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2013年度 1-10位と総評
未来を忘れる

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未来を忘れる

文学座

 演劇を通じ、全人類に問いかけ続ける松井周。その姿勢がとりわけ鮮明に感じられた野心的怪作。

ぬけ男、恥さらし

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ぬけ男、恥さらし

MCR

 ナンセンスコメディと切ないメロドラマの奇跡的な共存!!

夜明けに、月の手触りを

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夜明けに、月の手触りを

mizhen

 転職を繰り返すアパレル店員、アイドルにはまる保育士、広告代理店で働くデキる女、細胞を研究する大学院生、関西から上京した女芸人。人生の転換期であり、かつての結婚適齢期でもある20代後半を迎え、社会人として、そして女としての焦りを感じ始めた職業も生き様もまちまちな5人―。独白によって語られるそれぞれの境涯が本人たちのあずかり知らないところで重なり合い、徐々に物語を織りなしていく斬新なスタイルのギャラリー公演。
 うす暗く照らされた横長の空間には女たちの複雑な心情を表すようにねじれたメロディーをもつクラブサウンドが流れ、演じ手たちは語りの合間に、あるいは語るかたわら、心の綾を表すように妙なダンスを曲に合わせて踊りながら泳ぐように場内を動き回る。
 その姿は水槽を徘徊する金魚のようでもあり、生き物の観察記録を見ているような冷めた意識を観客にもたらす一方、錯綜した思いをほとんど句点を打つことなく混沌としたままに表白し、暗がりのなか生の悶えを表すように踊り回る女たちの姿を見るのは男女を超えた人類普遍の集合無意識を見せられているような気分に観客を陥らせもし、演技空間を挟んで向かい合わせに座らされた観客たちは対面席の客たちと集団で同じ夢を見ているような心地になり、合間で繰り広げられる夢さながらに生々しい物語を共有し、皆でどっぷり感情移入しながら劇世界に引きずり込まれてゆく。
 かくして、女性固有の現象に見舞われたある女が直面する悲劇は個人を超えた人類の悲劇として体験され、また同時に、対面席にいる“あなた”の悲劇として、そしてそのまた対面席にいる“わたし”の悲劇として体験される。
 こうした演出効果も手伝い、哀切なラストシーンは深く深く胸に刺さり、その強烈な印象は公演から三月近くが経った今も完全には拭いきれていない。
 惜しまれるのは、台本を買わなかったこと。紋切り型の言い回しに抗い、一節一節が詩のように研ぎ澄まされ、ユーモアさえ織り込まれた珠玉の語りの数々は、活字になっても十二分に味わい深いにちがいない。

ひかる君ママの復讐

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ひかる君ママの復讐

月刊「根本宗子」

 ツッコミ役の根本さんを除く役者4人がパワフルにボケ倒して笑いが止まらず。笑いが笑いを呼ぶ、片時も可笑しみが途切れない名脚本に感服!
 根本さんのコメディ作家としての天才を感じた一作。

音楽家のベートーベン

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音楽家のベートーベン

ダックスープ

 すべてのシーンがただ笑いにのみ奉仕している純度100%のナンセンスコメディ。笑いのみで押しているのに飽きさせないのは緩急のつけ方が巧みだからか?
 延増静美さんが綺麗でした。

つかまえてごらんなさい、箸で

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つかまえてごらんなさい、箸で

GORE GORE GIRLS

 あの人が残り、あの人が消える―。“ちょっぴり意外、けれど納得”なラストにニンマリ(笑)。
 序盤、話が動き出す前の、エスプリの効いた駄弁の応酬も好きでした。

ガラパコスパコス

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ガラパコスパコス

はえぎわ

“老化は進化”という、舞台芸術では表現しづらそうな着想をみごと演劇に昇華させた傑作。
 終盤の群舞が圧巻!

春よ行くな【15日(日)18:30に追加公演決定!!!】

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春よ行くな【15日(日)18:30に追加公演決定!!!】

悪い芝居

 恋人に去られたヒロインの痛切な心象を身悶えるような激しい演技と斬新な演出で表現した本作の訴求力は絶大! すっかり心を持っていかれた。。
 ラストに不満で四つ星をつけたが、昨年観た公演で最も凄みを感じた本作を選外にはできず、四つ星作品としては唯一の例外としてランクインさせました。

象はすべてを忘れない

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象はすべてを忘れない

ままごと

 横浜の港のテラスで可愛くて上品でユーモラスでロマンティックな柴ワールドを満喫! とても幸せなひとときでした。

SEX,LOVE&DEATH~ケラリーノ・サンドロヴィッチ短編三作によるオムニバス~

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SEX,LOVE&DEATH~ケラリーノ・サンドロヴィッチ短編三作によるオムニバス~

公益社団法人日本劇団協議会

 ドタバタ色の強い「13000/2」、流行りの抽象演劇のスタイルを借りて思いっきりバカをやり抽象演劇をおちょくってみせた「死んでみた」、南国を舞台にしたブラックファンタジー「スモーク」。趣の異なる3つの短編コメディをケラ作品としては破格値と言える自由席3000円で堪能!

総評

 断腸の思いで選から外した作品に、世田谷シルク『Mr.Fujino』、ロ字ック『退カヌコビヌカエリミヌヌ』、月刊「根本宗子」『今、出来る、精一杯。』、KAKUTA『ショッキングなほど煮えたぎれ美しく/アイロニーの夜』など。
 笑えるものを主体に観てきたつもりでしたが、ランキングを作ってみて、自分はドキドキさせてくれる作品も好きなのだと気づかされました。
 偏ったものしか観ていないので、昨2013年の国内演劇の傾向は分かりません。
 ただ、自分の観た範囲内では、抽象演劇が多かった気がします。具体的な場所を思わせる舞台装置が何もない、観念的な演劇。その範疇に入るものの中では、悪い芝居『春よ行くな』がダントツで心に残った。

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