「幸福の黄色い放課後」/「幸福の黄色い10日後」
キ上の空論
サンモールスタジオ(東京都)
2017/03/23 (木) ~ 2017/04/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/03/25 (土) 14:30
価格3,300円
【放課後】
再演時に初演時の「観てきた!」をアップしたが、新演出版の上演を踏まえて再演版の「観てきた!」をアップするという「歴史は繰り返す」ぶり……(爆)
構造にシカケのあるものというのは最初にはあれこれ考えながら観て途中で「そういうことか!」と合点がゆくのだが、その落とし所を知った上で観る2回目以降は「そこにないもの」が見えたりして別の楽しみ方ができるのではないか。
往年の番組「中学生日記」の当世高校生版、あるいは中原俊監督の「櫻の園」(1990年の方)を観た時の「今の高校生はこんななんだ」というのに通ずる印象も受けた。(他は初演版の「観てきた!」をご参照ください)
女生徒 ~さよなら、モラトリアム~
ネリム
OFF OFFシアター(東京都)
2019/01/21 (月) ~ 2019/01/21 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/01/21 (月) 14:00
価格3,500円
オープニング映像冒頭のクレジットに「原案・太宰治」とあった通り本歌取り・換骨奪胎で「女生徒2019」または「21世紀の女生徒」なオモムキは烏丸棗オリジナルと言っても過言ではなさそうだが、1行で説明すればちゃんと原典と同じ話、みたいな?(笑)
太宰の頃にはなかったアレやソレでイマは生きにくいのではないか?な問いかけはまさに烏丸作品(私見)か?但しダークさは控え目、ビターは増量、的な。
過去に観た鳥公園・しむじゃっくのものは原典に忠実だったが、こういうアプローチも面白い。
なお、カーテンコールの一言よりも多い挨拶によれば本作が初舞台だったり初主演だったりした方もいらしたそうだが、その挨拶こそ初々しさがあったものの本編中はそんなことを微塵も感じさせなかったのもお見事。
ちなみにそんな中に「カーテンコールの練習」なる言葉が出てきてつい先日観た江古田のガールズ「遺作」を思い出したりも……(笑)
さよなら光くん、さよなら影さん
制作「山口ちはる」プロデュース
小劇場 楽園(東京都)
2019/01/18 (金) ~ 2019/01/27 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/01/18 (金) 19:30
価格3,300円
「銀河鉄道の夜」のジョバンニの如く学校でからかいの対象にされている少年・光のファンタジックな冒険譚、かつて「真夏のカーニバル」を倉本さんらしからぬと評したが、あれを遥かに凌駕する「らしからなさ」(笑)
児童文学あるいはそれを原作とした少年少女向けドラマのような味わいと言えようか。
散見される唐突で荒唐無稽・支離滅裂なブッ跳んだ展開は「やっちまったなぁ~」級だが、そこにツッ込むのは野暮というもの?
それを容認できるかどうかが評価の分れ目ではなかろうか。
考えようによっては子供の頃の「ごっこ遊び」に通ずるノリではないか?と容認する側のσ(^-^)だが120分超は長いと感じた。この内容だったら90分から100分程度が限度ではないか?
ショウジョジゴク
日本のラジオ
新宿眼科画廊(東京都)
2019/01/18 (金) ~ 2019/01/22 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/01/18 (金) 15:00
価格1,700円
奇しくも昨年暮れの新宿公社「少女地獄」と競作となったが、原作が3編の短編から成る作品だけに、その3編の組み合わせ方・構成で仕上がりは全く別物。
屋代さんの言によれば新宿公社版は比較的原作に近かったそうで、あちらが基本形、こちらが応用編、みたいな?(だからタイトルがカタカナ表記なのか?と推察したりも)
原作は未読だが、言われてみれば確かに「あの流れをそういう状況の中で展開させますか」があったり、「少女地獄」以外の作品のネタをちょくちょく混ぜ込んだり(きっと知らない作品のものもあったんだろうなぁ)で、新宿公社版がちょうど良い予習になった感じ。
つぎとまります・匣
劇団肋骨蜜柑同好会
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/01/17 (木) ~ 2019/01/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/01/17 (木) 20:00
座席D列14番
価格3,200円
【松チーム・初日】
執筆に行き詰まりバスで逃避を図った男が下車した停留所のすぐそばには流しそうめんをしている女がいて……な会話劇。「逃避と居場所、そして層構造・入れ子構造に関する考察」といったところか?(何かこの1ヶ月ほどって層構造・入れ子構造ものが多くないか?シンクロニシティ? 好きだから歓迎だけれども)
「待っているの」なんてフレーズが出てきたり、電柱はなくても昔の木製電柱に付いていたような電球の外灯があったり、不条理劇のオマージュ?(笑)
男を翻弄する女の論法の中にイヨネスコ「授業」の教授のそれと通ずるものがあったような気もする。
それにメタフィクションだし入れ子構造だしって、σ(^-^)にとってのお子様ランチ芝居じゃねーか!(爆)
しきしま探偵事務所
シアターまあ
テアトルBONBON(東京都)
2019/01/15 (火) ~ 2019/01/20 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/01/17 (木) 14:00
座席I列7番
価格4,000円
下町の雑居ビルにある探偵事務所を舞台とした物語……と言うよりは日常エピソード集、的な。
一応、美女が人探しを依頼しに来る、というプロットもあるが、それとて事件性がないどころか物語全体の中心となる訳でもなく1エピソード的な扱い。
そして短いエピソードが終わる毎に暗転するのは近年珍しく、あたかも連作4コマ漫画の単行本、みたいな印象か?(笑)
そんな表現によるものだけでなく、例えば昭和のテレビドラマを視ているようにどこか懐かしく、考えてみたらご近所さんたちが些細なことでわちゃわちゃするのは往年のNHKの「お笑い三人組」に通ずるノリではないかとも思ったり。
あと、「街の男」のいかにも演劇的な表現が、それに対するツッ込みも含めて愉快。
なお、かつてand me...をよく観ておりオフィスパラノイアも観ている身にとって「異色の顔合わせ」でもあった。(笑)
俺ずっと光ってるボーイ、健之助
桃尻犬
OFF OFFシアター(東京都)
2019/01/16 (水) ~ 2019/01/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/01/16 (水) 19:30
価格3,000円
主人公・健之助とそのカノジョ、彼が働いているスーパーを経営する家族やその友人たちが織り成す物語。
終盤、ピンチに陥った店長を妻(佐賀モトキ・好演)が支える場面あたりから夫婦とは、家族とは、なイイ話になって「ど、どうした!?」と思わせておいての「怒濤のクライマックス」(やっぱり!)にヤラれた。(笑)
その近辺でイイ台詞を何気なく無造作に言わせるのもカッコイイ。
「イイ話パート」のラスト付近で「おや、もしかしてタイトルはここにかけていて、そういう意味なの?すげぇ巧いじゃん!」などと深読みさせておいてのアレだもんなぁ、たばかったな!(笑)
鳥の市 2018
なかないで、毒きのこちゃん
OFF OFFシアター(東京都)
2018/12/27 (木) ~ 2018/12/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/12/28 (金) 12:30
公演2日目、EとFの初日をAの2ステージ目で6プログラムコンプリート。
Eは鳥皮作品の真骨頂(私見)な2本。
「すーぱーうーまんちゃんさん」は開場時から始まっていると言って過言ではなく、たどたどしい前説も本編の伏線と言えよう。
かつて新宿眼科画廊で観て「シカケ」を知っていたので2人の演者だけでなく、時々客席にも視線を向けてお客さんたちの反応も観察。そういった意味で本作は演劇版の「4分33秒」と言えるのではないか?
今回の中で最も初期の作品「ループ サイド ループ」、もちろんσ(^-^)は初見だが、早い段階で意図に気付き「その手があったか!」と感服。
「ちょっと止めまーす」の度に深まる入れ子構造、どう落とすのか?と思ったラストも鮮やか。
Fは古着屋三部作の中では唯一泣ける「夢みるあの子はまだおうちでロンリーガール」とここまでの4本の一人芝居の中では一番オーソドックスな「さよならはじめましてちゃん」、B~Fの5プログラムの中で一番「一般的(?)」かも?
Aの一人芝居「おせきはん、たく。」も鳥皮一人芝居のど真ん中な感じで楽しく、「会場あて書き作品」の劇場版たる「そば屋のあつこちゃん。」「ビックリハウスのこと、あの子のこと、その他もろもろ」はにぎやかかつハッピーエンドで、6本を観る順としてこれがラストなのはベスト(私見)、そして2018年の観劇納めとして最適な「お祭り演目」であったと満足。
鳥の市 2018
なかないで、毒きのこちゃん
OFF OFFシアター(東京都)
2018/12/27 (木) ~ 2018/12/30 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/27 (木) 16:30
公演初日にB~Dの3プログラムを続けて。
Bの「悪口サミッドナイト・イン・高円寺」とEの「わるぐち全集」(ともに初演を観ている)は古着屋、Dの「世田谷区在住。町田みよことその恋人と」(初演は未見)はバー、と初演は設定そのままの場所で上演された(というより公演会場に合わせて書き下ろされた)45分ほどの中編の「劇場版」で臨場感よりも見易さに重きを置く、的な。
その中でも特に印象的だったのは平成vs昭和な「わるぐち全集」で、森田ガンツ・井口千穂お二方の昭和組の破壊力ったら!(笑)
あと、序盤で谷川俊太郎「ことばあそびうた」の一節が出てくるが、そういえばあれ、最近では教科書に載っているんだっけ?
20分ほどの一人芝居「そしてまたキミのユメをみる。」(B)は毒きのこちゃんの王道、「芝ちゃん浜ちゃんたかなしくん。」(C)はタイトルから想像できるように落語仕立て(パジャマに掻巻(?)で枕が終わったあたりで羽織の如く掻巻を脱ぐのがまたイイ)、「私の青空」(D)は異色?とそれぞれタイプが異なる多彩だが、それぞれに演者の力量を感じた。
アラサー魔法少女の社畜生活
森プロ
萬劇場(東京都)
2019/01/11 (金) ~ 2019/01/14 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/01/13 (日) 18:00
座席I列7番
「羊の皮を被った狼」……と言うよりは「糖衣錠の毒薬」の方が的確か?
表向きはコミカルで娯楽性十分ながらイマの日本の企業(ブラックと称される一部のみではなく広く一般に)で行われている労働者酷使ネタがふんだんに盛り込まれて笑いながらイテテテテ、みたいな?
社会風刺コメディかくあるべし。
劇中での客いじりの対象となりたい客(?)専用の席を用意したり、鼻につかない程よさでメタ気味の笑いをいれたりするのも巧い。
ところで舞台が豊島区中心なのは初演が池袋の木星劇場、再演が大塚の萬劇場であるだけでなく「もう1つの理由」があるのではないか?(笑)
あと、漠然とエヴァっぽさを感じた(モンスター=使徒とか)のはσ(^-^) だけだろうか?
遺作
江古田のガールズ
「劇」小劇場(東京都)
2019/01/09 (水) ~ 2019/01/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/01/10 (木) 14:00
価格2,500円
公演初日の1週間前、脚本が冒頭部分しかできていず作・演出の主宰が自宅で執筆しているため、ひたすら冒頭部分と「もう1つ」の稽古を繰り返す劇団……昨年あたりから急増した感のあるメタフィクションにして小劇場系ネタもちりばめた大好きなパターン。
また、メタフィクション以外にも、あるプロットの人物設定を変えて翻案すると……な可笑しさがあって、これも好きなヤツだった。
さらに、終盤で「(脚本の遅れというトラブルがあったにもかかわらず)よく降板騒ぎにならなかったな」という台詞があったり、主宰のアイデアメモ的ノート(昨年夏の(劇)ヤリナゲの「みのほど」を連想)にあったメモが参考にしようと観ていた作品に関するもので、それを元に創り上げた芝居は盗作になってしまうのでは?と問題になったりするのはここ1~2年で演劇界に立ったさざ波の揶揄?な深読みもできて、そんな現実でのトラブルも知っていたのでより楽しめたかも?
エンれぱ!Vol.6
しむじゃっく
新中野ワニズホール ( Waniz Hall )(東京都)
2019/01/04 (金) ~ 2019/01/06 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/01/04 (金) 15:00
価格2,000円
岸田國士からアガリスク、キコまでという演劇福袋(あるいは闇鍋←コラ)。
「瓦礫のモグラ」
日常にありそうなほっこりする(?)短編、オープニングに相応しい。
「ぶらんこ」
準古典というかスタンダード的な作品だけに演出(会場も含む)による幅が広い岸田作品、会場の個性もあって「21世紀版」な印象。
「LiePhone4s」
若干こなれていない感が惜しいが、中盤でアクセルを踏み込むような構造が年末の東京コントレックスの冨坂作品にも通じて「やはり♪」な感じ。
「ミートソース・グラヴィティ」
キコ版も観ていたが、こちらも印象がかなり異なって面白い。ちなみにこの翌日に観た芝居にも2人の登場人物がフルートグラスでシャンパンを呑む場面がありありゃりゃ、みたいな。(笑)
『アウトロー:マジカルガール』
美貴ヲの劇
OFF OFFシアター(東京都)
2019/01/09 (水) ~ 2019/01/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/01/10 (木) 19:30
価格3,200円
昨年の秋のムシラセがそうであり当公演とカブっている森山智仁プロデュースもそうである魔法少女ネタを軸に太宰作品を絡め、さらにアレやソレもあしらうというハイブリッド演劇。(笑)
中心となる2つのネタは手術台の上のミシンとコウモリ傘のように一見不釣合いだが、根底の部分が共通な感じ?
そして幕切れは物語的にも視覚的にもキレイだし、途中で出てくる六芒星の見せ方……というか組体操のような(?)表現も巧いしステキ。
あと、魔法少女が魔法を使えなくなるキッカケにもニヤリ。
勝手にPV2
制作「山口ちはる」プロデュース
小劇場 楽園(東京都)
2018/12/27 (木) ~ 2019/01/06 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/01/04 (金) 19:30
価格3,200円
1年前に引き続いての短編オムニバス……というより歌とダンスとスキットのバラエティショー的公演で楽しさ、華やかさなどは年末年始に相応しい。
いろんな味わいを少しずつ一つの枠の中に詰め合わせたお節料理的とも言えるか。(笑)
また、クラッピングの呼び込み方など客の乗せ方も前年より自然で巧くなっていたような。
さて、今後、年末年始恒例の公演となるか?
からゆきさん
EgofiLter
OFF OFFシアター(東京都)
2018/12/21 (金) ~ 2018/12/25 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/23 (日) 13:00
価格2,700円
昔、社会科の授業で習ったことが複数出てきて、キリシタン弾圧の影響はそこまで及んでいたのかとか日本の中国や東南アジアに対する行動はそういう政策だったのかとか学んだ(?)り。
また、「上海バンスキング」を思い出したりも……。
いやしかし、装置や衣装など、舞台美術関連はOFF・OFFシアターでは珍しいレベル(偏見)だったかも?
円盤屋ジョニー
ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン
上野ストアハウス(東京都)
2018/12/19 (水) ~ 2018/12/25 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/21 (金) 14:00
価格3,000円
かつて「ラフカット」に書き下ろした短編3本オムニバス。
1編目「晩秋に吠えろ」
ラフカットにおける堤作品は、ロッカールームが舞台のものが少なくなく、また、内容的にも「ラフカットの堤作品」の王道。
かつて毎年「ラフカット」を観ていた身からすれば、この企画に相応しいオープニング、的な。
2編目「円盤屋ジョニー」
一般市民が裏社会の端っこに足を踏み入れてしまい……なバイオレンス系なタッチは堤作品としては異色?
ラフカットでの松尾スズキ作品「洞海湾」を思い出したが、そういう意味ではこれもラフカットらしいと言えるかも。
3編目「父を叩く」
これは初演を観た記憶があった。1編目とは対照的なタッチではあるが、近年の堤作品、なオモムキ。そう考えると3編の上演順はこれがベスト……と言うよりこれしかない、みたいな。
劇作家と小説家とシナリオライター
劇団6番シード
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2018/11/21 (水) ~ 2018/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/11/21 (水) 19:00
メタフィクションのバリエーション的な手法を交えて描く「ある企画」のメイキング。広げた風呂敷を綺麗にたたむだけでなくリボンまでかけるようなラストも巧い。
「ある企画」とはタイトルの三者、劇作家と小説家とテレビドラマのシナリオライターがそれぞれの分野でマルチメディア展開をすべく共作で1つの物語を創り上げというもの。
これ、知っている範囲内では3つのメディアで展開させたものはないと思うが、昨今のことを考えると近い将来にあるかもしれず、リアリティもあって面白いし、創り上げてゆく物語に3人の作家の実体験が練りこまれるというのもいかにもありそう。
そしてシングルキャストの劇団員が配役の妙で「こういう仕事の人ってそんな感じだよねぇ」という説得力アリ。(逆にこの役を他の人が演じたらどうだろう?な興味も(笑))
深沢ハイツ302~もう一つのニュートンの林檎~
Sun-mallstudio produce
サンモールスタジオ(東京都)
2019/01/05 (土) ~ 2019/01/09 (水)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/01/05 (土) 14:00
座席G列5番
価格4,000円
3年前にも観ていたが記憶が曖昧になっていたので観ながら「あぁそうだったそうだった♪」とか思い出しつつ愉しむ(当日パンフレットの佐山さんの言葉通り「NHK少年ドラマシリーズ世代」なもので愉しみも倍増?)。
本当によくできているハナシだし、プロジェクションマッピング的な効果も見事。
また、アガリスクの「時をかける稽古場2.0」で「時間ものとパラレルワールドは紙一重」と学んだ(?)のでこれは時間ものというよりもパラレルワールドものにカテゴライズされるのだろうな、とも。
それにしてもタイムパラドックスなどSFファンはよく知っていても一般的には「?」になりそうな用語などを劇中の人物に対して劇中人物が解り易く説明するのは親切だし巧いなぁ。
人造カノジョ~あるいは近未来のフランケンシュタイン~
劇団鋼鉄村松
萬劇場(東京都)
2018/11/28 (水) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/11/28 (水) 14:00
座席H列7番
価格2,500円
STAP細胞と3Dプリンタを使い「理想のカノジョ」をカスタマイズして作るというマッドサイエンティストを取材しに行った記者が巻き込まれる事態……「フランケンシュタイン」(演劇企画集団THE・ガジラ、天幕旅団も取り上げた)「A.I.」(キコ qui-co.、たすいち、トツゲキ倶楽部も取り上げた)と小劇場シンクロニシティの二重盛りな上に層構造、胡蝶之夢、複数のどんでん返しとσ(^-^)の好きなネタ満載の傑作娯楽サスペンス。
物語の中心部分は往年のNHK少年ドラマシリーズに通ずるオモムキのジュヴナイル系冒険譚。そこにSFでは定番の「A.I.に感情は芽生えるか?」や(擬似)恋愛要素も絡め、ハッピーエンドかと思わせておいてそこから胡蝶之夢をも思わせるどんでん返しパートに進むというのはシッポまで餡が詰まった鯛焼きの如し。
そんなSFでありながらも「あんな怪物を作った科学者こそ真の怪物ではないか?」という主人公の疑問(=観客への問いかけ?)や基本構造が原典に準拠してるというのもまた巧み。
いやぁ、面白かったなぁ。
なお、本作に「おぉ!」と思った方は岡嶋二人「クラインの壷」(小説)も楽しめると思うし、「クラインの壷」がお好きな方は本作も気に入ると思う。
アトムが来た日
serial number(風琴工房改め)
ザ・スズナリ(東京都)
2018/12/20 (木) ~ 2018/12/29 (土)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/12/26 (水) 14:00
座席G列11番
価格4,300円
今から20年ほど未来の核燃料処理施設をめぐる話と東海村に日本初の原子力発電所ができることになる話を同時平行で進めて最後にメッセージを盛り込むというのはいかにも詩森作品。
過去パートで原子力発電所建設予定地周辺住民が期待する姿などにDULL-COLORED POPの福島三部作 第一部「1961年:夜に昇る太陽」を思い出す。そして、その期待を裏切るような未来が待ち受けている(しかもそれを観客が知っている)ことにJACROW「夕闇、山を越える」や劇団チョコレートケーキ「熱狂」(2012,13,17年)も連想。
原子力発電に寄せられた過去の期待と将来起こり得るであろう事態を丁寧に描いて見せた後、その両方の流れを束ねながら(2つの時代の登場人物が縁もゆかりもない別人なのに名前は同じという仕掛けも相俟って)メッセージを伝えるという終盤が特に見事。