うさぎライターが投票した舞台芸術アワード!

2015年度 1-10位と総評
海峡の7姉妹〜青函連絡船物語〜

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海峡の7姉妹〜青函連絡船物語〜

渡辺源四郎商店

青函連絡船の歴史を伝えるという公的な役割を担いつつ、ここまで素晴らしいエンタメに仕上げる手腕が秀逸。”船の模型を頭に載せてあごひもを結ぶ”という、どストレートな被り物で号泣させる脚本の素晴らしさ、それに応える役者陣の充実、「は~るばるきたぜはーこだて~♪」という大合唱が忘れられない。「演劇に何ができるか」、を超えて「演劇にできることはもっとある」と邁進する畑澤先生に一生ついて行きたい。

黒塚

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黒塚

木ノ下歌舞伎

歌舞伎を観るか、木ノ下歌舞伎を観るかと問われたら、正直私は木ノ下歌舞伎を観たいと答えるだろう。伝統の良さを際立たせるだけでなく、時代の勢いとセンスをよみがえらせる演出が素晴らしい。再演だが強烈なインパクトがあり、忘れられない作品。木ノ下・杉原両氏の名タッグに感謝したい。

その頬、熱線に焼かれ

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その頬、熱線に焼かれ

On7

原爆によるケロイドの治療のため渡米する7人の原爆乙女たちに焦点を当てた作品。ユニットの特性を上手く生かした設定、手術の失敗で亡くなった一人を狂言回しにほかの6人を掘り下げていく構成、メリハリあるキャラクターなど素晴らしい。女性ばかりの舞台には珍しく重心の低い、観る側が啓発されるような舞台は、さすがチョコレートケーキの古川脚本・日澤演出だと思う。

追憶のアリラン【ご来場ありがとうございました!】

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追憶のアリラン【ご来場ありがとうございました!】

劇団チョコレートケーキ

チョコレートケーキらしい重厚さと人間味にあふれた舞台。今なおなめらかに行かない日韓両国の歴史と庶民の本音が描かれる。単純に善悪で括れない登場人物が魅力的。中でも恩義を感じた日本人上司を助けようと、身の危険をかえりみず奔走する韓国人青年を演じた浅井伸治さんが素晴らしい。チョコレートケーキは、誰が主役をやっても行けるのが強みだが、浅井さんはそのたたずまいから心情がこぼれ落ちるようで魅せられる。

『痕跡≪あとあと≫』◆◇終演。ご来場ありがとうございました!!!◇◆

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『痕跡≪あとあと≫』◆◇終演。ご来場ありがとうございました!!!◇◆

KAKUTA

再演だが初めて観た私には忘れられない作品。衝撃的な出来事をめぐって目撃者と加害者、連れ去り犯、母親の思いが交差する。息子を求めて彷徨う母親が行く先々で出会う人々が、”それぞれの場所で生きている”リアルさがあり、物語に奥行きが出た。印象的なフライヤーも忘れられない。

祝祭

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祝祭

Trigger Line

ペルーの日本大使館公邸占拠事件を、報道されなかった裏側から見せる作品。史実とフィクションの境界線を感じさせない展開が見事。犯人側のリーダーなど人物像が魅力的で役者陣の好演が光った。林田さんの脚本にはいつも一ひねりあって、オチを知ってからもう一度観たくなる。

三人吉三

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三人吉三

木ノ下歌舞伎

因果応報を絵に描いたような、狭い世間でぐるぐるめぐる物語。歌舞伎の濃密な人間関係がスピーディーに展開し、キメの台詞は七五調でたっぷり聴かせる。珍しい地獄の場も観られて大変楽しかった。脚本の解釈と演出の相性の良さが生かされた舞台。

独りぼっちのブルース・レッドフィールド

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独りぼっちのブルース・レッドフィールド

ポップンマッシュルームチキン野郎

ポップンが有名俳優を使うと毒ッ気が薄れるという、一味足りない感はあるものの、脚本のアイデアと巧さは第一級。吹原幸太さんの脚本はブラックな中に人間の本質を潜ませていて、その豊かな発想力には毎回驚かされる。下ネタも含めて今後の作品に期待せずにいられない。

丘の上、ただひとつの家(全公演終了・ご来場ありがとうございました)

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丘の上、ただひとつの家(全公演終了・ご来場ありがとうございました)

鵺的(ぬえてき)

鵺的の得意とする、望まない厳しい現実の中で、もがきぶつかり合う家族と、その再生を予感させる作品。ぶっ飛んだ母親のキャラが強烈な印象を残した。人を幸せにするのは、自己を赦し他者を赦すこと、という諸悪の根源でもある母親の”ノーテンキな菩薩”キャラが秀逸。

もっと美人だった

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もっと美人だった

箱庭円舞曲

ひとりの女性の人生を大学時代・結婚当初・現在の3つの時代に分けて描き、最後には自分の人生を丸ごと肯定するという作品。交互にフォーカスするそれぞれの時代が生き生きと描かれ、希望通りにいかない人生も良しとするしなやかさが心地よかった。”内面から美しくなる”自己啓発教室がやたら可笑しかった。

総評

仕事の関係で本数は減りましが、選んで観に行くので外れがほとんどなくなり、一小劇場ファンとしては大変楽しい1年でした(^^♪ 
私が★5つをつける基準は「驚きがあるかどうか」です。巧いのも楽しいのも想定の範囲内なら、そこから頭一つ抜けるのは、いかに予想外の驚きを提供してくれるかということに尽きます。その意味で渡辺源四郎商店、木ノ下歌舞伎やチョコレートケーキなどは、驚きをもって観劇しました。しかも毎回の水準の高さ、加えて強靭なテーマを持っていることも魅力です。
面白い芝居を創りたいというすべての皆さんに敬意と感謝を込めて、今年も劇場へ足を運びたいと思います。

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