バルブはFB認証者優遇に反対!!の観てきた!クチコミ一覧

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婆VS女子高生

婆VS女子高生

月刊「根本宗子」

BAR 夢(東京都)

2014/05/03 (土) ~ 2014/05/18 (日)公演終了

満足度★★★

根本さんが出演しないバー公演
私にとって初めての、根本さんの出ないバー公演。
根本さんが出ないとどうなるんだろうかと、それも楽しみの一つとして観に行ったが、本作について言えば根本さんもキャストに加わり、多くの作品でそうするようにまとめ役を務めたほうが劇が締まった気がした。

ネタバレBOX

本作のような対立の劇というのは、仲裁役がいないと話がまとまりづらいもの。
そういう役回りで根本さんが出ていれば以下のような事態は避けられたのかもしれないが、仲立ち役のいない本作はバトル劇として話が収めづらくなったのか、途中で大どんでん返しが起きてせっかく出来上がった対立の構図が無化されてしまう。
この点が非常に残念だった。
たびたび笑いながらも身構えて成り行きを見守っていたこちらとしては、この大転回により、力み返っていた足をパコーン!と払われた感じ(笑)。

とはいえ笑い所は多く、梨木智香と異儀田夏葉演じるババアコンビが内々での決まり事をJKコンビにつぎつぎ押しつけていくくだり等は行動にババアらしさが出ている上、梨木・異儀田コンビのワガママババアっぷりが真に迫っていて、爆笑!
2人は息もぴったりで、2人が同じくババアを演じるスピンオフ作品があったらぜひ観たい。

また、JKコンビが高校演劇のコンペを控えた演劇部員で、演る劇が「オリザさんの『S高原から』」だという楽屋オチ的ギャグにも大笑!
私の観た回は演劇に暗いお客さんが多かったのか、ほとんどの方は「オリザさん」が誰だか分からずポカ~ンとしていましたが、私は身をよじって笑ってしまった。
でも、可笑しかったのは「オリザさん」だからであって、同じ演劇界の大物でも、野田秀樹や鴻上尚史じゃ多分クスリともこなかったはず。
こういうくだりでの人物チョイスって大事だよなぁ。。。
うさぎストライプと20歳の国

うさぎストライプと20歳の国

うさぎストライプ

アトリエ春風舎(東京都)

2014/05/01 (木) ~ 2014/05/06 (火)公演終了

満足度★★★

20歳の国作品に感動!
20歳の国『Don’t Be a Stranger!』が素晴らしかった。
ある印象深いやり取りで劇が閉じられ、その瞬間、タイトルの持つ意味がじんわり心に沁み入ってくる好編。
生徒たちがJ-POPナンバーの独唱で心象を表現したり、ヒップホップ風のダンスが挿し込まれたり、LINE上の噂話が校内の恋愛模様を左右したり、劇は現代的な要素に満ち、一見するとスマホ世代のチャラい男女を描いた軽薄な学園青春モノにも思えるが、それらに惑わされず話の核心部分だけを注視するなら、本作はオーソドックスな甘酸っぱい青春譚と言え、そこのところが旧世代のオッサン客の感動のツボをブレなく射抜いた。

また、内容だけでなく、見せ方の巧みさにも感心。
話の断片をリフレインも交えながら時系列にとらわれずに並べていく作劇法は当今の国内演劇の流行りであり、試みている演劇人はあまたいるが、竜史さんほどこの方法を活用できている作・演出家を他に知らない。

なお、タイトルの意味については、竜史さんが当日パンフの口上でとても腑に落ちる説明をしてくれていて、英語にはこんな素敵な言い回しがあるのかと目からウロコでした。

ネタバレBOX

「ズバリ聞きます。●●君(さん)と付き合ってますかっ!」
ある男生徒が猪木口調でいろんな男女にそう尋ねる天丼ギャグがツボでした。
でも、この天丼が笑いを生んでいったん場の空気をゆるめるからこそ、これを受けた某女生徒のハッとするような一言がパンチ力を増すわけで、ここにも竜史さんの作劇の巧さを感じました。
本作最後のセリフとして女生徒が発するこの言葉はなんてことない普通の言葉なのに、その短い文句には某男生徒への熱い思いが込められていて、聞いた瞬間、あやうく嗚咽しそうになりました。
ジョビジョバ

ジョビジョバ

U-1グランプリ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2014/04/25 (金) ~ 2014/05/06 (火)公演終了

満足度★★★★

あの6人が12年ぶりにコントを!
こう言ってはナンであるが、あの6人が久々に集まることに意義がある、良くも悪くも記念公演的な興行。新作主体なのは良いとして、一同が叡智を尽くして作ったような図抜けた秀作は見当たらず、奇声で笑いを取りにいくズルい(笑)ネタやパロディネタ、自虐ネタなど、お手軽なコントが目立った。
それもそのはず、6人は「売れてやるぞ!」と野心を燃やす若手集団では最早なく、もう解散したグループであり、そこまでコントに心血を注ぐ必要は最早ないのだ。

そう考えると切ないが、コント師としての6人の腕は落ちておらず、一同が磐石なコメディ演技でバカをやる姿を久々に見られただけでも充分満足! それだけでなく、めっきり老け込んだ(失敬!!)坂田さんに枯れた味わい(重ねて失敬!!)が加わったこともあり、昔のようにイキがいいだけでない、また違ったジョビジョバも楽しめた。

構成に注文をつけるなら、フリートークのコーナーがあっても良かったか?
カーテンコールでわいわい雑談を交わすだけでなく、トークコーナーを別枠で設け、みんなの近況、とりわけ実家の寺を継いだ明水さん、ゲームディレクターになった石倉さんの近況をもっと詳しく聞かせて欲しかった。
再集結までのいきさつを描いたドキュメント(?)コントはあったけれど、あれに正しい近況が描かれていたとは到底思えないので。。。

約120分。

ネタバレBOX

カーテンコールのフリートークが一段落し、「もうお開きか!?」と思ったところで名作「関根」を上演! この演出にはシビれました。。。
迷迷Q

迷迷Q

Q

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/04/24 (木) ~ 2014/05/01 (木)公演終了

満足度★★

二度観はキツい劇団
「人間≒動物」というテーマを上手く展開できておらず、かなり退屈な100分弱だった。とりわけツラかったのは後半。乱脈でとりとめのないお話がどこまでも続いて、何度寝落ちしそうになったことか。。。

本作に飽きただけではない。Qを観るのは前作『こq』に続き2度目なのに、私はQという劇団自体にもう飽き始めている。
あっけらかんとして明け透けな性表現、妙なイントネーションで発されるセリフ、喋りながら役者が繰り出す妙な動き、「とかとかぁ~!」というつなぎの文句、等々、全てが前作そのままで、前作鑑賞時には刺激的に感じられたそれら全てが、今回早くも食傷の対象となってしまったのだ。

個性の強い劇団を維持するのは大変だなあ、とつくづく思う。独特の作風は初めのうちこそ新鮮だが、独特であればあるだけ、それはすぐに飽きられてしまう。

いや、飽きたばかりでなく、前作『こq』、本作と2作続けて鑑賞し、私の中にはQという劇団への苦手意識さえ芽生え始めている。
2作観て見えてきた作・演出家の人間観が厭わしくなってきたのだ。
この劇団の作・演出家には、人間を、食べ、排泄し、子孫を残して死んでゆく、ただそれだけの存在と捉えたがる傾向、別言するなら、その動物性を重くみて人間を卑小視したがる傾向があり、だからこそ上述のようなテーマのもとに本作は作られているわけだが、その冷めた人間観を反映した厭世的(/厭“生”的)なムードが彼女の作り出す劇にはおのずから色濃く漂う。その、生を蔑むような感じ、生を嘲るような感じに鼻白んでしまうのである。
劇中で某慈善団体が冷笑の的にされるのも、そのような人間観が根底にあるがゆえだろう。

このペシミスティックな人間観は、これから作劇を続ける上で、きっと障壁になるに違いない。
なんとなれば、生きようと足掻く人間の在りようは千差万別で、そこからは多くの物語が切り出せるが、生を蔑む人の心の在りようはどれも似たり寄ったりで一様であり、厭世的な劇は互いに似てくる傾向にあるからだ。そうなれば「マンネリ」と斬り捨てられて飽きられるのがオチ。

Qが演劇界に長くとどまろうとするならば、作風の大幅な変更、そして作風を支える人間観の抜本的な更新が必要だろう。

人間の生を過剰に讃美する演劇も不自然で気持ち悪いが、過剰に貶める演劇もそれはそれで不自然であり、どこか無理が感じられる。

葉桜

葉桜

mizhen

古民家 巌邸 (東京都稲城市押立1744-46)(東京都)

2014/04/19 (土) ~ 2014/04/29 (火)公演終了

満足度★★★★

mizhen流岸田劇
岸田國士の原戯曲に出てくる母娘はこんな家に住んでいたのかも…。
そう思わせる古民家で、mizhen流の趣向が盛られた『葉桜』を堪能。
私の観た日は、終演後、「mizhenを囲む夕べ」的な催しが開かれ、そちらも併せて楽しみました。

ネタバレBOX

『葉桜』が書かれた頃の日本人がいかに保守的で慎ましく、体面を気にしながら暮らしていたか?
その窮屈な生き様を伝える当時の新聞の人生相談欄を蕗子と幸子のW佐藤が相談者役と回答者役を交互に受け持ち、口述してゆくパフォーマンスから公演はスタート。
やがて、人生相談欄に寄せられたある悩み事の再現VTRならぬ再現芝居のようにして『葉桜』が演じられるが、まず、そこに至るまでの先述のパフォーマンスが面白い。
W佐藤が客席側を向いて並び立ち、ギタリストが生で奏でる滑稽なメロディーに乗せ活弁士さながらの時代がかった口ぶりで掛け合いを演じる様子はまるで音曲漫才のようで、観ているこちらの頬を緩ませる。
これに続いて上演される『葉桜』は、人生相談パフォーマンスからの流れで立ったまま演じられる事、mizhen流のおふざけがところどころ挿し込まれる事、この2点を除けば極めて真っ当。
意志の強そうな面立ちの蕗子さんが気丈ながらも娘思いの優しい母親を、はにかみ顔がデフォルトのような幸子さんが恥ずかしがり屋の娘を違和感なく演じきり、『葉桜』の世界を見事に立体化させている。
お蔭で、私は原戯曲を読んでから鑑賞したが、『葉桜』という作品への理解がより深まった。
体面から娘が欲しい由を親づてにしか伝えてこない見合い相手を疎み、そんな男と上手くいくのか訝りながら求婚に応じる気があるのかどうかを娘に問いただす母。
内気な性格から、はっきりとした返事をなかなか寄越さない娘。
それでも粘り強く話を進めるうち、見合い相手が思いのほか娘を大事にしてくれている事を母は知り、娘を結婚へ向けて歩み出させる―。
『葉桜』がこのような話である事が、今回の上演を観る事でよりはっきりと分かったのだ。

惜しまれるのは、幕切れがあっさりしすぎている事。原戯曲の通り、泣きのシーンで締めくくる必要はないとは思うが、何らかの工夫による“余韻”の演出が欲しかった。

それから、なぜ今、どんな問題意識から『葉桜』を上演するのか、ここのところがフライヤー、当パンの口上、作品そのものを通じてじゅうぶん説明されているとは言い難く、どんな心持ちで観てよいやら迷ったのも正直なところ。この点が説明されていれば、ただ漫然と観るだけでは得られない、さらなる“気づき”が得られたかもしれない。

劇団ホームページにはmizhenの3人が“現代流のお見合い斡旋システム”とも言うべき
結婚相談所のスタッフと問答しているコンテンツもあり、主宰の藤原さんの関心は結婚、とりわけお見合い結婚に向いているものと推察されるが、もしそうならば、漫才のような自由なスタイルで上演された事でもあるし、
演者2人に前口上のような形で『葉桜』上演の意図を説明させても良かったのかも。
その上で、「もしギャルがお見合いしたら…」的な寸劇を挟んで『葉桜』と対比させ、お見合いをめぐる状況が今と昔でどう違うかを見せるのも一興だったか?
かと万

かと万

アンファンテリブル・ユニオン

中野スタジオあくとれ(東京都)

2014/04/19 (土) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

複雑な人間模様にクラクラ…
ある製菓会社の“一番長い日”をノン編集・リアルタイムで描いた約100分。いや、5~6時間の出来事が2時間足らずで描かれるので、リアルタイムよりスピーディーに劇は進んだことになる。

なので舞台上では色んな出来事がめまぐるしく起こり、それにつれて徐々に明らかになってゆく複雑な社内事情、人間模様の面白いこと! 
方々で同時多発的に会話がなされるシーンも多く、理解するのに少々骨が折れるものの、頑張って観ていると、錯綜してこんぐらがった人間模様にクラクラさせられます(笑)。

いやぁ~っ、堪能しましたっ!!


かなり深刻な話なのに、劇全体を和やかさと人情味、そしてユーモアが貫いているのもイイッ!!

ネタバレBOX

ほぼがらんどうの舞台の奥に小イスがびっしり並べられ、役者達はイスに着いて体を密着させながら、窮屈そうに肩をすぼめて待機。そこから出番のきた役者が進み出てきて芝居に加わるスタイルが新鮮でした。
あのっ、先輩…ちょっとお話が… …ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?

あのっ、先輩…ちょっとお話が… …ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?

シベリア少女鉄道

座・高円寺1(東京都)

2014/04/16 (水) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★

いろいろ不可解
初シベ少だったのに残念でした。私の観た回はたまたま不出来な回だったのか、何も起きていないのに役者がクスクス笑い出したり、タバコに火をつけるといったちょっとした動作を超オーバーアクションでこなしたり…。
さらにおかしなことには、そんな不出来な舞台を見せられておきながら、客は怒り出すどころかゲラゲラ笑っている。
他にも、あまり必要性が感じられないビフォアートークなるものが開演前に催されたりと解せないことだらけ。。。
などと文句を並べながら、星3つとまずまずの評価をしている自分も解せない。

片腕・少年・水晶幻想

片腕・少年・水晶幻想

台湾・日本国際協同企画川端康成トリロジー

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/04/16 (水) ~ 2014/04/21 (月)公演終了

満足度★★★

「水晶幻想」が傑出!
そのエッセンスを損なわぬまま原作を舞踊作品に昇華させた「水晶幻想」が出色!

ネタバレBOX

「水晶幻想」の原作小説は、上流夫人が夫とデカダンスな会話を交わしながら色んなものを幻視する話。ノーブルな顔立ちの美女・山縣美礼さんが幻想的な照明に彩られ、きらびやかな衣装を身に纏ってなまめかしく舞う姿はまさに“貴婦人”で、うっとりと見入ってしまった。
本作は純粋に一舞踊作品としても楽しめそうだが、劇空間の背後に原作を透視しながら観たほうが味わいが増し、より楽しめるかと思う。

中年の独身男が若い娘に一晩だけ左腕を貸してもらう奇譚「片腕」は原作の持つ薄気味悪さ、それと背中合わせのなまめかしさが損なわれ、ノゾエ流喜劇に姿を変えていた。
原作にも滑稽味はあり喜劇化は許されるとして、「それなら…奈良?」「鹿せんべい!」など原作にない、無理くりねじ込んだような駄ギャグには閉口。また、仮に喜劇にするにせよ、本作のようなドタバタ喜劇にするのはいかがなものか?
それから、男に腕を貸す女の役でキュートな中国美女が出てくるが、どんな女かは客の想像に委ね、あくまで手だけを出演させたほうが良かったのでは?
ただ、借りた腕を男が愛でるシーンで、女のふくらはぎ、全身などを腕に見立てて愛撫するアイデアは悪くない。

川端の学生期の同性愛体験を描いた「少年」は、「片腕」以上に残念な作品。
原作は年を重ねた川端が学生期を回顧する形式で書かれており、そのせいなのか、熟年男優が原作の同性愛描写を読み上げていくスタイルで劇は進むが、それに合わせて美青年2人が舞台上で睦み合うくらいの演出がなされても良かったのではないだろうか?
カッコいい人だったとはいえ、熟年の男優が朗読のかたわら身をくねらせて踊るだけではエロスは感じられない。
やまとなでしこ-番外編-

やまとなでしこ-番外編-

Theちゃぶ台

アトリエ春風舎(東京都)

2014/04/18 (金) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★

もっと泥臭い劇かと思いきや…
事故で早世した女幽霊の相手をするタバコ屋のお婆さんが元気婆ちゃんという設定のため、話が辛気臭くならないのがいい。チラシの写真と案内文から、私の苦手なお涙頂戴の人情喜劇を想像していたので、いい意味で裏切られました♪

ネタバレBOX

それでも、お婆さんと楽しいひとときを過ごした幽霊が現生への未練を断ち切り成仏していく美しくて感動的なシーンでは危うく落涙しそうに。。。

意外だったのは、お婆さんの営むタバコ屋がリヤカーを引いて売り歩く行商スタイルのお店であること。
なので、お婆さんにも家はあるのだろうが、劇中では常にリヤカーと一緒。
家を持たない生き方、定住しない生き方、一つ所にとどまらない生き方を唱導しているようにも受け取れて、考えさせられました。
ぺんぺん草

ぺんぺん草

浮世企画

OFF OFFシアター(東京都)

2014/04/16 (水) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★

「だってテオさんだよ?」
年齢・性別にかかわらず、現状に満足できない田舎町の住民達がそれぞれに自分探しをする110分。
ただ、自分探しの色んな形をあれもこれもとたくさん見せようとするあまり話が散漫になっており、物語がいまひとつ深まっていかない。
仕切りの多いセットが役者の動線を制約しているのも気になった。もっと盛り上がってもよさげな場面があまりハネずに終わっているのは、役者の動きを縛るこの舞台装置にも原因がありそう。

ネタバレBOX

ニコ生的サイトで注目されてタレントになるナルシス娘の自分探しエピソードは話の本筋との関連が薄く、ばっさり切り捨てるべきだった。
それよりは、本作のキーマンである「ライフバリュープランナー」の胡散臭さ、この男に選挙で負ける「元・町長」の思わぬ実直さを描くことにもっと時間を割き、2人の対照を鮮明にしたほうが話が盛り上がり、劇の見応えは増したと思う。
ついでに言うなら、ライフバリュープランナーに丸め込まれて発電士になったお蔭で足をダメにした青年の「その後」の描写にも、もっと時間を割いて欲しかった。そして、気のいいあの青年が幸せになる兆しを示して欲しかった。
ティファニーで晩酌を

ティファニーで晩酌を

順風男女

Geki地下Liberty(東京都)

2014/04/10 (木) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

玉石混淆かと思いきや…
作家の数の多さから玉石混淆を覚悟したが、そんな事は全然なく、ハイアベレージなコント集でした。
オール女性キャストによる公演ながら、女子だけの芝居によくあるように女のいやらしさを描くのでなく、“憎めないいじらしさ”に光を当てた作品が多いので、イヤな気分に陥る事なく楽しめた。
そうなったのは作家陣がオール男子のせいかもしれないが、やっぱ女子だけのコント集、女子が可愛く見えるに越した事はありません!
感心したのは、発想が良いだけでなく、どの演目もディテールの作り込みがしっかりしている事。大胆な発想で大きな笑いを誘い、固有名詞の取り入れ方が絶妙な小ネタ群でクスクス笑いを誘う、そのバランスが素晴らしい。
異常なまでに「節約」に固執するコントなど、色んな意味での「女らしさ」にフォーカスした作品が多いのも評価できる。

男としては、今井英里さんの飾らない雰囲気と豊乳、井口千穂さんの美しさに心をつかまれました。。。
井口さんは芝居の引き出しの多さも魅力。

ネタバレBOX

シンデレラ、白雪姫、眠り姫などの王子様がカブっていて何股もかけている浮気者と判り、そのうえ靴フェチでネクロフィリアで婆フェチの変態だとも判明するお伽噺ネタが好き♪
グローブ・ジャングル

グローブ・ジャングル

虚構の劇団

座・高円寺1(東京都)

2014/04/04 (金) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

千変万化
リアリズム演劇には作り出しえない、千変万化の劇世界を堪能。
それでいて題材はリアル。
汎ネット時代の「現実」が生み出す切実な諸問題は、もはや写実的リアリズムでは描きえないのかもしれないと本作を観て強く感じた。

本作では根本宗子さんが自分の劇団ではまずやらないハジけた役を演じていて、その滅多に見られない素っ頓狂な演技も併せて楽しみました。

ネタバレBOX

死にたい者にしか見えない幽霊(小沢道成)と親しくていた女の子(小野川晶)の目に幽霊が見えなくなるラストシーンが胸に迫った。
ネットで叩かれ世の中に絶望していた女の子が生きる希望を取り戻すめでたいシーンのはずなのに、幽霊との交流が断たれるのかと思うとなんとも切ない。。
しかし彼女の今後の人生の中で、幽霊はまた現れたり消えたりを繰り返すはず。すなわち彼女は、今後も生と死の間を揺れ動きながら生きていくはず。
それが人間の健全な有りようというものだろう。

それにしても、小野川晶さんの役者としての成長ぶりにはびっくり。その姿を拝見したのは『ハッシャ・バイ』以来だったが、生来の可愛さに緩急自在な演技力と華が加わり、時に大胆、時に細やかな豊かな演技に見入ってしまった。
美しいヒポリタ

美しいヒポリタ

世田谷シルク

吉祥寺シアター(東京都)

2014/03/27 (木) ~ 2014/03/31 (月)公演終了

満足度★★★★

130分!
混沌を堪能!
そして林ちゑさんの美しさを堪能!!

痒み

痒み

On7

シアター711(東京都)

2014/03/25 (火) ~ 2014/03/30 (日)公演終了

満足度★★★★

ややピンボケ気味のお芝居
もっと話の焦点を絞り込むべきだったか?

ネタバレBOX

「人並み」を蔑んで周りとつるまず孤高を気取っていた女が「何もなかった」人生を送った。その皮肉。その侘びしさ。そこへもっともっとフォーカスして作劇すれば、より心にズシンとくる舞台になったと思う。
荒唐無稽な夢幻的世界の中に人間の真実を描き出そうとするサリngさんの作風は好み。
ヒネミの商人

ヒネミの商人

遊園地再生事業団

座・高円寺1(東京都)

2014/03/20 (木) ~ 2014/03/30 (日)公演終了

満足度★★★★

21年ぶりに観劇。若手演劇人必見!
 本作が再演されると聞き、飽き性な宮沢章夫のこと、ガラッと趣向を変えてくるかと思いきや、意外や脚本・演出とも大きくは変わっておらず、お蔭で、「こんなギャグ、あったあった(笑)」などと懐かしさに酔い痴れながらこの大傑作を観るという幸せな105分を過ごすことが出来ました。
 初演にも出ていた中村ゆうじと宮川賢が同じ配役で出ているほかは全て新キャストというこの座組で、かの大傑作をその妙味を損なうことなく再現したのは立派。
 それどころか、初演には当時の小劇場界屈指のコメディエンヌ・ふせえりが出ていたこともあり、コメディとしての出来映えは初演に劣るものの、“カネにまつわる怪異譚”としての完成度は再演のほうがむしろ勝っているくらい。

数々の“小さな不思議”が時に笑いを生み、時に背筋をゾクリとさせるとても宮沢作品らしいこの傑作を、可能ならば演劇を始めて間もない若い人達に観て欲しい。
というのは、最近の若手演劇人の作る劇には、宮沢章夫の影響がほとんど感じられないからだ。
それは無理からぬことでもあって、ここ10年ほどの宮沢章夫はスタイルにばかりこだわった分かりづらい劇を作り続け、客を楽しませることを第一義とする真っ当な劇を作ってこなかった。
なればこそ、最近の若手演劇人は宮沢章夫の芝居など観たことがなく、影響を受けようにも受けようがなかったのだ。
そのため、本谷有希子くらいの世代を最後に、宮沢章夫の影響を大なり小なり感じさせる演劇人は出てきておらず、宮沢イズムは今世紀の半ばを待たずに死に絶えようとしている。
これはまずい。
もろに影響を受けてもいいし、ピンとこずにスルーしてもかまわないので、若き演劇人は何はさておき本作を観るべき。そして宮沢章夫という偉大な演劇人の名前を頭に刻み込むべきだ。
自分で書いておきながら「神格化が過ぎるのでは?」との疑念が頭をよぎりもするが、いちど宮沢章夫を通過してから演劇を創作するのと、宮沢章夫をくぐらずに作劇にあたるのでは、出来上がる劇の水準が大きく違ってくるはず。
宮沢章夫という人はそれくらい凄いのだ。
あまたいる演劇界の後輩たちにもっともっと影響を与えるためにも、宮沢章夫は本作のように実があって面白い作品をまた作り始めるべきである。

劇の感想に戻ると、役者ではノゾエ征爾、宮川賢、そして舞台となる印刷店の奥さん・美智を演じた笠木泉が印象に残った。
美智の夫と仲のいい写真店店主を演じた宮川賢は、あれから約20年の時を経て枯れた味わいが加わり、初演時よりもずっとずっと“商店街のオヤジ”っぽくなっていて劇世界により馴染んでいたし、笠木泉は初演で美智を演じたふせえり同様に快活で明るく、ふせえりにない品と気高さをも感じさせ、当方は憧れの眼差しでその姿を追い続けた次第。スラリとした美しい立ち姿とよく通る澄んだ声にも魅了された。

ノゾエ征爾についてはネタバレにて。

ネタバレBOX

ノゾエが演じるのは、日根水(ひねみ)という田舎町にできた大銀行の出張所に中央から転勤してきて、預金や借金を勧めるため町の商店を回っている営業マン。
コミカルな中盤までは営業にきた印刷店で次々に物を失くしてパニクる様を持ち前のトボけた演技で面白おかしく表現して笑いを誘うが、終盤に至り、中村ゆうじ演じる印刷店主が紙幣の偽造をしていると知ってからはショックのあまり正気を失い廃人と化していく。
この狂いゆく演技がとても真に迫っており、ノゾエのこの繊細な演技にも支えられ、今回の再演は同じ役を山崎一が演じた初演よりもずっとずっと見応えある一作に仕上がっていた。

ここまで褒めておきながら星を4つにとどめたのは、先述の通り、本作をコメディとして観た場合、出来が初演よりも劣るため。
初演では大ウケしていた「メランコリー」や「ウルトラ」にまつわるやり取りが“ややウケ”に終わっていたのをはじめ、初演で湧いたシーンがさほどウケていなかったのは、再演では笑いよりも怪異性に重きを置いたせいか?
なんにせよ、それらのシーンが爆笑を取ったところで劇の大勢に影響はないはずなので、それらのシーンもちゃんと笑えるように演出して欲しかった。
OLと課長さん

OLと課長さん

関村俊介と川村紗也と浅野千鶴の三人芝居

スタジオ空洞(東京都)

2014/03/21 (金) ~ 2014/03/23 (日)公演終了

満足度★★★

関村流異世界に出会えず…
我々の暮らすこの世界から少しだけズレている、ビミョーな異世界を舞台とした可笑しな会話劇を作り続ける関村俊介氏。だが今作は、肝腎の「異世界」の作り込みがやや甘かった印象。
結果できあがったのは、公園で課長(関村俊介)と昼休みを過ごす天然OLコンビ(浅野千鶴、川村紗也)のキャピキャピおバカトークに課長がつぎつぎツッコミを入れていく賑やかで健全な劇。
宣伝写真がニコパチの楽しげなものであることから、“今作は日常的で親しみやすい健全な劇にしよう!”とハナから決めていたのだろうし、女優二人のクセの無さゆえ突飛な話は作りづらかったのだろうけど、「やや病的」な関村ワールドに馴染んだ身には今作、やや食い足りなかった。

とか言いながらも個々のやり取りは面白く、たびたび笑わされたことははっきりと記しておきます。

ところで、45分と短尺なのはあらかじめ予定されていたことなのか、それとも、思うように話が進まず息切れした結果なのか?
もし後者なら、「異世界」の構築にあまり注力しなかったのがその一因である可能性大。

ネタバレBOX

今作は結末もいまひとつ。
丸く収めようとして、結果うまくいっていない。
課長も巻き込み無駄話を続けたせいで十分なランチタイムが取れなくなり、「今日はお昼は無しにしましょう」と言ったはずのOL二人が、部長が飲み物を調達中に移動販売車でカレーを買おうとおそるおそる立ち上がり、ちょうど戻ってきた部長に見つかる。
あのシーンで幕を閉じ、続くシーンをその前に持ってくるべきだった?

また、オフィスものという設定があまり生きていないのも気になった点。男性教師と女子高生二人の取り合わせでも似たような話は成立したと思う。
シフト

シフト

サンプル

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2014/03/14 (金) ~ 2014/03/23 (日)公演終了

満足度★★★★

デタラメな中にも説得力
かなりデタラメな劇だったが、デタラメに説得力があり、時に身につまされた。

ネタバレBOX

 それは、われわれの生きるこの世界が、劇世界と同程度にデタラメで不条理だからだろう。
 描かれているのが、われわれの生きる現実と地続きで、そこまでかけ離れていないがゆえに引き込まれた。
ちょっと待って誰コイツ!こんなヤツ知らない

ちょっと待って誰コイツ!こんなヤツ知らない

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2014/03/14 (金) ~ 2014/03/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

構成が見事
短編集だからって単なる羅列に終わっておらず、構成が見事でした。
今を時めくアノ人がらみの時事ネタも、ただサワっているだけでなく、話への取り込み方がとても巧みで感心!

ネタバレBOX

幕間で連作的に演じられるおバカ話とスケールの大きい最終譚がまさかの融合を果たす幕切れも天晴れ!
死を扱った重い話もありながら、全体としてはポジティブな人間讃歌になっていて、なんだか元気づけられました。

一番笑ったのはある人物が徐々に自転車に変態していく幕間連作中の小ネタと、増田赤カブトが抑揚に富んだ見事な演技で明るく健気なブスを演じる一人コント。増田さんの芸風はニッチェ江上を彷彿させる。

「ふたりは永遠に」はフレドリック・ブラウンの掌編ばりの着想の冴えに唸らされた。
「彼の地」

「彼の地」

北九州芸術劇場

あうるすぽっと(東京都)

2014/03/07 (金) ~ 2014/03/09 (日)公演終了

満足度★★★★

北九州に桑原演劇はお似合い?
 内容を北九州に絡めねばならないという約束事の上に作られる、北九州芸術劇場プロデュース公演。
 以前観たこのシリーズの別公演は北九州へのこだわりが薄すぎて鼻白んだが、本作は北九州市の主要な名所がもれなく出てくる、まさに北九州の劇。
 ガラの悪そうな土地柄だけに人情味も強そうな北九州に、愛憎で結ばれた濃い人間関係を描き出す桑原演劇はしっくりはまり、加えてふんだんな笑いも誘因となって、劇世界にグイグイ釣り込まれた。
 九州と無縁な役者も混じるなか、交わされる方言に不自然さがなかったのものめり込めた理由か?

ネタバレBOX

妻に死なれた老占い師と、奇抜ないでたちのその息子。
アル中の兄に手こずる弟と、二人の母親。
挙式を前に破局しかけたカップルと、二人をなだめる新婦の友人。
他にもワケありな人間達が何組か登場し、それぞれのドラマが絡み合って大きな物語を紡ぎながら、各ドラマにもしっかりとした終幕が用意されている秀作。
ただ、夫を捨てて北九州へ逃げてきたストリッパーと追ってきたカタギ夫のエピソードは二人の取り合わせがチグハグな上、終幕もややグズグズ。
この点が気になったので、星は4つとしました。
サニーサイドアップ

サニーサイドアップ

森崎事務所M&Oplays

本多劇場(東京都)

2014/02/21 (金) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★

蛇足が過ぎて感動がフイに…
 某キャストの一生を描いた態(てい)のフェイク伝記劇。時系列をバラバラにしてその生涯を見せる。
 目当ての笑いがふんだんでまずまず満足はしたものの、作劇の不備により、残念ながら感動は半減。
 余計な設定や蛇足的なエピソードを排した上で、諸シーンをもっと適切に配置すれば感動は増したはず。

ネタバレBOX

 「某キャスト」とは荒川良々のこと。
 荒川をモデルにした「たいくん」こと嵐山鯛という人物を荒川本人が演じ、鯛が上京して役者になり、死ぬまでは言うに及ばず、その仲間たちが送った晩年の人生までが時系列をシャッフルして描かれる。
「特別な人生なんてどこにもありませんが、どうでもいい人生もまた、どこにもないのだと思います。」
 作・演出のノゾエ氏が当パンの挨拶文に記したこの一文からは「凡人が生きた凡人なりにも劇的な人生」を描こうとの意図が窺え、芸能人オーラに乏しい凡人的な佇まいがウケてブレイクした荒川を主役に据えた理由も汲み取れるが、結果できあがった劇はやや「劇的指数」が高すぎた印象。
「劇的指数」を高めてしまったばっかりに鯛の人生は平凡から程遠くなり、客はその人生に共感しづらくなってしまった。感動が半減したのはここに一番の原因があるように思われる。
 鯛の出産直後に「死んだ」母が鯛の挙式用に遺したビデオレターを終生独身の鯛が鑑賞する、本作のクライマックスともなりえた名シーンが台無しになってしまったのも、「劇的指数」を高めすぎたがゆえ。
 鯛の母は女として「死んだ」にすぎず、性転換して生き延びていたことがビデオレターのシーンの後に明かされるが、劇的指数を高めるために加えられたこの蛇足的な「後日譚」のお蔭で、ビデオレターのくだりで感動した私を含む多くの客はバカを見ることに。。。
 母親は鯛を産んでほどなく死んだ。
 これだけで済ませておけば、「凡人が生きた凡人なりにも劇的な人生」を描こうとしたこの劇はビデオレターのシーンをクライマックスにして綺麗にまとまり、成功を見ただろうに。。。
 だが実際には、母が男となって生きていたことが明かされたり、鯛の仲間たちがブラジルに渡って事業を始めたり、余計なことがどんどん足されて焦点がぼやけてしまい、つかみ所のない作品に。
 これらの蛇足を省いた上で、ビデオレターシーンの後に置かれた高校時代の苦い恋愛譚、ハリウッド映画の撮影シーンなどをそれより前に持ってくれば、本作の完成度は大きく跳ね上がったに違いない。

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