サラエヴォの黒い手【ご来場ありがとうございました!!】 公演情報 サラエヴォの黒い手【ご来場ありがとうございました!!】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.4
1-20件 / 30件中
  • 満足度★★★★★

    劇団チョコレートケーキ初観劇。
    セットは控えめで役者と照明によって、緊迫などの演出がされており静かな展開の中にも感情の動きが感じられる作品でした。

    内容的にも決めた事を突き通すのが良いのか、それとも状況などを素直に受け止め過去の自分に囚われずに今の自分の気持ちで動くことが大切なのかを考えさせられる点が多々ありました。

  • 満足度★★★★★

    直球
    もっともっと評価されて良い劇団なんだけど。

  • 満足度★★★★★

    楽しんじゃいました
    面白かった!笑えた。って言っちゃいけないのかな?分かり易かったし。私この作品好きです。出演者のみなさんが魅力的な男性ばかりで…。こういう見方もあっていいよねぇ~と自分なりに楽しく観劇しました。

    ネタバレBOX

    twitterで青木柳葉魚さんが連投していた【チョコっと知っとケーキ~歴史編】を読んでさらに面白く観劇できました!!
  • 満足度★★★★★


    比較的、静かに話の中身を伝えようとしているように感じた。

    ストーリーをリードする2人の雰囲気や照明の使い方が絶妙だった。

    人の感情の起伏ではなく、それぞれの登場人物の考え方や人となりを丁寧に魅せてくれた。

    こういう雰囲気も好きです。

    あとそれぞれの役者さんがいい。(何度も観ている役者さんが多いからというのもあるが)どの役も顔を覚えている。それぐらい役の違いが明確。あとでネタバレに書きます。

    会場の件は多分同じようなことを感じるけど。

    おまけ:いい作品は観てきた!の出足が早くて安心する。

  • 満足度★★★★★

    テロリストたち
    「世界大戦勃発の発端」として、その地名ばかりが記憶に残っていたサラエヴォ。
    主義・思想を超えて“不満”で繋がる若者たちのエネルギーが生々しく描かれ
    “大人の事情”に利用されていく過程がリアルで迫力があった。
    生き残った二人の回想というかたちで現在と過去を行き来する構成が秀逸。
    怒涛の事件当時と、老人の振り返りの対比が鮮やか。
    こういうテーマに普遍性と現在を重ねる制作側の視点に感動する。

    ネタバレBOX

    劇場に足を踏み入れると、舞台には既にひとりの老人がいる。
    上手側、作業台のような大きい木製のテーブルの上には資料らしきもの、
    それを手にとって確かめたり直したり、ゆっくりと落ち着いた動作。
    やがて白髪のその人が西尾さんと判った。

    サラエヴォ事件の実行犯は「青年ボスニア」のメンバー7人だった。
    オーストリア領ボスニアでセルビア民族主義を謳う彼らを結びつけたのは、
    貧困と結核、そして自国を変えるために何か行動を起こしたいというエネルギーだった。
    軍内部の秘密結社「黒手組」は、彼らの暴走するエネルギーを利用し
    オーストリア次期皇帝フランツ・フェルディナントを暗殺しようと企てる。
    しかしその「黒手組」をも利用しようとする、さらなる大きな力がうごめき始める。
    そして1914年6月28日、ついにサラエヴォ事件が起こる…。

    7人のメンバーのうち生き永らえた2人の老人が再会して
    人生の最後に“あの事件“を総括する、というストーリー。
    思い出を語る現在と、事件当時の再現とが交互に演じられる。
    この構成が非常に効果的で巧い。
    巻き込まれたような怒涛の出来事が、老人の時を経た冷静な分析によって
    時折自嘲気味に笑いを交えながら語られ、二つの時代の対比が鮮やかになる。

    年老いた二人、西尾友樹さんと岡本篤さんは、帽子ひとつで若かりし日に飛ぶ。
    それが滑らかで無理がなく、複雑な出ハケも気にならない。
    岡本さんは昔を語る時、時に話し方が若々しく傾くが
    西尾さんは一貫して年寄りの話すテンポ、おっとりした口調が変わらない。
    二人の狂言回しとしての切り替えの上手さが構成・演出にぴたりとはまっている。

    「黒手組」の幹部、アピス大佐を演じた佐瀬弘幸さん、
    こんなに軍服の似合う役者さんも珍しいのではないかと思う。
    極端な思想や強い主張を、組織という枷の中で通そうとする人物を演じる時
    軍服の内に秘めた人間の弱さや汚れた部分を出すのがとても巧い方だと思う。

    同じく「黒手組」のタンコシッチ少佐を演じた浅井伸治さん、
    アピス大佐を諌める場面の説得力、最後の潔い軍人ぶりが感動的。

    ちょっと舞台が見えにくく、声だけで筋を追っていた前半が残念。
    ラスト、「たとえ話」は無くても良かった気がする。
    語り続ける西尾さんの声が次第に音楽にかき消されていく終わり方は良かった。
    下手のセットが浮び上るところなど、照明の巧さ、センスが素晴らしかった。

    チョコレートケーキらしさ全開の“歴史の当事者とその裏側”は確かに独壇場だ。
    個人的な好みを言えば、例えば先日の「楽屋」のような
    全く別の方向から時代に光を当てた作品も観てみたい気がする。
    チョコレートケーキの描く“一方的に翻弄される人生”の
    哀しみと図太さもまた、ひどく魅力的にちがいないと思うから。
  • 満足度★★★★★

    美しくて、痛々しい
    いつもこの劇団さんは、正しいとか正しくないとかそういう判断を挟む余地のない歴史を観せてくれる。
    人間の情熱が向けられるのは結果ではないのだなぁ、と胸が熱くなります。
    今回も、みんな、自分の国のために、戦っていて
    結果的に何が起こって、その行動が正しかったのかどうかは、何年もあとの歴史を学んだ人が判断するのでしょう。
    学ぶべきは、勝者の歴史のみではない。
    この劇団さんの舞台は、みんな観ればいいのに、と思う。今回も思いました。

    ネタバレBOX

    部屋に一人になった大佐が、地図をくしゃくしゃにしていく音。思わず祈りを口にした時、固く握った手が色を失くして白くなっていく。このシーンが、大好きでした。映像では観られない、舞台の魅力。
  • 満足度★★★★★

    そうだったのか
    様々な思惑の絡んだ事件でした。少し説明的過ぎる嫌いもありましたが、各グループの考え方などを知らなくては全体が理解できず、ある程度は仕方ないのかなと思いました。

    ネタバレBOX

    セルビアの青年将校たちのグループ黒手組とロシアの共産主義革命家のそれぞれの思惑に翻弄され、オーストリア時期皇位継承者を暗殺したオーストリア占領下のボスニアに住む青年ボスニアのメンバーたちの話。

    ボスニア・ヘルツェゴヴィナを併合したオーストリアに反発したセルビアの青年将校グループ黒手組は大セルビア主義を唱え、ボスニア・ヘルツェゴヴィナを取り戻すことを目標にしていましたが、黒手組と接触したロシアの工作員の情報もあり、ボスニアの人間がオーストリア時期皇位継承者を殺してもそれはオーストリアの国内問題に留まり、オーストリアに打撃を与えつつもセルビアに進行することはないだろうと考えました。

    一方、ボスニアの青年ボスニアのメンバーはオーストリアの支配に対して一矢報いるため黒手組と組み、セルビアで訓練を受け、黒手組から武器を調達し、オーストリア時期皇位継承者暗殺を実行することになりました。

    黒手組と接触したロシアの工作員は共産主義者で、暗殺によってオーストリア、ドイツ、イギリス、フランス、ロシアが動くであろうことを予想していて、混乱に乗じてロシアおよび全世界で革命を起こすことを目指し、勝手に青年ボスニアのメンバーを帰国させ暗殺の準備に入らせました。

    暗殺によってセルビア進行があると知った黒手組ですが、時既に遅く青年ボスニアに計画の中止を命令することはできませんでした。結局青年ボスニアは運も味方してオーストリア時期皇位継承者を暗殺することに成功し、その結果第一次世界大戦が勃発することになりました。

    人の名前は覚えにくく、メンバーの内結局誰が皇太子を暗殺したのかもやもやしましたが、言葉での説明の後に再現ドラマを実演してくれたので良く分かりました。リーダーの誰々とか形容詞を付けてくれればそこまで丁寧に再現ドラマをしなくても理解できたのではないかとも思いました。

    愛国心の発露の結果なので、何が起こっても仕方ないというような考え方を持っていた黒手組や青年ボスニアでしたが、結局はしたたかな連中にいいように利用されました。自己陶酔は要注意ですね。

    同じ地域に異なる民族が住むにはどうしたら良いかとの問がありました。生き残りメンバーが生きていたのはユーゴスラビア時代だったと思いますが、はからずも第二次世界大戦後ユーゴスラビアという大セルビアが実現し、そして現在は完全にバラバラになっていることを考えると、共通の敵が存在すること、あるいは独裁者もしくは敵に支配されることしか答は無いのかなと思ってしまいます。

    ところで、『熱狂』のときには当時の髪型にああいうのがあったのかとも考えていましたが、後頭部の刈り方を見ると今どきの斬新な髪型のようで、セルゲイの髪型だけが浮いていました。
  • 満足度★★★★★

    期待通りの素晴らしい作品
    祖国統一に燃える熱い男たちの情熱、熱い故に起こる衝突、それを利用した企てと操られる人たちの悲哀、それぞれの思いが交錯するなかで時代に翻弄される人たちを重厚に描いた見応えある舞台だった。生き残った2人が再開し昔を回顧しながら過去の出来事が進行するという形にしたのが味わい深く、全体に奥行を与えている。時間もそれほど長くは感じなかった。期待通りの素晴らしい作品だ。

  • 満足度★★★★★

    小劇場屈指の劇団!
    今回は、古川も記している通りヨーロッパの事件で浅間山荘事件ほど身近に感じはしないが、骨太の興味深い脚本と俳優陣の演技にはいつもながら感心する。100年前のその場で隠れて観ていたような気持ちでいた。
    戦争の原因は、昔から宗教、民族、領土の問題と言われる。
    そして、その戦争を利用して利益を得ようとする第三者も存在する。
    この芝居で注目すべき人物は、弱者の気持ちを利用して、自分の思いを遂げようとするロシア秘密警察のセルゲイである。

    ネタバレBOX

    サラエボ事件を起こした青年ボスニアのメンバーの生き残りの2人の回顧録である。ポポヴィッチは現在サラエボ博物館で働いている。そしてチェブリノヴィッチはベオグラードで大学で教鞭をとっている。二人は数十年ぶりに偶然会い当時を振り返るのである。
    祖国を自分手で守ろうとする者もいれば、他国の戦争を利用して、自国を解放へと向かわせようとする者もいる。
    しかし、待っているのは悲惨な末路である。どちらも思いは遂げても結局は大きなものに利用されてるだけである。
  • 満足度★★★★★

    ~ビッチ
    毎回、パンフに参考文献のリストが載っていますが、
    この劇団はホントによく歴史を脚本に起こすのが上手だなと思います。

    登場人物は、「~ビッチ」と若干言いにくい名前ばかりなのですが、
    本作内で、その名前をわざと強調して(いるように感じた)名前を呼び合っているというのも
    「舞台芝居」としての歴史(あくまで歴史を資材にしたフィクションなのですが)
    として楽しめる要因だったと思いました。

  • 満足度★★★★★

    満足
    楽屋を見逃してしまったので今回は予定を空けて観賞。いつもの濃密な空間に魅力的な俳優陣。サラエウ゛ォについては知りませんでしたが世界史の授業を受けたような感覚で舞台からのエネルギーを得ると共に勉強にもなった。満足です。

  • 満足度★★★★★

    ストライクど真ん中。
    バルカン半島が「ヨーロッパの火薬庫」と言われていた時代からロシア革命後の粛清までを、圧倒的なリアルな人間の存在感で魅せていただいた今回の劇チョコ。「治天ノ君」でも感じられた美術の妖しいフェティッシュ感も含めて、2時間15分全く目の離せない、私好みのストライクど真ん中の演劇でした。いつものように「時代が目の前で動く」感覚を体感できた上に、今回は役者さん達の「瞳」が印象的。青年達の目、軍人達の目・・・それぞれがそれぞれの「愛国心」と「生」に満ち溢れていて、見ていて眩しいくらいでした。それにしても、いつの世も愛国心で動く人間は国や思想に殺されてしまうものなのですね。やるせない。

    ネタバレBOX

    時代や思想の背景は前知識であったので、チョコの作劇の分かり易さ・親切さに唸りながら観ました。お芝居では日本の「に」の字にも触れていないものの、明らかに現在の日本に警鐘を鳴らしていて。戦争の足音が近づいている今、自分は何をすべきか日本人はどうするべきかと考えされてくれる道徳的な演劇でした。前方で小学生の男子が観ていましたが、実に大人しく舞台に見入っていて感心。彼らの世代が戦争に行くことにならないようにと切に願います。

  • 満足度★★★★★

    素晴らしかった
    歴史の一端を垣間見ながらも、濃厚な空間は饒舌で、語りきれない想いが、沸き上がる名作でした。

    過去の史実を題材にしてますが、現代未来への警鐘のようにも感じました。

    シンプルだが、雰囲気のある美術、音響、照明も、素敵でした。

    ネタバレBOX

    全役者さん、力量のある魅力的な方ばかりでした。

    ポポヴィッチ(西尾友樹さん)とチュブリロヴィッチ(岡本篤さん)の老人と青年時代の切り替えも解りやすく、明確で、流石の演技力でした。

    名前が覚えきれず、すみません。
    青年ボスニア三人も、顔色が悪く、体調悪そうに見えた。貧困と、覚悟を決めた決意から?と思ったが、後に明かされる病に、納得でした。

    タンコシッチ少佐(浅井伸治さん)、アピス大佐(佐瀬弘幸さん)も、印象的でした。

    ラストも素敵でした。
  • 満足度★★★★★

    現代への問いかけ!
    集団的自衛権の行使容認の問題や、中国や韓国、北朝鮮との関係など、
    自国内の問題としても、近隣諸国との関係としても、
    緊張感のある状況が続いている現在の日本。

    そんな社会状況に、第一次世界大戦のきっかけとなった事件を描き作品として問うことの意味は大きい。

    前作「〇六〇〇猶二人生存ス」では、日本の特攻の起源を描いていたが、
    脚本の古川健氏は、戦争やファシズムの起源を解きほぐし、何が問題であったのかを再考すると共に、何が現在にも繋がっているのかを読み解こうとしているのだろう。そして、それを現在への問いへと変換している。
    その姿勢に本当に感服する。

    正直に言えば、芝居自体としては、今まで観た劇団チョコレートケーキの作品の熱量と比べて、少し物足りない気もしたが、上記のことを踏まえると、そんなことはどうでもよくなる。

    また、メッセージ過多だなと思う部分もあり、純粋に作品としてみたらどうだろろうと考えてしまったが、演劇のように観客を想定して発せられる表現において、そもそも純粋な表現などということはあり得ない。作品は常にコンテクスト(文脈)の中で機能している。社会的なものを背負わない観客などいないのだから、それを無視して表現など成り立たない。
    そう考えたら、この少し過多なメッセージもむしろ好意的に感じられた。

    このような真摯な若い劇団がいることは本当に救いだと思う。

    ネタバレBOX

    この作品が語っている第一次大戦を起こした原因のひとつは、「愛国心」。
    「青年ボスニア」のメンバーも、「統一か死か(黒手組)」のメンバーも。
    皆が自分のためというよりも、自国のために正義を掲げている。
    自己犠牲的で、他人のため、社会のためと思っていることが、尚更、正義の感覚を当人たちに与える。

    この辺りも、集団的自衛権の問題や尖閣諸島や独島/竹島問題などが起るとすぐに愛国心が持ち上がる日本の状況への批評にもなっている。

    奇しくも、私が観た6月15日は、サッカー日本代表のワールドカップ第一試合があり、街中に「ニッポン」コールがこだましていた。
    ワールドカップを否定するつもりは微塵もないが、自国の名を叫び一つの集団にまとまることを快楽とする精神のあり方には、ナショナリズムに通ずる危うさがあるのは否定できないのではないか。実際、オリンピックをはじめとしてスポーツがそのよな利用のされ方をした例はある。
    少なくともそのような気運がこの国で盛り上がりはじめていることを感じていたので、「ニッポン」を叫ぶ無数の声を舞台上のBGMとして重ねながら作品を観た。

    また、ロシア帝国汎スラブ主義工作員のセルゲイが、共産主義革命を起こす契機として世界大戦を望んでたというのも原因のもうひとつの大きなもの。
    セルゲイは
    「戦争の火はヨーロッパにはびこる古い権威を燃やし尽くし、新しい世界を作るきっかけとなってくれるのです。」
    「農民と労働者の暮らしは、戦争が無くても苦しいのです。そこに戦争が起こる。貧しい暮らしは更に圧迫される。そうなるとどうなるか?」
    と言う。
    実際、ロシアはその後、セルゲイの望んだ通り革命が起きた。
    ただ、この時代は、まだ「革命」というものが希望としても語られ得たからそうなったのだろう。

    現在にこの問題を照らすと、赤木智弘が「「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。」(「論座」2007年1月号)で提起した、戦争をすることで、社会が流動化し、構築された格差を崩すチャンスとなるという議論と重なるのではないか。赤木自身、本心で言っているのか、偽悪的に言っているのか、他の文章を読んだことがないので判らないが、セルゲイの思想から革命の希望を除くと赤木的な発想となると思う。

    最後に、複数の民族・人種が混在しているセルビアの問題を、
    中国や韓国と日本との関係(尖閣諸島や独島/竹島問題)と重ねて、寓意的に提起している点も素晴らしかった。メッセージ過多ではあったが。

    総じて、素晴らしい批評性のある作品だと思った。
  • 満足度★★★★

    変わらぬクオリティ
    変わらぬクオリティで芝居を作られるのが凄いです。今回も、あまり取り上げられることのない史実を題材に、濃密な世界が広がります。役者さんの演技は言うことなし。抜群の安定感です。
    ただ、上演時間2時間15分という長さもさることながら、クライマックス(私としてはセルゲイの正体がわかるところが一番の盛り上がりでした)の後が長く続いたという印象です。これまでの作品と違い、強烈なインパクトのある登場人物がいなかったから、そのように感じたのかもしれません。

    ネタバレBOX

    時代は変われど、いつの世も人間の”業”が不幸を作り出すと思いました。
  • 満足度★★★★

    静かな台詞にも、地球規模のダイナミズムを感じる…
    1914年に実在した「人々」が100年後、劇場にいる私たちを再び身震いさせる。


    「サラエヴォ事件」は人類史上初の全面戦争となる、あの第一次世界大戦を誘発したセンセーショナルな出来事だ。今脚光を浴びる社会派『劇団チョコレートケーキ』。青年ボスニア、セルビア軍「黒手組」が関与していく、事件までの足跡を硬派な演技で示す。


    青年ボスニア生存メンバー2名が「語り手」。時代は「ユースゴスラビア社会主義共和国連邦」である。1980年代のボスニア深夜に、歴史を変えた「思い出話」が咲く。さすがに2014年だと100歳を上回る御年齢だから それは そうだろう。


    この「モザイク国家」は1990年代の「コソボ紛争」を経て、今は もう世界地図にない。【大袈裟に言えば、20世紀の人類の抱えた問題の基を辿ると、大体がこの戦争(※第一次世界大戦)の時期に行き着くのです。】という古川 健の分析は正しい。 なぜなら、オーストラリア・ハンガリー二重帝国の継承者が6月28日に倒れなければ、「ユースゴスラビア社会主義共和国連邦」成立も、その後の「コソボ紛争」も、AP通信は配信する必要などなかったからである。

    かつての「ユースゴスラビア社会主義共和国連邦」は優等生国家だった。非同盟運動の指導者。非同盟諸国首脳会議の議長を連邦崩壊まで長らく務めた。1984年にはサラエボ冬季五輪を開催する。スロベニア共和国を中心に軽工業が発展し、市民生活は西側に迫る水準だった。首都ベオグラードはセルビア共和国。

    「コソボ紛争」は いわばクロアチ対セルビアの戦争である。クロアチア人はカトリック系。対するセルビア人はスラブ系(東方正教)だ。
    経済先進地帯の「クロアチア」が、ベオグラードに住むセルビア人官僚の支配する連邦政府から その財源を「取り戻す」ことが連邦離脱宣言の背景だったとされる。
    80年以降、国家元首である「最高幹部会」議長は 6構成共和国の輪番制であった。こうした「社会工学」的なシステムは築くが、あっさり崩壊したニュースは記憶に新しい。

    連邦軍のセルビア人部隊化。崩壊過程では 軍組織がミロシェヴィッチの「セルビア軍」に寝返った。しかしながら、どうしてクロアチア政府が 一ヶ月ほどの急しのぎで造った軍が、連邦軍(セルビア軍)に「抵抗」できる軍事プレゼンスを保有しえたか。

    それは、ハンガリー経由で、大量の武器がクロアチア共和国内に持ち込まれたためである。クロアチア系が 一定数おり、文化的につながりの深い、統一ドイツ・ゲンシャー外相がイニシアチブを発揮した国際社会も「スラブ系」のロシアを除けば「クロアチア支援」の世論でまとまりつつあった。

    もう一度、「サラエヴォ事件」時、1914年のバルカン関係を整理する。


    セルビア+ロシア対オーストラリア・ハンガリー二重帝国+ドイツが当初の戦争当事者だった。すなわち、フランス、英国の動向こそ違うが、90年代から続いた「コソボ紛争」「ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦」と等しい関係なのである。


    古川の「大体は この戦争の時期に行き着くのです。」は正しい。




    追記あり

  • 満足度★★★★

    国を思う気持ちや誇り
    100年前の世界地図を頭の片隅に思い描きなから、世界昔話を見てたような錯覚。登場人物名も特有の「〜ヴィッチ」名義で、すぐに覚えられないせいもあり事象を追いかけてるうちに終わってしまったが、このお話では、主に青年チームに重点を置いて見てた。
    その中でもポポヴィッチの西尾さんとチュブリロヴィッチの岡本さんの瞬時に役を切り替える上手さは見事だった。
    国を思う熱意が妄信に変化させるような愛国心を煽る方法は嫌いだが、ラスト場面は現代の世論みたいだなぁと思ったり。
    気の緩む隙を与えない舞台だった。
    約135分。

  • 満足度★★★★

    勉強不足なんで、
    どこまでが史実で、どのあたりがフィクションなのかよくわかりませんでしたが、前作の大正天皇に比べると、インパクトはなかったかも。ラストが凡庸な気がして勿体ないカンジ。世界史と道徳の授業を受けた気分ね。まぁ、でも貴重な劇団なのは間違いないけど。

  • 満足度★★★★

    男臭い
    登場人物が全員男性、内容も命がけのテロ
    終始、男臭い話が続きました。

    会場も、何となく男臭く熱くて仰いでいる人も居ました。

    話しに興味は無かったのですが、観ているうちに引き込まれて行き
    日本人が演じて居る事が心地悪くなるほど、大陸の紛争の世界観が
    良く解りました。

    家に帰って、テレビで放送される中東の紛争を観るとこの舞台を
    思い出してしまいます。
    100年ほど前の話を舞台にしているという事ですが、今もやって居る事は
    変わらないのだな

    舞台の最後は、紛争について考えさせられる終わり方でしたが、
    今でも続いている事なので、難しいテーマを挙げた物だなと
    考えさせられました。

    良く出来て居ると思います。

  • 満足度★★★★

    重厚な世界観
    綿密なストーリー展開で重厚な世界観を構築しているのは流石。観応え充分。ただ 、バルカン半島近代史に疎いため世界に入り込んでいけなかった。エンターテイメントよりドキュメント観ている感覚に近い。

    ネタバレBOX

    名前に聞き馴染みがないというのは、本当に難しいものだなと痛感。少し席が後ろだったことと登場人物が多いこともあって誰が誰だか整理がつきにくかった。題材が大き過ぎてシナリオに入りきっていない感じはする。

    西尾友樹と岡本篤の主人公コンビは、抜群の安定感。青年と老年をキッチリ演じ分けていた。浅井伸治も真っ直ぐな軍人役を好演していて、やっぱり劇団員が大事なところをおさえているなと感心。

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