韓国現代戯曲連続上演 公演情報 韓国現代戯曲連続上演実行委員会「韓国現代戯曲連続上演」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    洪明花さんとナギケイスケさん
    韓国の若手作家の3作品を、小池竹見(双数姉妹)・金一世(世amI)・山田裕幸(ユニークポイント)が演出。
    バラエティに富んだ作風でそれぞれ違ったテイストが楽しめた。
    中でも、シンプルな二人芝居「上船」(ユン・ジヨン作・山田裕幸演出)に強烈な印象を受けた。
    無駄のない台詞、ドラマティックな結末、舞台美術、ユニークな演出。
    洪明花さんとナギケイスケさんの味わい深い演技が素晴らしかった。

    ネタバレBOX

    ①「真夜中のテント劇場」 作:オ・セヒョク 演出:小池竹見

    舞台中央にたっぷりと大きな白い布がくしゅくしゅと置いてある。
    やがてそれが、会社に労働環境の改善を求めるテントデモ活動のテントになる。
    素早くフックをかけてロープで布を引き上げると舞台は広いテントの内部になった。
    ここで籠城第1日目のナウン(洪明花)の使命感と高揚感、孤独を描きながら
    口は悪いが籠城に付き合う後輩のチョウン(北見直子)と二人、
    力強く豊かな想像力で不安な夜を乗り切る様がつづられる。

    外界から隔絶され、抵抗の証であるテントが
    やがて大きく波打つ雲海となるところに、掲げる目標と希望の広がりが感じられる。
    終了後に洪明花さんから
    「テントデモは韓国で一般的な抗議行動のひとつ」という解説があった。
    仲間を得て朝を迎えるナウンの喜びが、改めてさぞやと思われた。

    ②「秋雨」 作:ジョン・ソジョン 演出:金世一

    ここはつい先日、一晩に5人の死者が出たラブホテルの足元にある公園。
    ホテルの一室で「社長」と呼ばれる傍若無人な客、相手をする若い女、
    そしてポン引きのような若い男が死ぬ。
    別の部屋で客を取る盲目の中年女性と、料金をごまかすその客も。
    仮面をつけた謎の男が現われると、次々と死んでいくのだ。
    実は仮面の男と盲目の女、若い女はかつて家族だった…。

    日本の古典芸能である能が好きだという作家の作品らしく
    冒頭から前傾姿勢で透明なビニール傘をさしてしずしずと歩く登場人物が
    まさに能のような歩き方で、これが“死者”の彷徨を思わせて強烈な印象。
    ビニール傘を使った殺人のアイデアと繊細な照明が秀逸。

    ③「上船」 作:ユン・ジヨン 演出:山田裕幸

    港の近くでおでんの屋台を営むキム・ユギョン(洪明花)。
    ある日もう最終の船も出た後、ひとりの客ソン・チャンムク(ナギケイスケ)がやって来る。
    彼は「28年前の約束を思い出して」やって来たかつての恋人だった。
    互いに会いに行ったのに会えなかった時のことなど初めて語り合う二人。
    やがて来るはずのない船がやって来て、彼はそれに乗り込むが…。

    おでん屋の女将を演じる洪明花さんが素晴らしい。
    途中「イイダコがあるよ」と客に勧め、注文が入ると実際に調理し始めたので驚いた。
    フライパンを火にかけて油を熱し、タコを炒めてしょう油らしいものを加えると
    香ばしい香りが客席まで漂って来た。
    全ての手順がよどみなく、商売人らしい無駄のない手つきで
    これが舞台である事を忘れさせるようなリアルさに引き込まれた。

    自分の親がついた嘘のせいで男がやむなく去って行ったことや
    その時身ごもっていた子どもを喪って自分も自殺を図った女の過去などが明らかになり
    男が最期にどうしても会っておきたかった気持ちが切々と伝わってくる。
    ラスト、男が船であの世へと旅立つのを見送って初めて女が屋台の外へ出て来る。
    杖をつき身体を傾けながら歩く女が、この不自由な足のせいで
    どんな気持ちでたった一度の恋を諦めたか、胸を締め付けられる思いがする。
    号泣する彼女に観ている私も思わず寄り添いたくなるシーンだった。

    台詞と役者の見事な融合や演出の面白さで「上船」が最も完成度が高いと思うが
    3作とも個性あふれる作風でとても面白い企画だった。

    一晩たってこれを書いていてまた泣けて来た。
    やっぱり☆5つにしようと思う。

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    2013/11/09 03:53

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