満足度★★★★
シニカルに描かれた日本の姿
新興宗教、先進医療、国際関係、自然災害、原発といった現代の日本にくすぶっている問題が全部悪化してしまった近未来を舞台にした、ブラックユーモアに満ちた脚本を、リアリズムではない身体表現や映像を多用した演出で描いた怪作で、エッジの利いた雰囲気が刺激的でした。
厳しい環境に適応する為に作られた、ゴキブリの遺伝子を含んだ薬品を用いた夫婦と、ゴキブリとして生まれた息子の物語が、時系列を細かく前後しながら描かれ、様々な問題が存在する中で「個」として生きることについて考えさせられる内容でした。
かなりグロテスクな話なのに全編に渡ってユーモアが感じられ、独特の毒のある世界観が強烈でした。
前半では6人の役者が常に舞台上に存在していて、客席に背を向けて立つ時や、動きの途中で静止したままの時はそのシーンには登場していないものとすることによって次々に変わる時間や場所をスムーズに繋げていたのが見事でした。