サニーサイドアップ 公演情報 森崎事務所M&Oplays「サニーサイドアップ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    蛇足が過ぎて感動がフイに…
     某キャストの一生を描いた態(てい)のフェイク伝記劇。時系列をバラバラにしてその生涯を見せる。
     目当ての笑いがふんだんでまずまず満足はしたものの、作劇の不備により、残念ながら感動は半減。
     余計な設定や蛇足的なエピソードを排した上で、諸シーンをもっと適切に配置すれば感動は増したはず。

    ネタバレBOX

     「某キャスト」とは荒川良々のこと。
     荒川をモデルにした「たいくん」こと嵐山鯛という人物を荒川本人が演じ、鯛が上京して役者になり、死ぬまでは言うに及ばず、その仲間たちが送った晩年の人生までが時系列をシャッフルして描かれる。
    「特別な人生なんてどこにもありませんが、どうでもいい人生もまた、どこにもないのだと思います。」
     作・演出のノゾエ氏が当パンの挨拶文に記したこの一文からは「凡人が生きた凡人なりにも劇的な人生」を描こうとの意図が窺え、芸能人オーラに乏しい凡人的な佇まいがウケてブレイクした荒川を主役に据えた理由も汲み取れるが、結果できあがった劇はやや「劇的指数」が高すぎた印象。
    「劇的指数」を高めてしまったばっかりに鯛の人生は平凡から程遠くなり、客はその人生に共感しづらくなってしまった。感動が半減したのはここに一番の原因があるように思われる。
     鯛の出産直後に「死んだ」母が鯛の挙式用に遺したビデオレターを終生独身の鯛が鑑賞する、本作のクライマックスともなりえた名シーンが台無しになってしまったのも、「劇的指数」を高めすぎたがゆえ。
     鯛の母は女として「死んだ」にすぎず、性転換して生き延びていたことがビデオレターのシーンの後に明かされるが、劇的指数を高めるために加えられたこの蛇足的な「後日譚」のお蔭で、ビデオレターのくだりで感動した私を含む多くの客はバカを見ることに。。。
     母親は鯛を産んでほどなく死んだ。
     これだけで済ませておけば、「凡人が生きた凡人なりにも劇的な人生」を描こうとしたこの劇はビデオレターのシーンをクライマックスにして綺麗にまとまり、成功を見ただろうに。。。
     だが実際には、母が男となって生きていたことが明かされたり、鯛の仲間たちがブラジルに渡って事業を始めたり、余計なことがどんどん足されて焦点がぼやけてしまい、つかみ所のない作品に。
     これらの蛇足を省いた上で、ビデオレターシーンの後に置かれた高校時代の苦い恋愛譚、ハリウッド映画の撮影シーンなどをそれより前に持ってくれば、本作の完成度は大きく跳ね上がったに違いない。

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    2014/03/04 15:01

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