演劇集団 砂地 『Disk』 公演情報 演劇集団 砂地 『Disk』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.9
1-20件 / 21件中
  • 満足度★★★

    少し村上春樹みたい?
    上から物が落ちてくる感じとか、素直に驚いて楽しめました。

    少し村上春樹みたいな世界観で、私は好きでした。

    最初、ずっと走っていたのとか、とてもいいと思いました。

    感想絵を描きましたので、よろしかったら。

    http://chigusa.petit.cc/muscat2/

  • 満足度★★★

    う~ん・・・
    スタイリッシュで上質な芝居だと思いますが、現代の我々の世代を描くとこうなっちゃうのかな。なんかみんな病んでますね。救いようがなく寒々とした気持ちになりました。気が滅入っている時に観ると辛いです。

  • 身近に感じられなかった
    逃げてばかりの人達の話だと思いました。
    別に「逃避」が悪いという話ではないのだけど、この手の
    テーマは過去に数多くの作品が生み出されているので、
    新機軸が欲しかったです。あと、全体的に演出過多。
    滑稽を狙っていたのかもしれないけど、かえって作品の
    雰囲気を壊している気がしてもったいないな、と思いました。

    ネタバレBOX

    亡くなってずいぶん経つ恋人の幻影にとらわれ、一歩も前に
    進めないイラストレーターの男と、相手に過度に依存し、結果、
    どうしようもない男ばかり拾ってしまう、普通にいそうな感じの妹、

    それに、本人は自由人らしい生き方を貫いているようにうそぶいても
    人からはどこか逃げているようにしかみえない、タイ在住で日本一時
    帰国中の男、

    エロアニメ声優で、自分のつくっている作品の意味や意義について
    密かに思い悩んでいる、妹の腐れ縁、

    の4人が主要人物ですね。この中では一番、妹の腐れ縁の清水が
    一番理解しやすかったかも。どんな状況でも、何をやっていても、
    たとえ自分がそれを選んでいても、誰かに認められて、存在の
    意義を感じて欲しい、というのはありますよね。

    でも、清水を含めて、みんなあまりに自分のことだけしか
    考えてないので、後半、なかなかに単調で。一人くらい
    変化の移り変わりを出していって、そこで他の3人との
    対立点みたいなのをつくり出していった方が面白かったのでは。

    主人公の男の恋人が、男が理想化し、自分だけを見てくれている、と
    いう思い込みとは違って、実際は誰とでも簡単に寝るような女性だった、
    っていうのはなかなかキツさが効いていて、ここは結構掘り起こせそうな
    ネタだと思ったけど、

    意外と妹とのエピソードも大きく絡んでくるので、主題が分散して
    なんだかよく分かんなかった。

    妹が海外に行って、人に左右されて気疲ればかりしていた頃から
    打って変って、自分の生に気付いて兄に話しかける、という結末も
    後で考えると空虚ですよね。演出はそれを狙っていた可能性も
    あるけど、やっぱりありきたり過ぎる気がしました。

    作・演出がほぼ同年代なので、どうしても作る世界観や主張に
    世代特有の未成熟感が色濃く漂っていて、さすがにこの手の
    作品はなかなか今の自分の歳では厳しくなってきたな、って
    いうのが正直な感想です。
  • 満足度★★★

    私のための公演ではなかったのかと・・・・
    期待が大きすぎたようです。「好みが分かれる作品」と言ってしまうのは楽ですが、どうして楽しめなかったのかとしばらく考えてみました。理解ができなかったわけでは決してないのですが(と信じていますが)、演劇の研究会に足を踏み入れてしまったような気持ちになりました。

  • 満足度★★★

    人間は愚か
    妹が観客に向かって台詞を放つとき「病んでるのはお前らだ」と聞こえはしなかっただろうか。聞き逃したり見逃したりして不明なことが生じる場合、観劇後脚本を読みたくなるものだが、ただそれだけの理由だけで脚本を読みたくなるのではない芝居はそう多くはない。この作品はまさにそれだ。劇場が広いため濃密な空気がスースーした印象(大きな空間を生かせたのは高い天井からモノを落とすくらいで、それ以外ではもて余してた感がある。)は否めない。小さい劇場で観たらもっと重量感を受けただろう。

  • 満足度★★★

    観客も苦悩する
    劇団・砂地の【Disk】を観劇。

    今作はシタラートラムのネクスト・ジェネレーションで選ばれた今後期待される劇団の公演である。

    自分が失った恋人の亡霊と対話し続ける男、亡くなった父の顔を思い出せない妹、そしてそのふたりを囲む友人達。

    苦悩する人達の物語である。
    常に自分のおかれた過去と対峙しながら、今をどのようにして生きて行けば良いか?という事を演出家は、投げかけている芝居ではないのだが、観ている我々は心苦しさを感じてしまう。観る世代によっての捉え方がまちまちだと思われる内容だが、誰もが避けては通れない己の心の襞に触れてくる内容というのは間違いないようだ。物語らしい物語がないのが今作を鑑賞するには難しいと感じるが、己の捉え方次第では幾らでも入り込める芝居でもある。

  • 満足度

    理解できなかった。
    たぶん、斬新的な芝居なで、高尚なのだろう。どうも哲学書を読まされているようで私には理解できなかった。

    また、やたらと服を脱ぎ、なぜ下着姿になっているのかもわからなかった

  • 観てきた!
    1/25

  • 満足度★★★★

    観客としての立ち位置を探りつつ・・
    タイトルそのものを受け皿にして、
    そこに重ねるものたちが
    次第に別のリアリティを醸し出していく。

    冒頭から、一気に立ち上がる質感に
    閉じ込められ、その世界を追い続けてしまいました。

    ネタバレBOX

    舞台には大きな黒い円がイメージされ、
    開演前から、役者の身体が
    Diskの回転を表現していく。

    突然落下してくるものが、
    そこに書き込まれ、物語の断片が広がっていきます。
    キャラクターたちの記憶が音とともに舞台に落下してきます。
    大容量の外部メモリーなども落ちてきて、
    記憶が断片的に、
    でもその断片の中にぞくっとくるようなリアリティをもって
    舞台を満たしていく。

    役者たちには、
    一つの情景を作るにとどまらず、
    舞台上のトーンを崩すことなく、
    一方でロールの個性をそのトーンに埋もれることさせることなく
    記憶の再現の態でディスクに焼き付ける
    ぞくっとくるような表現力があって。

    断片は、最初はパラレルに、
    でも、やがては、
    一つの時間の尺のなかでの記憶として
    舞台に紡ぎあがっていく。
    さらには、シーンの重なりが、
    時に静謐な回顧につながり、
    あるいはリアルな歪みとして舞台を見たし
    観る側にまであふれ出してくる。

    キャラクターたちの舞台への入り込み方、
    衣装を外すことで生まれる距離感、
    舞台のミザンスが、仮想空間に、
    仮想空間だからこそ表現しうる、
    心風景の断片のリアリティに観る側を浸していく・・・。

    正直に言うと、
    私的にはこの作品をきちんと理解はできていないように思う。
    客席側に置かれたものというか、
    観客の立ち位置が今一つ得心できなくて、
    中盤からは、ずっとそれを求めながら
    舞台に重ねられる記憶の断片に喰いついていた。
    ラストシーンで、記憶がデフラグされて、
    業者が部屋を整理したことで
    世界に新たな視座が生まれて・・・。
    それでも、観客としての自らのロールを追い求める気持ちが残って。

    でも、その一方で、観終わって舞台にあるものが
    メモリーごと繫がれた感じが残り、
    シーンに描かれた断片たちが、
    自らの共振する質感として置き換わり、
    広がり、あるいは滅失し、変質していくことに慄然としつつ、
    その不思議な実存感が居場所を得たような
    安堵を感じたことでした。

    この世界を構築した作り手と役者たちの、
    シーンを立ち上げ、組み上げる創意と表現力に圧倒されつつ、
    さらなる物語の世界を見たいと思った。
    千秋楽の観劇で、
    もう一度観ることができないことがとても残念・・・、
    機会があれば、是非に再演をして頂きたい作品でありました。




  • 満足度★★★★★

    濃密かつ秀逸極まる!
    今まで観た全ての芝居が陳腐に思えると錯覚してしまう程、まるで上質な翻訳劇のような、味わい高度な作品でした。

    人物の一挙手一投足、台詞の一字一句に、目も耳も一瞬たりとも離せない、濃密度の濃い舞台でした。

    こういう硬質な演劇を構築できる船岩さんの才気に、衝撃を受けます。だって、私の長男より、年下でいらっしゃるのに…。

    途中まで、この作品の観劇には不釣り合いな若い女性のけたたましい笑い声が後ろから聞こえたのですが、後半は、固唾を呑んで凝視していたような気配。彼女に、感想を聞いてみたい気がしました。

    これ、外国語に翻訳して、オフブロードウエイとかで上演したら、トニー賞とか取るようなレベルの舞台ではないでしょうか?

    ネタバレBOX

    開幕前に田中さんがひたすら走るのも、落下物と共に人物が登場するのにも、きちんとした意味合いが理解できて、どこかの誰かさんのマンネリ演出とは雲泥の差を感じました。

    カバンや衣類の落下は、対人する人間の心の中に、その人物の存在がドスンと音を立てて、落下するという印象を受けました。

    言い争いなどの台詞の応酬に、自然さが溢れ、まるでドキュメンタリーを観ているかのよう。

    説明台詞がほとんどないにも関わらず、この登場人物一人一人の心象描写が機目細やかで、彼らのこれまでの人生の呻きが、自分の経験かと錯覚するような、不思議な感覚が走りました。

    死んでしまった恋人が、何度も、恋人に向かって「描かないの?」と同じ台詞を口にしますが、観客は、その都度、この主人公の心の内に同化して、疑似体験することで、この繰り返しの台詞が、どんどん重く響く感じがするんです。

    兄と妹の関係、二人の両親の関係が、観ている私にまで、伝染し、心が呻くような思いがありました。

    他の登場人物達の何気ないような台詞の中にも、たくさん共鳴する部分がありました。

    砂地体験は、これで3度目ですが、これだけ、独自性のある息詰まるようなオリジナルを生み出せる船岩さんには、これからも、どんどん、古典をモチーフにしない創作も期待してしまいます。

    最後のシーンで、外国にあるという設定の自販機に、伊右衛門らしき、純日本的なペットボトルが見えたのだけが、やや残念でした。

    あー、それにしても、田中壮太郎さん、ファンになって10年くらいになりますが、益々好きになりました。

    妹役の小瀧さんも、かなりご出演作を拝見していますが、今回が最高!昔観た「ミスターグッドバーを探して」を思い出してしまって、自分には全く経験ないこの女性のトラウマが、己の過去のように感じて、自分も、昔、兄にキスを迫ったような気さえしました。私、一人っ子なのに…。
  • 満足度★★★★

    久々に
    センセーショナルというと誇大過ぎるかも知れないが、作品世界に厚みとメッセージ性があるものをたった6人で作り上げている。
    現代社会の病巣、家族友人含めての人間関係の希薄さ、精神のもろさを見せつけている。救いようの無い世界ではあるが、かといって希望が持てない終わり方ではない。バランスが絶妙。

    ネタバレBOX

    ただ、気になる点として今年入ってから同様の若手劇団系で、「セットらしきセットが無い中」で「台詞をリフレイン」し、「最後死ぬ」という組み合わせを既に3つ目として観てしまった。これは何か流行りなのか?
  • 満足度★★★★★

    無題598(13-023)
    14:00の回(晴)。13:35会場着、受付(指定席)。すでに書かれているように走っています。皇居のように左回り、舞台床に丸いシートが貼ってあるようでその外側を走っています。手前からバスタブ(6時)、作業デスク(3時)、ベッド(12時)、ソファ(9時)、十字の位置。その外側を31-2歩/周のペースで走り、中央には女がひとり、ランナーをみたり、ぼんやり客席をみたり。正面奥には自動販売機が1台、BGMはB.ディランか。14:00前説(場内アナウンス1時間45分)、ここでペースが早まり、大きく外側を回る、見ようによっては...回転をコントロールできず外側にブレ始めた...のか。14:02BGMが止まると男も止まり、息を整え...~15:48終演。「RUR」からで2作目。トラムは「奴婢訓」(12/02)以来。

    ネタバレBOX

    前作(原作があわないんだと思う)がもひとつだったのでどうしようか思案、小瀧さんのお名前があり前日に予約。

    座席後方から舞台を見下ろしたらどのように見えたのだろう、居室内であることを示す「黒い円」はディスクを模していたのか、その黒い境界はまっすぐ奥まで伸び鍵穴のようになっていたのかな...。

    広めの舞台、微妙な照明の加減、役者間の距離、セリフ以外ほとんど聞こえない。

    始まりと終わりの「Disk」の文字、この二人が保存している「記憶」に基づいたお話、という意味だったのかなと考えてみる。ときどき「脳」「記憶」に関する本を読みます。「脳」が認識するものだけが存在=意識する世界。何層にも重ねられた情報=記憶=記録。再現するために必要な行為、再現しないように封印してしまう「意識」。

    突然上から「モノ」が落ちるお芝居はいくつかみていますが、どうも好きになれません(花びらとか雪とか自然なものはいいけど)。「演出です!!」とここで主張されると開演から続いてきた意識がそこでリセットされるような気がするのでした。

    かみ合わない(理解できない)感情の応酬、拒絶、依存、孤独、内側へ内側へと流れてゆく、自らすべての扉に鍵をかけ、接触を絶ち圧縮してゆく、自重によって崩落が始まる、周囲との接点が喪われてゆく、アウトプットができず(絵は描けない)、記録はアクセスできないものとなり消滅する。
  • 満足度★★★★★

    衝撃。
    こんなの創れるのか、こんな所まで描ききるのか、とにかく衝撃的だった。現代に生きる人々に様々な問いを様々な視点から問いかけ、共感できるものになっていた。そして、もし何か越えてはならない所を越えてしまったら・・・その危うさも現代に生きる人々に突き付けられている、と思う。「ネクストジェネレーション」、次の世代に相応しい素晴らしい舞台だった。

  • 満足度★★★

    欲望
    生きることは求めることなのかな。

    ネタバレBOX

    兄(田中壮太郎)…恋人(藤井咲有里)をなくして未だ引きずったまま。ストイックというか求められない。精神疾患なデザイナー。
    恋人…兄が求めてくれなかったので、兄の友人(岸田研二)に捧げてしまった。
    妹(小瀧万梨子)…孤独を嫌う、求めてしまう女。父の幻影が消えない。
    子持ちの男(野々山貴之)…妹と関係を持つも、父になることで妹との関係を終わらせようとする。会社員。
    妹の友人(中村梨那)…妹を気遣うも嫌がられる。けど妹を羨ましく思っている。エロゲ声優。
    兄の友人…タイで生活する放浪地味た人。兄や恋人の友人。

    20~40くらいの闇な部分を薄暗く照らす。厭な感触。地味ではあるけども、その分厭なとこが引き立つ。

    安易な「分かり合えない」的な話でなく、淡々と人間を描くところは気に入った。兄の性格は共感に近いものを感じたし、逆に人間のよくわからなさも汲み取れた。妹を演じた小瀧のあばずれさと、依存する女な演技は等幅広いとこでよかった。ちょっと体が引き締まり過ぎな気もしたけど。

    演技も皆良かったと思う。照明やセット、小道具とか、細かく凝ってた。
    ただ、なんか琴線に引っかからなかった。
  • 満足度★★★★★

    魅力的な空間
    客入れ時から舞台空間を演出。セットの配置、キャラクターの際立ち、展開の妙。タイトルもなるほど。簡単には消すことの出来ない記憶。じんわりする切なさを感じた。

  • 満足度★★★★★

    この世代感
    6人の俳優でどえらい世界を創ってしまったんじゃないか。自分が受けた衝撃があまりに大きくて観劇後の帰り道にボーっとしてしまった。でも頭からこの公演についての情報がひとかけらもこぼれないようにと必死で思い返して味わいました。ヒリヒリして息苦しい空間が刺激的で、哲学的に感情的に悶え悩む登場人物達に胸をうたれ、ラストまで興奮が持続し続けました。繰り広げられる普遍的な問いのレパートリーは幅広く、それに対する答えの片鱗は交錯して、「現代のわれわれの世代とは」について突き詰めて考えられてるなと感じました。でもその言葉1つ1つが新鮮さを引き立たせる演出、劇空間が美しくて、楽しくて、洗練されてるなぁと思いました。

    ネタバレBOX

    未消化で全然理解できてないけれど、とにかく強い衝撃を受けました。本当にこの世の中は発展しているのか。登場人物は皆、自己肯定感が歪んでいる。ありのままの自分を認めてもらえる体験が欠如しているようにみえます。それは、社会と個人が断絶している、国家とか政治システムにはもう希望や失望もしない、関心すらないという状態なのかと思います。実際、劇中には個人と個人の葛藤しかないように見えました。そして、その感覚はとてもリアルだなと思いました。自分で無くてもいいという交換可能性すら想起しました。

    個人ごとの過去・現在・未来。もし人間(の記憶)がDisk(記録媒体)なんだとすると、過去を断絶して、未来に希望を持てないこの世代には今しかないんだと思いました。人生の1回性、楽しいことだけ繰り返す。今ある現実を引き伸ばして、自分の内側にこもって、未来のことは考えないようにすること(海外への放浪を続けることや、家に閉じこもって他者との関係を排すること)。劇中に「全てのことが他人事に感じる」男が自分の子供が生まれた事だけは自分の事に感じられること。叫びだしたい衝動。自分は何者にもなれないという全能感の喪失。一生懸命人とつながろうとするも人間関係に依存する妹と、関係を遮断して内にこもって死んだ女に依存する兄。その兄妹、両方の見せる孤独。肉体はオーストラリアでも、ニュージーランドでも、もしかしたら月にも行けるかもしれないのに、気持ちはどこへも行けないこと。
  • 満足度★★★★

    私たちはDisk
    舞台が「肉厚」な感じがするのは、役者陣が魅力的だから。
    膨大な記憶を保存しながら生きる、私たちはDiskだ。
    その記憶はなかなか消去されず、しかも時折無意識のうちに上書きされたりする。
    保存した記憶が薄れないということは、かくも人を苛むものか。
    ついには崩壊してしまうまでに・・・。

    ネタバレBOX

    舞台中央に描かれた大きな黒い円、これが男の部屋だ。
    奥にベッド、手前にバスタブ、上手にパソコン、下手にはソファ。
    ソファとバスタブの間にイーゼルが置かれ、白いキャンバスがかかっている。
    客入れの時点からもう、男がひとりこの円の外側を走っている。
    ほとんど30分近く、正確に同じペースで黙々と走る。
    女が一人中央でそれを見守っている。
    男の部屋のずっと奥にの方には自動販売機がある。

    男(田中壮太郎)はイラストレーターでひとり暮らしをしているのだが
    彼には死んだ恋人が視えていて常に会話している。
    ランニングを見守っていた女(藤井咲有里)は、その自殺した恋人だ。
    絵が描けなくなった彼に「そのままで大丈夫」と声をかける。

    男には妹がいて、恋人と別れた彼女が兄の部屋に転がりこんで来る。
    この妹(小瀧万梨子)は男運が悪く、時々死んだ父親と会話する。
    二人の母親は施設にいるらしい。

    この部屋に男の友人(岸田研二)、妹の友人(中村梨那)、
    それに妹の別れた女房持ちの恋人(野々山貴之)らがやって来て
    兄妹二人の感情に波風を立たせるから、二人は互いの人生に強烈なダメ出しをして
    「出て行け!」「家族でしょ!」とつかみ合いの喧嘩をすることになる。

    ──兄も妹も、左肩に赤い大きな痣があるのはなぜか。
      痣は父親の暴力の痕なのか。
      この兄妹は父親の違う異父兄妹なのではないか。

    そんな疑問が湧いて来るのは、何か危機感を感じさせる演出のせいだろうか。
    切羽詰まった、追いつめられた感じが伝わってくる。

    例えば“演技”と言うにはあまりにマジなランニングもそのひとつ。
    開演前から走っていた男の疲労感が観ている私にずっと残る。
    男は「絵を描いている時はいろんなことを忘れられる」と言うが
    一向に描けないものだから“忘れる”ことができない。
    だから走って忘れようとしている。(ように見える)
    何かを念じるように、走ることに集中している。(ように見える)

    また、新たな人物が登場するたびに大きな音と共に
    天井辺りからその人のトランクなど大荷物がどっと降ってくる時の不穏な予感。
    びくっとして緊張が走るのは、観ている私の方かもしれない。
    予告なし、無遠慮な訪問の仕方を絵に描いたような演出だ。

    人前でもすぐ衣服を脱いでバスタブに入る、妹のほとんど攻撃的とも言える無防備ぶり。
    そうすれば誰かが一緒にいてくれると、本能的に知っているかのようだ。
    その結果一緒にいてくれるようになった男とはいつもダメになるが。

    「自分は絵も描けない、何も生み出せない」と絶望する妹に
    「何かを生み出さなくちゃいけないのか?もっとささやかなものでいいんだよ」と言った兄。
    その兄の選択が自分の血で絵を描くことなのか──。

    ラスト、妹がオーストラリアの自動販売機の前で煙草を吸いながら語る。
    時間と共に変化する空の色の美しさ、トラムの高さのある舞台が空を大きく見せて
    繊細な照明に泣きそうになる。

    田中壮太郎さん、結局恋人を放っておいた自分が彼女を死に追いやったのだと
    責め続ける男の繊細さと最期の狂気の行為、二つの振れ幅が素晴らしい。
    恋人の存在に依存しているかのような、ストイックな暮らしぶりの男が良く似合う。
    彼は“忘れられない”のではなく“忘れたくない”のだということが次第に分かって来る。
    それにしても良い走りっぷりだった。

    小瀧万梨子さん、細くしなやかな身体を晒して肉体の雄弁さをいかんなく発揮。
    この人のちょっとハスキーな声には不思議な魅力があって
    台詞の生々しさに紗がかかる感じ。

    藤井咲有里さん、死んだ恋人として男を見守る動きの少ない役はとても難しいと思う。
    終盤大きく動いたのは、「わ・た・し!!」としぼり出すようにくり返した時。
    見て欲しい人に見てもらえないまま孤独のうちに死んだ人の叫びが強烈に響いた。

    「Disk」の4文字が裸の背中に照射される場面が二度あった。
    最初は客席に背を向けた妹の背中に、もう一回は終盤兄の背中に。
    その文字は肩甲骨に沿って幽かにゆらめき、生身の人間が背負った記憶に
    押しつぶされて行く不安を暗示しているようだった。
  • 満足度★★★★

    開演前にひたすら走り続けた後に・・
    息も切らせず何事もなかったように芝居を始めたのには驚いた。鍛えているなあ。彼だけではなく女性たちも相当鍛えているようだ。恋人の死から時が進まなくなっているような兄。円の中でぐるぐる回っているだけのような人生。重苦しい、息詰まるような時間だったが、作り手たちの真面目さが伝わってくるような芝居。

    ネタバレBOX

    物凄く気になったのは、度々人を殴ったり、なぐり合ったりする場面があったこと。普通の人はそんなに殴ったりしないでしょ?怒りや不満の表現としてはわかりやすいかもしれないが、多用すると安直に見える。
  • 満足度★★★★★

    予算があると
    パンフレットも厚紙になるのですね。

    ネタバレBOX

    開演前に舞台上のディスクの周りを延々とランニングを続ける兄。時間になっても合図が来ず、開演が押した場合の精神的苦痛は如何ばかりかとご同情申し上げました。

    学生時代に死んだ恋人のことを引きずって精神的に病んで自殺した兄と、彼の周りの妹や友人たちの話。

    ストイックな彼は欲望を押さえ込んでいます。画家である彼です。欲望がなければ絵は描けません。

    妹の奔放さを見たり、恋人の普通の人さ加減を友人から聞いたりして、自分だけの女かと思っていたけれども、もしかしたら恋人ですら無かったのかもしれないということを認識するに至り、恋人を美化し過ぎた自分を呪い、押さえつけていた感情を爆発させ、自らの血で最後の絵を描き自殺したということでしょうか。

    孤独死でもあり、業者が遺体や部屋を片付けたという話は、兄の心の軌跡とは何ら関係しないただただ現実の無常さを感じます。

    始まってすぐに妹の裸の背中にdiskの文字を映し出したときは、妹の奔放さ、エロっぽさを際立たせるためのものか、凝ったことするなーと思いましたが、ラストシーンで兄の裸の背中にもdiskの文字を映したときには凝り過ぎ感はあるものの、素直にさすがだなと思いました。
  • 満足度★★★★★

    二度目の砂地観劇
    劇場空間に入った瞬間にまず「おっ!?」とつかまれ、そのまま作品世界へ引きずり込まれてしまいました。

    登場人物一人ひとりが、ガチでぶつかりあうがゆえ/ガチですれ違いあうがゆえにあふれ出る、おかしさや滑稽さ、そのヒリヒリさ加減がおそろしく面白かったです。

    砂地作品を観るのは二度目なのですが、役者陣の存在のありよう、そしてその爆ぜ方がホントに魅力的な作品をつくる集団なんだなあ、と改めて。
    美術、照明も印象的。特にラストシーンの美しさ。

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