水面の月、揺れる、揺れる
劇団皇帝ケチャップ
北池袋 新生館シアター(東京都)
2014/09/01 (月) ~ 2014/09/03 (水)公演終了
満足度★★★
今後に期待
「良い悪い両方あった時は後で褒める」信条につきまずは苦言2件。
クライマックスで「もう一人のヒロイン」が対話する場面、音楽が煩い。
特に1人目は日本語の歌詞がついた歌なのでB型気質として(爆)台詞への集中を削がれてしまうのだ。
また、ある人物の正体(?)を明かしてからが本筋だと思うが、そこに至るまでが冗長気味。…ではあるのだが、そのパートに良い部分も内包されているからややこしい(笑)。
序盤で「その寄り道会話、要る?」と思ったものの、その逸れ具合が普通に会話しているとあんなズレ方するよね…という感じで絶妙。
が、やはり本題へ急ぐためかせっかくの会話に間が入らずせわしない印象になるのが勿体ない。
一方、本筋部分は既視感(全体の流れ・一部場面とも)あるも好きなタイプな上に終盤に女性キャラ絡みの意外な部分もあって満足。
極論すれば本筋前をもっとコンパクトにして70分程度にまとめればスッキリしたのではないか?
そして、会話の妙は別の作品で活かせば良いのではないか?
いずれにしてもまだ第2回公演だし、今後…というより、まずは次回公演に期待だな。
少年口伝隊一九四五
劇団天動虫
pit北/区域(東京都)
2014/09/01 (月) ~ 2014/09/02 (火)公演終了
満足度★★★★★
折に触れて演を重ねていただきたい
作品初見ながらやはり井上ひさし作品、忘れてはいけない、伝えてゆかなくてはならないことを端的に表現している。
また、時にソロ、時に重ねての台詞(※)や緩急を心得た演技、会場の特質を活かした演出も卓抜しており、さらにカーテンコールでのジョニーさんのしっかりした挨拶も含め大変満足。
演ずる側の消耗もあると思うが、折に触れて演を重ねていただきたい。
※ 1人が全体を読む中、強調する言葉・部分だけ全員で、という手法はよくあるが、トルーマンとチャーチルの電話などの場面で使った、部分的に重ねながらリレーする(=ウィー・アー・ザ・ワールド風?)のは独特
ダーリン!ダーリン!
劇団ズッキュン娘
シアター風姿花伝(東京都)
2014/08/13 (水) ~ 2014/08/18 (月)公演終了
満足度★★★★★
藤吉、また腕をあげたな
いささかめんどくさいオンナ・雛子とやや内向的な足立君の大学生カップルの恋の顛末…。
前作よりコメディ色が濃い前半はベタ・類型的でツッ込みどころもいくつかあるがイキオイがあってグイグイ引っ張るし、後半は従来通りのいかにも女性作家、な部分に加えてオトコのキモチをズバリ表現してドキリ…もとい、ズッキュンとさせて(笑)見事。
終盤、全員が揃った時にアンによって語られる(台本66ページね)足立君に、同じ“そっち系男子(謎)”として甚く共感したのはσ(^-^)だけではあるまい。
また、そこに至るまで上手く彼を出さないワザはもはやお手のものだろうが、今回はあの場面で彼が確かに「いる」と感じたのだ。
そして、表見上は雛子が主役、アンが準主役のようだけれど、本当の主役は1度も舞台上に登場しないが、雛子に引け目を感じ、母からは思う通りの枠にはめこまれようとされている中から自分の進む道を見出した足立君なのではないか?
さらに、最初は併走しているパン屋のハナシと女子大学生のハナシ、両者の接点を察するヒントを出し、その後に明かすタイミングも的確だし、明かした後も基本は併走で、全員がやっと集結したところでクライマックスを迎える構造がまた巧い。
そんな中に前作も観ていた観客への目くばせまで仕込んで、藤吉主宰、劇作家としてまた腕をあげたな。
あと、くまゆか嬢の設定、最初は「え、それはどうよ?」と思ったけれど、ある場面で説得力のある演技を見せられて得心がいった。(注:普段からそういう印象がある、ということでは決してない)
ところで劇中登場した「中にはメロンクリームが入ったメロンパン」、実際に具体的なモデルがあるのだろうか?
ひなたのなかのこども
風雷紡
d-倉庫(東京都)
2014/08/13 (水) ~ 2014/08/19 (火)公演終了
満足度★★★★
事実と虚構の狭間
勝手にキャッチコピーを付ければ「下山事件・銀河鉄道の夜・電車ごっこの三題噺」、あるいは「事実と虚構の狭間」?
元ネタである下山事件は現実のものでありながら、劇中でたどり着く真相は「いかにも推理ものフィクションらしい」凝ったもの。
その2つのギャップに「思考が翻弄される」と言うか、騙し絵を見て「部分部分は正しいのにどこかヘンだな」と感じるその感覚に通ずると言うか、で独特。これぞまさに風雷紡風味?(笑)
また、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をよく知っている身として、後半のある部分の意味がより深く感じられ、知っていて良かったなぁ、とも。
さて、野崎淳之介が次に挑む昭和史の事件は?
キスミー・イエローママ
ゲンパビ
OFF OFFシアター(東京都)
2014/08/27 (水) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★
淡々とした中からにじみ出るテーマ
喩えて言えば、綺麗に面取りするなど丁寧に下拵えして下味も付けた食材と何種類かのソースを出されて、食べ方を委ねられたような。
それは途中で投げ出したという否定的な意味ではなく、どういう食べ方をしても構いません、味わい方は皆さんにお任せします、という感覚で。
淡々としているし、暗転明けに年月が経っていたりもして(ただし経過したこととその幅はすぐにワカる)、ちょっととっつきにくいけれど、その裏から「罪と罰」「死刑とその執行方法」「親子」なんてテーマ(=いずれも正解はない)がにじみ出て来る感じ?
その意味で「中・上級者向け」かも?(あくまで私見)
観ている間は先に進んでしまうから反芻の余裕がないけれど、後から振り返って「自分があの立場だったらどうだろう?」とかいろいろジワジワと来そう。
あと「イエローママ」がキレイだったなぁ。
神と遊べば
コロブチカ
小劇場B1(東京都)
2014/08/19 (火) ~ 2014/08/24 (日)公演終了
満足度★★★★
終盤の市長一家の家族愛に泣いた…
…なんてことは全くなし。(爆)
メインとなるストーリーは思いっきりベタで、演技(演出)も含めてどこか懐かしい感覚に、柿喰う客に通ずるニオイや沙翁のエッセンスも練り込んで愉しい。
具体的に言えば、ゼウス夫妻の痴話喧嘩が元で人間界がとばっちりを受ける展開や狂言回し的なキャラの語りで締め括るところなど沙翁チックでニヤニヤ。
また、女装男優・少年装女優なども含めてキャストの個性の引き出し方もイイんでないかい?
そういや双子の使い方も、敢えてまるで異なった風貌で二通りの見せ方をして、それでいて双子であることも活かすとは。
あと、振り付け関連では冒頭の「混沌」を思わせる動きが特に良かった。
最高の夏にしようねノイローゼ
体にやさしいパンク
下北沢ReadingCafeピカイチ(東京都)
2014/08/25 (月) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★
初日の3本
白波多カミン「九月の空に落ちるるる」
演者は役者ではなくシンガー・ソングライターで、関西訛りという変化球。
某コミックの人物が現実界に降り立つという内容も考えればもはやビーンボール?(笑)
が、二重構造にしたツクリやシンプルながら表現力ある照明なども含め、やはり本格派。
栗又萌「路上のメリークリスマス」
リーディング部分がメインで、一人芝居がそれを包み込むようなスタイルは「九月…」と同様。
主人公の語りは控え目ながら彼女を取り巻く人物たちは写実的に演ずることでアクセントを付ける演出と、音楽の使い方が巧み。
松井玲奈(藍乃聖良)「夢で逢えた(ら)」
こちらはテキストを持たない完全一人芝居。
出落ちと言って過言ではない冒頭から作者の妄想炸裂気味なマンガチックな学園ラブコメが展開されたかと思いきや、後半はしっとりとした趣に転じ、その対比が鮮やか。
安部公房の冒険
アロッタファジャイナ
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2014/08/23 (土) ~ 2014/08/31 (日)公演終了
満足度★★★★
予習して臨むことを推奨
もちろん評伝的な部分もありつつ、現代演劇論を演劇を以て語る部分がスリリングで面白い。
しかもそれが実在した人物によって語られるワケで、観ているうちにどこまで虚構でどこまで現実なのか区別がつかなくなりドグラマグラ状態に…
さらにその演劇論が今の小劇場ムーブメントに繋がるようでもあり、観ていてもう頬が弛んでしまう。
一方、愛人と妻をめぐる面では至ってフツーのオトコで「本当に男ってヤツはしょうがないな…」と。(笑)
上手に自宅、下手に教授室を配置したシンプルかつシックな装置で交互に見せるスピーディーな展開(松枝さんによれば右脳と左脳を意識したとの由)の本編部分を、「クラウン」がガイドを務めるプロローグとエピローグ(と本編の一部)によって締める構造もスッキリして好み。
なお、本編に入った時にPARCO劇場の舞台のような印象を受けたのは予習で西武劇場のことを知っていたからか?
他にもウィキペディアでの予習によりはたと膝を打った部分があったので、これからご覧になる方々には予習することを強く推奨いたいます。
Cendrillon ーサンドリヨンー
劇団パラノワール(旧Voyantroupe)
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2014/08/13 (水) ~ 2014/08/17 (日)公演終了
満足度★★★★
かぼちゃチーム公開ゲネ
「シンデレラ・BOOTLEG」かと思いきや「真・シンデレラ」だった、と言うほどに真っ当なシンデレラ。
で、ありながら、物語の軸を僅かにブレさせる(+一部の設定を変える)ことで、こんなにも世界が広がるのか、と。
喩えて言うなら中心部分は何とか残っているが周囲は色褪せて殆ど見えなかった壁画を修復して全体をくっきり浮かび上がらせるが如く、本来はワキの人物たちにもそれぞれ物語を与えてその人生を浮かび上がらせた、な感じ?
あと、白が基調の美術といい、また、女優が多いことといい、いつもの「男臭い」「武骨」なイメージから離れて「華やか」な印象。
海賊ハイジャック、こんな一面もあったのね。
たまには純情
こゆび侍
駅前劇場(東京都)
2014/07/31 (木) ~ 2014/08/05 (火)公演終了
満足度★★★★
こゆび侍流のホームドラマ
一見、極めてフツーなホームドラマながら実は繊細で丁寧な描写により各人物の心境・愛情などが遠赤外線の如くじわじわとしみてくる感覚。
その辺を見越しての終盤の2回の長めの暗転も心憎い(笑)。
また、かつて単館レイト上映で観た映画(←具体的な作品ではなく)にも似た懐かしいニオイも好き。
グローブ・エイリアンズ
劇団ミックスドッグス
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2014/08/08 (金) ~ 2014/08/10 (日)公演終了
満足度★★★
夏の爽やかなSFファンタジー
全体的にあっさり解決し過ぎて肩透かしを喰らう感無きにしも非ずながら夏の爽やかなSFファンタジーとして悪くない(往年のキャラメルボックスも連想)。
ど真ん中の打ち頃の直球のようなワカり易さは学生演劇の(忘れられた)王道と言えるかも。で、小難しくない分、子供でも十分に楽しめるし。
さらにある世代はNHKの少年ドラマシリーズを懐かしく思い出すかも?
グッドモーニング、アイスパーソン
天才劇団バカバッカ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2014/07/24 (木) ~ 2014/07/27 (日)公演終了
満足度★★★★
いかにもここらしい締め括り方
若干とっちらかった感があるのは否めないが、2万年前の氷の中から見付かったのにもかかわらず、現代人と同じ骨格をもつというアイスパーソンの謎に始まり、「ルパンvs複製人間」やチャペックの「RUR」に通ずるSF感ある中間部を経て、「違い」のある者たちの相互理解について示唆するのはいかにもここらしい締め括り方。
序盤で交わされる差別用語に関するくだりも皮肉たっぷりでニヤニヤ。
あと、冒頭で微動だにしないアイスパーソンたちの「冷凍ぶり(?)」も見事。
時をかける稽古場
Aga-risk Entertainment
サンモールスタジオ(東京都)
2014/06/07 (土) ~ 2014/06/15 (日)公演終了
満足度★★★★
時間ものコメディの快作
時間ものを筆頭にSFに詳しいとより楽しめるのはもちろん、そっち方面に疎くてもタイムパラドックスやパラレルワールドに関して劇中でワカり易くしかも自然に説明されるので問題はなく、対象を選ばない傑作コメディと言えよう。
時間ものにバックステージ系のテイストも加えるなんざσ(^-^)にとって「鴨が葱背負って」状態でもあるし。(笑)
公表している「2週間後の稽古場に完成台本を…」というのは実は導入部で、そこからさらに二段、三段と別の要素へ展開して行くのも巧み。
さらに客入れBGMの選曲にニヤリとし、イントロだけながらM-0にもニヤリ。(♪タイムマシンにー、おーねがいー♪)
あけみママを待ちながら
劇団ぺブル(ペブル・グラベル)
ワーサルシアター(東京都)
2014/07/31 (木) ~ 2014/08/04 (月)公演終了
満足度★★★★
タイトルにも罠アリ
手堅い! 個性あふれる人物たちをしっかりと紹介して見せた上でキモである人情譚に突入するのは万全の基礎固めをした上に建てた家の如き安定感。
また、タイトルに仕込んだ「罠」も巧みで、終盤で明かされた時には「うおぉぉっっ!!!」状態。(笑)
小ワザでは冒頭、カラオケのマイクに見立てて折り畳み傘を使うのだが、すぐ次のシーンで傘をさすので「なるほどぉ!」と…
また、主な舞台となるカラオケスナックに置いてあるボトルのラベルなど、美術面の遊び心もイイ。
カズオ/斜めから見ても真っ直ぐ見てもなんだかんだ嫌いじゃないもの
オーストラ・マコンドー
ギャラリーLE DECO(東京都)
2014/08/07 (木) ~ 2014/08/17 (日)公演終了
満足度★★★★
斜めから見ても真っ直ぐ見てもなんだかんだ嫌いじゃないもの
内容としては物語ではなく2女優の演技を観る「純演劇」。
クールで斜に構えたなっちゃん(趣里)と、おっとりしたサキ(梅舟惟永)の「女ともだち」らしい会話とモノローグ。
いかにも「ありそー!」な二人のキャラクター造形が面白く、会話の中にサラリと諷刺を混ぜ込んでいるのが巧み。
開幕後すぐにその台詞量と「This is 梅舟!」な演技により引き込まれる。
ちなみに「梅舟席」は東側(=明治通り側=入口側)。
それは秘密です。
劇団チャリT企画
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/07/24 (木) ~ 2014/08/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
イマの日本の限りなく近似値的な仮想現実
流暢な語り口で観る者をぐいぐい引き込むユーモラスでなおかつサスペンスも加わった前半と、十分にあり得る事態による緊張感たっぷりな後半(いや、前半だって十分に「あるかも知れないな」な感覚があってコワいんだが)の対比が鮮やか。
巧みな幕の引き方も含めて描かれる限りなく今の日本の近似値的な「仮想現実」が強烈な印象を残す。
なお、前半にちりばめられた世代限定の小ネタ、全部拾えたんじゃないかな? やはり世代限定な客出し曲にもワロタし。
「廃墟の鯨」
椿組
花園神社(東京都)
2014/07/12 (土) ~ 2014/07/23 (水)公演終了
満足度★★★★★
東憲司芝居の真骨頂
戦後にギリギリの生活を送る庶民の姿と綺麗事ではないリアルなヤクザの世界を泥臭く骨太に、メタフィクション気味なくすぐりも加えて描いた東憲司芝居の真骨頂。
夏のテント芝居ならではの本水をふんだんに使ったダイナミックな演出も堪能。
今までに観た十本ほどの椿組花園神社野外劇の中でも一、二を争う満足度やも?
椿組花園神社野外劇ではなく、桟敷童子公演だったら…という架空のキャスティングをしながら観るのもまた楽しからずや。
旅人と門【全公演終了いたしました!ご来場ありがとうございました!」
くちびるの会
ギャラリーLE DECO(東京都)
2014/07/23 (水) ~ 2014/07/27 (日)公演終了
満足度★★★★
コンパクトな野田地図、な風味
複数の世界がクラインの壺の如くシームレスに繋がる序盤で「好きなタイプだ♪」と。
そしてそれはやがて登場人物名に因んだりそうでなかったり(←推定)な「知的伏線」満載の展開に。
サイレン、足、門などいくつかはワカったけれど、哲学科の学生ででもなければ全部は拾いきれないのでは?(笑)(なので終演後に台本とパンフレットを買う破目に…(爆))
しかし「野田ポケット地図」あるいは「コンパクトな野田迷宮地図」のようで面白かったぁ♪
ツヤマジケン
日本のラジオ
王子小劇場(東京都)
2014/07/01 (火) ~ 2014/07/06 (日)公演終了
満足度★★★★
ダークな「櫻の園」?(笑)
女子高演劇部の合宿で起こる惨劇!(?)
…と言えなくもないが、殺戮はラスト2-3分(?)に限定され、大半は部内(+α)の人間関係。
最初はコミカルですらあるのが次第にドロドロしてくるのはいかにも日本のラジオ(笑)。
また、女子高演劇部ということで“ダークな「櫻の園」”なオモムキも。
悪い森
お布団
サブテレニアン(東京都)
2014/07/10 (木) ~ 2014/07/13 (日)公演終了
満足度★★★★
POPですっトボけたスコティッシュプレイと思わせてからの結末!
大半は「70分でワカるPOPですっトボけたスコティッシュ・プレイ」で、原典にかなり忠実なところも含めて年初のレティクル座「童貞キューピッド」を連想。
それでいて結末を弄り、時々語られ、σ(^-^)の好みでもあるテーマに持って行くのが◎。
終盤で使われる鎧と剣のシカケも愉快。さすが辻本さん♪
それにしても、台風の影響が心配な前日に急遽決定したという「晴れ男・晴れ女割」のご利益といったら!(笑)