韓国現代戯曲連続上演 公演情報 韓国現代戯曲連続上演」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
1-7件 / 7件中
  • 満足度★★★★

    秀逸!
    評判を聞いて行ってきました。

    脚本も大道具の使い方も全て素晴らしかったです。

  • 満足度★★★★★

    何れも頗る個性的で面白い
     清水 邦夫さんの言葉に、台本というのは寝ている状態だ、というのが、あるらしい。だとすると起こすのは演出家で、実際に起きて働かせるのが役者の仕事ということになりそうだ。こういう意味では1)「真夜中のテント劇場」2)「秋雨」3)「上船」何れも、シナリオライター、演出家、俳優の個性を出した成功作と観た。(追記2013.11.12)

    ネタバレBOX

     1)は現在も続く韓国のテントスト。今作の説明では2008年から既に1800日を越える人もあるそうだ。日本と異なり、このような抗議行動は多いという。それもそうだろう。IMFに散々にされて以来の韓国経済は、そのグローバリゼイションの煽りを恐らく日本より酷く蒙ったであろうから。作家は、実際のテントスト実行者達を見て、今作を書いたという。その視座は、自分には、弱者に寄り添うものに見えた。作家はスト決行者の側に共感を寄せているのである。実際問題、テントスト決行中に亡くなった方々もあるというし、子供が、「お母さん行かないで」と言うのを振り切って行動に参加する母もあるという。未だ、社会責任という大義がきちんと社会に根付いているのであろう。
    更に、彼らの抗議行動が実に爽やかに描かれている点にも着目したい。テントに使っていた布を飛行機に見立て、両側から煽って雲間を飛んでいるような爽快感を出している点などがその実例だ。眼下にたくさんの小さな灯を点してたくさんのテントを表すイマージュも美しい。それは、天の川の銀河とも照応する普遍性を示唆している。また、塔に立て籠もる人も居る。それらが、テント地の飛行装置で大空を駆けることによって齎される。アラビアンナイトの魔法の絨毯や孫悟空の觔斗雲をもイメージさせよう。
     2)は、ヌーベルバーグ以降、映画では多用されたフラッシュバック的な手法が用いられた作品なので、若いカップルの所作がそのヒントになっていることに気付かなければ、混乱してしまうかも知れない。最初の2~3分間で、この構造が示唆されるからである。
    物語は、能の所作をベースに展開する、仮面が用いられる点では、能も朝鮮半島の伝統的芸能にもそのルーツを辿れるかも知れない。何れにせよ、幽玄の趣、生と死の間が今作のテーマである。少なくとも演出家はそのように読んでいる。執拗に繰り返される、「死んでゆくことと、死ぬこと、どちらが云々」という問い掛けは、無論、予め答えが出ている。死んでゆくことという表現が意味しているのは、少なくとも精神的には既に死んだ状態を意味しているのであり、死以外に救いが無い状態である。従って、答えはあっさり死ぬことがベターなのは分かり切ったことなのだ。では何故、童謡作家は、このような質問を繰り返したのか? それは、その問いの意味する所を訊かれた人々が瞬時に判断し得るか否か、判断したとして、それが、質問者の意を汲み取れているか否かを読み取ろうとした為であるように思われる。それが、アイロニーとして成立するならば、何がしかの復讐には成りえようから。彼を演じた神山 てんがいの澄んだ目と上品で威厳に満ち、然も優しさを感じさせるキャラクターを乞食同然に扱うことで、見事に人生のアイロニーを成立せしめた。盲となった妻、父の発表した童謡の印刷された本を大事に持ち歩く娘、二人は、其々春を鬻ぐ身とはなったが、未だ生きている。「死んでゆくことと、死ぬこと。どちらが・・・」答えの知れている質問を発する父は、自動車に撥ねられて亡くなった。轢き逃げ事件である。そして、犯人は、作品中に示唆されている。それは。是非、シナリオを読むなり再演を期待して欲しい。
    ところで、自分の勝手な解釈では、この能をベースにした所作は、広島、長崎の被爆者、ひいては福島を中心とする3.12以降の被爆・被曝両者をもダブらせた。即ち、「死んでゆくことと、死ぬこと。どちらがいいですか?」
     3)「28年ぶりの約束を果たしに来た」と男は言う。舞台は港に近い屋台のおでん屋だ。男は、病院経営をしている医者。話相手になっているのは、屋台の女将。今は橋が掛かって誰も島とは言わなくなっている所に枝がひねこびたような松があった。その松を描いてやると娘は独特の笑い方をした。二人は恋に落ちた。そして反対された。子供が生まれたが、男は、その事実を知らずに都会の大学で医学部に通う身になっていた。「必ず、戻る」との約束通り男は戻ったのだが、娘の母に「娘は結婚して都市に住んでいる」と告げられ逢うことはできなかった。事実は、子供を凍死させるほど行き詰まった娘は、島の閉鎖系には居られなくなっただけだった。彼女は、噂を頼りに、都市部の大学を訪ね、彼を見掛ける。然し、声を掛けることはできなかった。自分の境遇と余りに異なる恋人の眩しい姿に後れをとったのだろうか。何れにせよ、双方とも、自己の最善を尽くしながら、目的を達することができなかった。28年が経っていた。新聞には、交通事故の記事が載っていた。亡くなったのは1人、病院経営の医師である。
     男と女(屋台の女将)は酒を酌み交わし、「もう行かなければならない」と汽笛を聴いた男は言う。あの世への船だ。二人こそ、かつての恋人であった。気付いて居ながら、露骨にはそれと言えない。だが、互いに気付いて居る。観ていて胸に迫る名演であった。殊に、女将を演じた洪 明花の演技は男の自分には胸に堪える演技であった。洪 明花の演技を受け、きちんと対応していたナギ ケイスケの渋さも光る。
  • 満足度★★★★

    『上船』
    私なら『乗船』にするかな。

    ネタバレBOX

    『真夜中のテント劇場』  不当解雇を訴えるためにテント生活を始めた女性の初日の話。夜は暗くて怖い、友人の女性が来てくれて良かった程度の話でした。

    声だけですが、同僚の男性の、自分はカメラマンになる夢を叶えるために勉強するので抗議活動はできないというナレーションがありました。韓国社会の労働環境を改善するために立ち上がる人がいなければいつまで経っても変化しないのかもしれませんが、短い一生です、将来の労働者のための捨て石になることに時間を費やすのが大切なのか、どんな環境にも対応できるだけのスキルを身に付けて就職、あるいは起業できるようになるために時間に費やすのが大切なのか考えさせられました。

    クビになった職種ですが、単に教材を訪問販売するだけもなさそうで、日本人にも分かるように説明してほしかったです。

    『秋雨』  ラブホテル的ホテルで起きた二つの殺人事件の顛末と、その背景に一つの家族の崩壊があったことを語る傍観者たちの話。

    また裸かと思いました。ちょっとドキッとして嬉しい面もありますが、今回のBeSeTo演劇祭は、韓国は客寄せの裸ばっかりというのが感想です。演出家は金世一さん、日本語でしか作品を作っていないらしいのですが、釜山出身の韓国人で、さもありなんでした。

    売春婦たち、その夫であり父親である男、客たち、傍観者の男女を5人でこなしたのは素晴らしかったです。

    スローモーションのようにゆっくりと歩くシーンがありました。能の様式を使って死者たちを表現したそうですが、息を溜めてゆっくり動く動作は日本人独特のもので、韓国人役者はすぐに息を吐いてしまうのでゆっくり動く動作ができないという金世一さんの話は印象的でした。

    『上船』  港の屋台の女主人に会いに来た男の話。若い頃に恋仲だった二人は家庭環境の違いから反対され、男の方がもう一歩踏み込めば恋は成就できていたのかもしれませんが、そのまま終わってしまいました。男は女に会い、あれからのことを語らい、この世に残っていた未練の一つを解消して、港から出る死者たちの乗る船に乗って去っていきました。

    実際におでんがあり、イイダコの炒めものを作るなど、現実的な事象と幻想的な出来事が組み合わさり、しっとりとした二人芝居の秀作でした。
  • 満足度★★★★★

    洪明花さんとナギケイスケさん
    韓国の若手作家の3作品を、小池竹見(双数姉妹)・金一世(世amI)・山田裕幸(ユニークポイント)が演出。
    バラエティに富んだ作風でそれぞれ違ったテイストが楽しめた。
    中でも、シンプルな二人芝居「上船」(ユン・ジヨン作・山田裕幸演出)に強烈な印象を受けた。
    無駄のない台詞、ドラマティックな結末、舞台美術、ユニークな演出。
    洪明花さんとナギケイスケさんの味わい深い演技が素晴らしかった。

    ネタバレBOX

    ①「真夜中のテント劇場」 作:オ・セヒョク 演出:小池竹見

    舞台中央にたっぷりと大きな白い布がくしゅくしゅと置いてある。
    やがてそれが、会社に労働環境の改善を求めるテントデモ活動のテントになる。
    素早くフックをかけてロープで布を引き上げると舞台は広いテントの内部になった。
    ここで籠城第1日目のナウン(洪明花)の使命感と高揚感、孤独を描きながら
    口は悪いが籠城に付き合う後輩のチョウン(北見直子)と二人、
    力強く豊かな想像力で不安な夜を乗り切る様がつづられる。

    外界から隔絶され、抵抗の証であるテントが
    やがて大きく波打つ雲海となるところに、掲げる目標と希望の広がりが感じられる。
    終了後に洪明花さんから
    「テントデモは韓国で一般的な抗議行動のひとつ」という解説があった。
    仲間を得て朝を迎えるナウンの喜びが、改めてさぞやと思われた。

    ②「秋雨」 作:ジョン・ソジョン 演出:金世一

    ここはつい先日、一晩に5人の死者が出たラブホテルの足元にある公園。
    ホテルの一室で「社長」と呼ばれる傍若無人な客、相手をする若い女、
    そしてポン引きのような若い男が死ぬ。
    別の部屋で客を取る盲目の中年女性と、料金をごまかすその客も。
    仮面をつけた謎の男が現われると、次々と死んでいくのだ。
    実は仮面の男と盲目の女、若い女はかつて家族だった…。

    日本の古典芸能である能が好きだという作家の作品らしく
    冒頭から前傾姿勢で透明なビニール傘をさしてしずしずと歩く登場人物が
    まさに能のような歩き方で、これが“死者”の彷徨を思わせて強烈な印象。
    ビニール傘を使った殺人のアイデアと繊細な照明が秀逸。

    ③「上船」 作:ユン・ジヨン 演出:山田裕幸

    港の近くでおでんの屋台を営むキム・ユギョン(洪明花)。
    ある日もう最終の船も出た後、ひとりの客ソン・チャンムク(ナギケイスケ)がやって来る。
    彼は「28年前の約束を思い出して」やって来たかつての恋人だった。
    互いに会いに行ったのに会えなかった時のことなど初めて語り合う二人。
    やがて来るはずのない船がやって来て、彼はそれに乗り込むが…。

    おでん屋の女将を演じる洪明花さんが素晴らしい。
    途中「イイダコがあるよ」と客に勧め、注文が入ると実際に調理し始めたので驚いた。
    フライパンを火にかけて油を熱し、タコを炒めてしょう油らしいものを加えると
    香ばしい香りが客席まで漂って来た。
    全ての手順がよどみなく、商売人らしい無駄のない手つきで
    これが舞台である事を忘れさせるようなリアルさに引き込まれた。

    自分の親がついた嘘のせいで男がやむなく去って行ったことや
    その時身ごもっていた子どもを喪って自分も自殺を図った女の過去などが明らかになり
    男が最期にどうしても会っておきたかった気持ちが切々と伝わってくる。
    ラスト、男が船であの世へと旅立つのを見送って初めて女が屋台の外へ出て来る。
    杖をつき身体を傾けながら歩く女が、この不自由な足のせいで
    どんな気持ちでたった一度の恋を諦めたか、胸を締め付けられる思いがする。
    号泣する彼女に観ている私も思わず寄り添いたくなるシーンだった。

    台詞と役者の見事な融合や演出の面白さで「上船」が最も完成度が高いと思うが
    3作とも個性あふれる作風でとても面白い企画だった。

    一晩たってこれを書いていてまた泣けて来た。
    やっぱり☆5つにしようと思う。
  • 満足度★★★★★

    味わい深い!
    精微に演出されて美しい空間。でも物語は3つ共に、どこか荒々しい。寂しくて苦しくて、哀しい。胸がザワザワして、久しぶりに味わう新鮮な感覚でした。韓国の気鋭の若手の中短編を日本語でまとめて堪能出来る贅沢な時間でした。全部で二時間弱位。

  • 満足度★★★★★

    どれも好み
    特に最後の作品が好きかも・・。

    どれも行間に想像力が溢れる作品ばかりだった。

    一見シンプルな人情ものに見えるかもしれない。

    でもそうではなくて、人の置かれた状況を想像するだけの優しさと底力、そして勇気がすべての作品にあふれていることが分かる。

    ネタバレBOX

    お袋が死んだ親父が家にやってきた夢をみたと話ししていた時のことを思い出した。

    良く考えてみると悲痛な出来事ばかりだけれど、
    その中に人の優しさがにじみ出るところが素晴らしい。

    院長になったオッサンがMCRの登場人物くらい元気で浅はか(てほどでもないか
    だったら良かったのかな、と思った(昼見たからかな
  • 満足度★★★★

    演出が面白かった
    韓国若手(30~31歳)作家の戯曲3作を、
    小池竹見さん、金世一さん、山田裕幸さんが演出するという企画。

    戯曲という観点からいうと、短篇・中篇だからかもしれないけれど、
    それほど刺激ではなかった。

    それでも、三作目の『上船』は、面白い構造の舞台だった。

    むしろ、三作とも演出が興味深かった。

    ※☆4は、『上船』に対してです。他の二つは☆3の印象。

    ネタバレBOX

    ①『真夜中のテント劇場』作:オ・セヒョク 演出:小池竹見

    労働者が会社に労働条件の改善を求め抗議をするために、会社前にテントを張り、そこで夜を過ごす(昼夜過ごすのかな?)のだが、初日のため、不安が様々な幻想を呼ぶという話。
    大きな布1枚で、テントに見立てたり、飛行機で空を飛んでいるように見立てたりする演出が、素晴らしかった。
    (これは、小池竹見さんのアイデアなのか、脚本に指定されていることなのかは不明)
    チョウン役:北見直子さんがよかった。以前、ユニークポイントで北見さんの芝居を観た時もよいと思った。

    ②『秋雨』作:ジョン・ソジョン 演出:金世一

    幻想譚。金世一さんは、幻想空間を演出するのが、とても上手い。
    今作も、とても幻想的な空間を演出していた。
    公演の女・ソナ役:生井みづきさんには、不思議な魅力があった。

    ③『上船』作:ユン・ジヨン 演出:山田裕幸

    シンプルな2人芝居。
    屋台を営む老女の元に、行き違いで再会の約束を果たせなかった昔の恋人が訪れる。だが、実は、彼は事故にあい、冥途への船を待つ間に、彼女の元へ寄ったのだった。そこでの最後のやり取りの話。
    舞台上に屋台を作り、そこで実際に火を使って料理をしながら、男をもてなす。その演出が面白かった。
    見た目も面白ければ、観客の臭覚を刺激する芝居というのも面白かった。
    さらに、役者は役を演じながらも、実作業として料理を作らなくてはならいないために、そこに「演技」の嘘くささがなくなり、とても自然な演技になっていた。
    そのような演出もあってだろうか、実力だろうか、洪明花さんがとてもよかった。

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