mistaが投票した舞台芸術アワード!

2019年度 1-10位と総評
10分間2019~タイムリープが止まらない~【ご来場ありがとうございました】

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10分間2019~タイムリープが止まらない~【ご来場ありがとうございました】

中野劇団

映像では何度も見てたけど、生でみたこの作品の面白さ、完成度、脚本の上手さ
これはタイムリープものの傑作でありつつ、確実に日本コメディ史上に残る大傑作
とにかくずっと面白いし、タイムリープ物の謎解き的要素や伏線回収
タイムリープを使ったネタなど何もかもが上手くハマっていて
それでいて取り逃しもないし、ストレスも感じない上手い構成で
本当に一部の隙きも無い作品

カケコミウッタエ

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カケコミウッタエ

日本のラジオ

屋代さんが人間ドラマを書いたなと思った
これはフジタタイセイであるし宝保里実でもある作品で
二人という人間がこの世にいなければ存在しない物語
それぞれがそれぞれであることに苦しくなって居場所を無くすし
二人であるからこそ救われる物語が有った
とにかくみんなに見てもらいたいのが宝保さんその人
中性的な役柄の宝保里実が自分のことを「僕」と言って微笑んだりほくそ笑んだり
奔放だったり純信だったりする姿、みんな想像してみて欲しい
そうそこに舞台にいるのそれが!
誰もが胸を鷲掴まれるようなそれが!

本作には舞台を言葉で埋める美しさがあって
坊園さんや安東さんや辻さんが橋をかけて
横手さんや沈さんや岡野さんが石を投げる
大きく静かな河のような空間に居心地の良さと劣情が同居する

いざ、生徒総会

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いざ、生徒総会

filamentz

積み重ねられていく1話~4話それぞれがめちゃめちゃ面白くて
「いざっ!」とカタルシスを感じる第5話
大爆笑に包まれたり、青春を感じてほろ苦さを感じたり
バカバカしさとか真面目な思いとか
とにかく面白い大傑作だった
ナイゲン、アガリスク、学校物好きな人は絶対に楽しめる作品

卒業制作

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卒業制作

しあわせ学級崩壊

これまでの作品で役者は演算器だった
コントローラーのボタンで動き出す音源だった
今回の作品ではどちらかというと役者がそこにいて
それに合わせて僻みさんが音を作り出しているような
それくらいの印象の違いがあった(メスイキちゃんもこういう印象だった)
ミメイ、エマ、マユカ、メグルの場面が凄い好きで
梢栄さんは完全にロックスターだし
きずきさんの眼光の鋭さと奥深さに吸い込まれそうだし
野村さんの笑顔の見え方の違いの悲しさだったり
鈴木さんの慣れへの逡巡と恐怖に身がきつくなる
4人の最後の場面、本当に泣ける

スタンディング回も含めて本当に良かった
言葉の感覚が自分と凄いフィットしていて馴染みが深くて
慣れて慣れてもう特別な人たちと作品でリズムでテンポで
CDでいつでも部屋に現せるようになったし
でも次も絶対に絶対に楽しみにしている

わが家の最終的解決(再演)

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わが家の最終的解決(再演)

Aga-risk Entertainment

これは本当に衝撃的だった
初演から台本が変わったとかじゃなくて
作品としての目指す先というか方向性が全然違ってて
物語が有って装置でも道具でもない「人」がいた
アガリスクメンバーがコメディ芝居や笑わせるための振りの芝居じゃなく
それぞれが客演で見せるような演技力を持ち寄って作品を構築して
シチュエーションコメディとしての均衡をジャンプさんが全て背負って
コメディだけどただのコメディじゃない
アガリスクの作品は基本的にこれまで点数を争う競技だったと思ってて
それが今回はフィギュアとかでいうエキシビジョンもしくはアイスショーの要素がだいぶ強く出ている気がして
観られる視点が変わったのだと
再演で特にわかりやすくなったと思うのが登場人物の行動原理で
下手なコメディにありがちな、笑いや物語を終わらせるための
なんでそのキャラがいきなりそんな言動をするのか、みたいなのが無く
序盤に人物の行動原理が示されているのでラスト向けた言動が綺麗に納まっている
そしてこれまでのアガリスク作品より、速いテンポの凝縮した笑いに巻き込まれることによる疲れが少なく感じた
これは「見せるパート」に間をしっかり使っているのと笑わせ方が統一されていることで、観客側が勝手にだれてしまう現象が回避されていて、150分という尺が気にならなかった
今回はとにかく山岡さんの収容所ネタが好きでたまらなかった。「ハイル」のやつも鉄板で凄い打率だなと
シリアスライト(勝手に命名)で雰囲気をわかりやすくしているかと思えば
それを利用してルドルフのくだりで裏切ったりと照明による遊びが今回もあって楽しかった

月がとっても睨むから

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月がとっても睨むから

Mrs.fictions

これは脱線の作品
会話もシーンも少し脱してはまた戻ってくる
もともと外れっぱなしで、でも走り続けていたりもする
何も軽んじていないからこの作品は信じられる
脚本が諦めの嘘をついていないから引き込まれていく
フィクションが大きく空に浮き上がる作品だ

AFTER塩原JUNCTION

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AFTER塩原JUNCTION

塩原俊之自主企画興行

「笑の太字」「天気予報を見ない派」「いまこそわかれめ」の3作品が上演
味付けの全然異なる3本なんだけど、どれも本当に面白い
内2本は初演を見てるんだけど、場所や時期、自分の状態が違うことによって
作品から受け取れるものもちょっと変化してた

足がなくて不安

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足がなくて不安

たすいち

一人の人生を描くいわば走馬灯的な作品だが、とても暖かく優しく作ったなと
それぞれの役者の表情がとても強かった
味が出てくる作品だなと思う
作品的に場面場面の立ち位置と動線が上手くて非常に見易い演出

子供の頃は未来に何が有るかわからなくて不安で
大人になればいつだって今に不安を感じ
歳をとれば積み重ねてきた過去が正しかったか不安だ
これは人生を生きたかった人の話
描かれた場面のファンになって不安になる
自分の人生に正解を求めてしまって答え合わせに不安になる

だからどうした

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だからどうした

HYP39LOVE

高円寺版について投票したい

カズが嫌いだった
傷付ける覚悟もないくせに言葉ばっかり強くって
傷付きたくないだけで優しさ擦りつけて
目の前の大事な人に向き合わない
エゴばかり崩れそうな程積み重なった本当にゴミみたい
でもってそれはまさしく僕自身で
あー自分が嫌いだ
なんてもの見せるんだ
カズもヨコも気持ち悪くって、みんなみんな気持ち悪くって、吐きたいのはこっちで、最高に気分の悪い最高に面白い作品
男目線だからこそ下北より気持ち悪さが全部僕を殴りつけて
あークソ気持ち悪い、こんなに心揺さぶられて苦しいなんて
あーーまだモヤモヤ、ムカムカしてる
笑の部分多くて助かった、あの恋愛部分をあれ以上見せられてたら号泣してたし立ち直れなかった
あれはねずっと心のフィルターで化粧してたまだ見られる自分の顔から一気にすっぴんでシワやシミのある現実の顔を見せられたようなもの
演劇って最高だな!

じゅうごの春

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じゅうごの春

やみ・あがりシアター

スターターピストルの号砲で物語は走り出して
笑顔も見せながらゆるゆると走って
ランナーズハイになって
突然剣の舞のようにテンポアップさせられて息を切らして
ゴールテープの無い物語はぐるぐると回って
この物語を終わらせるには犠牲が必要なんだって気付く
情緒を揺さぶられる作品は好き
笑わされてこんな雰囲気かと思ってたら
展開は回ってどんどん引き込まれて
夢中になってしまっていた
大和田さんの前半、萌キャラかよ!って思ってしまった
相変わらずの声の残り方、物語を進める、保存する、再開する、運べる役者

総評

観劇数が300を超えたこともあってか、良い作品を観劇する回数も増えた気がする
正直順位づけというか10作に絞り込むことも難しかったが、1団体1作品にして同じくらい面白かった作品は心に衝撃が走った方を優先した
その中での1位10分間2019は作品としてのクオリティ・完成度がずば抜けていて、ループ物作品でこれを超えることができる作品は今後登場しないのではないかと思っている

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