満足度★★★★
忘れるような未来なら
演劇を観ていてやはり観ていてスカッとするものを当然欲するが、
色々観てきた中で何か不快であったり気味悪い、胸糞悪いものも
欲するようになった。
松井周さんの劇団サンプルの「地下室」を先日観て
こういう世界があるんだと思って
松井さんの新作が文学座でやると聞いて来てみた。
上手い表現が見つからないけど、何かどよーんと胸に残る作品。
やはりアトリエ公演は好きだ!
いやー…言葉にならない。本当、すごいものを観てしまった。
衝撃がすごい。
少しくらい予定をねじ曲げてでも観る価値はあったし、チケット代以上のものを頂いた。
劇場に入ってまず衝撃。
舞台は客席側以外(舞台の床、両側面、天井、奥)をすべてベニヤ板で囲ったもの。
そこに奥行きのある映像を映し出している。
今までの文学座では見たことがなく、アトリエ公演の精神である「挑戦」をまず感じる。
この舞台装置の使い方(奥部分が開いて役者がそこから出入りする!産まれるシーンは印象的!)やWi-Fi、スマホ(?)といった文明の機器を使った舞台づくり、とても良かった。
横方向から当てられた光源によって出来た影も計算された舞台だった。
一つ一つの言葉が突き刺さる。一つ一つの言葉に考えさせられる。休むことを許さない。
だから、見終わって結構疲れた。しかし嫌な疲れでは全くない。
個とは、全体とは。孤独とは、愛とは。生とは、死とは。
そして人間とは。
人間、死者、ゴキブリ人間。
こんなに沢山の人種が舞台上に同時に存在し、時系列もバラバラだが、全然混乱することはない。素晴らしい。
前半1時間20分、後半55分でしたが、私には全然長くなかった。
文学座の役者さんは、本当に鍛えられていらっしゃる。
自然。ちゃんとそこに存在している。
この長時間の公演を、長いと思わせない演技力。
全役者さん素晴らしかったです。
この舞台を完成させた全ての方に讃辞を送りたい。
いやー…本当にすごいものを観てしまった。
満足度★★★★★
大問題作!!
人類が生への、繁栄への野蛮なまでの執着をこのまま抱き続けたらどうなるか? その最悪のシナリオを描き出し、人類が今後進むべき道を問う大問題作。
引き込まれた!
満足度★★★★
安易な解釈を許さない
安易な解釈を許さない、複雑でシュールな作品。
と言っても、そこには現代の日本社会が抱えている問題が描かれている。
世界は簡単に物語化できない。単純に解釈などできない。
その様を描こうとするとこういう作品になるのだと思う。
その作風がとても良かった。
ただ、どうしても観念先行の作品のように思えてしまい、
舞台としての満足度は☆3だけれど、
やはりこういう姿勢の作品は素晴らしいと思うので☆4。
映像や照明を使った演出もとてもよかった。
役者さんたちも素晴らしかった。
特に娘:工藤ライミ役:藤崎あかねさんの感じが良かった。
満足度★★★★
シニカルに描かれた日本の姿
新興宗教、先進医療、国際関係、自然災害、原発といった現代の日本にくすぶっている問題が全部悪化してしまった近未来を舞台にした、ブラックユーモアに満ちた脚本を、リアリズムではない身体表現や映像を多用した演出で描いた怪作で、エッジの利いた雰囲気が刺激的でした。
厳しい環境に適応する為に作られた、ゴキブリの遺伝子を含んだ薬品を用いた夫婦と、ゴキブリとして生まれた息子の物語が、時系列を細かく前後しながら描かれ、様々な問題が存在する中で「個」として生きることについて考えさせられる内容でした。
かなりグロテスクな話なのに全編に渡ってユーモアが感じられ、独特の毒のある世界観が強烈でした。
前半では6人の役者が常に舞台上に存在していて、客席に背を向けて立つ時や、動きの途中で静止したままの時はそのシーンには登場していないものとすることによって次々に変わる時間や場所をスムーズに繋げていたのが見事でした。
満足度★★★★
この内容できちんと見せられるのは凄い
シュールな内容を2時間20分ちゃんと見せられるのは凄いです。さすがの演技力。安心して観ていられます。舞台装置も意表を突いており、驚かされます。
内容も現在進行形の問題を内包し、刺激的です。おそらく中学生や高校生といった多感な時期に観たら、さぞや大きな影響を受けたであろうと思います。(客層は年齢層高めでしたが)
満足度★★★★
面白哀しい物語 未来版ヤプーか?
近未来かどうか、兎に角、そんなに遠くは無いと感じられる未来のある時、日本は、隣国からのミサイル攻撃を受けた。その後もミサイルは打ち込まれ続け、そのうちの1発は核施設に命中、甚大な被害を齎した。同時期、M8を超える大地震が、3度も日本を襲い、津波とのWパンチでこれまた大きな損失を被ると共に、多数の人命が露と消えた。悪いことは重なるものである。この時期、火山活動も活発で各地で噴火が起こり、放射性核種に由る汚染のみならず、火山から噴出した有毒ガス等も加わり、日本の経済、インフラ、情報総てがズタズタになった。戦争自体は、アメリカ軍のミサイル攻撃により隣国の首都が、消失したことで3カ月で終了したものの、廃墟となった日本の避難民は確認された者だけで500万人を超えた。無論、富裕層は初期の段階で皆海外に避難しており、ダメージは最小限に留まっているが、脱出できなかった者たちに明日のあろうはずも無い。
満足度★★★★
文学座アトリエからパンチの効いた問題作誕生。
めちゃくちゃ刺激的で面白かった!!未来の物語(?)を追ってドキドキ、キてる抽象舞台で堂々はじける俳優の演技もスリリング。疑問が次々と浮かび、心揺さぶられた。上村演出はグロすぎず怖すぎず、ど真ん中から挑発する。バランス良くて上品。俳優が可愛らしく優しく見える。題材が題材ゆえ途中退出した客もチラホラ(文学座のお客様ですし)。松井周戯曲を丸めず立体化できた証拠かと。約2時間25分(休憩10分込み)。
満足度★★★★
何が起こるかわかりません!
突拍子もない発想は、今後の世界を予測できないからだろう。
生き残っていくためには、手段は選ばない。
そして、生命力のあるものの象徴がゴキブリ。
ゴキブリが人間の体内に侵入住みつき支配する。未来の人間はこれを良しとしていたが、ゴキブリには当然のごとく人間のような知性はないし、何かを感じ取ることは不可能。生きている意味失うことに人間はきづく。
過去に学習したはずが、未来になっても学習できていないこと=未来を忘れるということであろう!
ゴキブリ薬を注射した男女が宿した子供はブリ男(ぶりお)と命名!
人間がゴキブリの卵を産み落とす場面印象的。
役者陣はさすが文学座と思わせる、ハッキリとした言葉と日常会話そのもののスピードは実に自然で素晴らしかった!