未来を忘れる 公演情報 未来を忘れる」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.1
1-9件 / 9件中
  • やはりアトリエ公演は好きだ!
    いやー…言葉にならない。本当、すごいものを観てしまった。
    衝撃がすごい。
    少しくらい予定をねじ曲げてでも観る価値はあったし、チケット代以上のものを頂いた。

    劇場に入ってまず衝撃。
    舞台は客席側以外(舞台の床、両側面、天井、奥)をすべてベニヤ板で囲ったもの。
    そこに奥行きのある映像を映し出している。
    今までの文学座では見たことがなく、アトリエ公演の精神である「挑戦」をまず感じる。
    この舞台装置の使い方(奥部分が開いて役者がそこから出入りする!産まれるシーンは印象的!)やWi-Fi、スマホ(?)といった文明の機器を使った舞台づくり、とても良かった。
    横方向から当てられた光源によって出来た影も計算された舞台だった。

    一つ一つの言葉が突き刺さる。一つ一つの言葉に考えさせられる。休むことを許さない。
    だから、見終わって結構疲れた。しかし嫌な疲れでは全くない。
    個とは、全体とは。孤独とは、愛とは。生とは、死とは。
    そして人間とは。

    人間、死者、ゴキブリ人間。
    こんなに沢山の人種が舞台上に同時に存在し、時系列もバラバラだが、全然混乱することはない。素晴らしい。
    前半1時間20分、後半55分でしたが、私には全然長くなかった。

    文学座の役者さんは、本当に鍛えられていらっしゃる。
    自然。ちゃんとそこに存在している。
    この長時間の公演を、長いと思わせない演技力。
    全役者さん素晴らしかったです。

    この舞台を完成させた全ての方に讃辞を送りたい。
    いやー…本当にすごいものを観てしまった。



  • 満足度★★★★★

    大問題作!!
     人類が生への、繁栄への野蛮なまでの執着をこのまま抱き続けたらどうなるか? その最悪のシナリオを描き出し、人類が今後進むべき道を問う大問題作。
     引き込まれた!

    ネタバレBOX

     人類は繁栄への執着を捨てきれず、種として生き延びるべくゴキブリの生命力を活用するに至る。
     その結果生まれたゴキブリ人間・ブリ男の役を年輩の役者に振ったのは正解。年輩者が演じることで滲み出す悲愴感が、ゴキブリ人間という哀しき存在にえも言われぬリアリティを与えていた。
     全体としてグロテスクでおぞましい話なだけに、ブリ男の両親が古書店で出会って恋に落ちる美しい場面をはじめ、数少ない温かなシーンがことさら胸に響きました。
  • 満足度★★★★

    安易な解釈を許さない
    安易な解釈を許さない、複雑でシュールな作品。

    と言っても、そこには現代の日本社会が抱えている問題が描かれている。

    世界は簡単に物語化できない。単純に解釈などできない。
    その様を描こうとするとこういう作品になるのだと思う。

    その作風がとても良かった。

    ただ、どうしても観念先行の作品のように思えてしまい、
    舞台としての満足度は☆3だけれど、
    やはりこういう姿勢の作品は素晴らしいと思うので☆4。

    映像や照明を使った演出もとてもよかった。

    役者さんたちも素晴らしかった。
    特に娘:工藤ライミ役:藤崎あかねさんの感じが良かった。

  • 満足度★★★★

    シニカルに描かれた日本の姿
    新興宗教、先進医療、国際関係、自然災害、原発といった現代の日本にくすぶっている問題が全部悪化してしまった近未来を舞台にした、ブラックユーモアに満ちた脚本を、リアリズムではない身体表現や映像を多用した演出で描いた怪作で、エッジの利いた雰囲気が刺激的でした。

    厳しい環境に適応する為に作られた、ゴキブリの遺伝子を含んだ薬品を用いた夫婦と、ゴキブリとして生まれた息子の物語が、時系列を細かく前後しながら描かれ、様々な問題が存在する中で「個」として生きることについて考えさせられる内容でした。
    かなりグロテスクな話なのに全編に渡ってユーモアが感じられ、独特の毒のある世界観が強烈でした。

    前半では6人の役者が常に舞台上に存在していて、客席に背を向けて立つ時や、動きの途中で静止したままの時はそのシーンには登場していないものとすることによって次々に変わる時間や場所をスムーズに繋げていたのが見事でした。

    ネタバレBOX

    新興宗教の親子2代の教祖が登場するシーンでドヴォルザークの『新世界より』が流れるのが曲名と活動内容が繋がり、かつ牧歌的な曲調がシニカルに響き、さらに『家路』として知られる旋律が夕方の雰囲気を醸しだしたりと、様々なレベルで物語とリンクしていたのが巧みで印象に残りました。
    客席側以外の5面をベニヤ板で覆う横長の空間に様々な方向から光が照らされ、影がセットに長く落ちる様子が美しくかつ不気味でした。奥の面が少し後退してその隙間から舞台への出入りを行うのも斬新でした。
  • 満足度★★★★

    今と将来
    今を生きる類人猿と将来を考える人間みたいな。

    ネタバレBOX

    隣国にミサイルをぶち込まれ、都市は壊滅、原発もやられた日本。その隣国は日米安保のおかげか、アメリカの攻撃によって即座に壊滅させられたものの、とは言っても放射能濃度が高まり、資産家は海外に逃れ、復興させるだけの資金がなく復興を諦めた日本において、薬を飲んで安楽死するか、薬を打ってゴキブリの遺伝子を組み入れゴキブリになるか、あるいはゴキブリに身体を乗っ取られ、人間としての意思は無くなっても肉体が生き延びるのを良しとするか、選択を迫られるような話。

    ゴキブリのように個々の死は無視され常に全体で今だけを生きていれば、人間のように将来を悲観することはありません。でもなぜゴキブリかと思ってしまいます。

    虫への変身は『変身』のようでもあり、来未(らいみ)という女性の名前を聞いたときには、未来を言葉遊びでおちょくってくれた『ロープ』を思い出しました。さらには死んだ方が楽と説く新興宗教の話を持ち出すなど、色々な話の寄せ集めのように感じました。
  • 満足度★★★★

    この内容できちんと見せられるのは凄い
    シュールな内容を2時間20分ちゃんと見せられるのは凄いです。さすがの演技力。安心して観ていられます。舞台装置も意表を突いており、驚かされます。

    内容も現在進行形の問題を内包し、刺激的です。おそらく中学生や高校生といった多感な時期に観たら、さぞや大きな影響を受けたであろうと思います。(客層は年齢層高めでしたが)

    ネタバレBOX

    強いて残念な点を挙げるとすれば、ピンポン球が邪魔でした。第2部で何かに使うのかと思いきや使われない。演技の邪魔になるのではと気になって仕方がなかったですし、舞台から落ちて結構大きな音も立てていました。休憩中に片付けてしまえばいいのにと思いました。
    あと、さすがに尺が長いです。客席の横幅スペースが狭い上に、隣に体の大きな人が座ったため、この上演時間では相当つらかったです。
  • 満足度★★★★

    面白哀しい物語 未来版ヤプーか?
     近未来かどうか、兎に角、そんなに遠くは無いと感じられる未来のある時、日本は、隣国からのミサイル攻撃を受けた。その後もミサイルは打ち込まれ続け、そのうちの1発は核施設に命中、甚大な被害を齎した。同時期、M8を超える大地震が、3度も日本を襲い、津波とのWパンチでこれまた大きな損失を被ると共に、多数の人命が露と消えた。悪いことは重なるものである。この時期、火山活動も活発で各地で噴火が起こり、放射性核種に由る汚染のみならず、火山から噴出した有毒ガス等も加わり、日本の経済、インフラ、情報総てがズタズタになった。戦争自体は、アメリカ軍のミサイル攻撃により隣国の首都が、消失したことで3カ月で終了したものの、廃墟となった日本の避難民は確認された者だけで500万人を超えた。無論、富裕層は初期の段階で皆海外に避難しており、ダメージは最小限に留まっているが、脱出できなかった者たちに明日のあろうはずも無い。

    ネタバレBOX

     こんな事態を見透かすかのように某製薬会社が新発明をしていた。深刻な副作用は報告されていたが、ことここに至っては、選択の余地は無い、として多くの人々が、新発明の効果に頼った。実際に何がどんな風に変わったかと言えば、貧乏なヒトはゴキブリとのハイブリッドとして生き延びる道を余儀なくされたのである。無論、この流れに抵抗を試みるヒトは居た。然し、3億年以上もの間、殆ど、変化することなくその生命を維持して来、人類発祥以降は、共生して来たと言っても過言ではない、この生き物の生命力なしにヒトが、この地で生き抜くことは不可能と考えて、人々は、ハイブリッドの道を「選んだ」のであった。ゴキブリ・ヒトハイブリッドという生き物は、精神をゴキブリが、肉体をヒトが担う。即ち精神をゴキブリに支配されたヒトが誕生したわけだ。その精神は、当然、歴史的にヒトが担ってきたものとは内容が異なる。然し、他の選択肢はあり得なかったのである。かくして、日本は、ゴキブリ・ヒトハイブリッドの天下となった。面白哀しい物語。
     舞台は基本的に裸舞台。コンパネを床面以外の4面に張り付けただけのシンプルなものだ。無論、観客席側は、開いている。仮面、スマホ、着衣などの小道具が、場面によっては掛けられていたりするが、後は、総て照明によって、恰も魔法のように、変化する。例をあげる。ホール会場に変じ、或いは、遺伝子、細胞や卵などのミクロから日本、地球全体、時に宇宙を思わせるイマージュへ演出家の狙い通り、話の内容に応じて自由自在に変化するのだ。この技術は驚嘆に値する。現代のテクノロジーを操り、身体を延長して見せた演出は、文学座の伝統には抵触するかも知れないが、この職人技は、ホントに凄い。この技術を目の当たりにするだけでも、観る価値はあると言いたいほどだ。話に多少荒唐無稽な所はあるが、役者の技術が高いので、無論、キチンと芝居という枠に収まっている。但し、革新的ではある。それを、友の会の人達がどう観るかによって、文学座のこれからの動向が占えるかも知れない。
     作品タイトルも、この植民地住民の知性を嘲笑うようで、自分は好みである。何故なら、植民地住民に甘んじている程度の人々に自分達の手で開く未来等あろうはずも無いから。彼らが、人間のフリをする為には、その事実を忘れる他に方法がないのは明らかだからである。
  • 満足度★★★★

    文学座アトリエからパンチの効いた問題作誕生。
    めちゃくちゃ刺激的で面白かった!!未来の物語(?)を追ってドキドキ、キてる抽象舞台で堂々はじける俳優の演技もスリリング。疑問が次々と浮かび、心揺さぶられた。上村演出はグロすぎず怖すぎず、ど真ん中から挑発する。バランス良くて上品。俳優が可愛らしく優しく見える。題材が題材ゆえ途中退出した客もチラホラ(文学座のお客様ですし)。松井周戯曲を丸めず立体化できた証拠かと。約2時間25分(休憩10分込み)。

    ネタバレBOX

    隣国からミサイルが撃ち込まれ、標的になった原発が爆発し、大震災が頻発する近未来の日本。それを過去の出来事として想像することは、今生きることの助けになると思います。
  • 満足度★★★★

    何が起こるかわかりません!
    突拍子もない発想は、今後の世界を予測できないからだろう。
    生き残っていくためには、手段は選ばない。
    そして、生命力のあるものの象徴がゴキブリ。
    ゴキブリが人間の体内に侵入住みつき支配する。未来の人間はこれを良しとしていたが、ゴキブリには当然のごとく人間のような知性はないし、何かを感じ取ることは不可能。生きている意味失うことに人間はきづく。
    過去に学習したはずが、未来になっても学習できていないこと=未来を忘れるということであろう!
    ゴキブリ薬を注射した男女が宿した子供はブリ男(ぶりお)と命名!
    人間がゴキブリの卵を産み落とす場面印象的。
    役者陣はさすが文学座と思わせる、ハッキリとした言葉と日常会話そのもののスピードは実に自然で素晴らしかった!

このページのQRコードです。

拡大