片鱗 公演情報 イキウメ「片鱗」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「いい仕事してますねぇ」
    ・・とは、劇場を出る人波の中でおばさんが関係者らしい男性に嘆息まじりにかけていた言葉。この声に私もつい共振してしまった。
    円形劇場は3度目。本谷有紀子、鹿殺し、で今作。一番良かった!(さんぶんのいちかよっ) ・・の意味は円形劇場の空間処理がうまい。
    ほぼ腰の高さの四畳半大、リノを敷いたような台(下は空いている)が四つ並び、その間は十字の通路となり、台は登場人物(世帯)の家となり、シーン転換ごとに所有者が変わるのもめまぐるしい。代替可能性は、ああ多分この話が「誰にでも起こり得る事」の暗喩となってた、と思う。この装置のシンメトリー、あるいは点対称が「円形」にマッチしてるし、通路は各出口へと繋がっていて、怪しげな「侵入者」がいつ現れてもおかしくない「不安定」を醸してる。後付かもしれないが、案出した方の直感の源を手繰れば、あながちはずれでないようにも。。

    ネタバレBOX

    さてお話だが、伏線が的確な演技でしっかり提示され、しっかり次に引き継がれる、時間・空間ともに凝縮されたドラマを構成していた。その芯は、冒頭登場する不審者という「ナゾ」(後に「許さない」と突然叫ぶ行動に発展する)の正体への接近に他ならない。だが、このナゾ解きの周辺のドラマが見事なスピードで展開するため、実はなかなか進まず放っておかれる「ナゾ解き」のテンションは維持され、緊迫と弛緩の境界ギリギリをさまよう。そして最後の最後に、私達の日常の思考の延長に語られる事実が、幕が落ちるように現われる。。
    正しく言うならナゾの本当の答えはわからない。「恐怖」は、そのわからなさにある。シンクロニシティではないがこの世界にある偶然性の説明不能な法則が、男の痛切な叫びの後ろに「あるのかも知れない」と、観客に考えさせる迫力、あの場面がこのお話のクライマックスだ。
    呪いと妊娠のからくりはナゾに対する答えの例示に過ぎないんで、「なるほどオチを付けたな」と怖がりつつほくそ笑めば良いように思えた。
    この作品の男の呪われた(ような)人生は「徹底した不平等」を象徴していた。その不条理を受容した男の姿は、彼の娘に惹かれた青年に呪いを全て引き渡す「非情さ」を正当化し、なおかつ彼の、青年への深い愛に等しい心情を観客に想像させもする。ここに至って人生への諦観は、逆説的だが人類の憧憬の一つの極と見えてくる。ユダヤ民族の事が今よぎった。
    初投稿長すぎたか・・

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    2013/11/20 01:30

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