I元の観てきた!クチコミ一覧

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劇王2020

劇王2020

日本劇作家協会東海支部

長久手市文化の家 風のホール(愛知県)

2020/02/08 (土) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/09 (日)

決勝に残った
「残像」
「死ぬ時に思い出さない今日という一日」
「天国と地獄」
…はいずれも極めて秀逸で、かなり趣味にも合いました。

『ツアー』+『タワー』

『ツアー』+『タワー』

ままごと

長久手市文化の家 森のホール(愛知県)

2020/01/25 (土) ~ 2020/01/26 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2020/01/25 (土)

(2作別にネタバレBOXに書きました。)

ネタバレBOX

「ツアー」

ツアー×タワー実質2本立てのうち、この「ツアー」は ままごとの今までの制作手法(標準的な演出家主導)での集大成(?)的作品だそうな。

愛息喪失による失意の中で… 日常とは少し離れた異文化コミュニケーションから生まれていく…彼女の踏み出す 次の一歩までの物語。

名詞と動詞だけで構成する独特のカタコト言語表現は、冒頭のドライブを不思議にポップに彩ったり、拙い外国語会話を如実に再現してみせたりと、意外にオシャレとコミカルさを兼ね備える汎用性があって興味深い。

ナビ本体の擬人化表現や、その機能のアナログ的描写もほっこりしていて好ましい癒し空間が拡がっていく。そこからの展開… ちょっとした冒険譚が彼女の心をほぐしていく感覚にとても心温まる感触でした。ところが実は…終盤の旅人に対する「お前はダメだ」というミュージシャンの拒絶のセリフにモヤモヤする感覚が湧いて… なぜ盛り上がりの最中にざわざわそんな描写が要るのだろうと… 観た直後は後味が悪かった。

んで、暫く感想を呟けなかったんだけど、意図を汲もうと思索を巡らした。で、やはり旅人がナビの化身的な位置づけになっていることに繋がるのだろう…という結論に辿り着いた。彼女はいつまでもナビゲーターに手を取って貰っていてはいけないのだろう。彼女が再び自力で歩きだすことの暗喩かな…と。それにしても このナビ優秀すぎ。心療診断機能まであるんか笑。

「タワー」

もう一方の「タワー」は演出家一個人の資質に囚われぬ… ままごとという「集団」から生み出されるモノを模索する新たな制作手法に取り組む実験作らしい。

その意向は何となく理解できる。しかし今回そこから生まれたモノには色々と疑問を呈さずにはいられない。

難解というよりは… まだまだチグハグな印象でした。

堆く積まれた高層の構造物。地上で蠢く者どもの不思議な挙動… 上と下とで生きる者たちの隔絶と奇妙なコミュニケーション。何となく物質文明の果てのディストピアを想像させ、前半の雰囲気はバツグンでしたが… 全体としては… フライヤー記載のあらすじのイメージは汲めてないです。

しかし一転、中盤のパフォーマンスやインプロ的なシーンは… 冒頭からのイメージを膨らますには些か余興的でバラエティ番組でも観ている様な場違い感が湧いた。 勿論そういうモノの面白味というものはあるのだけど、 何と言うか…「今じゃない」って感じでした。

何だろう… 屋外パフォーマンスや演劇フェスの一角で… 観客とのコミュニケーションを楽しむタイプとしてなら呑み込める中盤だったけど、前半からの"思索を阻む異物"としての存在感が私には強かったです。色々考えてはみたのだけど、この中盤あってこその「何か」を見出せなかった。現代アート好きの性分としては無念だけど。

まだ実験作やし、このタイプは…回を重ねて作り手の表現も変わり、観る側も観方を心得てくると解釈も変わってくるかなと今後に期待。エポックメイキングも磨き上げられる時間が要るのだと信じて。
警部と探偵、その助手と殺人鬼

警部と探偵、その助手と殺人鬼

劇団芝居屋かいとうらんま

瑞穂市総合センターサンシャインホール(岐阜県)

2020/01/18 (土) ~ 2020/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/01/19 (日)

お馴染みジュリアーノ警部の舞台に、BLANK BLANK BRAINの迷探偵コンビ蘭子&珠理が殴り込み… ツッコミ不在でボケの3乗、舞台上で留まることなくボケ倒す。かいとうらんま不動の定番キャラの存在感に… 遂に拮抗できるキャラを、しかも若手から生み出した価値は非常に大きい。本公演での客の評判の高さに対応して… まさしく機を見るに敏なり!の投入は大成功でしたね。

ネタバレBOX

割と強引に終わらしたけど、結構な謎と含みを残した後味だったよねぇ。しかも… かなり怖くてヤバい要素を曖昧なまま終わらした… リアルな部分と突飛なフィクション両方で。

そもそもの「イジメ」については、当人も出ないんでフォーカスこそされなかったけど、あの「悪意なきイジメ」は、イジメる側への切り口として昨今の潮流に準じた感じで、どうしょうも無くシビア。

「ゲームさえ与えておけば大丈夫」と…ノリの為に他人を蔑ろにすることに最後まで罪悪感を持たなかった描写は… 他人の痛みを想像する気力すらない程の無関心を窺わせ、悲しい現実味と諦観を想い浮かばせた。

一方、大事な人を犯人だと思い込み…庇う為に捜査を混乱させたり、自分が犯人だと自供してみせたりしたことがクローズアップされたが…その反面で真犯人が誰か、その動機が何なのかが敢えてなのかボンヤリしていて、庇い合うエモさでカモフラージュしながら、結構な勢いで結末に畳み掛けてくる。キョトンとしている間に終わっちゃう感覚だ。

結局、犯人は実際にあの中の誰かだったのか(動機は?)、あるいは最後の露美男が全部殺っちゃってたことになるのか、それとも全ては教団の人体実験に絡んだ犠牲者なのか…分かったような分からないような感じだけど、一つはっきり感じられたのは、誰が殺していても、誰が殺されていても…何も湧いてこない感情の希薄さ、ゲームの様な軽さ…何かそこに本作の「裏」を想像してしまうのですよ。

勿論 この作品の主体がコメディとエンタメなのは間違いないです。私もそう楽しんだ。しかし この楽しさの裏のモヤモヤする観後感を生む作品構造に意味が無い訳はないと思って…ただ辻褄を合わせるだけ…ただドラマを作るだけなら、後藤さん程の手練れが違和感を消すことは容易な筈で、だから「そうしなかった意味」がきっと何かある。

初日の感想ツイートの中にあった『私に笑えないところで皆が笑う』という趣旨のモノも思索のキッカケ。… で、思ったんです。

この楽しさの「裏の闇」は…今の世相をそのまま写す鏡ではないかと。

「自分に危害のないところから 然したる悪意も罪悪感も無しに 生贄の様に他人を攻撃して楽しむ」…薄っすら透けるそんな地獄絵図を鏡写しに見せて、自分の行為に気づきを得て欲しかったのでは…と。

しかもそれがただ非難する為の説教ではなく、だからこそ最後に「どんな状況でも、悔い改めるのに遅いという事はない」という趣旨のセリフに繋がっていく。そこが後藤さんの味かなぁと勝手に妄想しました(;^_^A

そして重めの話とはまた別の視点で…

… あの教団の暗躍(死体を使っての実験、…手から放つ謎の雷光兵器、何となく人の心理や記憶を操っている様な謎めく仕掛け…等々)には、もの凄い裏設定を妄想させられたけど、結局 一切回収してこなかったよね?、むっちゃ気になるんですけど(笑)
『ムンク l 幽霊 l イプセン』 劇場パフォーマンス

『ムンク l 幽霊 l イプセン』 劇場パフォーマンス

第七劇場

愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)

2020/01/10 (金) ~ 2020/01/10 (金)公演終了

満足度★★★★★

因習による呪縛の辛み、そこからはみ出す精神の苦しみ、マイノリティの足掻きが空気感として迫ってくる。あぁ…やっぱり鳴海さんの演出って好きだなぁ。特に今回は環境音と暗がりの効果に痺れまくった。美術館パフォーマンス(ムンク作「イプセン『幽霊』からの一場面」の実物を前にしての演劇)もセットの企画で面白い取り組みでした。)

私たちは何も知らない

私たちは何も知らない

ニ兎社

三重県文化会館(三重県)

2020/01/10 (金) ~ 2020/01/10 (金)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2020/01/10 (金)

日本の女性解放活動の思想的礎の一つとなった雑誌「青鞜」編集部を舞台に、平塚らいてうを核にした一癖も二癖もある女性達が口角泡を飛ばす議論を重ねる。

史実の人物たちの原文を大事にしてなのか、硬い語調ながらも その風体は現代に寄せているところにギャップとしての面白さがある一方で、昔から変わらぬ問題を今と重ね合わせようとしている感触があった。

シンプルながら多彩な顔を見せ 尚且つ多機能な舞台装置も強い印象を残し、特殊な照明効果(?)による遠くの霞んだ空気感の演出には感動すら覚えた。音楽も含めて思いの他 ポップな味わいもありましたね。

青鞜編集部員達は相互に批評精神に溢れ… ある種 硬派な言葉を交わしながらも、その一方でゴシップ好きの井戸端会議的な趣きも重なる描写なところは ある意味で意外だったが、そういうモノなのか… そこに作り手の意図の有りや無しや。

基本、史実を追っている感覚で小気味良いテンポだが… 何となくやや単調?…何となく距離感があって観ていて中に入り込めない感触もあったが、それは私が男だからなのかも。

一方で、終盤の話運びの処理は上手いなと思った。仄かに今が重なっていくのが いかにも永井愛作品の佇まい。意外に奔放であったり、何のかんの何より自分本位な人物像も印象的だったし、その晒された環境として「女の敵は女」って思わせる瞬間が多かったのも納得感を生んだ。

女性に限らず… 虐げられた者が何かを変えようとする時、その足を最も引っ張り傷を負わせる障害は「虐げた者」ではなく、同じ環境にありながら「その環境に順応して上手く世渡りした者」… もっと始末が悪いのは「それに耐えて、自己肯定的にそこに価値を見出してしてしまった者(自分が耐えたのを誤りとされるのが許せないパターン)」…という現実。

庇った身体を背中から撃たれる光景は、今なお続く日常に思えた。

あしたの空地で会いましょう

あしたの空地で会いましょう

くじら座なごや

ユースクエア(名古屋市青少年交流プラザ) (愛知県)

2019/05/25 (土) ~ 2019/05/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/05/25 (土)

60分の高校演劇に…人物を減らす潤色をした筈なのに、いつの間にか80分になったという… いいよね、ただ鵜呑みにするでなくリスペクトから更に膨らんでいく二次創作性。原作 越智優作品大好きの主宰 利藤さんと 潤色演出 台越さんの制作過程での衝突は想像に難くないが、その結果として生みだされた作品の付加価値はとても大きく、潤色の域を超えている創作性を感じた。

人物の整理や今時に合わせたディテール変更のみならず、大きな追加の機内シーンは のり子の対極であるフーコを深彫りし、緊迫度を増した社会の揶揄に空き地を絡めた追加シーンは作品テーマの深彫りを感じさせた。

そして劇作構造に手を加えたのも大きい。元々の作品もメタ的な味付けがしてあったが、この企画自体のテーマでもある「大人が作る高校演劇」の視点が強く取り込まれたのではないか。台越さん&座組が本作に取り組んだ際の「生の想い」が二重のメタ的構造を形作って冒頭とラストに厚みを持たせた。

すれちがいコメディの夜

すれちがいコメディの夜

有頂天演劇Collaborations

ユースクエア(名古屋市青少年交流プラザ) (愛知県)

2019/12/26 (木) ~ 2019/12/28 (土)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2019/12/28 (土)

入れ替わり立ち替わり…これでもかとすれ違い続ける人々が行き交う雑踏。ほんのり群像劇を味わっている感覚になっていたところで…急速に始まる連鎖の仕掛けが巧妙。なんて優しい作為。クリスマス感を味わい損ねた人にオススメ

ぽじ

ぽじ

山口企画

K・Dハポン(愛知県)

2019/12/20 (金) ~ 2019/12/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/12/22 (日)

愛する男を巡っての女同士のマウントの取り合い。神経を逆撫でする冷徹な言葉選び、如何に相手を傷つけるかを極める繊細な戦術が展開されて背筋が凍る。前半は2人が感情の温度を低めに保っているのが、逆に怖さを引き立てた。

そして現実の修羅場を見せながら次第に…観る者を何とも不思議な「混沌の海」に突き落としてくるのが面白い。

障子の国のティンカーベル

障子の国のティンカーベル

体現帝国

ユースクエア(名古屋市青少年交流プラザ) (愛知県)

2019/12/22 (日) ~ 2019/12/22 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2019/12/22 (日)

わりと舞台と客席の距離をとる傾向の強いユースクエア上演にしては、ものすごく舞台が近かった。最前列センターで まるで紙芝居を観るような距離感。…それどころか、客席が舞台に呑み込まれている感覚すら湧く…とても一人芝居とは思えない縦横無尽のステージングが圧巻でした。1ステだったからか、まだ磨いている最中の感触もあったけど、創意は十二分に伝わってきた。

そして中身は…タイトルの既視感が予兆する様に、「ピーターパン」の世界というよりは「鏡の国のアリス」みたいな不条理世界の感覚を背景に湛えた印象でした。野田秀樹作品というと、観たことがあるのは壱劇屋「TABOO」ぐらいなので造詣はほぼ無いけど、和洋折衷、古典のアレンジ(いや魔改造?)、昭和感漂う空気が… 今となってはあまり見慣れぬ舞台として、むしろ新鮮さを感じさせました。あ、でもティンクのメンヘラ感は、むしろ現代に通じるかも笑。

ネタバレBOX

「人でなしのの恋」というキーワードに惹かれて調べたら、江戸川乱歩の同名小説にも行きついて興味深い。類似のモチーフの元、行きつく先が真逆な印象を受けるのもアンチテーゼの様で一興だ。勢いで3日で書いたとの逸話もある戯曲なので、関心あるモチーフを同人趣味の感覚で纏めきった様な想像も湧いて、だからこそ嗜好の純度が高い印象も湧く。

全ては自業自得、愚か者同志の歪んだ純愛の果て…って感触もある割りに、コレ意外とハッピーエンドじゃね?とも思った。正直、あまり「人でなし」の印象も湧かなくて、時代がようやく追いついたのか、それとも私が人でなしだからなのか笑。
おやすまなさい

おやすまなさい

ナビロフト

ナビロフト(愛知県)

2019/12/19 (木) ~ 2019/12/22 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2019/12/21 (土)

ちょっと不思議ちゃんな女性と頭痛を抱えた気怠げな女性…他愛もない日常劇? いや仄かに不条理劇?

何とも言い難い時間が過ぎていき…出来事がファンタジーめいてくる… その先に見えてくるモノが この世界の立ち位置を一変させる!
あぁ、フライヤーだ。あの不思議な絵が如実にこの空気を表しているかもしれない。

この散らかった部屋、2人の何気ない日常の振る舞い… いまこの舞台上にある全てのモノへ向ける眼差しを揺さぶる… 世界の色が変わる。

キャスティングのバランスも不思議な感触を生んで面白かったです。

5seconds

5seconds

まつプロ

G/Pit(愛知県)

2019/12/20 (金) ~ 2020/01/06 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/12/21 (土)

コレは凄い… 脚本の濃厚さを物の見事に具現化した演出/役者の力量たるや申し分ない。

現実の航空機事故をモチーフにしたドキュメンタリー的な作品だが、空気感は… そう、好評だった刈馬演劇設計社「異邦人の庭」を想像して貰えは良いと思う。それがまた別のベクトルで鋭さを増した。

近年稀に見る程に 神経を逆撫でしてくる篠原タイヨヲさんの演技に… 何故か逆にグイグイ引き込まれて、それを受けるカズ祥さんが… 徐々に彼の輪郭を露わにしていく構図。終始ヒリヒリする空気が堪らない。

そして事件として語られる以上に、機長の晒されていた環境を浮かび上がらせていくのに息を呑んだ。

私の好みに合ったのは言うまでもないが、役者の表現としてすこぶる出来が良いと思う。あおきりで観るのとは全く違う姿を観れる新鮮さもあり、何より… あおきりでの方針とは一転、公演期間中もネタバレフリーを公言してて、史実と言うこともあるだろうけど、本作の価値が「生でコレを体験すること」に他ならないのだ…と言う強烈な自負を感じて、またそこに痺れた。

inseparable 変半身(かわりみ)

inseparable 変半身(かわりみ)

有限会社quinada

三重県文化会館(三重県)

2019/12/14 (土) ~ 2019/12/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/12/15 (日)

近未来SF的な設定で強力に興味を引かれる導入。そこに異物(ムネオ)が現れる所から急速に予想の斜め上を駆け抜けていった… 脳内にパラダイムシフトを強いる…そんな悦びも危うさも感じる演劇。

裏付けなし(一見そう見える)の論理的な飛躍により醸される「カルト的な空気」は、それだけで胸に拒絶感を湧き起こすけど、メタ的に描き出される神話的… 創世記的な二重世界の構成が… そんな社会通念的な禁忌の裏にも、一抹の真理があるのかも…って思わせる感覚を湧き立たせるのは、興味深くもあり、恐ろしくもあり。

とりあえず、端々の極めて強いアイロニーに、やっぱり現実世界には絶望感しか残らない後味だけど(苦笑)、最早…そこで残された時間をどう生きていくか…って考えにシフトしていく内なる感覚はちょっとヤバみ有り。後ろ向きなのか前向きなのか… ワケ分からん新たなる終末観かな。
全般的に独特な気持ち悪さを醸すのが印象的(悪い意味では無い)。前に観た松井周作品が2014年の「地下室」でその時の感触も少し蘇った。(余談だが、芝居観始めの年でのアレは忘れられない笑。)

あと、とりあえずもうピュアな気持ちで相撲を観ることができなくなった、どうしてくれる笑。

『荒れ野』

『荒れ野』

穂の国とよはし芸術劇場PLAT【指定管理者:(公財)豊橋文化振興財団】

穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース(愛知県)

2019/12/13 (金) ~ 2019/12/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/12/14 (土)

まさしく精神の荒れ野かなぁ…。大人の振る舞いの中に隠れて 荒廃してしまった関係性。観ていて気持ちの持っていきようがとても難しい芝居でした。思えば… 舞台上で幾度か口ずさまれるあの昭和歌謡の問い掛けがそのまま突き付けられている感じ。 思わせぶりを躱しておいて… 寄せては返す波のように繰り返される疑惑。自分でも分からなくなっている本音が徐々に姿を表していく… それが切ない…とかの一言では済まされないモヤモヤ感が濃い。
多様な人生の吹き溜りの様に、舞台に怨念の様な想いが拗れて積もっていく感じでした。

汝、隣人より目の前の人を愛せよ。

汝、隣人より目の前の人を愛せよ。

team.ups!

円頓寺Les Piliers(レピリエ)(愛知県)

2019/12/13 (金) ~ 2019/12/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/12/14 (土)

この家族の…互いの噛み合わない価値観を認めた上で適度な距離感を模索し…繋がりを切らない様に足掻く姿には納得感がある。理性と感情のバランスが好きだ。
好きな演出って言ってたのは、視点を変えた「同じシーンのリプレイ」の多用で、そこから隠れた別の心情を窺わせる趣向。手法自体が珍しいわけではないが、チューニングが自分の思考にうまくハマって、観ながらにして物語を反芻・咀嚼させてくれる感触が自分の観劇スタイルに相性が良かった。

黒塚

黒塚

ハラプロジェクト

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2019/12/07 (土) ~ 2019/12/15 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2019/12/07 (土)

黒塚として… 話の筋はかなりストレートだったけど、その分 感情もダイレクトに伝わってくる感じで、琵琶の音色がそれを実に良く後押ししてた。最後の展開がオリジナリティ溢れる感じで、祭るということの成り立ち… 鎮魂、供養の趣きが新鮮に感じられた。

卒業式、実行

卒業式、実行

劇団バッカスの水族館

ナビロフト(愛知県)

2019/11/29 (金) ~ 2019/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2019/12/01 (日)

アガリスク作品特有の… 嵐の様に次から次へとトラブル発生、そして作品全編に敷き詰められる伏線に…その怒涛の回収… 笑いに巻き込む勢いと畳み掛ける感じは相変わらずで、その点 ドタバタコメディとしては安定して面白い。でも、これまでバッカスが扱ったアガリスク作品とは異なる… 明らかにモヤモヤする異質さがあるのは否めないんだよね。

ネタバレBOX

テクニカルな部分よりは やはり国旗国歌のポリティカルなネタを扱いながら、どっち目線でも戯曲自体にそこを彫り込む本意が見えない所が原因か。校長も生徒会長もソコが拘りじゃなかったから、要らん板挟みの代理戦争を強いられる滑稽味で攻めてくれた方がすんなり楽しめたかな。
サカシマ

サカシマ

廃墟文藝部

千種文化小劇場(愛知県)

2019/11/29 (金) ~ 2019/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/11/30 (土)

100mの高さから飛び降りた少女の… 余命5秒の中に凝縮された走馬灯の物語。

最初に観た2ステ目…あのラストシーンの後の客席の空気が強烈に印象に残る。どう反応して良いのか惑い… 逡巡し… 誰一人拍手できなかったあの時間。そして… 思わず息を呑んだ落下の冒頭シーンも含めて、見事な始まりと締め括り。勿論、内容については甚だしく観る人を選ぶ作品だが… 少なくともその鮮烈さだけはきっと群を抜いた鋭さで万人に届いたと思う。その点では廃墟文藝部史上ダントツなのは間違いない。

そして公演前から… 煽る様に出てきていた内容に踏み込んだ言葉たちは、作中でも ずっしり意味ありげにその存在感を主張した。
終わってみれば実に端的で… でも直ぐには意味が分からず… でも頭にこびりつき… 観た後には確実に作品のイメージを代表していると伝わるフレーズが凄いな… 冴えわたっている。

ネタバレBOX

全編に漂う人の心を押し潰していく感触も凄まじく… いちろーさんの音楽ばかりか… 地の底から響いてくる様な環境音… ちくさ座特有の換気音までが手伝って… 観るものを絶望の淵に沈めていく。そして… 狂気に晒される人々が次々と翻弄されていく中で… 最後にバトンを渡された主人公・陽毬を掻き立てる感情が… いつもの廃墟文藝部とは違う方向に振れていったのが非常に新鮮だ。

それは… 彼女の表向きの行為…「飛び降り自殺」とは極めて対照的な…「怒り」だった。

「私は負けない」

これが自殺に臨む人間の感情だなんて…果たして想像できるだろうか。

陽毬の… 驚きの自責が明らかになった後(実際にはかなり言い掛かりであるが、そう追い詰められる流れはしっかりあった…)、その清算として身を投じることで… 自死以外にもう一つ出来ること。我が身を破壊してでも為し得たい悲願とその実現の為の強固な意志。

それまで人となりとして勇敢と評されるのは姉 灯里の方であったが、実は獅子座の性格として…最初から陽毬は『行動力があって勇敢』であることが暗示されている。気弱な陽毬に… 灯里はさんざん怒りを促しながらも、その一方で「願い事は一つだけにしないと…」と諫めていたが、最後の最後に陽毬は灯里を超え…そのダイブに「2つ」の意味を捻じ込んだ。

それは贖罪と復讐

このダイブの終盤…残り5m…そこまで舞台に散りばめられた様々なモノローグのイメージ…「壁と卵」「夜に鳴く蝉」「星占い」「八月の太陽」等々…それらが行為の意味を伴って集約していく「勢いと畳み掛け」は見事で、これも今までの廃墟文藝部にはないスピード感だった。台本を改めて読んで夢想すると… これ、演出次第(表現媒体次第?)で、少年ジャンプ漫画風のクライマックスシーンになる…って印象も湧く。残り5m… 僅か0.1秒に圧縮された出来事に湧き上がる不謹慎な高揚感。

「私が決める… 今週の私の運勢。第一位は獅子座のあなた。」

使われる言葉との落差ゆえに… 逆に極めて強い明確な意思を伴い… あらゆるモチーフを結び付けて… 怒濤の如く1点に集約されるカタストロフィが許せないアイツに降り注ぐ。余りにも禁忌な自殺という行為と…この余りにも強い意志を結び付けた作者は尋常じゃない。

しかもコレはフライヤーデザインそのものの在り姿。

色んな事が予め晒され…それでも気付けない…最後にハッとさせてくれる…私が好む最高の仕掛けだ。
ノア版 ワーニャオジサン

ノア版 ワーニャオジサン

ノアノオモチャバコ

ナンジャーレ(愛知県)

2019/11/29 (金) ~ 2019/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2019/11/29 (金)

チェーホフ「ワーニャ伯父さん」の翻案現代劇。翻案ゆえに… 原作の誰が本作の誰にあたるか考える楽しみもあるが、それに留まらない仕掛けもあって、登場人物の機能が効果的に分散されている様だ。

敢えて原作の名で言うとワーニャの「狂気」を垣間見せる幻想的な表現には… ノアノオモチャバコ特有のあの絵画的な演出はとても合うね。嵩の増された登場人物群は… ここでも効果的に思えた。

そして… ただ蔑ろにされるよりも もっと辛い仕打ちがある… そんな仕掛けは、たぶん翻案オリジナルの核だと思うけど… ただ!… それで終わらないどんでん返し? …ワーニャは終盤にえらいサラっと言って済ましたけど、あれ、そこまでの空気の前提が更にひっくり返るよね? 更に…更にもっと辛いどん底に突き落としたよね? 彼の最後に取った選択も然もありなんな悲劇でした。ここら辺の表現は…しっかり現代にいや増す孤独感にシンクロしてて、チェーホフを今 観る意義を感じることができた。

そして… ソーニャのあの…チェーホフで最も美しいとされる台詞はもちろん登場してくるわけですが、ストレートプレイだとアレはキリスト教的な宗教観を背景に強く感じるのですが、この場においてはその匂いはさほどでなく… 「それでも生きていくしかないじゃないか」という一種の悟りの感覚が… 神抜きでも生まれ得る自然さを感じた… 庶民の現実、一種の諦観の様な泥臭さだろうか。

町じゅうのゴミ捨て場にパンダ

町じゅうのゴミ捨て場にパンダ

はねるつみき

G/Pit(愛知県)

2019/11/27 (水) ~ 2019/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/11/27 (水)

美術音響照明小道具で目を惹く工夫が盛り沢山。独特な舞台装置…埋め尽くされたゴミ袋、その一つとして微妙な相違で表現されたパンダ、役者の一挙手一投足を まるで遊んでいるかの様に映し出すステップを生む踏台と音響。それらが何かしらの暗喩を観客に勝手に想像させながら、普通の演劇とは異なる感覚をエンタメ的に楽しませる多様さがあった。

しかし作品を咀嚼していくと、それでもやはり この芝居の要(カナメ)は… 紡がれる「言葉」だと思わせる。

常住さんの生み出す言葉は本当に強力で、でもこれまで…ちょっと分かり難いところが広い理解を阻んでいたのだが、そこに潤色/演出の安保さんが入ることで、ス~っと呑み込みやすくなった印象だ。その協業にも本作の大きな価値を感じる。

あの記憶の記録

あの記憶の記録

劇団チョコレートケーキ

名古屋市東文化小劇場(愛知県)

2019/11/26 (火) ~ 2019/11/26 (火)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/11/26 (火)

BSで既観なのだが… 分かっていても臓腑に響く… 生で強烈に伝わる「地獄で罪を犯した人間」の魂の慟哭。否応なく人を狂気に陥れる…ある感情。
そこには… 綺麗事も理想論も大局観も… 一切の理屈を机上の空論と思わせる強度がある。観るものを突き落とす…二重三重に張り巡らされた心理の落とし穴が巧妙だ。そこには何一つ万全の解決策などなく… ただ確実に…どこかに遺恨を残し… 誰かしらが被害を被る選択肢しか存在しない。
どの銃口の先にも必ず彼の人がいる… まさしく至言。しかしそうしない先にも万人を救う手立ては決して見えない… そういう厳しさのある作品だった。厳然として… 連綿と続く世界の「負の歴史」を前に… 安易な希望で口当たりだけを良くする生温さが一切ないのが実に良い。

如何なる最善の選択肢も… 結局、その人… その人達にとっての最善でしかなく、人はそうやって凌ぎを削って生きる他はないのか…と、改めて感じさせる。
せめて手の届く範囲の幸せを願う… みっともなくても そういう選択をする。それに関わる限り…どんな背景と理由があっても その行為の肯定を許さなかった父の姿は印象的でした。息子に語り掛ける言葉は観客に向けられた言葉でもあるのだろうなぁ。

その一方で、父との別れ際に先生がとった態度にも…身の回りの幸せだけに甘んじない…彼女の思う最善への信念が窺える。
受け入れられる想いを双方に感じられるからこその名作。然るべくして再演が続く作品であることに改めて納得。

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