サカシマ 公演情報 廃墟文藝部「サカシマ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2019/11/30 (土)

    100mの高さから飛び降りた少女の… 余命5秒の中に凝縮された走馬灯の物語。

    最初に観た2ステ目…あのラストシーンの後の客席の空気が強烈に印象に残る。どう反応して良いのか惑い… 逡巡し… 誰一人拍手できなかったあの時間。そして… 思わず息を呑んだ落下の冒頭シーンも含めて、見事な始まりと締め括り。勿論、内容については甚だしく観る人を選ぶ作品だが… 少なくともその鮮烈さだけはきっと群を抜いた鋭さで万人に届いたと思う。その点では廃墟文藝部史上ダントツなのは間違いない。

    そして公演前から… 煽る様に出てきていた内容に踏み込んだ言葉たちは、作中でも ずっしり意味ありげにその存在感を主張した。
    終わってみれば実に端的で… でも直ぐには意味が分からず… でも頭にこびりつき… 観た後には確実に作品のイメージを代表していると伝わるフレーズが凄いな… 冴えわたっている。

    ネタバレBOX

    全編に漂う人の心を押し潰していく感触も凄まじく… いちろーさんの音楽ばかりか… 地の底から響いてくる様な環境音… ちくさ座特有の換気音までが手伝って… 観るものを絶望の淵に沈めていく。そして… 狂気に晒される人々が次々と翻弄されていく中で… 最後にバトンを渡された主人公・陽毬を掻き立てる感情が… いつもの廃墟文藝部とは違う方向に振れていったのが非常に新鮮だ。

    それは… 彼女の表向きの行為…「飛び降り自殺」とは極めて対照的な…「怒り」だった。

    「私は負けない」

    これが自殺に臨む人間の感情だなんて…果たして想像できるだろうか。

    陽毬の… 驚きの自責が明らかになった後(実際にはかなり言い掛かりであるが、そう追い詰められる流れはしっかりあった…)、その清算として身を投じることで… 自死以外にもう一つ出来ること。我が身を破壊してでも為し得たい悲願とその実現の為の強固な意志。

    それまで人となりとして勇敢と評されるのは姉 灯里の方であったが、実は獅子座の性格として…最初から陽毬は『行動力があって勇敢』であることが暗示されている。気弱な陽毬に… 灯里はさんざん怒りを促しながらも、その一方で「願い事は一つだけにしないと…」と諫めていたが、最後の最後に陽毬は灯里を超え…そのダイブに「2つ」の意味を捻じ込んだ。

    それは贖罪と復讐

    このダイブの終盤…残り5m…そこまで舞台に散りばめられた様々なモノローグのイメージ…「壁と卵」「夜に鳴く蝉」「星占い」「八月の太陽」等々…それらが行為の意味を伴って集約していく「勢いと畳み掛け」は見事で、これも今までの廃墟文藝部にはないスピード感だった。台本を改めて読んで夢想すると… これ、演出次第(表現媒体次第?)で、少年ジャンプ漫画風のクライマックスシーンになる…って印象も湧く。残り5m… 僅か0.1秒に圧縮された出来事に湧き上がる不謹慎な高揚感。

    「私が決める… 今週の私の運勢。第一位は獅子座のあなた。」

    使われる言葉との落差ゆえに… 逆に極めて強い明確な意思を伴い… あらゆるモチーフを結び付けて… 怒濤の如く1点に集約されるカタストロフィが許せないアイツに降り注ぐ。余りにも禁忌な自殺という行為と…この余りにも強い意志を結び付けた作者は尋常じゃない。

    しかもコレはフライヤーデザインそのものの在り姿。

    色んな事が予め晒され…それでも気付けない…最後にハッとさせてくれる…私が好む最高の仕掛けだ。

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    2020/01/08 23:17

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