
DUST
ドリームプラス株式会社
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2009/01/14 (水) ~ 2009/01/27 (火)公演終了
満足度★★
後味はあまりよろしくない
一定期間就労あるいは求職をしていない若者を無人島で強制労働させるという法律が施行されたごく近い未来の物語、ブラックさ満開で救いのない結末は山田悠介の真骨頂?(笑)
が、暮部拓哉のギター生演奏とミュージカル風とはいかないまでも、歌がかなり入るのでそれが緩和されている感じ? とは言え終盤はやはり重苦しく、後味はあまりよろしくない。
ま、渡辺夏菜と別府あゆみを観るという目的は十分達成できたし、劇団SETの田上ひろしが、『スイッチを押すとき』に続いてイヤ~な役どころを好演していたのでそれなりに満足。

アルケー/テロス
激団リジョロ
タイニイアリス(東京都)
2009/01/17 (土) ~ 2009/01/19 (月)公演終了
満足度★★★★
ジェットコースター的
東京都内での連続爆破事件に端を発する犯罪サスペンス、爆破事件の関連性とその奥に秘められたものに関する「23エニグマ」でツカミはオッケー、以降、謎が謎を呼びながら次第に明かされる真実を経て、在日韓国人の心情も絡めたギリシア悲劇かシェークスピアか、な結末に至るまでの2時間35分を一気に突っ走る。
普通はこんな風にダークでヘヴィーだと実時間よりも長く感じることが多いのに、そんなに長さを感じなかったのはその迫力によるものかあるいは何度も意外な展開があるジェットコースター的なストーリーによるものか?
また、サヴァン症候群の少女を近藤寛子が好演。自閉症児の喋り方や子供がしそうなチョコマカした動きを体現してリアリティあり。

マスカレード
Wit
サンモールスタジオ(東京都)
2009/01/15 (木) ~ 2009/01/19 (月)公演終了
満足度★★★
コメディ版『張り込み』
かつてショーマで上演した三人芝居の登場人物を1人増やして改訂したもので、コメディ版『張り込み』(87年、ジョン・バダム監督)といったオモムキ。逃走中の犯人が立ち寄る可能性のある女性のマンションを張り込みしている刑事2人組が身分をごまかすべくついたウソから展開するストーリー、ラストのショーパブ場面ではコントやヒロインの歌などのアトラクションもあって一粒で二度オイしい、的な魅力アリ。
また、ヒロインを演じた虹組きららが「エンタの神様」でのヅカ系ピン芸とは全く別の顔を見せていてキュートでステキ。

僕たちの町は一ヶ月後ダムに沈む
演劇ユニット3LDK
調布市せんがわ劇場(東京都)
2009/01/16 (金) ~ 2009/01/22 (木)公演終了
満足度★★★★
同窓会系にハズレなし
あと1ヶ月でダムに沈むことになった分校に中学時代の仲間たちが15年ぶりに集まって同窓会を開くという物語、入場した時点で目に入る教室の装置は大昔の木造校舎のそれらしき雰囲気で、そこからすでに術中にハマったと言っても過言ではなく、そこに徐々にメンバーが集まってくるという出だしからモロに感情移入。
以降甘酸っぱいような懐かしさありホロ苦い現状のキビしさ(?)あり彼らのつながりを明かす過去のシーン(学ランとセーラー服だし(笑))ありで、それに加えてKAKUTAや天然工房のメンバーも出演しておりツボを突かれ、やはり同窓会系にハズレなし。
かつてのメンバーの1人が亡くなっているという設定はズルい(笑)が、兄の死は割り切ったと言い明るく振舞っていた故人の妹がラスト近くで号泣する場面でホロリとしたからイイか。
また、その故人が仕掛けたサプライズにちょっと「そして誰もいなくなった」を連想したりも。

ランプにまつわる物語
KALAMA WAIOLI appearing 工場
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2009/01/15 (木) ~ 2009/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
ミュージカルっぽい仕上がり
1年半前のオリジナル版は、いろんな要素がゴッタ煮のようにつまっていてカオス的なにぎやかさがあったが、今回はそれを整理してシンプルかつストレートにした感じ。また、劇中での歌が多くなりミュージカルっぽい仕上がりになったということもあり、趣を異にするのでそれぞれの面白味アリ。

遙かなる時空の中で 朧草紙
オデッセー
サンシャイン劇場(東京都)
2009/01/04 (日) ~ 2009/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
8人も要らなくね?(笑)
ゲームが元で「八葉」という設定を崩すワケにいかないのだろうが、8人のメンバーについてキャラが明確に描き分けられていなのがもどかしい。
一方、主人公・あかねだけでなく、鬼の側の副将も人間と鬼との共存を考えているという設定や、コメディリリーフ的な怨霊3人組が泰明の式神になる結末はアッパレ。
また、『BOM!』や『多摩川少女戦争』の小野麻亜矢が鬼側の「ナンバー3」的役どころで加わったのも嬉しく、次作(あるんだろうなぁ)以降のレギュラー化希望。

動員挿話
三田村組
サンモールスタジオ(東京都)
2009/01/06 (火) ~ 2009/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★
リアルに感じられる
普段観ているものが観ているものだけに(爆)理路整然としてスキなくキッチリ組み上げられた作品世界が非常に新鮮(あるいは懐かしい)。その意味で前年末に観た『proof』に近く、しかし日本の明治時代だけにオモムキは異にする、的な。
また、この小屋で観たうちではもっとも具体的な装置も作品世界に合致しており、演技も丁寧でキメ細かいので明治の軍人や馬丁夫婦などがリアルに感じられる。

番外 池田屋・裏
グワィニャオン
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2009/01/08 (木) ~ 2009/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★
バージョンアップ
SPACE107での初演(03年12月)と比べてスケールアップ、レギュラー客演者の技術を活かしたり、和太鼓だけでなくジャンベも使ったり、その延長でラストは女性陣による和装タップだったり(ちなみに初演は和太鼓パフォーマンス)ということで初演を観ていた身としても十分楽しい。

風が強く吹いている
アトリエ・ダンカン
ル テアトル銀座 by PARCO(東京都)
2009/01/08 (木) ~ 2009/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
走りを見せる
費用が格安(ただし老朽化で倒壊寸前)の学生寮に入居するために休部状態の陸上競技部に籍だけ置いている幽霊部員たちが箱根駅伝出場を目指す物語、ダメダメな面々が一念発起して何事かを成し遂げるという好きなパターンであることに加えて、4月から1月(?)までのターニングポイント的な部分を連作短編風に見せ、クライマックスの駅伝シーンで他のスポーツ系劇団と違ったカタチでの走りを見せる構成も○。(だもんで15分の休憩を挟んで3時間もあるとは思えなかった)
中でも主人公の高校時代の友人でもある他校の主将が寮を訪れるエピソードが良かったが、これは原作(未読:早く文庫化してくれい!)の功績か? いや、頭を丸めた(ので誰かと思った)伊藤高史の演技もあるか。
また、主人公を演じた黄川田将也も良く、しかし彼も初舞台だったとはちょっと意外。
なお、目当てのコンちゃんはもともと小柄な上に席が16列だったのでより小さくしか見えず(笑)、やっぱりもっと小さな劇場での公演に出ていただきたいモンです。

冬物語 -新諸国綺談-
project ON THE ROCKS
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2009/01/08 (木) ~ 2009/01/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
いたるところに沙翁っぽさ
3週間ほど前の『空ゼの「夏夢」』に引き続き沙翁作品の翻案。
第一幕は「リア王」などと通ずる自業自得型悲劇、その16年後を描いた第二幕は「十二夜」的奇蹟の巡り会い系ハッピーエンドという原典の構成の巧みさに、シチリアを出羽国羽黒藩、ボヘミアを肥前久島藩に置き換えたことによる方言使用を含めた翻案の面白さやミュージカル風場面(それもラップまで使う)を取り入れた演出の楽しさが加わって「鬼に金棒」状態で2時間40分(10分の休憩込み)の上演時間も全く長さを感じず。
なお、原典は未見だったものの、いたるところに沙翁っぽさが感じられたし、日本の時代劇への翻案ならではの部分(御神託を授かるとか切腹とか)がまた妙に融合していて、脚色の巧みさにも感心。

島へおいでよ
劇団†勇壮淑女
ウッディシアター中目黒(東京都)
2009/01/07 (水) ~ 2009/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
2009年も好調なスタート
島へなかなか来そうにない嫁を獲得すべく計画した集団見合いの物語という事前情報から島興し人情系ラブコメかと思っていたら実は訪れた女性陣は結婚詐欺師グループで、という予想外の展開。
以降、オトコをオトすテクニックや「A型几帳面説の根拠」「モンローのヒール」などのトリビアをちりばめながらの犯罪コメディ、場合によっては後味が悪くなるんじゃないか?などとかすめた不安は杞憂に終わり、終盤での『スティング』ばりの逆転劇を経てしかるべきところにキチンと着地させる脚本が見事。
また、文通ネタや早々に何かに気付いたらしい弥生さんなど伏線(らしきもの)をわかりやすく見せておいてそれを有効に使うとか、終盤で「あれ?選択肢ってもう1つないか?」と思わせておき、その「もう1つの選択肢」で締めくくるとか、観客に優越感(?)を持たせる手口(笑)も上手い。

O嬢
Nojimaji
池袋GEKIBA(東京都)
2008/12/26 (金) ~ 2008/12/29 (月)公演終了
満足度★★★
「O嬢の物語」の続編
ポーリーヌ・レアージュの「O嬢の物語」の続編を寺山修司が脚色・監督した映画『上海異人娼館』の舞台化。O嬢を中心としながらも他の娼婦や日本軍兵士の物語が絡めてあり軸が定まらない感もアリ。
その一方、かつて女優だったと思いこんでいる娼婦「愛染」を演じた男優の哀しさがにじみ出てくるような演技が印象に残る
また、装置の中央が障子になっていて、時に映像を投影し、時にシルエットで演技を見せ、また時によってはそれを併用する演出も上手い…ってか美しい。
序盤で少年が主人公に関する夢(幻想?)を見るシーンなんて、それが効果的だったなぁ。

双龍無影伝
カプセル兵団
笹塚ファクトリー(東京都)
2008/12/26 (金) ~ 2008/12/30 (火)公演終了
満足度★★★★
完結編に相応しい
中国全体を揺るがす史実を背景にシリーズ共通の主人公を絡ませ、さらに始皇帝の亡霊まで登場させてスケール感たっぷり。シリーズ最強の敵の登場やクライマックスでシリーズ第2弾のキャラが駆けつけるなどという展開も完結編に相応しい。

proof
コロブチカ
インディペンデントシアターOji(東京都)
2008/12/25 (木) ~ 2008/12/29 (月)公演終了
満足度★★★★
もしかして反動?(笑)
じっくりコトコト煮込んだスープというか、基礎のコンクリート打ちから時間をかけたというか、隅から隅までピシッと筋が通った安定感があり、安心して観ていられる、な感じ?
その昔、労演会員である父親が都合で行けなくなった時にピンチヒッターで観に行った芝居などと共通の「落ち着いた」雰囲気が「芝居芝居している」的、あるいは「戯曲ってのはこういうモンさ」的な。
その意味でコロ主宰が普段柿喰う客で演っているものの真逆とも言え、「え、もしかして反動?」みたいな…(笑)
親子ものが弱点な身としては、第2幕第1場の回想シーンにおける父と娘の会話に顕れた父親の理解・愛情にホロリ。
また、そういえば第1幕の幕切れも鮮やか。ある意味オーソドックスで「あ、ここで休憩かな」とちゃんと予測できたりして。
さらに、数学者の父が、数学に関する才能の片鱗を見せる娘に「お前の悩みの数も数学的だ」などと言うユーモアも外国戯曲的かも。

少女都市からの呼び声
東京倶楽部
芝居砦・満天星(東京都)
2008/12/23 (火) ~ 2008/12/28 (日)公演終了
満足度★★★
これぞ唐十郎
7月の『二人の女』は、アングラ系芝居なのに小屋が近代的(?)な劇場MOMOで妙にお上品な感なきにしも非ずだったのが、今回は本家たる梁山泊のアトリエということで(テント小屋ほどではないにせよ)雰囲気もバッチリ。
そんな中で繰り広げられる手術中に腹腔から出てきた妹の髪の毛をキッカケに手術台から下りて(!)妹探しに向かった男の物語。
「*とばかり思っていたものが*ではなく#だった」な場面を筆頭にホラーの一歩手前な幻想譚、「夢十夜」とはまた違った悪夢のようで「あぁ、これが唐十郎テイストなのね…」みたいな。(笑)

黄昏の笑顔
HotchPotchTheater
小劇場 楽園(東京都)
2008/12/26 (金) ~ 2008/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
構成が上手い
「できるだけ人間に近い人造人間」を開発している研究所を舞台にしたSF系の物語。
いきなり「ちゅど~ん!バリバリバリ」な爆発音と「第4ブロックを閉鎖します」な緊急アナウンスから始まる前半はコメディタッチながら、人造人間が自我に目覚めて行くあたりから次第に「人間らしいとは何か」という哲学的な問いかけに変容して、最後は詩的な台詞でしめくくるという構成が上手い。
2人組のスパイが人造人間を奪取して島から脱出するシーンなどむしろ「救出した」ように思えてしまうくらいで…。
また、2体の人造人間が、片や『T2 特別編』でスマイルの練習をするT-800、片や誕生して間もない頃のアラレちゃんの如くそれぞれ「いかにも」人造人間っぽいのが見事。

中野ブロンディーズ
ネルケプランニング
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2008/12/20 (土) ~ 2008/12/25 (木)公演終了
満足度★★★★
AKINA本人に非はないが…
3月上演版とほぼ同様ながら主人公を演ずるAKINAが全出演者中一番小柄というのが今回の大きなネック。演技力・歌唱力・実績とも初演の杉本有美より明らかに優位なのに、序盤のミュージカル風場面では周囲のダンサーに文字通り埋もれてしまうなど、少なくとも初演を観ている身にとってはなにか物足りない、な感じ。
そこがちょっとひっかかったとはいえ、あるキッカケから知り合ってチアリーディング大会に参加することになった「寄せ集め」メンバーが、ピンチを乗り越えて友情さえ育むストーリーに、ラストで見せるチアリーディングも加えて結果的には満足。

日本語がなくなる日
北京蝶々
OFF OFFシアター(東京都)
2008/12/23 (火) ~ 2008/12/29 (月)公演終了
満足度★★★
まさに笑える「復活の日」
周囲の状況は緊迫しているのに起こる事象はコミカルという、相反するものが同居しつつ不思議なハーモニーを奏でている感じ?
そんな中に「現状の出生率が続けば西暦3000年には日本人は29名になってしまう」とか「ヘブライ語はたった1家族から復活した」なんてトリビアも組み込みつつ迎える「日本語がなくなる(かもしれない)日」、映画『感染列島』の予告を何度も観ており、観劇当日の朝ワイドで出生率低下に関する話題を扱っていたりもしたのでちょっぴりナマナマしく感じつつの楽しく観る。
ただ、事前に「復活の日」がベースという情報が行き渡ってしまっていたのがちょっと残念。「南極?ウイルス?それってもしかして…?」なサプライズがあった方が良かったのではあるまいか?(…って、イマドキそんなに知名度が高くないのか?>「復活の日」)

あれから
キューブ
世田谷パブリックシアター(東京都)
2008/12/13 (土) ~ 2008/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
“晩年の”ケラ作品そのもの
紛れもなく“晩年の”ケラ作品そのもの。以前得意だったナンセンス風味やかみ合わない会話などはなりをひそめたものの、笑いも交えつつ「雨降って地固まる」な、妻同士が高校時代の友人である2組の夫婦とその周辺の人々をしっとりと描いて鮮やか。
また、2組の夫婦に余貴美子・渡辺いっけい、高橋ひとみ・高橋克実を据え、小劇場系のベテランや萩原聖人などに加えて主に映画・ドラマで活躍している柄本佑、金井勇太を起用したキャスティングも的確で◎。
かくて、ケラ作品としては普通な(笑)15分の休憩込み3時間の長丁場もその長さを感じず。

火男の火
TUFF STUFF
シアターアプル(東京都)
2008/12/20 (土) ~ 2008/12/22 (月)公演終了
満足度★★★
ちょっと重め
盗賊団の一員である主人公を描いた物語、骨太でオトコ臭く『七人の侍』の野伏せり達を中心に据えたスピンアウトものを作ったらこんな感じか? が、やはりアウトローが主人公なだけにハッピーエンドというワケには行かず、観終わって残るものはちょっと重め。