片鱗 公演情報 片鱗」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.9
1-20件 / 27件中
  • 満足度★★★★

    さすがイキウメにハズレ無し
    やっぱりおもしろかった。今回は、ちょっとオカルトというか、怖いお話。
    手塚とおる氏が出るというので、これもたのしみだったのだが…

    ネタバレBOX

    超ベタな使い方というか。でもそれが正解なのかも。手塚さんならではの不気味さを存分に味わえる役。
    「魔」っていうか、「呪」かな? 役名は「男」だけど。
    セリフはひとつもなく、時々呻き声をあげ、手足をくねらせて舞台上や客席を徘徊しているだけ。
    最前列の客席がところどころ空席なので、ああこれは何かに使うんだなと予想したけれど…手塚さんが座るためだったとは。隣に座られた人はちょっと落ち着かないんじゃないかしらん。

    一見平穏な郊外の住宅街に、父一人娘一人の安斉家が越してきたところからソレが始まる。
    まあつまり、ソレってのは「呪い」だったわけだが。
    「男」を目撃した人は、次々とおかしくなってしまう。
    「許さない」のひと言だけを繰り返し、コミュニケーションも取れず、謎の「水」を身体から零す。そして間もなく死んでしまう。
    安斉家の周囲では植物は枯れ、人々は狂い、ついには廃墟と化すという。
    唯一の部外者である蘭の恋人・日比野は、奇妙な冷静さで「水」や安斉の過去に済んでいた町を調べる。(「水」は重水であった。重水ってそういえば何だっけ?と調べちゃったよ。)
    住む町をことごとく廃墟にしたのだろうと咎める日比野に、「私ではなく、娘の体質のせいだ」と安斉は答える。

    大河原家の息子・和夫は安斉の娘・忍とつき合うようになり、忍は妊娠。
    和夫は親に告白し、安斉に謝罪する。堕胎してもらおうとするが、安斉に「君は自分を変えようとはしないのか」「忍を愛していないのか」と問われ、父になる決意をする。和夫役の大窪人衛くんが健気でかわいい。
    布を縒りあわせた太い綱が、水を滴らせ上から降りてくる。臍帯を想起させる。
    忍はその綱を引き絞り、呻き声をあげ、「男」が加勢し、そして出産。
    「よくやった。お前は自由だ」と父は告げ、娘は微笑む。

    制服のブレザーではなく、私服を着た和夫が赤ん坊を抱いている。帰らぬ忍を待っているのだ。
    忍の母は、忍が生まれてすぐ消えたと言う。
    初潮が来るまでは幸せで、以降は苦しみしか無かったと。
    ああやはり。
    和夫の腕の中を覗き込み「もしかして…」と言いかけた日比野を制し、叫ぶ和夫。
    「こんなに可愛いのに!」


    恐ろしいのは、「許さない」と言われた皆が、そう言われたことに対して思い当たる節があるっていうこと。
    独り者の佐久間に「許さない」と言われた蘭には、言い寄った彼をつっぱねたという過去があった。大河原は妻に「許さない」と言われ、蘭との不倫がバレたかと思い自爆。
    町内会を作ろうと働きかけたり、ご近所でBBQパーティーを催したり、うわべは和やかに見えても実は…という。
    でも「呪い」と口に出して行っちゃうと、どうも陳腐に聞こえてしまう。
    そこはもうちょっと、秘すれば花的にやってほしかったかな。


    んでもって、みな安定の役者陣☆どなたも良い!
    伊勢佳世ちゃん、女っぽい~。(キャスト票に「蘭」とあるけど、自分の記憶では「リン」だったんだよね…。「ラン」って言ってたっけ? おかしいなあ~)
    そして!大好きな浜ちゃん、ちょっと嫌味な日比野役もバッチリこなすわー。
    この日はまたまた風邪っぴきで、終演後は直帰。
    できたら感想を語り合いたかったのになあ~。残念。
  • 満足度★★★

    初イキウメ
    期待をしすぎてしまったのか、ストーリーが自分にはハマらなかったのか、楽しみきれなかった。なんというか、中途半端な後味が残ってしまった。ただ、役者さんはとてもよく、違うお話で観てみたい…と、また期待を膨らませてしまいました。

  • 謎解きはあり
    ますが、不十分で、お客さんの想像にということか。
    手塚さんの気付かれないが、その存在感は見応えありです。

    ネタバレBOX

    ステージは使わず、9尺くらいの正方形(高さは2尺くらい)の台が菱形状に四台、間隔を開けて並べられています。タイトルの鱗を想像させます。この台には、下から水をわき出させる装置もついています。
    手塚さんとの絡みを期待して観ていたのですが、手塚さんの設定は”男(不審者)”、気付かれない存在として舞台の上手下手・装置の上下や客席を動き回る。要所で呪いのもととなる重水を住民に掛けていきます。
    気付かれない存在、亡くなった人ということでしょうか。

    構成としては、前半におとぼけで笑いがあり、中盤に謎がふかまり、終盤のシリアスへと向かっていきますが、謎解きは不十分なのです。
  • 満足度★★★★★

    思ったより前だった
    H列だから、後ろの方だと思ったら、前から2列目だった。
    念願の劇団公演が始まると思うとそれだけでワクワク♪
    ホラーなんだけど、実はあるかもね・・・みたいなありえそうなホラーだった。
    やっぱり、イキウメは裏切りません。

    ネタバレBOX

    斜め前に「男」(手塚とおるさん)が座ったものだから、舞台も観たいけど、斜め前も観たくて・・・。
    舞台セットは青山円形劇場公演用だったから、どの方向からも楽しめただろうなぁ~と。
    しかも、水が溢れてきて・・・。公演後に確認に行って、窪んだ床に「だから水たまりになったんだね」と納得。
    「男」は明確なセリフはないのに、存在感はマックス!
    恐怖を演じるのは大変だろうなぁと思った。

    もっとすごいと思ったのは「許さない」だけで、こんなに会話って続くものなのですね。
    なぜか、ガラスの仮面を思い出してしまった。
    「はい」と「いいえ」で続けていく話があったのですよ。

    呪いが続いていく感じも怖かったです。
    「忍」は、これから幸せな生活ができますかねぇ。
    そのためだけに、「和夫」を愛したのならば「忍」もなかなか怖い人物です。

    なるほど、全くその通りな「忍の父」のセリフにズーンときました。
    妊娠をどうするか、「和夫」に向けた言葉は説得力があって感動しました。
    けれど、「和夫」の将来でもあり、観劇後は複雑な感じ(^_^;)


  • 満足度★★★★

    いつも通り、面白い。
    いつもながら面白かった。
    劇的効果や恐怖をしっかりわかった上で演出されていて心地よい。
    これほどコンスタントに面白い作品を上演してくれるのに客席に空席が目立ったのが残念で仕方ない。
    東京なら満席だと思うのだが。

  • 満足度★★★★

    終わったあとから湧いてくる怖さ
    イキウメさんは、はじめてです。

    王道のホラーですよね。

    終わったあとからジワジワ怖さが湧いてくるというかぁ‥‥。

    終了まぎわ、「えっ、そうなの??」
    って、もう一度あの人の行動とか言葉を振り返るも、
    もう時遅しで、闇の中‥‥。

    面白かったです。また機会があれば、イキウメさん観てみたいです。

    ネタバレBOX

    サスペンス、ホラーといえば、
    一番らしくない人が張本人っていうのが、
    良くあるパターンと分っていたのですが‥‥。

    女の子があまりに可愛くて、
    てっきりそんなことも忘れて、あらあらあら‥‥
    といった感じで‥‥。
  • 満足度★★★★★

    問題なくNO.1
    イキウメはまさにこうなければという典型の作品。
    手塚さんがすっごく良かった。セリフがない?慟哭だけ??

    いやいや、これがこの作品を象徴していました。
    涙が出るほど素晴らしい作品でした。

  • 満足度★★★

    こわい
    普通のホラーとは違った怖さ。
    今までに感じたことのない緊張感に包まれながら
    最初から最後まで気の抜けない感じ。

    セットの作りも独特で
    会場に入って最初に見た時は驚いた。

    内容は分かりやすかったけど
    むりくり感がちょっとあった。

  • 満足度★★★

    片鱗
    小さくまとまってしまいました。最近のイキウメ新作はこんな感じですよね。なんだろう、安直と言うか、表面的というか、気持ち悪さが全く残らない。美術が今の路線になってから、こんな感じだと思うのです。あのどこでもドアのようなギミックが好きだった。ダイナミックなイキウメがいつかまた観れることを信じて。次は『関数ドミノ』の再演ですか。再演。。

  • 満足度★★★★★

    ハズレなし
    新潟県柏崎市出身の前川さんのお芝居は、いつもちょっと暗く、不穏であり、私はいつも冬の日本海の暗さを感じます。
    今回の「片鱗」もゾクっとする怖さ。日常の中のホラーが一番怖い。後ろに誰かがいるような…。
    円形劇場の使い方も面白かったです。
    ラストの、出産のシーンも象徴的(昔はたぶんあんな感じで産んでたんでしょうけど)で良かったです。

  • 満足度★★

    期待していたのとは違いました
    今回のイキウメは自分好みではありませんでした。

    ネタバレBOX

    怖さもなんだか盛り上がらなかったし、一番最後のシーン、説明的で、必要かなというかんじ。
    理屈ではない、というところと、妙に理由をつけられているとことに
    違和感を感じてしまいました

    個人的には中途半端だったかな


    あと内容とは関係ないですが、最初の頃、あまり状況が分かってないときに、いきなり隣の隣に彼が座られた時は驚きました。一瞬一般の変な人かと・・・
  • 満足度★★★★

    最終日観劇
    気になっている役者さんに見つめられたら、恋に落ちそうなもんだが、ここに出てくる人達と視線を合わせたら、第六感と薄気味悪さが研ぎ澄まされそうな感覚に陥りそうだ。
    人間関係や日常の因習が構築して破壊して、生み出し増幅し、成長し続けたような展開というか。
    劇場内の空調やスタッフの動きを見ても何かあるのでは、と訝しさが包みこんでそれすらも興味深く、ホラーで不条理世界な舞台だった。
    90年代末期〜00年代隆盛だったJホラー映画を思い出した。
    縦横無尽に這いずり動きまくりながらも存在を消した手塚とおるさんが見事。
    円形であの動きなら他の劇場ではどんな演出になるんだろう。

  • 満足度★★★★

    お隣さん
    隣は何をする人ぞ。そうではなく、日常にあるひとつの風景の中にお隣さんとして生活していた気がしました。あのひとことがいろいろな意味を持ち、いろいろに受け取れる。面白い。

  • 満足度★★★★★

    ホラー作品だとは思わない
    久しぶりに、イキウメの本領発揮の舞台だと感じました。

    思索的、哲学的にして、やや怪奇的味わいが絶妙!

    小泉八雲の怪奇小説を思い出したりもしました。

    現代の怪談的な作りながら、どこか究極の人間賛歌風な後味が素晴らしかった!

    今回、一番驚いたのは、大窪さんの演者としての並々ならぬ躍進ぶりでした。

    かなり、円形劇場の芝居は観ている方だと思いますが、この劇場の使い方も、私のベスト1という衝撃的なセッティングでした。

    それにしても、手塚さん、存在そのものが不気味で、改めて凄い役者さんだなあと感嘆!森下さんも、私が観たこれまでの芝居の中で、一番存在感ある役柄でした。

    今後のイキウメが益々楽しみ。そして、前川作品の演出は、やはり前川さんご自身じゃないとと、改めて痛感しました。

    ネタバレBOX

    等間隔に設置された、4つの黒い箱状の舞台。その間は、十字路を表していたのですね。この十字路に、得体の知れない幽霊のような男が徘徊し、会場をそれとなく怖がらせた後、舞台は一転、陽気な雰囲気で、
    大河原家の3人家族、土地持ちの独身男性佐久間家の一人住まい、若い独身ガーデンデザイナーと半同棲の男性が時折出没する堀田家。この3つの家庭に、安斎父娘が引越しの引き出物を持って挨拶に訪れる場面から、物語が始まります。

    それほどの台詞が交わされるわけでもないのに、このファーストシーンから、登場人物それぞれの性格や関係性が、瞬時に客席に伝わる、前川脚本の巧みさに感嘆します。

    4つの家を表す舞台は、各場面ごとに、住人が入れ替わる仕組も、とても斬新。

    手塚さん演じる得体の知れない男が、撒く水が、何よりも、恐怖心を誘発します。この水は、結局、羊水なのかな?だとしたら、手塚さんの役は、生まれ得なかった胎児なのか?

    高3の和夫は父になる道を選び、これから、安斎父娘と同じ人生を送るのでしょう!

    ホラーと言うより、私は「そして父になる」に共通する、作者の思いを勝手に感じ取ってしまったのですが、解釈間違ってるかな?

    しかし、この作品で一番怖かったのは、親しかった隣人が発する「許さないからな!」の言葉かも。自分の心の中を前川さんに見透かされた気がしました。
  • 満足度★★★

    やや新味に欠けるかも
    イキウメのホラー作品。閑静な住宅街に起こったある異変、
    それが引き起こす疑念が徐々に大きくなって、やがて崩壊を
    招く、という物語。

    青山円形劇場をああいう形で使う、というのはなかなかない
    感じで、すごい、と思いました。ただ、台本が…最後は多分
    こうなるかな、と思ってた着地点に落ち着いたのが残念。

    ネタバレBOX

    物語自体は、昔の「Jホラー」にいくらでも題を見つけられそうな
    話です。男親とその娘が越してきて以来、近隣住民の住む家の
    芝生は枯れるわ、住民は一人づつ、「絶対に許さない」という言葉を
    残して、常軌を逸していくわ…。

    どうやら、親娘に宿った「過去からの呪い」が原因じゃないか、という
    事までは観ていて分かるんですが、詳細は不明です。最後は近所に
    住む一家の男の子と娘が情を通じてしまい、結果、妊娠。

    娘は女の子を出産後、親と一緒に蒸発し、残された男の子が娘と共に、
    やがては同じ道をたどっていくのではないかという含みを持たせて
    物語は終わります。

    私は熱心な読者ではないですが、鈴木光司氏の作品に同じ内容の
    作品があるかも知れないですね。詳細の説明が無い、という意味では、
    平山夢明氏の不条理系ホラーが好きな人にもお勧めできると思います。

    呪いのかかった人が舞台に残す大量の水。私は、あれ、「羊水」を暗示
    しているんじゃないかと解釈したんですけど、果たしてどうなんだろう。
    自分を妊娠させて、挙句捨てた男の一族への、女の呪いとか?

    あと、この劇、ラスト周辺の台詞の恐ろしさが秀逸過ぎると思います。

    「こんなに可愛い子が…絶対に有り得ません!」

    でも、その子も生理が始まる頃には、周囲への呪いが発動して
    破滅を引き起こしていく可能性が非常に高いわけで…。
    それだけに、ありがちな終わり方だけど、背筋凍りました。
  • 満足度★★

    面白かった・・・かい?
    正直、コレが舞台じゃなくて映像作品だったらもっと怖くて面白かったろうと思わせるのが残念(でも怖いの苦手なので映画だったら観にいかない)。
    生身の役者が目の前で演じるホラー作品は怖がる気持ちに客席の自分を持って行くのが難しいよね。アバンタイトル的なパートが一番怖くて、後はひたすら左脳で観てしまった。

    …まあ、それ以前にハナシも演出、照明、音響の手法もありきたりなホラー映画のソレなので、あのやり方で「ホラー演劇」ってムリあるかもなあ。

    ネタバレBOX

    ほめるところを探すと「水」ですね。水音と飛沫、水溜り。あれは「ナマだからこそのリアリティ」が五感にショックを与えてくれる。
  • 満足度★★★★

    流石前川作品
    イキウメ(前川)のアジが全面に出た良い作品かなと思います。
    得体のしれない恐怖をSFチックに描き出し
    現代に投影した作品に仕上がってます。

    精神錯乱、不安、恐怖、想定外の事態と、通常の世界でなら当たり前のはずのことが
    今現在の恵まれた世界では「ありえないこと」とされ、想定外の事態に誰も対処できず、今ある幸せを手放す恐怖、不安に苛まれ、崩壊していく現実的な恐怖にさらされ、どうしようもなくなっていく仮想現実をうまく描き出しているのではないでしょうか。

  • 満足度★★★★★

    さすがです
    ホラーです。わかりやすくて面白い。初日でしたが役者さんたちはみな安定してて、さすが、イキウメンって感じでした。青山円形はイキウメにすっごく合っているといつも思います。舞台の作りや空間など「アート」とも言える、独特な世界を創ってる。360度ゆえ、役者さん同士がかぶって見えないところがあったので、もう一度行きます。

  • 満足度★★★

    ひとこと言わせて
    ネタばれにつき BOXをご覧下さい

    ネタバレBOX

    まず 「片鱗」というタイトルの付け方が憎いです。黒い舞台に、さらに黒光りして拡がる水の質感、音 昔観たガジラの世界にも似て、何より手塚さんの存在そのものが 黒、ノアール。

    終盤 「呪い」って言葉が出てきましたが あの言葉は 敢えて使わないほうがよかったって思います。言葉にしちゃったら、あ、呪いなのねで片付けられてしまって せっかくいいタイトルつけたのに興醒め。重箱の隅をつつく感じでごめんなさい。でも一番言いたいことです。
  • 満足度★★★★★

    「いい仕事してますねぇ」
    ・・とは、劇場を出る人波の中でおばさんが関係者らしい男性に嘆息まじりにかけていた言葉。この声に私もつい共振してしまった。
    円形劇場は3度目。本谷有紀子、鹿殺し、で今作。一番良かった!(さんぶんのいちかよっ) ・・の意味は円形劇場の空間処理がうまい。
    ほぼ腰の高さの四畳半大、リノを敷いたような台(下は空いている)が四つ並び、その間は十字の通路となり、台は登場人物(世帯)の家となり、シーン転換ごとに所有者が変わるのもめまぐるしい。代替可能性は、ああ多分この話が「誰にでも起こり得る事」の暗喩となってた、と思う。この装置のシンメトリー、あるいは点対称が「円形」にマッチしてるし、通路は各出口へと繋がっていて、怪しげな「侵入者」がいつ現れてもおかしくない「不安定」を醸してる。後付かもしれないが、案出した方の直感の源を手繰れば、あながちはずれでないようにも。。

    ネタバレBOX

    さてお話だが、伏線が的確な演技でしっかり提示され、しっかり次に引き継がれる、時間・空間ともに凝縮されたドラマを構成していた。その芯は、冒頭登場する不審者という「ナゾ」(後に「許さない」と突然叫ぶ行動に発展する)の正体への接近に他ならない。だが、このナゾ解きの周辺のドラマが見事なスピードで展開するため、実はなかなか進まず放っておかれる「ナゾ解き」のテンションは維持され、緊迫と弛緩の境界ギリギリをさまよう。そして最後の最後に、私達の日常の思考の延長に語られる事実が、幕が落ちるように現われる。。
    正しく言うならナゾの本当の答えはわからない。「恐怖」は、そのわからなさにある。シンクロニシティではないがこの世界にある偶然性の説明不能な法則が、男の痛切な叫びの後ろに「あるのかも知れない」と、観客に考えさせる迫力、あの場面がこのお話のクライマックスだ。
    呪いと妊娠のからくりはナゾに対する答えの例示に過ぎないんで、「なるほどオチを付けたな」と怖がりつつほくそ笑めば良いように思えた。
    この作品の男の呪われた(ような)人生は「徹底した不平等」を象徴していた。その不条理を受容した男の姿は、彼の娘に惹かれた青年に呪いを全て引き渡す「非情さ」を正当化し、なおかつ彼の、青年への深い愛に等しい心情を観客に想像させもする。ここに至って人生への諦観は、逆説的だが人類の憧憬の一つの極と見えてくる。ユダヤ民族の事が今よぎった。
    初投稿長すぎたか・・

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