サイハテ 公演情報 サイハテ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
1-11件 / 11件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    めっちゃ良かったです。人柄の良さが伝わって来る前説。お芝居はうってかわってシリアスでカオスで。良い意味で裏切られた〜最後まで釘づけ。これだから小劇場はやめられない!

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/12/13 (土) 18:00

     主人公の男は、他の登場人物によって、途中で還暦60歳だということが分かるものの、他の妻や娘、家族以外では、部下や旅人など特定の名前余りが出てこず、劇の最後まで絶妙にズレていて、だけれども何処か可笑しみや哲学的で答えがなかなか出せない会話、また虚しさが浮き彫りになってくるあたり、そして、主人公がいきなり不条理な状況に置かれて、戸惑いながら、何とかしようとする当たり、別役実の劇作に影響をかなり受けていると感じた。
     舞台のかなり抽象的な雰囲気からいっても。

     最初や劇の途中途中で主人公の初老の60の男が持っている風呂敷包みで結ばれた箱に向かって話しかけると、男の妻が出てきて、男と話をする。
     しかし、劇が進行するに従って、娘にも、他の登場人物にもその妻が見えず、話している声も聞こえなくて、男にしか妻の姿形が見えず、声も聞こえていないことが分かってくる。
     娘と男との会話によって、男の妻はとっくにこの世に居なくて、男の妻が病気か自殺か、事故かといった早逝した理由ははっきりとは最後まで明かされないものの、男が持っている箱の中身が妻の遺骨であり、妻の遺骨に毎日男が語りかけていたという衝撃的な事実が段々と分かってくる。
     そして、男が妻の死を受け入れきれず、未だ後生大事に遺骨になった妻に話しかけ、男にだけ妻の姿形が見え、妻の声も聞こえるが、今年30になる娘と今までちゃんと向き合ってきたとは言えなかったことも分かってくる。
     妻と一緒に「サイハテ」に行くことだって、妻と約束したと言っていたが、実は違う事実が劇中で浮かび上がってきたり、妻の為に買ったと言っていた古ぼけて半ば壊れているラジオだって妻の為に買ってきたと言いつつ、実際には、男が誰よりもそのラジオが欲しくて買ったこと、定年になるまで国民汚物課 下水処理班で真面目に一生懸命働いてきたが、その分家族との関係と言うか、家庭よりも仕事最優先で働き詰めと言った感じだったことが徐々に明らかになってくる。
     しかし、大事な事柄から逃げ、家族との関係性からも逃げ、妙な責任感からか、妻の遺骨に囚われ、娘ともまともに向き合おうとせず、60になるというのに本当の意味で2の足を踏み続け、自分はこれから何をしたいのか、どこに行きたいのかと言ったこと劇中を通して探し続け、迷い続け、半永久的に理想郷とされる「サイハテ」目指して、自分探しの旅を60にもなってする、何処か人間臭く、裏寂しく、何処か憎み切れない男に呆れつつ、何処か共感出来た。
     
     やはり人間、完璧だったり、ハッキリした目標があったり、自信があったりするのが主人公よりも、人の意見に流されやすく、気が弱く、自分に何処か自信がなくて、これからどうしたいのか、なぜそこに行きたいのかと言ったような問に対して、具体的に答えることができず、何歳になっても思い悩み、過去を引きずり続け、後悔して前に進めず、娘とも何処か距離があるような人が主人公になるから、呆れ帰りつつも何かしら共感したり、その欠点や駄目さ加減に自分を重ね合わせてみたり出来るんじゃないかと感じた。

     劇中、国民管理局に勤める女職員の部下が男と2人きりの場面で、自分が実は最低限の権利しか有していない非人戸籍であることを打ち明け、主人公の男も非人国籍であることを打ち明ける場面がある。
     非人国籍だとえらく差別され、牛馬の皮革産業や汚物処理といった限られた職業にしか就くことが出来ず、結婚などなかなか出来ないといったことを主人公の男と国民管理局に勤める女職員の部下の男と2人でそういった話をするが、この劇に出てくる非人国籍の在り方、世間の差別のあり方は江戸時代の穢多非人、現在における被差別部落出身者の在り方にも通じる所があり、この劇全体的には、抽象的で哲学的、不条理劇的でもあるSF劇なのだが、そこに社会的な問題、特に普通は被差別部落の問題は取り上げ辛い問題だからこそ、SF劇の中に組み込んで描いている辺り、感心し、また深く考えさせられた。

     国民管理局の女職員に部下の冴えない雰囲気の中年男がスリッパで思いっ切り叩かれる場面が劇中何回か出てくるが、容赦なく、躊躇せず、女職員が叩き、暫くして、ボソッと痛かったことをぼやく中年男の部下との絶妙にズレていて、とボケた感じのスラップスティックな喜劇の要素が大いに笑えた。
     争いを好まない平和主義者だと言いながら、にこやかにそれでいて相手を追い詰める手法を使って、自分の部下であろうとも特に気にかけたりせず、部下の失態や暴走に対して部下を庇うどころか平気で責任を取らせようとしたりする、冷酷で淡々としている国民管理局の現場を取り仕切る男の上司である。
     主人公の男が実は持ち込み禁止物を管理局内に持ち込んだことに対して、その中身をこっそり隠し、手荷物検査を女職員が命じたあと、中身が確認出来なかったことで、女職員が責任を取るため天条委員会に報告に行くが、その間に返してくれたりと、優しいのだから、怖いのだか、敵か味方か判然としない国民管理局の現場を取り仕切る男の上司が、こういったSF劇では、普通はっきりと管理する側、される側といった対立軸があるのが普通な筈なのに、今回の劇でこの国民管理局の男の上司1つ見てみてもはっきりとヤバい役、突出した悪が出て来ないのが新鮮であり、非常に現実的だと感じた。
     また、国民管理局の上にある天条委員会がどういったものか劇中では詳しく説明されず、天条委員会に所属する人物も一切登場しないのが、逆に現実的だと感じた。
     国民管理局に所属する者から、国民は国家に所属し、国が定めた法律は絶対に守らなければいけない。だから国民は国家の所有物である。なので、お前に手荷物検査を拒む権利などない。お前が生まれた時から国がその身体を管理しているのだから、思想信条、どんな家族形成、どんな交友関係と言ったことも全て国が知っている。お前の身体は国家が管理している以上、お前の持ち物ではないのだといったようなことを言うが、これは明らかに思想信条の自由表現の自由、人権に反しており、主人公の男や登場人物たちが名前でなく、番号で呼ばれることも管理社会的で恐怖でしかないが、「サイハテ」に行くための最初の試練として、ガラポン抽選がある。そういった国が管理し、国民の為、戦争紛争がなく、人々が平和に平等に暮らす為のルールとしての法律を守らせ、管理社会となった世界を描いているが、それで平和や平等が保たれ、理想的な社会になるのだとしたら、国の方針に国民は従っておけば良いのだ、国民は何も考えなくて良い。そのほうが幸せなことだってある。無用なトラブルも回避できるというようなことを国民管理局職員が言うことに恐怖を感じた。
     しかも国民管理局の職員や国が国民に強いているというよりも、もうこういった制度になっているからと言った諦め感覚になって、事なかれ主義になっていて、何の疑いや不満も抱かなくなっている国民に、現実社会の日本の在り方とどこか似たところを感じ、SFなのに妙なリアル感と、危機意識を抱いた。

     遺骨になった妻と上手く折り合いが付けられるのか、何処か穴が開いている娘との関係性も修復できるのか、主人公の男の代わりにくじを引いた「サイハテ」に行く権利を獲得してくれたことに対する、当てたのは自分じゃないという負い目、同士とまで意気投合したのに、イザとなると主人公の男の思い切りの悪さによって国民管理局職員の部下の中年男を結果的に裏切ってしまったりして、娘に真の幸せとはそ何かを問われて、答えに困って逃げてしまったりもするが、自分や妻、娘、職場の人からも逃げ続け、何とか辿り着いた「サイハテ」には何もなく、しがらみもなければ、何をするのも自由だし、自分を縛るものは何もないがただの砂地で、ショックを受け、途方に暮れるが、そこで今まで色んなことから逃げ続けてきたことを心底後悔し、自分や今は遺骨になってしまった妻ともしっかりと向き合おうとし、今まで人の意見に流され、家族ともしっかりと向き合ってこなかった主人公の60の男が、とある重要な決断をして、前に本当の意味で進もうとする姿に、そういった結末に、決して格好良くもなければ、ハッピーエンドともバッドエンドとも言えないような曖昧な終わらせ方で、中途半端とも言えるが、実際人間が生きている中で選択をする時なんて案外そんなもんだと言うところもあると感じ、妙なリアリティーを感じて、共感した。
     世の中、意外とイエスかノーと言ったふうにはっきりと言い切ることより、生きている上で、思い悩み、悩んだ末にこれだとはっきりした答えなんて導き出すことができなくて、それでも導き出そうと四苦八苦する格好悪さが、2択に絞れないところ、永久に思い悩みながら生きるところこそが人間の良さでもあるんじゃないかと、完璧ではないし、欠点だらけの流されやすく、自分の考え方をはっきり抱いているとは言い難い主人公の60の男を見ていて感じた。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    良かったです 最後の方の演出斬新で面白かったです

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    不条理SFと一言っていいのかな。ちょいちょいイラつきながらも、結構感情移入してしまうのは、定年が近いからなのか。サラリーマンの悲哀を感じますね。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    自分好みの面白いSFだった
    なんか 80年代にこんな感じの映画を
    よく見たなーって記憶があります
    イメージで言うと「赤ちゃんよ永遠に」とか
    そんな感じかなーって
    何か他にもあったな
    太陽挟んで地球の公転軌道上に
    もう一つの地球があってーみたいな映画が
    それにも感じが似てるかな
    分類するなら不条理 SF っていうトコか
    とても とても静かな舞台でありました
    白い円形舞台と黒の素舞台に
    白いレース垂らしての白黒モノトーン配色も
    印象に残りました

    ネタバレBOX

    イメージ的にはデストピアなんだけれども
    そうでもないような変わった世界観だった

    定年退職後に書類審査が通ると
    サイハテに行く権利が貰えるという
    関所のビルディングにて
    1日1回 ガラガラを回して当たりが出たら
    サイハテに行けるのだが
    主人公の元職場の上司が10年も
    日々抽選やっててずっと関所に住んでいる
    ココだけ切り取ると衣食住を保証された
    よい老後みたいな気がしますが
    ココに居る方々は皆サイハテ行きを
    希望してるから本人からすれば楽園では無いと

    さて主人公の放棄した権利をもらい
    その先輩がガラガラを回すとなんと当選
    そして 主人公はサイハテに行くことに
    なるのだがサイハテに持ち込んでは
    いけないものの一つ 人骨を
    亡き妻のもの=遺骨=を隠し持ち
    行けなくなるかと思ったが
    何事もないのが一番という行動不明な
    政府の男により主人公は
    無事サイハテに行くことができたのだが
    ただ サイハテとは国の外に行けただけであり
    そこに楽園があるわけではなかった
    遠くの方には 別の国があるらしいと
    先にサイハテに来た人と出会い 聞くが
    主人公は全てから自由になったと
    妻望みであった いや
    本当は自分の望みだった と
    妻の亡霊との対話で気付かされた主人公
    サイハテにて決意として
    妻の遺骨をその場に ばらまき
    何処へと去るのであった
    遺骨が白いビー玉で表現され
    円形の舞台から周囲に散らばるのは
    音といいインパクトといい凄かったデス

    木製枠のラジオが
    なかなか良い小道具として印象ヨカッタ

    やりたい放題な感じの
    元職場上司の課長さんのキャラが立ってたわ
    スリッパ叩きの女性国家管理官さんもねー♪
  • 実演鑑賞

    面白かったです。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。
    タイトル「サイハテ」…どこを若しくは何を基点にしているのか判然としないが、その抽象性が物語の世界観そのもの。時として観れば現在否定の未来、心の在りようとして考えれば 自由とは?を追求することで、逆に不自由さや矛盾を生み出すようなパラドックス。

    理屈でいえば、量的な時間と言われる「クロノス」から質的な時間「カイロス」の世界を望んだ男、言い換えれば 定年退職後、悠々自適(楽園)の生活を手に入れるための審問。それを通して人間(心情)や社会(制度)が内包する問題を炙り出すような。ちなみに登場する人物は、男・妻・娘・職員・先輩・後輩・部下そして旅人と記されており、そこから誰もが持つ普遍性を表しているようだ。また舞台美術から、この世とあの世の間(ハザマ)のようでもある。全体感は ハッキリしないが「知的」という印象、そこに不思議な魅力を感じる。見応え十分。
    (上演時間1時間45分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に白いシーツに覆われた円台。その上に上演前から1人の女性が後ろ向きに座っている。円台には携帯ラジオ、旅行鞄が開けられ 衣類が散らばっている。後々 シーツが取り払われ円台下への開閉通路が現れる。上演後 すぐにキャストが細長い白布を等間隔に吊るすが、場内の黒壁と相まって鯨幕に見える。この光景から死者との関わり 現世と来世の間(ハザマ)を連想する。

    物語は、40年間勤めた国民汚物課 下水飲料班を定年退職した男(60歳)が、「サイハテ」に行くために国民管理局の審査を受けるところから始まる。以降 管理番号で呼ばれる。その第一次審査は1日1回のガラポン抽選、それまでの(勤務)貢献度などは斟酌されない。元職場の先輩(課長)は10年間くじ を引き続けているが…。その先輩が男の代わりに引いた くじが当たり 男は二次審査へ。男の身上調査が始まるが、理不尽な質問に困惑し怒りが込み上げてくる。男は非人戸籍という最低限の権利しか有していない。その出自ゆえ、人が嫌がる仕事にしか就けなかった。

    この国民管理局には男女の職員とその部下がいる。女職員(高畑こと美サン)の口癖は「決まりですから」というルール至上主義、それに そぐわない対応をする部下(奥田努サン=Jr.5の代表)の頭をスリッパで叩く。持ち込み禁止物ー例えば爆弾や遺骨等、男は慌てて包み物を隠す。部下も非人戸籍で 男の幇助をしてしまう。客演にはさせられない叩かれ役だろう。物語は 軍服のような制服を着た管理局による統制、そこに不安・不穏といった不気味さが漂う。そんな中にスラップスティックな笑いの場面を挿入し和ませる。

    男の目指していた「サイハテ」とはどんなところか。そして妻も一緒に連れていくことにしていたが、既に亡くなっている。男の妄想によって幻影を見ているかのよう。娘は父を諫めるが、今まで娘と向き合ってこなかった男は その言葉に戸惑うばかり。男は 妻もサイハテに行きたがっていた、妻のためにラジオを買ったと思っているが、実は 男の自分勝手な思い。サイハテに来てみれば、自由はあるが何をすればいいのか。そこで出会った旅人も放浪者のような出で立ち。

    40年間働いて定年退職、「サイハテ」という地(自由)を手に入れるが、そこで待ち受けていたのは虚無の世界。しかし 元の世界へは帰(戻)れないし、そこでは銃声のような音が聞こえる。元の世界は社会という戦場であり生き残りをかけた戦いをしてきた。その安息の地が「サイハテ」ならば、そこでどう生き暮らすか模索しなければならない。それは誰にも頼ることが出来ない。相談する妻も亡く、遺骨を抱いてオロオロしているだけ。その精神的開放なのか自暴自棄なのか、遺骨の中のモノを投げ出す。そこに男の新たな一歩を見るような…。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/12/13 (土) 18:00

    脚本が面白かったです!

    ネタバレBOX

    主人公にイラッとしました!
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/12/13 (土) 13:30

    “国民管理局”による徹底した管理社会、カースト制度のような絶望的なしくみ…。
    定年退職後の楽園を夢見て、地道に底辺の仕事を続けてきた男がたどり着く現実。
    庶民ってこんなにも非力で哀しいものなのか。

    ネタバレBOX

    白い布に覆われた舞台、骨壺のような箱が一段高いところに置かれている。
    開演前からその箱の前に一人の女性が、客席に背を向けるように座り続けている。

    定年を迎えた男は “サイハテ” という楽園のような場所へ行くことを夢見ている。
    国民管理局では先に来ていた職場の先輩や後輩、同じ底辺の人間ながら管理局に勤務している者
    などに出会う。 “サイハテ” への切符を手に入れるため、人々は宝くじのような確率に
    望みをつないでひたすら待ち続ける。男の娘は、自分を置いて一人“サイハテ”に行こうとする
    父親に反発し、管理局まで追いかけてくる。
    厳しい詮議の末に男はついに“サイハテ”にたどり着くがそこで見た世界は…。
    というストーリー。

    「規則ですから」を連発する国民管理局の女性職員(高畑こと美)のスキの無い
    なりきりぶりが素晴らしく、観ている側も国家の締め付けを感じて息苦しくなる。
    それが功を奏して、上司を差し置いて国民をいいように扱うこの女性職員が、
    自らの失態を上司に突かれて失脚する様には爽快感マシマシ。
    いい上司もいるじゃないか、人間味を失わない管理者も存在してよかった、これで男は
    望み通り“サイハテ”へ行ける、と思ったのだが、無事たどり着いたその“サイハテ”は、
    暗澹とするような場所だった…。

    男が繰り返す「妻をサイハテに連れて行くと約束したんだ!」という叫びと
    現れては消えていく妻が、実はもう死んでいるという現実。

    「自分がいなくなった方が30歳の娘は自立できる」という理屈と
    自分は置いて行かれた、戻ってきてと望む娘。

    「相手が望むことをしてやりたい」と言いつつそれを自分の目標にすり替えるのは
    優しさと背中合わせのエゴなのだろう。
    自分でも気づかないうちに獲得した目標にすがりつき、それを目指し優先する。
    誰かを幸せにし(た気になって)達成感に浸る(自己満足)構図が透けて見える。
    老後これでは「それ、結局自分のためでしょ!」と総スカンかも。

    台詞が少し冗長で流れが滞る場面があり、もったいない気がした。
    その分“サイハテ”の現状がもっと知りたかったと思う。
    想像力を掻き立てる演出ではあるが、もう少しリアルに、あの男が直面した過酷な現実を
    見せて欲しかった。そうして共に暗澹としたかった。
    先に到着した人々はどう過ごしているのか、結局国は何の目的で“サイハテ”を作ったのか、
    残された家族はどうなるのか、そして“サイハテ”にも希望は残っているのか…。

    あの“サイハテ”に、ひとすじの希望があればと願う。



  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     可成り哲学的に解釈できる作品。面白い。お勧めである。目の具合が良く無いので誤記が多いかももしっれない。追記後送

    ネタバレBOX

     板中央に大きなラウンド。ラウンド上には女が1人腰掛けている。衣装は白。女の右手の先辺りに低い白い布の掛かった箱馬、その上には包まれた何かが載っている。女の背中側にも矢張り少し高い箱馬が矢張り白い布を掛けてあり、上部には包まれた何かが載っている。女と箱馬を取り囲むようにラウンド上に行儀よく置かれた革製の旅行鞄、おびただしいズボン、シャツ、下着等の衣類。更にラウンド下の床面にも多くの衣類が落ちているかのように置かれている。女が座っている処から観て右側には白い紗のクロスが天井から床まで延び恰も袖の如く見える。
     オープニングでは男が探し物をし、それが見付からずに妻に詰られるシーンがあるが、これは妻が夫の出掛けることへの抗議とも取れる行動であろう。袖のように機能している紗幕の奥に鞄を隠したのは妻自身であった。
     夫は被差別民の出身。この社会では最下層と思しい。出身階層が低い為予めつける職業は限られている。所謂3K、それも人々が最も嫌う浄穢屋(劇中では国民汚物課下水処理班と呼ばれる組織)であった。40年間愚直に働き漸く60歳で退職、生まれて初めて自由を夢見ることが出来るチャンスが巡ってきたのだった。旅行鞄はそのチャンスにチャレンジする旅に出る為、多くの衣類や包まれた物も鞄に詰め或いは手にもって出掛ける為に準備していた物であった。目指すはサイハテと呼ばれる場所。其処には自由が在るという、その場所だ。
     ところで、サイハテへ辿り着く為には国民管理局の許可を受けなければならない。男を被差別民と定め、就ける職業を定めた組織であった。当然選別は極めて厳しい。10年チャレンジし続けて成功せぬ者、それどころか生涯成功せぬ者も居るという。表向きは運次第ということになっているものの無論、勤務時に犯した違反、問題行動等があれば一生パスしない。何となれば国民管理局のレゾンデートルは国民を一つの例外も無く管理することが建前だからである。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/12/13 (土) 18:00

    下北沢にいることを忘れる1時間45分。主人公たちの居る閉鎖空間に、自分自身もいるみたいな気持ちになりました。コンクリートの無味乾燥な高層ビルで、ほかの階にどんな人がいて何をしているのかまったくわからない、息苦しいような感じ。いまのこの世界の延長上の未来ではなく、ちょっと前の過去から分岐してできた未来というイメージを持ちました。
    一つの職場にずっと勤めつづける悲哀。自分が拠出して作った年金なのに、支給されて受け取る段階になったら、所得だとみなされて課税される現実、管理されつづけ、逃れられないんだなぁと思う(あ、これは劇中のエピソードでなく、現時点での一般的な話として)。
    あなたはがんばって、ここではないどこかに行きますか?

    ネタバレBOX

    ♪へたくそなスウィングやめなっていってもいつもドゥビドゥビ~♪
    「幸せって何だと思いますか?」「健康」ってなやりとりがありました。
    さて。主人公やもう一人が、社会の中で虐げられている層に属すことを表すことばが出てきました。それは現実に使われている(使われてきた)言葉でした。だからちょっと落ち着かなかった。現実の何かを指す言葉は使わず、この物語世界だけの造語にしてくれていたら、安心して聞けたのにと思う。それから、主人公の勤務先も、どういう仕事か直接的にわかることばでした。そのことばが喚起するイメージが美しくなさすぎるので、つらかった。「環境局リサイクル推進センター水資源課ヒューマン係」か何かにして、劇中で内容を一度説明してくれたらそれで理解できるのに、と思いました。「ちょっと前の過去から分岐してできた未来」をイメージしたのは多分、「ラジオ」「娘の服装」から来ていると思う。舞台の、黒い背景に白い細長い紗幕が均等に3枚流れていて、白黒の幕のように見えてくる瞬間がありました。これは「箱」から喚起されたのかな。

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