草莽崛起
劇団宇宙キャンパス
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2014/12/05 (金) ~ 2014/12/09 (火)公演終了
満足度★★★★
くるものがある
ソウモウケッキと読む。舞台は1922年(大正11年)に、1人の新聞記者が、高杉晋作が創始したことで有名な奇兵隊の生き残り、浦部 五郎に、その内実を訊ねるという設定だ。名もなく歴史の闇に溶けていった庶民勇士へのレクイエム。(追記2014.12.8)
ザ・モニュメント 記念碑
KJプランニングス
プロト・シアター(東京都)
2014/12/04 (木) ~ 2014/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
スタンディングオベーション
文句なくこのレベルである。紛争地に関わり続けて来た人間の一人として、ここに、戦争の裸形を見るからである。これこそ、戦争の実態。安倍如き阿保が百万言を費やして決して辿りつくことのない真実である。12月7日の公演がラストだ。絶対観るべし!! (追記2014.12.6)
喜劇王暗殺
トツゲキ倶楽部
d-倉庫(東京都)
2014/12/03 (水) ~ 2014/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★
温かさと苦労人の優しさ
観客席に座って素直に楽しめるだけの芸を持った劇団と観た。要は実力派である。それだけではなく、この劇団、温かさがある。(追記2014.12.6)
太陽龍(再演)
劇団龍門
明石スタジオ(東京都)
2014/12/04 (木) ~ 2014/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★
イニシエーション
侃々諤々の議論が続く問題を手堅く素直なシナリオに纏めた作・演出も勤める座長の村手 龍太氏の演技が良い。ことは、3.12直後の原発暴走を食い止める為に立ち上がった男達の物語だ。
下衆な回遊魚
はぶ談戯
劇場MOMO(東京都)
2014/12/02 (火) ~ 2014/12/07 (日)公演終了
満足度★★★
欲望
確かに堕落である。そして下衆だ。描き方として、シナリオライターは、本当は何処に焦点を当てたかったのか? との疑問を持つ作りにはなっていた。ネタバレは控えるが、こういう結末なら、結末をもっと明確に出してしまった方が、演劇的にはドラマチックで締まりのある傑作になったかも知れないのに。周縁部を含めての退廃を描くのが主眼であるなら、そのような社会を作り出した背景を描き込まなければならないだろうから、もっと長大な作品になっただろう。何れにせよ、イマイチ主張がハッキリしないという感触を持った。
遺失物安置室の男/改
劇団夢現舎
新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)
2014/11/22 (土) ~ 2014/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
掲諦 掲諦 波羅掲諦
兎角、この世は、一切空、空即是色、これなり。(因みにタイトルは、般若心経の一節)維摩経は、一説によると仏教の本義とか。それが、判定できるほど、自分は仏教に詳しくないので、興味のある方は、ご自分で調べて頂きたい。(一部追記2014.12.4)
「山椒は小粒でもピりりと辛い」
チョコレイト旅団
阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)
2014/12/03 (水) ~ 2014/12/03 (水)公演終了
満足度★★★
悪戯は楽しいにゃ! !
1周年記念公演と銘打った公演だが、番外を入れると1年で6本目と多作である。若い劇団で、シナリオは女性が書いているということもあって、今しか書けない、箸を落としただけで笑う水準のノリが基本である。そのレベルでの馬鹿馬鹿しさ、輕み、責任感の無さは、それで面白い。
然し、ホントに長く劇団としてやってゆくつもりなら、是非ともこのノリは、あと半年で切り上げて、チェーホフに挑んでみるべきだろう。ベケットやイヨネスコ、サルトルでは無い。寺山、唐、佐藤 信でも清水 邦夫でも別役、安部 公房、つかでもない。シェイクスピアでもなければ、イプセンでもなく、チェーホフである。何故、チェーホフかと言えば、スタニスラフスキーの演技論に関わるからである。
他にも無論、勉強すべき理論家はある。最低限、「風姿花伝」は読んで自家薬籠中のものとすべく励んで貰いたい。当然、能、歌舞伎、浄瑠璃も学ぶべきである。近松と四代目鶴屋南北は、必読。
とはいえ、遊び心、悪戯精神は忘れなさんな! 「梁塵秘抄」にもある“遊びをせむとや、生れけむ”ハンダラ、座右の銘である。
名醫先生
パンドラの匣
劇場HOPE(東京都)
2014/12/02 (火) ~ 2014/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★
大人向け苦みコメディー
チェーホフを敬愛してやまなかったというニール・サイモンの短編を舞台化した作品だ。チェーホフが医者であったことは、演劇に関心のある者の常識だが、サイモン自身、医者の真似ごとをしていたとかで、“ドク”の愛称で呼ばれていたと言うことが、会場で渡されたリーフレットに書かれている。
春のズボンと秋のブラシ
TANGRAM
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2014/11/27 (木) ~ 2014/12/01 (月)公演終了
満足度★★★★★
秀逸な舞台
地方の、民家と殆ど変らないような不思議な宿を舞台に、宿に集まった人々の日常生活を荘子の“胡蝶之夢”を重層低音のように響かせつつ、各々の人生をそれに重ね、輻輳させて掬い取った見事なシナリオで、死と生の重い話になりがちな所、停電場面を丹念に描き、ランタンや懐中電灯を用いて舞台進行をさせることで、恰も、誰しもの思い出にある修学旅行の悪戯気分を引きずり出し、不思議に明るい印象に変える魔術的手法が功を奏している。
舞台美術も実に手の込んだ見事なものであり、音響、照明も気が利いている。無論、役者陣の演技も皆素晴らしい出来である。未だ上演中なので詳細は述べないが、ランタンなどの灯りに浮き上がる世界は幽明・閑寂、冥府的である。無論、これは、現とも夢とも知れぬ世界と繋がるのである。この辺りの連関も見事だ。
E-650(イーロッピャクゴジュウ)
SNATCH
サンモールスタジオ(東京都)
2014/11/27 (木) ~ 2014/12/01 (月)公演終了
満足度★★★
浅い
踊りは上手いのだが、シナリオが平板で、演技も溜めの必要性を意識したり、間によるドラマツルギー構築ができるレベルにない役者が殆どである。年齢的に若いということもあるだとうが、演技に関しては、これからかなりの修練が必要である。また、シナリオライターは、少し哲学書位は読んだ方が良い。ハンナ・アーレント辺りが、入り易く20世紀の知の集大成としても、また皮相な現代への痛烈な批判者としての彼女の仕事の意義からしても良いかも知れぬ。無論、フーコーやラカン、デリダ等から入っても、ハイデガーやサルトルから入っても、スピノザ、ニーチェ、カントなどから入っても或いはウィトゲンシュタインから入っても良い。これらの哲学者を合わせ読んでも、プラトンやソクラテスらギリシャ哲学を学んでも良い。世界の捉え方が、現在の余りに平板なそれとは異なってくることだろう。先ずは、しっかり生きることを。
今作で気に入った科白は「屑でも守りたいものはある」の一言。このレベルの科白が最低10程度は欲しい。
いとしいとしのぶーたれ乞食
劇団演奏舞台
演奏舞台アトリエ・九段下GEKIBA(東京都)
2014/11/28 (金) ~ 2014/11/30 (日)公演終了
満足度★★★★
狂気も欲しい
どうも清水 邦夫の作品というのは、役者の内面に強く高いテンションを維持することを要求する作品が多いように思うが、今作や楽屋は、その代表例と言えるかも知れない。清水は、良くリルケを引用するが、それは、彼自身の感性に詩的なものがあるからだろう。今作にしても、詩的感性なしに理解するのは困難だと感じる。人々は物事を率直に見る訓練をしていない場合が多いからである。
然し乍ら、pariahとしてものを見たらどう映るか? 老婆は? ええじゃないかパック旅行の面々が旅先で留まった場所は、ええじゃないかに加わった面々、千余名が首を刎ねられた首塚であった。其処には、老爺と老婆が住んでいたが、この老カップルは、実在の者ではあるまい。ええじゃないかパックで訪れた人々に呼応して出て来た異界の者達であると考えた方が、辻褄が合うように思う。その分、この二人を演じる者には、内面的なポテンシャルの高さが要求されるのだが、老婆役の一花さん、老爺役の鈴木さん、二人とも、良い演技をしていた。他に脇を固めた未亡人役の内海さん、看護婦役の阿部さんの演技も気に入った。若手では、渡辺君の目が気に入った。
シナリオ・演出上では、オープニングの首だけが浮かび上がるシーン。ええじゃないかパックの面々が休んだ先が、首塚であり、そこで主たるエピソードが展開されること。そして、ラスト。しゃれこうべに花がたむけられる美しい終わり方が有機的に連動していてグー。
欲を言えば、殆ど出ずっぱりの老婆の美醜にファーストシーン以外にも変化をつけて欲しい。メイクで無理なら、照明で工夫するなどでも大分違ってくるように思う。(例えば、醜を表す時は寒色系、美を表す時は暖色系という具合に)演技が良いのだから、そういう所で女優をフォローして欲しいのだ。何れにせよ、新人も入ったこの舞台で、丁寧な作りをしている。だが、もう一つ欲を言えば、もっと爆発的な瞬間があって良いとは思う。何せ、もう棄てるものなど何も無い人々のハレの表現なのだから。
New Planet One
笛井事務所
明石スタジオ(東京都)
2014/11/27 (木) ~ 2014/11/30 (日)公演終了
満足度★★★★
アンテナ感度良好 ばっと
星 新一のショート・ショートから7編を選んで劇化。演目は、①来訪者②マネー・エイジ③生活維持省④伴奏者⑤ボッコちゃん⑥肩の上の秘書⑦敬服すべき一生の7本だ。笛井事務所の制作である。この事務所、いつも面白い作品を手掛ける。そういうアンテナを張り巡らせているのだろう。然し、演技の丁寧さについては、若干、疑問を持つのも事実である。今回、テキストについては、いじっていないらしいから、星 新一さんの本を読んでもらうとして、細かい所作をぞんざいに演じられると、矢張り多く舞台を観ている者から高い評価を得るのは難しいと考える。具体例は会場で書いたアンケートに記した通り。
超想戦隊ジャスティンファイブVS破壊王デストンキング~煌めく流星~
〒機巧ぽすと〒 (からくりぽすと)
ART THEATER かもめ座(東京都)
2014/11/27 (木) ~ 2014/11/30 (日)公演終了
満足度★★★
善悪神学論争と人
正義などと矢鱈にノタマウ のは、子供を除けば、政治屋、アメリカの政治屋・プロパガンディスト、こういう輩に踊らされるアホ、そしてそれで金儲けをする連中と相場が決まっている。機巧ポストが、今回挑んだのは、こんなジャンルである。えっ!! という声を発したファンも多かろう。そこは、何である。
ちゃんと、神学的テーゼが提起されている。即ち、正義=善であるならば、それは、如何様に証明されうるのか? についてである。結論から言えば、悪無しに善は善足り得るのか? という疑問でもある。
今作では、人間を介して、混沌を見せ、混沌の中で喘ぐ者として悪を呈示しているようにも見える。そして、それは、人間的な悪であって、デモーニッシュな悪ではない。この辺りに今作の面白みがあろう。但し、これらに対して有効な物差しを持っている訳ではない点が、判断保留の原因だと考えられる。
因みにギリシャの知は、カオスを整除してクロノスが王に就き、クロノスを倒してゼウスが頂点に立ったが、ギリシャの神々は、浮気もすれば、嫉妬もし、その性格は、人間の映し鏡と捉える方が良いと考えられるから、こちらも、人間とそれを越える者とのいわばキメラなのだが、カオスに対して整除するものとしてのクロノスが介在している点、定規を持っていると言い得るようには思う。
翡翠の抄
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2014/11/26 (水) ~ 2014/11/30 (日)公演終了
満足度★★★★
其々のドラマを深く作り込んでおかないと 仇討への必然性が伝わらない
保元・平治の乱から壇ノ浦、更に衣川の戦いで義経が頼朝の襲撃に遭って自害する辺り迄の歴史を踏まえ、源平各々の魂魄が、現代の人間に憑依して仇を討つ為に闘う、というストーリーなのだが、仇討ちという発想は現代では死んでしまった概念なので、仇打ちせねば気が済まない、当時の人々の怨みつらみを更に深く描かなければ、どうもしっくりこない。三話位に分けて、上演しても良いのではなかろうか? 上演時間総体は、4時間半から6時間位を見当に。
いつも通り、役者の力は非常に高く、丁寧に演じているのだが、シナリオが余りに性急と感じた。惜しい。
ハミダスダス!
stick out
劇場MOMO(東京都)
2014/11/26 (水) ~ 2014/11/30 (日)公演終了
満足度★★★
まだ表層的
ミヒャエル・エンデのMomoをベースにしてはいるが、原作をなぞってもしょうがないので、無論、オリジナル台本である。時間泥棒が登場する点が共通で、後は、モモの子孫になっていたり、人々に溶け込む力を持っている点等で似通った点があるだけである。
構成は2本立て。1本目は、若者から、大人への責任追及。どうして、こんな世界にしたのか? である。核汚染を中核とする環境汚染、戦争・紛争、差別・被差別、苛め、虐待、不信、モンスターペアレンツ等々。答えを見出す方途の一つとして、MOMO的な世界を呈示する2本目が作られている。未来とは、何もかも未知数の世界だ、という定義が、我らの救いになるか否か。それは、我らの手の内に未来を取り戻せるか否かに掛かっており、それは、時間を我らが支配するのか、それとも、時間泥棒によって奪われるという比喩で表されているように、我らが時間に支配されるのか? との問いでもあるだろう。
今作で感心したのは、照明が実に効果的に使用されていることである。照明担当の腕、センスを高く評価したい。
ところで、ホントの解決策を見出す為には、一人一人が、自分の人生をキチンと背負うことから始めなければなるまい。
怪盗先生、教壇に立つ。
劇団だるま座
アトリエだるま座(東京都)
2014/11/26 (水) ~ 2014/12/03 (水)公演終了
満足度★★★★★
Aチームを拝見
いつもながら、実に丁寧な作り。良く練られたシナリオに、ベテラン勢の達者な芸、滲む人生経験の豊かさに対し、主要な役どころを演じる若手は、キャラをキチンと立てて過不足のない華を咲かせている。この辺りがだるま座の強みだろう。
壮大な、発想を日常的な学校という場に落とし込む手腕や、隋所に擽りを入れて、笑わせながらぐいぐい引っ張りつつ、人生の苦さ、傷み、悩みを織り交ぜ、最後には、キチンとほのかな希望を見せる。作劇のバランスは、王道である。上演中なので、詳しい筋は述べないが、秀作。
全段通しリーディング 仮名手本忠臣蔵
遊戯空間
浅草木馬亭(東京都)
2014/11/26 (水) ~ 2014/11/27 (木)公演終了
満足度★★★★★
「仮名手本忠臣蔵」べし観る
演劇に携わって本物を目指すなら、必見の舞台である。上演は、本日11月27日、13時からと18時からの2回を残すのみ。足を運んで損は無い。
大序の兜改めから討ち入りの十一段目までの一挙上演である。テキストは、浄瑠璃原文から構成し、主要登場人物は割愛していない。一方、今作は、文楽・歌舞伎の所作、節回しはなく衣裳は簡略化され、舞台美術も無い。但し、現在では上演されることの殆ど無いサブストリームをも全段通しで観ることによって、何故、忠臣蔵が、国民的戯曲になっているのかが、良く理解できる。
ヒトヒトヒト
キリンバズウカ
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2014/11/23 (日) ~ 2014/11/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
永遠の中間
要領だけ良く、他人を出し抜くことだけを目指して、迷走する現代社会を鋭く風刺。話の持って行き方が上手い。
(現在、公演中なので楽日以降に更に追記する)
AMMP[aemp]
劇団たくあん
吉祥寺櫂スタジオ(東京都)
2014/11/23 (日) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★★★
近未来の恋
高性能アンドロイドが人格を持ち、人間と同じような感情を持つようになった時代と場所を描いた近未来という設定だ。但し、今作が書かれたのは2006年、この時点での設定は2014年であったが、世界のロボット工学は、未だ此処まで発達していない。(追記2014.11.26)
言の葉の散りぬるを
wordleafproject
高田馬場ラビネスト(東京都)
2014/11/21 (金) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★★
言の葉とひと と
シナリオが適度に複雑で楽しめる。オープニングでの言の葉の説明や言葉と人の関係を示すシーンで謎の多い“いろは”うたを用い、行燈のような火を灯して黒子が舞うシーンも幻想的であり気に入った導入部である。演出のセンス、シナリオライターの言語感覚の良さを感じた。