
1
odd bird!!
劇団やぶさか
明治11年に来日し、東北地方や蝦夷を訪れたイギリスの女性冒険家の逸話(実話)を元にしたフィクション。
その冒険家の日本での通訳採用面接の場に借金のかたに吉原に売られそうになり逃げて来た女性、父の反対を押し切り学問を志す女性、さらには皇室に嫁ぐことを決められている高貴な女性らがそれぞれ異なる動機ながら偶然居合わせる設定で当時の様々な立場の女性を描く構造が見事。
しかも決して説教臭くなったりしないようあの手この手で娯楽要素を多々入れているのがまた鮮やか。
当時の世相などを「弁士」が観客に伝えたりバードが話す英語を同時通訳や吹き替えで日本語にしたりする工夫、対をなすオープニングとエンディングの「とざいとーざい」とキーとなる台詞の「前出し/再現」、ミュージカル的な場面など枚挙に暇がない。
また、思いがけない展開となる終盤、バードがトキに与える大岡裁き的で「粋」な「罰」の温かさに感動。、
「外国人の子供を身籠った元・柳橋の姐さん」の設定と活かし方も巧み。
これ、いつか再演して欲しいなぁ。

2
音響劇『ドグラ・マグラ』
半畳の宇宙
日本探偵小説三大奇書の1つを地の文の語り・役になっての演技、ムーブメントに歌/ラップなど様々な手法を使い、その場での墨流し映像を背後に投射して主に打楽器的な効果音も加えるというあの手この手、至れり尽くせりで原作に忠実な……というより整理し(当日パンフレットには相関図まである!)分かり易くしての(私見)演劇化。
それを池上本門寺の子院の本堂で三方囲み客席で上演するので雰囲気も絶妙。
この「奇蹟」の場に立ち会うことができて幸甚。
で、これ、「モダン・アングラ」あるいは「ネオ・アングラ」と呼称して良いですか?
いや、気分的には「シン・アングラ」が一番なんだが……(笑)
(「シン・」は一連の庵野秀明監督作から既成のものを尊重しつつイマの要素を加えた温故知新系の作品名に冠する接頭辞的なものと認識)
欲を言えば終幕は「…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………」であって欲しかったが、観客を入院患者に見立てた本作もアリと思ったので文句ナシ。

3
IN THE WOODS
Oi-SCALE
キャンプ場の夜、焚火を囲んだ人々が入れ替わりつつ交わす会話。
対面客席で最後列からも演技エリアが近いことやリアリティの溢れる舞台美術から観客もその場に居合わせているよう、というのが奇しくもほぼ同じ公演期間で上演されているエンニュイ「かえるまで、が。」と通ずるモノがある(小劇場シンクロニシティ)が、本作はやがて不穏/不安な空気が漂い始めて怪談じみてくるのが相違点。
そしてそんな終盤に「ある文学作品」を連想した旨を終演後に林主宰に伝えたら特別席特典のパンフレットにはまさにその作品との関係が掲載されているとのことでアタリ♪
そりゃあその文学作品が好きな身にとって響くワケだ。
そんなこんなでいかにも Oi-SCALE らしい一作で満足。
焚火の周りの人々は入れ替わったりしながら前にいた筈の人について確認すると否定されたりどこか曖昧なことからドラマ「奇妙な出来事(世にも奇妙な物語の前身)」の「待合室」や赤川次郎「夢から醒めた夢」のような現世と冥界の間にある場所を連想し、行き着いたのが「銀河鉄道の夜」。

4
aging/#不確かな或る日展
フロアトポロジー
ある女性の「或る日」に同時併行的に他の複数の女性の「其の日」も交えて一人芝居的な演技に音響効果・映像を加えて描いた実験的な65分で「不確かな或る日展」の中の企画公演的なものとしてそれぞれの「或る日」を「展示している」感覚。
で、会場の雰囲気に改装前のギャラリー・ルデコを想起したり、途中の「あのシカケ」や上演中に移動可なことに泣かないで、毒きのこちゃんの「手口」に通ずるものを感じたり「記憶の煤払い」的な?(笑)

5
白貝
やみ・あがりシアター
登山中に行方不明になった会社社長。彼女と一緒にいたのを目撃された人物から関係者たちは何とか当時の状況を聞き出そうとするが……なサスペンス(?)。
聞き出すためのあの手この手で笑わせつつ、終盤で明らかになる真相が鮮やかなだけでなく最終場での「もはやスリラー」なもう一つの真相は筆舌に尽くし難い。
また「墓場まで持って行くべき秘密」という本編のテーマに因んで作品と観客との関係においても「言ったり書いたりしてはならない事」を共有するのがまた巧み。
なお、冒頭でかたく口止めされる「あの言葉」を終演後にweb検索するのも一興(オススメ)。
【オマケ】
「白貝」とかけて、北島康介と解く。
その心は……(皆さんお察しの通り)「なんも言えねー」。

6
家族病3篇
Oi-SCALE
「顔のない家族」
勤務先の近くで一人暮らしをしている女性が特に行事のためとかではなく連絡もせずに訪れた実家で体験する不可解な事態。
その状況から某有名/人気推理劇(?)を想起したが、こちらはそれが複数だしそもそもそれで描く主題が異なる。
そして途中に「これは原因に関するヒントでは?」な台詞があったり終盤で真相を匂わせる場面があったりするが明確に真相を示さずに終わるもどかしさよ!(笑)
それにしても観客に主人公と同じ不安さを味わわせる語り口の巧みさたるや!
「家族の中で自分だけ顔が違うのでは?」と常々不安を感じていた主人公が事故(?)により昏睡状態になっていた間に観た悪夢?
その状況に漠然と「これって時々夢で見るコワい状況では?」と思ったのもこの解釈のヒントかな。
(クリーニング店での異変で「パラレルワールド説」もよぎった)
あと、「きさらぎ駅」に通ずる感覚もあるような気がした。「現実と地続きなのにどこか何かが違う世界に入り込んでしまった」的な。
なお、某有名/人気推理劇とはロベール・トマの「罠」。

7
#VALUE!
avenir'e
情報量過多というかσ(^-^) には受け取れきれないほどの内容だったので未整理ながらとりあえず。
AIと人間の三角関係的な「デジタル怪談」の印象だが、2年前の初演(未見)に人間ドラマ的なものを加えて上演時間も30分長くなった(アフタートークより)とのこと。初演はどんだけコワかった(不気味だった?)んだか?(笑)
また、いくつかの会話/台詞が非常に論理的に感じられたが、それは ChatGPT が会話の一部を創った(アフタートークより)ことによるものか? そしてそれが終盤で明かされる「あること」の伏線になっているのがスゴい。
あと、劇中の「医療用AI」と「家庭用AI」では人間との受け答えから「世代が違う」ものなのだろうなぁ、などと思いながら観るのも一興。

8
ここは住むとこではありません
TEAM FLY FLAT
部屋に霊が憑いていると思い込んだ住人から除霊と偽って金をせしめようとする男と協力を頼まれた霊能力者を狂言回しとした「オカルトアウトローコメディ~」。
その謳い文句ならびに冒頭の設定通り屋代作品にしては笑いが多く、そこに気を取られたためか終盤で明かされるまで霊系でおなじみの「あのパターン」に気付かず(ヤラれたぁ!(笑)。そしてそこに切なさが加わるのが巧み。
あと、下手手前の出ハケ口を「成仏への道」として使ったことにも感心。

9
MONSTERS INTRODUCT
こわっぱちゃん家
様々な児童を受け入れている大学病院の小児科病棟を描いたヒューマンドラマの再演(初演は未見)。
この種の作品では患者である子供たちに重点を置くのがセオリー(私見)なところ、親が子を想う気持ちや病院スタッフに必要とされるものは何か、など大人たちについてもきっちり描いているのが巧み。
あと、積み木をモチーフにした装置デザインもシビアな状況を緩和するのに良い効果を上げていたと思う。アッパレ!
一言で表現すれば「ビターなキャラメルボックス」。最後に奇蹟が起きるのがキャラメルボックス、奇蹟は起こらず現実的なのがこわっぱちゃん家。

10
わたしのおはなし
東京ノ温度
元ネタのないオリジナルだし川島さんは出演しないし、と新境地?
そこで語られるのは時間ものでは馴染みのパターンで、そこを丁寧に描くために理屈っぽい感が無きにしも非ずだが、そのテが好きな身として「因果律と運命論」などに「あーそれな♪」と頬が弛む。
(以降ネタバレBOXへ)
15年後の未来から来た廻里が「身体ごと来た」のではなく「心/意識だけ今のメグリに入った」ことの「舞台での見せ方」とそれを観客に悟らせる会話が巧い。(「もう一人のメグリ」であるアイナ(?)の舞台表現と会話での明かし方も同様)
あと、廻里が母をとめようとする理由を明確にしないので事故死かと思ったが終盤で15年後に戻った廻里が「また病院」と口にすることで命に別条がないことを察して胸をなでおろす。川島さんの優しさか?