のぞみの夫。「女」の死去より以前に過労死? サイコパス)
…芝博文さん(好演!)
のぞみ(「女」の姉の長女)
…松田文香さん(『川辺月子のために』のアカシ・副代表役で知った役者さん)
かずみ(のぞみの妹。図書館勤務。独身)
…松村珠子さん
慎之介の部下…木村俊太朗さん
横須賀発祥のスカジャンを羽織る女(既に亡くなっている)
…野村美優さん(『ビューティーコロシアムの憂鬱』1期生・桜井涼香役で知った役者さん)
鮫に食われて死んだサーファー(タカハシの友人?)…亀山浩史さん
暴走中に事故死した、千葉の女総長(タカハシの初恋のヒト?)…小瀧万梨子さん
冥界?のラジオDJ…金澤昭さん

草苅事件

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草苅事件

しむじゃっく

21日ソワレの1週間後、28日ソワレを観劇。
最初の観劇時に購入した台本を拝読後、さらに、元ネタであるソーカル事件(NY大・物理学教授のアラン・ソーカルが、単なる権威付けに数学・科学用語を出鱈目に用いていた当時の評論家を皮肉る目的で、一見尤もらしいが実は無価値な内容の論文『境界を侵犯すること…』を専門誌に投稿、掲載された事件)、芥川龍之介の『藪の中』を意識した上で、リピート観劇させてもらった。

そこで改めて感じた諸々の事柄。

まず第一に、清田洞爺文学賞の関係者が、『藪の中』的相互矛盾な、あるいは「我田引水」な発言を繰り出す中、正体不明の占い師、先輩に無理やり?連れてこられた後輩編集者、作家志望の文学青年、そして、ビルの清掃のおじさんと、欺瞞を暴き・真理を語ったのが、悉く同文学賞の部外者だった点。
これって、現状の演劇言論界に対する作者からの痛烈な(あるいは、痛快な)当てこすりにも思えて、観劇中、ニヤニヤが止まらなかった。

次に感じたのが、好評は勿論だが、(通常、殆ど目にすることもない)不評のツイートでさえ、TL上で少なからず見受けられた点。
観終わった者に無言スルーを許さない、何かを語らずにはいられない「魔力」の備わった作品に出逢えたことは幸甚に絶えないなぁと。

最後に役者陣。これまでになかった役柄を熱演の杏奈さんを初めとして、丸本陽子さん、長友美聡さん、渡邉守さんといった、以前に出演舞台を拝見したことのある役者さんもだが、今回、一番印象に残ったのが、平田役・ふくしまけんたさん。21日ソワレでは噛み噛みで、ミスキャストではないか?とも思われたが、1週間後の今宵、抜群の説得力&観客大ウケの演技を見せてもらい、心底、驚かされた…と同時に、我が不明に恥じ入るばかり、だなぁ(大汗)!

夏の夜の夢

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夏の夜の夢

劇団子供鉅人

16日の回を拝見。

そよ風に水面が揺らぐ「きらめきの池」、多摩中央公園の緑に、月の夜空を借景に演じられた『夏の夜の夢』は、主要キャストによる関西テイストの笑いを随所に盛り込みつつ、白装束のアンサンブル100人のパフォーマンスに彩られた幻想的&祝祭感に満ちた2時間でした。
正直、これはかなりハマりそうな観劇体験。機会があれば、また是非、足を運びたいと存じます。
個人記録用に出演者名(敬称略)を記しておく。

アテネ公シーシアス/妖精の王・オーベロン…益山寛司(劇団子供鉅人)
アマゾン国のヒポリタ女王/妖精・豆の花…ミネユキ(劇団子供鉅人)
ハーミアの父・イジーアス…新垣剛
ハーミア…億なつき(劇団子供鉅人)
ヘレナ…うらじぬの(劇団子供鉅人)
ハーミアの恋人・ライサンダー/妖精の女王・ティターニア!…益山貴司(劇団子供鉅人)
ハーミアの許嫁・ディミートリアス…古野陽大(劇団子供鉅人)
悪戯者の妖精パック/余興係…キキ花香(劇団子供鉅人)
職人クインス…地道元春(劇団子供鉅人)
ロバの頭をかぶせられる職人ボトム…影山徹(劇団子供鉅人)
職人スナッグ/BOX…益山U☆G(劇団子供鉅人)
職人フルート…加藤真悟
職人スナウト…上田高嗣
職人スターヴリング…古賀勇希

秋田満衣、雨本つむぎ、天羽亜衣、飯塚千夏、石井芹佳
石坂杏子、石田純一(ジャグリング・ユニット・フラトレス)
伊藤恵理、伊藤優(劇燐「花に荒らし」)、井上知優
宇田奈々絵、太田ナツキ、岡崎叶大、岡澤由佳(劇団コギト)
岡野桃子、岡本真奈、尾崎、治はじめ、葛西祐太
加藤優季、金森悠、上川拓郎、上山友喜枝、神山慎太郎
亀井理沙、亀山優、唐口優来、神原梨花、菊地侑紀
久山晴己、黒瀬郁弥、啓豪、小林沙耶、小森文菜
齋藤海翔、齋野直陽(啓蒙ヌードル)、坂井智実(旋風計画)
阪口智聡、阪口美由紀(仮想定規)、坂下泰貴(オフワンズ)
嶋村桜、白石佳穂、鈴鹿通儀(中野成樹+フランケンズ)
鈴木修平、田井中宥乃、高橋けい(あまみゅ☆カンパニー)
高橋志緒、高橋優輝、高谷可南子、田口紗亜未、竹葉香里(即興演劇シーソーズ)
田島あんな(劇団なんかやるよ)、谷宙、千葉舜大(日曜座)
土屋汐里、鳥越みちる、中島花子、永村閏(劇団MAHOROBA+α)
中村ひより、和海アキ(なごみ・あき)、西山由華、野中辰哉、野仲萌里
ハース・アンナ(実験劇場/劇団メイギザ)、萩原朋花、畠中瞳
深堀見帆、古原万稚、分田寛志、本康怜亮、前田彩水
松尾太稀、松本莉奈、舞美(まみ)、水野夏子、道岡潮酉樹
三ツ井秋、三鶴泰正(おやじカフェ)、宮内里沙、三宅朝子
宮崎菜央、宮崎まどか、宮下直樹、矢野杏子、山口詩織
山本桃子、Yukiko、ょしめぢ~ちゃす(ケケノコ族)
李勇雅、わしやみちこ

豊饒の海

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豊饒の海

パルコ・プロデュース

14日ソワレを拝見(2時間40分、途中休憩15分)。
途中休憩有りとはいえ、2時間40分の長丁場を感じさせない起伏に富んだ輪廻転生のストーリー。
時間軸を前後しながら展開される4つのエピソードは相互に齟齬を生ぜず、各エピソードへのスイッチも明確で「今、どのエピソード?」と観客が迷うことも恐らくなかっただろう。単なる「総集編」に終わらない優れた構成だった。
尺の余裕やセット・映像効果等の物量面での違いはあるものの、スピーディー過ぎて観客置いてきぼりになりがちな小劇場界隈も参考にして欲しいなと、上演中、ずっと考えさせられた。

ただ、たまたまだが、劇中の剣道のシーンにも象徴されるように、(上記と矛盾してしまうかもしれないが)全体に整い過ぎ・お行儀が良過ぎに感じられたのが、やや不満に思われた。

役者陣。
主演の東出昌大さん、決して舞台向きの声質ではないものの、そのスケールの大きな・鷹揚な雰囲気が、人生最初で最大の出来事に直面する侯爵の御曹司役にマッチしていた。
舞台だけでなく、映画『日本のいちばん長い日』でも阿南綾子役を好演の神野三鈴(かんのみすず)さん、登場の度に舞台の雰囲気が締まる! 今回も流石の演技だった。
アマヤドリの頃から何度か舞台を拝見している田中美甫さん。その端正な容姿・発声・バレエやモダンダンス等で鍛えられた身のこなしなど、(私の贔屓目も幾分混じっているかもしれないが)役柄の分を弁えた範囲内で、大舞台でも充分に映えていた。

見よ、飛行機の高く飛べるを

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見よ、飛行機の高く飛べるを

ことのはbox

初日(2時間25分)を拝見。
他の方もおっしゃっているように、永らく公演名だけはあちこちで目にしていた、永井愛さんの名作、私にとっての有名戯曲のメンター・ことのはboxさんの舞台で初めて観ることができる♪とワクワクしながらの初日でした。

観終わっての感想。
井上真央さん主演のNHK朝ドラ『おひさま』の女学校篇を思い出しました(同じ「女子師範学校」とはいえ、本作の明治とは違い昭和初期でしたけど)。
自由にのびのびと生きていきたい・愛していきたい!という人間本来の望みと、社会の規範・当時の倫理観との軋轢…さすがにNHKでやらない(やれない?)学内ストライキの顛末を通して描かれる青春像は、終演後も、ヒロインの光島延ぶや杉坂初江だけでなく、他の生徒さん達から新庄先生や安達先生に至るまで、まだ若い登場人物たちの「その後の人生」に、ついつい思いを馳せてしまいがちに…。
良い演劇体験をさせて頂きました。感謝です。

役者陣。
ヒロイン・光島延ぶ役の春名風花さん。ハマり役です。その聡明な表情と真っ直ぐな声をもって、これまで拝見してきた幾つかの舞台の中でも、ズバ抜けた出来だと思いました。
もう一人のヒロイン、杉坂初江役の廣瀬響乃さん。
何度も舞台を拝見しているので、演技力のある方だというのは承知していましたが、今回、春名風花さんという、ある意味、強烈な個性の相手役を得て、持ち味である、おおらかでスケールの大きな芸風がフルに発揮出来たのではないでしょうか?
舞台上での姿が、これまでになく活き活きとして見えました。
それから…ことのはboxさんの舞台、御縁があってか、第2回の『家を出た』から今宵の『見よ、飛行機の高く飛べるを』まで全ての公演を拝見しているお陰で、三村伸子さん、新田えみさん等、顔と名前が一致する役者さんが増えて来ましたが、今回は、役柄と雰囲気がとてもよくマッチしていた、槇野レオナさんがとりわけ印象に残りました。

最後に、自分の記録用に配役を記しておきます。
光島延ぶ…春名風花さん
杉坂初江…廣瀬響乃さん
大槻マツ(しっかり者)…工藤杏子さん
山森ちか…槇野レオナさん
木暮婦美さん(恋に恋する乙女)…篠田美沙子さん
梅津仰子…宮島はるかさん
石塚セキさん…関谷彩美さん
北川操(最後、身内と光島達との板挟みで苦悩)…石塚咲妃さん
新庄先生(愛すべき「優柔不断」)…岡田コセさん
安達先生(このヒトの視点からのアナザストーリーも観てみたい)…新田えみさん
菅沼先生(規範を重んじるも、安達先生を理解)…木村望子さん(好演!)
中村先生(話好き)…加藤大騎さん(好演!)
青田先生(太鼓持ち)…大久保洋太郎さん
難波校長(生徒に硬軟双方で迫る「権威」の象徴)…長野耕士さん
板谷わと(寮の賄いさん)…三村伸子さん
板谷順吉(わとの息子、元・飾り職人、社会主義に傾倒)…兒島利弥さん

「Dの再審」

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「Dの再審」

かはづ書屋

4日ソワレ(95分)を拝見。
江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』をベースにしたオリジナルの作品は、終演後、台風接近に伴う、折からの強風に向かって「うぉ〜!"演劇"を観たぞぉ〜‼︎」と叫びたくなるような、会心の舞台でした。

まずは、脚本。
『D坂の殺人事件』に関する新事実の暴露、登場人物と『D坂の殺人事件』との意外な関わりの表明…今、巷で話題?の体操に例えると、スタートからフィニッシュまで繰り出す技がいちいちピタリと決まる男子の床運動を見ているような、見事な話の組み立て・伏線の張り方とその回収です。感心のあまり、ただただ唸るばかりでした。

役者陣。
森尾繁弘さん、島田雅之さん、金崎敬江さん、遊佐邦博さんが演じられた法曹三者。
普通、小劇場演劇の舞台だと「そんな若僧が判事なわきゃねえだろう!」的なキャスティングが多い中、今宵の4人はどなたも、現役バリバリの法曹三者と言われても納得のリアリティーを感じました。
それから、基本、新劇の舞台のような緊迫感ある会話劇のためか、個人的な印象なんですけど、田中千佳子さんは俳優座の坪井木の実さん、木下智恵さんは同じく俳優座の香野百合子さんの若い頃とイメージが重なってみえました。
市川歩さんは、登場時から積み重ねてきた「鳩野弘子」のイメージが最後の「判決」の場面で静かな感動を呼び起こします。
山本佳希さんは、舞台上のコンサートマスターとして、終始安定感のある演技で場の空気を締めているように映ります。
黒沢佳奈さんは、確か法学部卒ではなかったはずですが、役柄の背景(実は…)も含めて立派な法学徒ぶり! さらに言えば、今回の「小山繭美」、黒沢さんご自身の生真面目さと役柄が大変マッチしていたようにも感じました。 

では、最後に配役を記しておきます。
折口幸吉(弁護士。「D坂殺人事件」の真犯人は明智小五郎だと主張)…島田雅之さん
箕浦竜平(明智小五郎財団の顧問弁護士)…森尾繁弘さん
須永時子(検事)…金崎敬江(かねざき・ひろえ)さん
笠森武(特例判事補)…遊佐邦博さん
※上記4名は、もともとは皆、明智の弟子。

明智蘭子(明智の養女で明智小五郎財団の理事長)…田中千佳子さん
蕗屋初代(蘭子の秘書。以前は明智の盟友・平田?の秘書)…木下智恵さん
小林芳雄(初代・小林少年。実は「D坂殺人事件」の小林刑事の息子)…山本佳希さん
鳩野弘子(明智小五郎奉賛会・会員。明智の熱狂的信奉者)…市川歩さん
小山繭美(東都大学法学部の学生。実は「D坂殺人事件」の「犯人」の孫娘)…黒沢佳奈さん

『首無し乙女は万事快調と笑う』&『漂流ラクダよ、また会おう』

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『首無し乙女は万事快調と笑う』&『漂流ラクダよ、また会おう』

ポップンマッシュルームチキン野郎

10日ソワレ、『首無し乙女は万事快調と笑う』(130分)を拝見。
以前から注目している、直球ど真ん中!の美人演技派女優・廣瀬響乃さんがご出演

NPO法人さん(☜一応、断わっときますが、役者さんの名前デス)、野口オリジナルさん、といった他団体の舞台でよく見かける役者さんたちの、ホームでの姿を見てみたい

そして何より、「頭部だけで生きている、しかし、ごく普通に若い女性として感情を有する」エマをヒロインに据えるという着想のユニークさ

に惹かれて、観に行った本作でしたが、その奇抜で、ある意味、猟奇的な設定にも関わらず、冒頭からしばらくは「笑い」で客席を和ませ、だが、次第に、今日的な問題でもある、人種対立(本作では、アーリア人=ドイツ人vsユダヤ人)への鋭い視点を踏まえた人間ドラマへと重心が移っていきます。

とはいえ、あまりにも深刻なテーマで観客を過度に委縮させることもなく、ユーモアを交えながらの息もつかせぬ展開に、130分の上演時間中、客席の舞台への集中力は、最後まで途切れることがなかったように見受けられました。
本作、2012年初演の舞台に手を加えての再演ということですが、脚本の完成度の高さには、唯々唸るばかりです。

さらには、主要キャストから脇を固める客演さん達に至るまで、気合と、エンタメ精神のみなぎった熱演の役者陣も合わせて、脚本良し・演出良し・役者良しと来れば、まだ早いかもしれませんが、今季、一、二を争うほどの演劇体験、させてもらったかもしれません。心底、凄い舞台でした。感謝です。

最後に配役を記しておきます。

エマ(本作のヒロイン。頭部だけで生かされている境遇にもかかわらず、常に周囲を和ませる明朗な性格の持ち主)
…小岩崎小恵(こいわさき・こめぐみ)さん(基本、表情だけの演技という難役を大熱演!)

オスカー(心ならずもエマの夫カミルを射殺した前非を悔いて、不遇の死を遂げた自身の恋人にもイメージが重なる、エマのために最善を尽くそうとする、ナチスの科学者)
…加藤慎吾さん

カミル(エマの夫。ユダヤ人ゆえに、亡命先のポーランドで軍に参加するも、ドイツ軍の捕虜に。そして…)
…野口オリジナルさん

リリー(オスカーの恋人。ユダヤ人にレイプされて精神が崩壊し、最期は自死)
…平山空(ひらやま・そら)さん

ハインツ(リリーの兄。妹を死に追いやったユダヤ人への憎悪から、ナチスドイツに身を投じて将校に)
…谷口賢志さん(熱演!)

マルコ(元脱走兵。処刑を免れるために、オスカーの手で兵器と一体化したナチスの改造兵士にされる)、ポーランド軍の兵士
…NPO法人さん

ウェルナー(元脱走兵。以下、同上)、ポーランド軍の兵士…大野清志さん

セバスチャン(元脱走兵。以下、同上)…吉田翔吾さん

アドルフ・ヒトラー、及び、ヒトラー本人が犯した数々の罪悪故に、良心の呵責に苛まれるヒトラーのクローン人間
…青地洋さん

アンネ・フランク(「灯台下暗し」でヒトラーの背後に身を潜めて生き延びるユダヤ人の少女)
…高橋ゆきさん

ダニエル(ナチスの参謀。学生時代からのオスカーの友人)…吹原幸太さん

アイーダ正田(ヒトラー総裁官邸の古参のメイド。後に、人間万能兵器に改造される)
…今井孝祐さん(本作品における道化役。好演!)

カーラ(ヒトラー総裁官邸の新参のメイド。アイーダと仲が悪い)…廣瀬響乃さん

ポーランド軍の兵士ユンゲ(カミル等、ナチスの捕虜の中で唯一生き残り、最期には同僚兵士たちの仇を取るべく、ハインツを射殺する)
…井上ほたてひもさん

ナチスドイツ親衛隊の男…横尾下下(よこお・しもしも)さん

【以下、映像出演】
ヨーゼフ・ゲッペルス(ナチスドイツの宣伝大臣)…渡辺裕太さん

勇気ある記者(記者会見の席で、ナチスに不利な質問をし、その場で射殺される)
…安楽信顕さん

森に棲む魚とハルニレのウタ

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森に棲む魚とハルニレのウタ

salty rock

2日ソワレを拝見。
ここ2、3年の傾向だが、演出を信頼できる他の方に委ねて、脚本に専心することで、犬井ねここさんの長編の作風、その精神の高踏性は保ちつつも、語り口が随分と下界に降りてきたなぁと、改めて実感させてもらった110分だった。

随所で感じ取れた、過去作品の役柄やら描写やら(キロク&キオク、『水棲のアリア s.v.』)のフレグランスも、既視感ではなく、作品の積み重ねがもたらす(まだ若い彼女には時期尚早な言い回しだが)「円熟味」の表出として受け止めることが出来た。

ただ、反面、私のように何年も犬井作品を観続けて来た者とは違い、今回が初めての観客には、あるいは、序盤での咀嚼のしづらさを意識させられたかもしれない。
CoRich記載の「説明」より、さらに一歩、噛み砕いた、ただし決して長くはない「あらすじ」を、当パンに掲載しておいてもよかったかもしれない。
それと、(私だけかもしれないが)客観的には「面倒な性格」(☜おいおい!)の登場人物たちのやり取りで、途中、話の運びにやや渋滞感を覚えたことも付記しておく。

あと、個人的な事情だが、自身や家族・知人の過去の入退院や逝去の経験が、美純'sの3人や残された楡木家の人々の言動や心の動きにオーバーラップしてしまい、観劇中、外向けの表情を保つのに、かなり難儀した。特に、長瀬巧さん・植松りかさん演ずる両親の姿には、設定年齢が自分に近いであろうこともあって、我が身に生じた苦悩のようにリアルに堪えた。

最後に、キャストに関して触れておく。

【楡木家の人々】
父・タカトシ…長瀬巧さん(父親の苦悩を背中で表現されておられた)
母・智恵子
…植松りかさん(『灯影ノート 』でのイメージが強過ぎて…こんなにお若い方だったとは!)
長女・美純(ミスミ)1(亡くなった小学6年生当時の姿)
…杏奈さん(やはり、このヒトは天才か?!)
長女・美純2(もし生きて中学生になっていたら…の姿)
…まついゆかさん(様々な公演で場数を踏んでおられるので、今回も安心して観ていられた)
長女・美純3(もし生きてオトナになっていたら…の姿)
…安藤陽佳さん(お名前はかねてより存じ上げていたが、漸くお目にかかれた!)
※美純'sの3人のバランスの良さ、本作品における白眉だと思う。

次女・亜純(アスミ)
…木村優希さん(小柄な彼女の何処に、あんなエネルギーが隠されているんだろう?)

【医師】
当麻リュウジ(元外科医で今は内科医。楡木夫妻とは幼馴染)
…神野剛志さん(シリアスとトリックスターとの塩梅が良い)
芳野ヨウコ…伊織夏生さん(ひと言、「スリムビューティー」じゃん♪)

八重樫ユキオ…シマザキタツヒコさん(『TranscendentExpress』以来、かなぁ?)

キロク…華奈さん(彼女の声質が作品の進行に良いリズム感を与えていたと思う)
キオク…目次里美さん(多分、お初の方?)
賽の河原の鬼
…あずき菜月さん(上野で数年前「夢の国の住人」だったヒトが、よもや、高田馬場で「バッファローマン」に転身していようとは!www)

『ボーイズオンファイヤーVSガールズオンファイヤー』

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『ボーイズオンファイヤーVSガールズオンファイヤー』

HYP39

『ボーイズオンファイヤーVSガールズオンファイヤー』のガールズの方、31日ソワレ(105分)で拝見。
銭湯のサウナに集う女性たちの、各々が抱く複雑な感情を押し殺している日常の様子は少女漫画、そうして積もり積もったモヤモヤをプロレスで一気に解決するあたりは「少年ジャンプ」な、ひと粒で2度おいしい作品です。
でっ、暑い会場での、女優さんたちのカラダも張った⁈熱い芝居に、久しぶりに、理屈抜きで腹の底から笑いました。前売り2,800円で入場しましたが、出る際に更にもう2,800円請求されてもよい位の満足感に浸らせてもらいました(ただし、払うとは言ってない)。

役者陣。狩野陽香さん、長友美聡さん、小関えりかさん、中西彩乃さんと、顔と名前が一致する女優さんが4人もいるだけに、お初の方も含めて、安心して観ていられる座組でした。
なかでも、狩野陽香さん。デフォルメされた演技の中にも、時折、垣間見える、アカネの陰の部分。以前に、少女都市さんの『聖女』で演じられた「ホステスのユリ」と再会した気分でした。ただ、笑わせるだけでない、ストーリーの深みといったものを感じさせてくれました。

では、最後に配役を記しておきます。
アカネ…狩野陽香さん
ユリ…長友美聡さん
カオリ…小関えりかさん
ホイちゃん…安曇真実(あすみ・まみ)さん
キラリ(通販系ネットアイドル?)…佐倉仁菜(さくら・にな)さん
サチコ(ダメンズ好き)…中村唯さん
女将…中西彩乃さん

カネシロ…亀井陵市さん
イナモト…黒澤風太さん
タマカワ(店主)…村山新さん

サンザル、月をとる。

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サンザル、月をとる。

電動夏子安置システム

千穐楽の18日16時回(2時間)を拝見。
地縛霊、インチキ霊能者といった手垢のついたモノから、SiriやGoogleアシスタントに代表される(AI)音声アシスタントといった、電夏さんらしい今時のモノまで、様々な素材を「手に届きそうで届かない、水面に浮かぶ月の光」でラッピングした2時間。
今回は理屈が勝ち過ぎて難解に陥ることもなく、観客もよりダイレクトに反応していたと感じた。
電夏さんの特徴である、会話のすれ違いで笑いを取って
電夏さんにしては珍しく、終盤は父娘の情でしんみりまとめる(ただし、ラストはブラックユーモアw)
個人的には、今迄観た中で一番好感の持てた作品だった。良い舞台だった。

役者陣。
客演の役者さんは坂本ともこさん以外はお初だが、坂本さん共々、皆さん、前から電夏さんの作品に出ていたような気がした程、舞台に溶け込んでいた。
これは電夏さんの過去舞台でも同様で、キャスティングが絶妙なのか、それとも稽古が良いのか?是非、秘訣を聞いてみたいものである。

最後に配役を記しておく。

キコ(50年前、マンションの近くの調整池で溺死した少女)
…新野アコヤさん(前作に続いて可愛らしい役回り)

榊公彦(幼い頃に目撃したキコの溺死の原因は自分にあると苦悩。今は、失踪した娘・伊緒の行方を追って、以前、住んでいた303号室の周囲を徘徊する)
…岩田裕耳さん

榊伊緒(公彦の娘。実はマンションの管理人・屋久に殺害され、父と暮らしていた303号室の地縛霊になっている)
…犬井のぞみさん

神宮真人(現在の303号室の住人)
…塩田良平さん

神宮愛美(真人の妻)
…大崎優花さん

明神結有(愛美の妹。最初は居候のような振舞いをみせていたが、実は真人に片想いの挙句、首を括った、303号室の地縛霊)
…小林知未(ともみ)さん

明神幸男(愛美と結有の父。刑務所から仮釈放中のインチキ霊能者)
…道井良樹さん

屋久玲司(マンションの管理人。とある理由から、若い女性だけを襲う殺人鬼に!)
…町屋圭祐さん

伸藤未世(神宮真人の元・恋人。303号室で同棲中に屋久に殺害され、303号室の地縛霊になっている)
…坂本ともこさん

三浦夫妻(昔から隣りの302号室に住んでいる)
…小原雄平さん、吉岡優希さん

総評

対象は12月30日時点での観劇193本。
今回のアワードでも重厚な作風ないしは社会派の内容を取り扱った作品だけを「演劇」と看做す選者も見受けられるが…まぁ、プロの評論家じゃあるまいし、もちっと肩のチカラを抜いていきましょうよ♪
一部の常連さんが肩の凝るモンばっか評価するもんだから、近年、「若者のコリッチ離れ」が加速してるんじゃないかなぁw
ということで、ド素人のイチ観劇オジサンとしては、観終わった後に「払ったチケット代以上の満足を得られた」順番でベスト10を選ばせてもらいました。

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