nらoむkれe〜nずaんkの観てきた!クチコミ一覧

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元禄港歌-千年の恋の森-

元禄港歌-千年の恋の森-

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2016/01/07 (木) ~ 2016/01/31 (日)公演終了

大衆演劇とは
こういうものなのだろう。物語も解りやすい…というかベタな作品なのだけれど、お客さんは(特に、ややご年配の方は)充分に楽しんでいらっしゃるご様子。席が前方のセンターブロック下手の通路脇だったため、目の前でいいシーンを拝見できて「ごちそうさま」という気分。ただ、猿之助さんの唄は、お疲れなのかちょっと高音が伸びず残念。

怪童がゆく

怪童がゆく

玉田企画

アトリエ春風舎(東京都)

2016/01/15 (金) ~ 2016/01/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

ドキッ
とするくらい、冒頭の玉田さんの「こだわり」具合がアスペルガーな感じで…。それが後半で何だか素直な少年になってて可笑し可愛かった。それにしても、ブライアリー・ロングさんが可笑しい。綺麗な外国人も、思い切って口説くと付き合ってくれるのかもしれないなぁという勘違いをしてしまいそう。『アマルガム手帖+』が終演して僅か数日で出演していることに驚く。このスパンで出演された人を初めて見た気がする。それでいて、どちらも素敵だから更に驚く。恐るべし。

ミルフィーユ

ミルフィーユ

aibook

OFF OFFシアター(東京都)

2016/02/03 (水) ~ 2016/02/10 (水)公演終了

満足度★★★★★

折り重なる感情
ちあきなおみ『星影の小径』が大好きな人間には堪らない。それだけでも心に響く作品だと確信する。そして裏切らない。震災の傷と真っ向勝負し、あの時もてはやされた「絆」の真の姿を突きつける。みんな泣くといい。心を洗うといい。⚫︎菊地美里さんという怪物を見つけた。どんな風に形容しても軽くなってしまいそうで言葉が見つからないが、間違いなく身の前で生きていた。舞台と客席という境界を飛び越えてそこに存在し、巻き込んでくれた。そう、その会話の中に自分がいる感覚に引き込んでくれる怪力。⚫︎村田綾さんという美女も発見。男っぷりのイイ女性を好演。台詞以上に目がモノを言う。そう、大きな瞳と、縁取る透き通るような白目が饒舌。そして説得力がある。そこに哀愁まで纏ってしまうのだから無敵。次が観たい女優さんを見つけてホクホク。⚫︎目当てだった大好きなもたい陽子さん。相変わらず麗しく、美しい声。遠く海を眺める姿に胸締め付けられる。大好きだからこそ…まだ良くなる。義兄とのバトルはもっと抉り抉られるはず。さらなる進化で、高みに登ること請け合い。

珈琲法要

珈琲法要

ホエイ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/12/31 (木) ~ 2016/01/06 (水)公演終了

満足度★★★★★

千秋楽
本編について触れる前に書くのは失礼だけど、こんなに充実したアフタートークは初めてだ。ゲストのミナモザ主宰の瀬戸山さんとの内容も作品の核となる部分について掘り下げ、客席からの質問への回答も興味深い内容ばかり。史実を元にした作品の多角的な視点を得られ、大満足。●農耕民族と狩猟民族の価値観の相違が根底にあるという解説に、目からウロコ。土地に線を引き所有しようとするから、利益を求めそれを広げようと侵略が始まる。それは死をもたらし、やがて戦争を引き起こす。当然、遺恨が生じる。人間の愚かさを突きつけられた。倭人はどこまで行く?●菊池佳南さんの魅力が満載。アイヌの民族楽器を見事に鳴らし、厳かに弔いの雄叫びを上げ、子守唄を歌いあげる。笑いを誘うキュートさと、安楽死とも敵討ちともとれる戦慄の行為。怒りと哀しみの涙にも、カムイへの祈りにも、心を揺さぶられる。魅力を引き出す見事な山田百次演出。脱帽。

idiot

idiot

青年団若手自主企画 vol.64 山内企画

アトリエ春風舎(東京都)

2016/01/05 (火) ~ 2016/01/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

2016観劇初め
2016観劇始め。ゴドーを待つが如く、電話を待つ二人の若い女性。誘いを待つというより、互いの大切さや関係性、「好き」かどうかを探る会話劇。いや会話劇というよりも、身体表現。相手を必要とするベクトルのズレが痛々しい。涙が出るのを抑えるのが大変だった。●二人の距離感に最初から違和感があった。でもそれは作品の完成度や演技の質の問題ではなく、それこそが二人の関係性だった。二人とも孤独と戦っている。それを埋めるように互いを求める。でも「好き」の捉え方や「触れる」ことの価値観に相違がある二人。●要求と欲求と渇望。ベクトルが一致しない二人は、笑っているのに悲しそう。取り繕う100の言葉の中に1つ本音を潜り込ませる。「キミはワタシのことを好きなの?」二人の間でスキのベクトルが行ったり来たり。気持ちの不安定さや揺らぎを、明暗をクルクルと変える照明が語る。●言葉は魔法。確かに言霊ってあると思う。ネガティブな言葉で「楽しいが死んだ」りする。「何かした?」と尋ねる人はみな、極限の悲しみに沈んでいるだろう。死んだ「楽しい」を蘇らせようとする彼女の戦いの熱量に心が灼かれた。●藤松祥子さんの「哀しさ」は超一級品。一目惚れした、アマヤドリの『悲しい悲鳴』で見せた絶望の淵に立つ女学生の涙と同じだ。愛くるしい笑顔とのギャップが藤松祥子さんの真骨頂。今晩も、MOZUの孤独との戦いを見守りに行こう。●2日目。変化に舞台はナマモノを再認識する。前半のテンポが上がった?言葉は数段明瞭になった。照明の光度も上がり観やすくなった。それとともに、二人のオフェンスとディフェンスの攻守がハッキリした。そして、永遠に続くように思える孤独の淵に導くような10カウント。●明るい♫イッツ・ア・スモール・ワールド🎶が切なさを増幅させる。人は、無人島の孤独なら生きていけるが、人と居ながらの孤独には耐えられない。スキンシップしたい女の子と、近過ぎる距離を恐れる女の子。その違いを埋める愛想笑いが痛々しい。浮き彫りになる困惑。●目に見える1番の不条理は2度目の電話を流すコト。この世の不条理は「好きな人が、同じ分だけ好きになってはくれない」というコト。それはむしろ、真理なのかもしれない。娘が、あんな孤独と格闘することになったとしたら…想像していたたまれなくなった。楽しいは生き物だ。

演劇研修所第9期生修了公演『嚙みついた娘』

演劇研修所第9期生修了公演『嚙みついた娘』

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2016/01/08 (金) ~ 2016/01/13 (水)公演終了

満足度★★★★★

修了公演はいつもスゴイ
八幡みゆきさんの出オチのようなオープニング。彼女、こんなにも存在感があったのかと驚かされた。あの、役へのフィット感は最高だ。あれほど不幸な田舎娘が似合うとは。ポジションは「おしん」で、精神は「じゃりん子チエ」。愛おしいキャラクター。●貧富の差が人間の歪みを生む。そこに奔放な性の欲望が渦巻き、裏切りと侮蔑が社会を蝕む。放蕩息子に弄ばれ、懐妊を悪のように扱われる幸薄い女中を宇田川はるかさんが好演。控え目な演技ながら女としての人としての誇りを醸す。彼女の今後を観続けたい。●毎年思うこと。修了公演までの1年で、幾つかの試演会を経て研修生のそれぞれにスポットが当たる演目を上演させるスタッフの目と、目に見えて成長する研修生に感心させられる。先輩たちに劣らぬ活躍を期待しよう。●修了生ももう100名超。多くの公演や作品で見かけるようになった。しかし、まだまだ十分とは言い難い。研修所には、国立の強みを最大限に活かして、OB公演等の企画を切に願う。『研修所修了生』という大きなカンパニーの活性化を望む。

背信 | ブルールーム

背信 | ブルールーム

PLAY/GROUND Creation

シアター風姿花伝(東京都)

2016/01/07 (木) ~ 2016/01/10 (日)公演終了

オムニバス
『背信』目当ての松本みゆきさん。フワーッとした魅力は健在。何だか気になる女友達のポジションで、じわじわ好きなっていく。これって長く恋するパターンじゃね?拝見する度に好き度が増す。かっぱえびせんだ。やめられない止まらないだ。●『ブルールームver.B』男女5組10名のキャスト。二人芝居の10場?1人が2場で、二人の異性との絡み。恋は事故のように起きる。出会いの数だけSEXがある。いやぁ、現実はどうなのだろう。混乱する。羨ましい限りだな。最もエロティックだったのはドラッグクイーンの佐々木美奈さん。官能の狂気と天真爛漫さを演じ分ける力量たるや。脱ぐことと着ることのトキメキを知り尽くしたオトナの女性の魅力に脱帽。●『ブルールームver.C』娼婦役の山脇唯さんがクールビューティ。オープニングの出会いと別れがリアルだった。1年後のエンディングのベッドに漂わせた空気に酔う。あんな娼婦がいるなら出会いたい。ドラッグクイーンであるモデルは17歳。佐度那津季さんは17歳に見えちゃうから凄い。セクシーな役を、あの背中がさらに一層エロティックに高めた。美しかった。舞台で大胆に肌を晒す覚悟に拍手。●『ブルールームver.B&C』キャストによって演出が違った。立ち位置、ベッドインの枕の向きまで。俳優が最も良く見える工夫なのだろう。俳優だけで上演する価値や意味は、まさにコレだろう。ブランデーなどの小道具が違うのも演者自身のセレクトかな。

アマルガム手帖+

アマルガム手帖+

リクウズルーム

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/01/08 (金) ~ 2016/01/13 (水)公演終了

満足度★★★★★

クセになる
たまらなく面白い。受けての存在を超越したマシンガンのような台詞の乱射と、状況と、無関係にも思えるような身体表現。もちろんそこには伝えたいメッセージはあるだろうけど、それを理解するよりも体感する気持ち良さに身を委ねる。ふわーっとする。●学校という場所には、もしかすると一般社会以上に「妬み、嫉み」が渦巻き、隙あらば奪おうとする。それに負けて登校が苦痛になる五月病の葛藤がリアル。「わたし」が重なり合って「わたしたち」に飲み込まれる感じに気持ち悪さが見事。●お母さんという巨大な怪獣は厄介だ。距離感の尺度が壊れている上に、ほとんどの攻撃に怯まない。母性愛という無敵のアイテムで全てを凌駕する。そんな母親を、鳥公園の西尾佳織さんが好演。あのふわっとした雰囲気が見事に作品にマッチして可愛い愛しい。●とても哲学的な作品だ。人物や人間関係を表す数式も、Y’さんと彼とのやり取りも、じっくり考えてみたら楽しいものばかり。言葉の遊び方のセンスが抜群。形容詞「難しい、厳しい…」の韻が心地よい。「恋」と「変」の使い方も上手い。人間関係は無限なπだ。●黒板のチョーク受けが斜めになったセットは教室や授業の歪みや崩壊の象徴に見えた。世の中は矛盾ばかり。硬くて柔らかく、柔らかくて硬い。全てのものが見方や捉え方で価値や意味が変わる。目に見えているものなんて僅かな一面。何も捉えられていないことを知る。●ブライアリー・ロングさんは黒船のよう。バックボーンが謎でも圧倒的な存在感。そして美しい。横の立ち姿は彫像のよう。素晴らしいものが円や球であるならば、彼女のヒップラインの丸みは紛れもなく最高の芸術品。その美しさでおかしなコトを言うのだからお手上げ。

マクベス~The tragedy of Mr. and Mrs. Macbeth

マクベス~The tragedy of Mr. and Mrs. Macbeth

wits

シアターX(東京都)

2016/01/15 (金) ~ 2016/01/16 (土)公演終了

満足度★★★★

アゴラ劇場で
チョウソンハさんと池田有希子さんという魅力的な二人による芝居。いや、これは漫談芝居だな。客をいじりながら、互いにボケたりツッコミを入れたりしながら「マクベス」を語るという試み。実験芝居。二人が何役も演じるのだけれど、そればかりか役を入れ替えたりするから面白い。もう、オトコもオンナも関係なし。そのテンポの良さに引き込まれる。池田さんが「ダフダフ」言ってて可愛い。ソンハさんのギター弾き語りにビックリ。百戦錬磨の二人のガチンコ。そこに隠れキャスト登場。門番の佐藤友さん。あんなに観劇中に笑ったの初めてだ。笑いすぎて頬が筋肉痛。最高。友さんに一目ぼれ。

えのもとぐりむ作品集 第10部 ソウサイノチチル

えのもとぐりむ作品集 第10部 ソウサイノチチル

株式会社Legs&Loins

Geki地下Liberty(東京都)

2016/01/19 (火) ~ 2016/01/24 (日)公演終了

初日
前情報を入れずに観劇。シチュエーションコメディなのかな? これまでに観た作品とのギャップに少々困惑。ナンセンスの連続だということだけでなく、やや物語にも演技にもゴツゴツしたところが見える。回を重ねて練られるだろう。滑らかになっていくはず。あのハコに、あれほどのキャストは寿司詰め状態になる。窮屈そうだった。暗転中に階段から足を踏み外した方は大丈夫だったかなぁ?

不完全な己たち

不完全な己たち

gojunko

スタジオ空洞(東京都)

2016/01/20 (水) ~ 2016/01/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

寂しい嫉妬
大好きなとみやまあゆみさんを観にスタジオ空洞へ。開演から暫く背中の演技。まさかの設定に度肝を抜かれた。自分の容姿や人生に充分満足している人は、この世にどれくらいいるのだろうか。別の人生を手に入れたくなることもあるはず。チクチクした。●俳優は、いくつもの人生を生きて、それを見せてくれる。映画もいいけど、目の前で生きてみせてくれる舞台は、その浸透力が格段に違う。人は皆、影響しあって生きている。自分の存在が大切な人の負担になっていると知ったら、どんな気持ちになるのか?ゾッとする。●自分に非が無い問題で揶揄される憤りはいかばかりか。それを放出しない彼女の心は、どれほど焼かれただろう。彼女が一瞬だけ牙を剥いた相手は認知症が始まった叔母。ところが、逆襲を受ける。意識的な悪意の存在に背筋が凍った。●肉親だって、気の合う合わないはある。しかし、それに触れてはいけないという暗黙の了解が家族にはあるはず。きれいごとではない怨みや妬みがこぼれ出す。でも、一番破壊力があるのは憐れみ。それが家族に致命的な傷を与える。誰もが自分は大丈夫だと信じている。●小瀧万梨子さんが今作も飛び道具。存在感が半端なく、その破壊力は絶大。契約恋人の美しさにはウットリだ。猫耳カチューシャがあんなに可愛らしく見えるなんて奇跡だ。それを外して、あの役にすーっと下の子が生まれる時は、意識して上の子を可愛がってあげな」と言う。大好きなママを取られた上の子の妬みは純粋なだけに破壊力が高い。愛ママから生まれたミチルが愛に満たされなかったという不幸。奇形の金魚にまで嫉妬したあげくの…報い。呪い。その代わりに…チェンジする彼女に脱帽。小さなアレの演奏も味わい深かった。●下の子が生まれる時は、意識して上の子を可愛がってあげな」と言う。大好きなママを取られた上の子の妬みは純粋なだけに破壊力が高い。愛ママから生まれたミチルが愛に満たされなかったという不幸。奇形の金魚にまで嫉妬したあげくの…報い。呪い。その代わりに…手に入れたママの優しさ。代償に背負った個性。空っぽの金魚鉢は、偽りの家族。見て見ぬフリに疲弊する。最初の脱落者はお父さん。男って情けない。誰もが持つだろう、受け継ぎたくない親のDNA、渡したくない自分のDNA。逃れられないDNAの恐怖のスパイラル。●遺伝子検査による堕胎の是非。もし問題が見つかったら…の倫理観論議も終わりなきスパイラル。それも見て見ぬフリができるのか。マナミちゃんは生まれていなかったとしたら…。本当の家族が子どもだけだと言うなら、配偶者は違うと言うなら…夫婦の在り方が問われた。●』⑨「深爪が痛い」「オナラが出そう」「あっ…」マナミちゃんのような女の子。あのつぶらな瞳は天使だ。彼女がいるのは星の世界。捨てられたネギも離婚届も星の世界へ。みぞぐちあすみさんが穢れのなさは神の領域だ。彼女は、全ての人物の心情を見せてくれる。雄弁だ。●女の子は幻のように消える。彼女の表情が物語のナビゲーター。見つめる瞳が豊かに語る。ミチルが愛される手段として身に付けたアレを指して尋ねる。「それ、まだ要る?」それは、ミチルに、本当の人生を生きるよう促すものだ。舞い降りた天使だった。●ミチルはオープニングの背中語りで、ソレを握っていた。何度も握っていた。その手で、天使に促されながら明るい未来を、本当の人生を、本当の家族を、本当の愛を、手に入れてくれることを願う。「あれ〜?」の向こうに光が差していると信じている。

書く女

書く女

ニ兎社

世田谷パブリックシアター(東京都)

2016/01/21 (木) ~ 2016/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしいね
参りました。楽し愛しの素晴らしい舞台だった。永井愛さんの描く人物のなんと愛らしいことか。頭にくる人物が一人もいない清々しさ。そこに政治や社会の愚かしさはあっても、目の前の人物に憎しみがない。帰りの足取りが軽い。いい作品だ。舞台で、あんなに美しい雪を観たことないな。●同じ人物を描きながら、井上ひさし氏とこんなにも違うとは。どちらが良い悪いではない。どちらも素晴らしい作品。●木野花さんはバケモノだ。素晴らしすぎる。可愛らしさで突き抜けている。「万歳三唱」で声をちょっぴり裏返す中に、その愚かしさを忍ばせる。貧しい市民の象徴。明るく賑やかです愛に溢れた妹を、くるくると表情を変え、可愛さ満点に朝倉あきさんが好演。●特筆すべきは長尾純子さん。作品に、豪快な立ち居振る舞いと物言いでアクセントを付けた。柔らかな空気を一変させる最高のスパイス。大きな劇場に合わせた彼女のオーバーアクションがジャストフィット。彼女の力量が正当に評価され、今作で日の目をみると確信している。●黒木華さんの纏う柔らかな空気が、作品を万人に愛されるものにしている。ポーズを取りながら筆を執る姿が愛くるしい。モノローグや高笑いにぎこちなさが見える部分もあるけれど、台詞と視線の交換が美しい。批評家斎藤との対決を楽しむ姿に、戦う相手がいればこその成長を実感する。●日なたで遊ぶか、日陰で生きるか…自分が生徒指導の基盤としていることを台詞で聞き、ゾクゾクした。ラストで、我が故郷の「伊勢崎銘仙」を欲する一葉家族に、さらに親しみが湧いた。自分の中にも郷土愛があることを発見できて、かなり嬉しい。ブラボー、永井愛!

夫婦

夫婦

ハイバイ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2016/01/24 (日) ~ 2016/02/04 (木)公演終了

かなり好評ですね
父の認知症。家父長制の象徴のような立ち居振る舞いの父。人ごとではなかった。母の通院、入院、開腹手術、告別式。いろいろ蘇った。あの大学病院の腹腔鏡手術も身近なところの出来事。複雑な気持ちで…楽しめなかった。唯一楽しんだのは、川面千晶さん演じるマネージャーの暴挙。

THE GAME OF POLYAMORY LIFE

THE GAME OF POLYAMORY LIFE

趣向

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2016/01/21 (木) ~ 2016/01/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

そこに
天使がいた。何度も大きく息を吸い込んで、人間と天使の間を行ったり来たり。天使は、気持ちよくがんじがらめにされていて自由…なのだそうだ。究極だ。大切な人とのしがらみを持ちながら、それが自由だと感じるなら。●天使を中心に集った彼等はとても純粋だ。けれど同時に歪んでいる。だからヒズミが生じる。「子どもを産んでみたい」は、ずっとワタシも言っていること。男が女に叶わない最大の要素。男で出産経験があるのはシュワルツネッガーだけ。●多賀麻美さんはズルイ。多賀麻美さんはズルイ。多賀麻美さんはズルイ。あの透明感は奇跡だ。紛れもなく天使だった。まるでアニメの中から飛び出して来たような可愛らしさ。あの柔らかな笑顔で見つめられたら、みんな天国に昇る。●男の子たちの 女王で、女の子たちの王子でありながら、とても人間的な嫉妬心を持つ麗しの美人を、大好きな水野小論さんが好演。ハイヒールにダメージデニムパンツの、なんと眩しいことか。誰だってクラクラして奴隷になる。●ガンタムくんに自分が重なる。大好きな人に頑張って近づきつつも、一歩踏み込めず『どうせ…、これくらいが限界だ』と自分を納得させて傷つくことを回避する。残念だ。まったく残念だ。それにしてもキャスティングが見事。天晴れ。●個人的に対面舞台や囲み舞台は苦手。まず客席の顔が気になって集中出来ない。そして、死角となる場面が多い。客に不親切な演出だ。演技方向を限定しない姿勢は日常性を高めるが、『あぁ、あっちの席の方が…。』と考えて集中出来ない。●初日とピッタリ点対称になる席で観劇。全く違う世界が広がった。みんな正直で、いい人間ばかり。だから、自分に起きたら大変だろうに、終演後の足取りが軽いから不思議。●好きな人が他の人を好きになることを祝える人間にはきっとなれない。天使の宣言にも矛盾を感じる。だけど、天使たちが愛している人に自分以外への愛が生じたとき、受け入れられるモノだけでなく動揺したということが、腑に落ちた。●アリスが虎とフォークで戯れた後に席を立ち、タブレットを持って戻った時の表情の柔らかさが印象的。この二人に対して天使が想像したこと…当たっていると確信して妬けた。困り顔も苛立ち顔もイイけど、柔和な表情の水野小論さん最強。

合唱曲第58番

合唱曲第58番

田上パル

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/01/17 (日) ~ 2016/01/27 (水)公演終了

満足度★★★★★

人間なんてララ〜ラ〜ララララ〜ラ〜。
人間て、やっぱり愚かで愛しい。悪気はないのに、寧ろ愛をもって人を傷つける。そして自分も傷を負う。作演出の田上さんには、ぜひリアル岡田先生にご連絡して戴きたい…と、トークの質疑で言えなかったリアル中学教師は願う。●統廃合、いじめ、不登校、体罰…学校が抱える難題がゴロゴロ。前半のわちゃわちゃしたバカバカしさが、後半に効いてくる。彼等はきっと学校が大嫌いだったけど、これからずっと繋がっていけるのだろうなぁ。教師が(特に中学)報われるのは、卒業式と成人式くらいだよ。●岡田先生は、失敗を児童にきちんと謝罪できていいね。能島瑞穂さんが好演。岡田先生は苦しい3年を過ごしたね。解放されてよかった。●長野海さんが素敵。じゃりン子チエばりの小学生から、ませた女子中学生、究極はナース服のお母さん。その振り幅の広さに爆笑と感服。スクール水着もナマ着替えも天晴れだけど、白衣の美しさが眩しすぎる。洗練されたよそ者への、お母さん連合の反発が生々しかった。●中学デビューした平田さん。学級委員の優等生のやさぐれ方が痛々しい。何が彼女をそうさせたのかを考えると苦しくなる。真っ直ぐな気持ちの持ち主だからこそ、消化できなかったのだろう。純粋な彼女を、江花明里さんが好演。●この中学校がまっとうなのは、やさぐれた平田さんをチヤホヤすることなく、「不良!」と切り捨てる純粋さ。本当にダメな学校は易きに流れる。大道のような、ヤンチャだけど真っ直ぐなヤツがクラスや学校を救う。いま、子どもたちの中に大道がいない。日高啓介さんが好演。●長野海さんの「苛立ち」「ジレンマ」から発する地団太が最高級品。あの地団太を観るだけでも足を運ぶ価値がある。人生はままならないことだらけだ。この作品に流れる本質を、あの地団太がすべて内包している。暴れまくってる。そうだ、人生はジッとなんてしてられない。●ジゴクという名の中学校。宣言通りに戻った岡田先生。月出では軍曹だったけど、出水での表情は菩薩だった。大道との対決は涙無しでは見られない。「率直さに救われた」と言える大人の度量と率直さ。見習ってほしいドアホが職場に多すぎる。そこに絶望、ここに希望があった。●とにかく彼らが心配だ。卒業(千秋楽)したらどうなっちゃうんだろう。あんなにもしっかりと生きたら、あんなにも級友と繋がったら、あんなにも時間に足跡を残したなら、そこを離れる時に失うものの大きさに耐えうるのか心配。観ている人間がそう思うほどの作品。

そして母はキレイになった

そして母はキレイになった

ONEOR8

相模原南市民ホール(神奈川県)

2016/02/03 (水) ~ 2016/02/03 (水)公演終了

満足度★★★★★

必見
初演も素晴らしかった。再演も、やはり素晴らしかった。新たに気づくこともあった。前回は、母の綺麗さに目が奪われていた。今日は、「キレイ」になろうとした母に、「キレイ」にならずに済んでいるコトを願った。●高橋恵子さんの美しさにはウットリする。シュシュひとつで時間を飛び越えてしまう演出と技量に敬服する。●ずっと受け入れ態勢だった千夏が守ろうとした「キレイ」な母。30年の償いに「キレイ」になろうとした母。それが娘の願いだと思ってしまう母は「キレイ」ではない。二度も…いや最も傷付ける行為だと解らなかった母を詰ってやる時が二人に訪れますように。●東京千秋楽のカーテンコールでの高橋恵子さんの挨拶が素敵だった。感激している劇団の皆さんの表情がまた素敵だった。これからひと月、旅公演だそうな。最寄りの街で、是非とも目撃して欲しい。

ネタバレBOX

夫婦は他に目が行っても、子どもは他に目が行くコトはない」惚れ抜いた妻を諦めても、娘のシアワセを守り抜こうとした父の思いに震えた。一番苦しかったのは、幼いカナコが母を求めて海へ向かうシーン。あの、父の言葉を背中で聞いてコックリと頷く姿は、見事なまでに小学生。悲しみを纏う和田ひろこさんにKOされた。
胎内

胎内

マキーフン

【閉館】SPACE 梟門(東京都)

2016/01/27 (水) ~ 2016/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

定期公演を望む
●そこは誕生前の場所。閉ざされた闇の世界。産み落とされる社会に希望の光はあるのだろうか。もう既に世に生まれて汚れた人生を生きた者が、新たな人生を生きるためには生まれ直すしかない。汚れを落とすための閉ざされた暗闇。果たして希望の光は差し込むのか?●船岩祐太さんは光の演出が見事。あの揺らめく光も、僅かな穴から反射する光も、スイッチで放つ光も、希望と絶望を照らし出す。それを浮き彫りにする閉ざされた空間。舞台も客席も、まさにその闇に呑み込まれていた。終演時にあれ程気分が悪かったのは、演出が見事だった証だろう。●主宰の藤井咲有里さんが体当たりの熱演。僅かな明かりに映し出される白い太腿が艶めかしい。透き通るような背中も艶やか。それで、あの長台詞を感情の高まりを連れ立って流れるように吐き、機関銃のように撃つ。新国立演劇研修所の盟友、遠山悠介さんとの問答が哲学的で深い。人生を斬る。●演出とは、演技指導ではないということを教えられた気がする。船岩さんの演出、光…と言うより影や闇、そして音の演出が見事。闇に微かに刻む秒針が、まるでカウントダウンのよう。タイムリミットが迫る恐怖が伝染する。闇が客席をも胎内に呑み込んだ。その時を共に生きた。●胎内=洞窟=アウシュビッツのガス室。「子どもを産ませたい」覚悟した人間は、動物の本能として種を残そうとする。ガス室ではFREE SEXの状態に陥ったと何かで読んだ。カラダが馬鹿だとすれば、ココロも馬鹿にならないと生きていられないのかもしれない。この世の中も。●藤井咲有里、恐るべし。感情に淀みも歪みも無い。冷静も動揺も発狂も見事に連なっていた。新国立劇場演劇研修所修了生が立ち上げたユニットはあるものの、コンスタントに公演できずに苦労している。是非ともマキーフンに健闘して欲しい。みんなで応援しよう。

タンバリン

タンバリン

劇団 go to

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2016/01/16 (土) ~ 2016/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★

ボクシングを
扱った舞台を初めて観た気がする。リングを思わせる素舞台での会話劇。テレビの音声や家族とのやりとりが、一人芝居と影の声のような演出で興味深い。女性だけの出演で、男性の台詞に面白い試みがなされていた。最も若い小坂愛さんが最年長の役というのも面白い。ちょっとしたアプローチで、確かにお年寄りに見えるから大したもの。それにしても、ボクシングを題材にしながら、タイトルは楽器という不思議。そこに主人公の名前が絡んでいるという仕掛け。そのセンスに笑った。客演の笹本順子さんが芸達者でアドリブにも笑った。老いとは何だろう。親子とは、家族とは。恩師と教え子とは。結局は、生きるということを考えさせられる。名前で呼び合う育ての親と養女。互いを本気で思い、叱咤激励したり介抱したりする瞬間の力強い呼び捨てが心に響いた。次の公演も期待する。

飛龍伝 2016

飛龍伝 2016

大坪企画

劇場HOPE(東京都)

2016/02/02 (火) ~ 2016/02/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

つか作品が●好きでも●苦手でも
つかこうへい作品が大好きな方、納得の出来栄えです。つかこうへい作品が苦手な方にもオススメです。●つか作品が大好物な方へ▶▶▶汗が滴り唾がとぶ熱い舞台。紛れもなくつかこうへいの魂が受け継がれていることを実感する。客席に入った瞬間に、「あぁ、飛龍伝だ」と思うはず。あの舞台セットが、ちゃんとそこにあって、目つぶしのライトも仕込まれている。あとは飛龍伝の世界に身を委ねればいい。140分があっという間に感じるはず。オープニングから痺れる。あの「飛龍」の存在を、こんなにもはっきりと感じられたことはなかった。●つか作品が苦手な方へ▶▶▶おそらくは、あの疾走する感覚、機関銃のように放たれる早口なセリフがその原因の多くを占めるのではなかろうか。であるならば、この『飛龍伝2016』は、これまでのつか作品では感じられなかった落ち着きを感じるだろう。言葉がはっきりと届いてくる。物語がしっかりと見えてくる。つか作品に対して勢いばかりが目についたという人にこそ、観てもらいたい作品に仕上がっている。稲村梓さん演じる神林美智子の魂の叫びを体感してほしい。■誤解を恐れずに■ここは青山劇場ではない。シアタートラムだってステージはかなりの広さがある。それと同じ作品になるはずがない。小さい舞台でも、その疾走感を追い求めるのは「北区AKT STAGE」に任せておけばいい。それが彼らの使命であり、つか作品のつかこうへいらしさを継承するべき団体なのだから。であるならば、このサイズの劇場で上演する『飛龍伝』は走り回って作る必要はないし、そもそもそのスペースがない。袖から立ち位置までは数歩の舞台。殺陣も成り立たない。ならば、別のアプローチで、別の『飛龍伝』に挑戦すべきであり、まさにチャレンジされた春田純一演出。名作『飛龍伝』に、見事な一石を投じ、足跡を残すだろう。敢えて注文を付けるならば、もう少し歌わせても良かった。稲村梓さんの歌は観客を酔わせるに十分な歌唱力があると感じられた。★心を込めてダブルコールを送らせていただいた。

ジョルジ・フッチボール・クルーヴィー

ジョルジ・フッチボール・クルーヴィー

Ammo

d-倉庫(東京都)

2016/01/08 (金) ~ 2016/01/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

必見
利己主義で保身で我関せずの現代人に突き付ける。困難はすぐ隣にある。人がそれを見ないようにしているだけ。混沌の世界。富裕と貧困、光と影は隣り合わせなのに、相容れない世界。それを飛び越えようとした純粋な心を持つ少女たち。友達を、友達との関係を大切に思えばこそ、隔てる壁や溝に苦しむ。彼女たちが望んだ未来はサッカーの栄光よりも遠い。地球の反対側にある国が抱える問題は、地球全体の縮図のようだ。それを倫理観だけでははかりきれないこととして抉り出す秀作。年の初めに、素晴らしい作品に出会えた。

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